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目の前の光景は堂上の動揺を誘うには十分すぎるものだった。
郁と手塚の兄が交合してるなど──誰が信じるというのだ。
あの郁が自分以外の相手に身体を許すことなど有りえないのは堂上が誰よりも分かっている。
嘘だ、やめろ──そう叫ぶ声が何故か出ない。
ならばこんな光景を俺に見せないでくれ──だが、それも叶わない。
するり、と慧の細長い指が郁の首筋を撫でると、郁は拒むように声を上げた。
「ふぅん。感じやすいんだね、笠原さんは」
そう告げる慧の表情は酷く楽しげだった。
そのままゆっくりとシャツのボタンを外していくと、郁は素肌を見られた恥かしさから顔を逸らした。
だがそんなことはお構いなしに慧は行為を続けた。
そして胸元のとある場所に辿り着くと、とん、と軽く叩いた。
その瞬間、郁の身体はびくりと慄いた。
「堂上ニ正は案外独占欲が強いんだな。まあ……こんな反応されたら、仕方ないか」
うっすらと残る赤い跡は紛れもなく堂上との情事の跡だった。
慧はまるで宝探しをするかのように、跡を見つける度に意地悪く指摘し続ける。
「や、やめて──」
ついに耐え切れなくなったのか郁が涙目で懇願すると、慧はそれを待ち望んでいたように口元を緩ませ、郁に顔を近づけて何かを囁いた。
その瞬間、郁の表情が変わったのははっきり分かった。
何か弱みを握られていることは明らかだった。
自分の知らない間に、郁の身に一体何があったというのか。
そこまで知られては困ることを、どうして自分に相談してくれなかったのだろうか。
してくれれば──こんなことにはならなかった、いや、そうさせなかった。
「いいよね?」
そう慧が告げると、郁は静かに頷いた。
慧はまるで楽器を奏でるよう手付きで、郁の身体を触れ始めた。
椅子に座らせ、脚を大きく広げさせる。
しなやかな郁の脚は慧が触れるたびに、まるで弦楽器の弦のように震わせた。
覚悟したとはいえ、好きでもない男にショーツを脱がされ、秘部を見られことは、郁にとって受け入れがたいものだったのだろう、すすり泣き始めた。
「悪い子だね、笠原さんは。約束したのに」
それでも慧はやめようとはせず、更に愛撫を激しくさせた。
郁の感じる場所を探し出し、執拗に花芽を吸われると、郁の声は泣き声と共に甘さが交じり始めた。
「ちゃんと感じているよ、笠原さん」
「やっ、やだっ、そんなこと──言わないで──」
「堂上ニ正は教育熱心だね。君をこんな身体にさせてしまうなんて、余程だよ」
「きょ、教官の名前を言わないで下さいっ!」
「思い出してしまうのかい?ああ、そうなると、今、君が受け入れている相手が私だと嫌でも自覚してしまうのか」
的確に堂上への罪悪感を指摘され、郁は言葉を失った。
涙目のまま慧を睨みつけたが、慧は表情一つ変えず、
「そんな表情をされると、ますます君を困らせてみたくなるのに……困った子だね、本当に」
くつくつと慧は笑うと、とろとろに解れた郁の花弁に、いきり勃った自身を宛がった。
あっ、と郁は小さな悲鳴と共に、その身を大きく震わせた。
「やっ、あっ、ああ──っ、」
「理解したつもりだったんだけど……笠原さんの中は狭いね。このままじゃ、喰いちぎられてしまいそうだ」
耳元でそう囁く慧の声に郁はむずがる赤子のように首を横に振った。
脚を大きく広げさせられ、その膝に腕を回されてる格好の郁は逃げ出すこともできずに、更に深く慧を受け入れた。
「早く素直になった方が笠原さんも楽だよ。ほら、身体はこんなに正直なのに」
ずんと慧に突き上げられ、郁は思わず慧の肩に爪を立てた。
立て続けに責められると、郁は身体を縮こませ、
「ごめんなさい──教官、堂上教官っ、ごめんなさい──」
郁は一体何に謝っているのだろう。
慧に秘密を握られてしまったことにか、その慧と関係を持ってしまったことか──
それとも、堂上以外の相手に身体を許し、その上、感じてしまっていることなのか──。
もういいだろう!やめてくれ──!!郁の辛い姿を見ることは、自分を痛めつけられているより苦しかった。
胸が締め付けられ、このままでいたら自分が壊れてしまいそうだった。
どうして今の自分は郁を助けられないのか。手を伸ばし、あの悪夢から郁を救ってやりたい。
この手はその為にあるものではなかったのか──。
次の瞬間、悪寒と共に目が覚めた。
静まり返った部屋を見渡し、あれが夢だったことに安堵した。
悪夢にしてもタチが悪すぎる内容に、堂上は肺が空っぽになるぐらい息を吐き、ふとコタツに置いてDVDのパッケージに目がいった。
そこには、モザイク入り乱れのキャプと共に、
女自衛官屈辱淫猥戦線~見せます!出します!飛ばします!~
などという文字がテカテカと輝いていた。
堅物堂上とて健全な成年男子であるし、性欲だって当然のように存在するし、この手のものに世話にだってなる。
そういえば久しぶりに何か借りて帰ろうと昨晩レンタルビデオ屋に寄った際、ふとした出来心この手のコーナーに入り、偶然見つけてしまったのだ。
表のパッケージに、かっちりと制服を着込んだ女優はあまりに郁に似ていて──気がつくと借りてしまっていた。
そういえば、あの夢はこれと似たような展開だったような……全てに合点がいき、堂上は二度とこの手で処理すまいと心に誓った。
最終更新:2008年09月23日 23:05