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海辺の出来事
「たまには、遠出するぞ!」
玄田の一言で海に出かけた、堂上班プラス玄田・柴崎・毬江・折口の8人。
折口の手配で世相社の保養所がある海岸にやってきた。
男女それぞれに別れて水着に着替えてビーチに集合することになった。
「お前、寮にいるときの格好とあんまり変わらないんじゃないか?」
「違いますよ!これはタンキニっていう水着なんです!これだと胸の小さいのをあんまり気にしなくっていいかな……ってなんでこんな言い訳」
「下も短パンか、てっきり柴崎みたいな水着かと思ってたんだがな」
「ああっ、他の女の人見ながらそんなこと、ひっどーい!」
堂上の視線の先には波打ち際を歩く柴崎と手塚の姿があった。
郁としては柴崎と比べられては立つ瀬が全く無い。
なんとか反撃をと考えてふと気づく。
「ん? なんで教官、着替えてないんですか?……もしかして、教官泳げないんじゃ」
堂上はここにくるまでに着てきた普通のTシャツに綿のパンツだった。
「こ、これはだな……みんな水着に着替えてたら、良化特務機関の襲撃に備えられないからだ……」
「こんな場所のどこに狩られる本があるんですかっ!?」
「いや、でも、もしもを考えて」
珍しく、しどろもどろになった堂上に郁はニンマリと笑いかけた。
「石頭でカナヅチって、なんかのギャグみたいですよ」
「あんたって、無意味なとこに自信あんのね」
手塚が身につけているのは、男性用のビキニパンツ。
○島よしお御用達の品物だ。
「これはっ、学生時代ずっと競泳部だったからっ!小牧二正みたいな短パンだと、なんか足にからまって泳ぎにくいから……あれ、毬江ちゃんは?一緒に着替えに行ったんだろ?」
保養所が用意してあるパラソルの下で手持ち無沙汰に毬江を待っている小牧の姿があった。
柴崎は、ああとうなずくと、
「やっぱり、ほら寮で一緒のあたしや笠原だったら遠慮ないんだけど、一緒に着替えるのってちょっと恥ずかしかったんじゃないかしら、後でくるって」
「そういうお前は自信満々すぎじゃないか」
華奢だ華奢だと思ってたのに、胸はC……いや、ひょっとしてDぐらい?
手塚の視線が自分の胸に刺さっているのを自覚してか、柴崎は黒のビキニに包まれた胸をグイっとはった。
「このあたしに自信があったら、おかしい?」
世の男性陣なら恐らく全員が陥落されただろう圧倒的なオーラを柴崎は纏っていた。
「ま、でもこんな姿を拝ませるてあげるのも、ごく限られた人だけよ」
「俺も『限られた人』なんだな」
「まあね」
ふわりと微笑んだ柴崎に、どうしようもなく頬がゆるむ手塚であった。
「きゃーーっ!」
郁は逃げ出した。
なんとか第一波をしのいだものの、柴崎もドン引きになっている。
「隊長っ!なんですか?!それはっ!」
堂上班の男性陣3人は一斉に怒鳴った。
「日本男子なら、やっぱりこれだろ!」
手塚よりも柴崎よりも、誰よりも自信万満に、真っ白のフンドシ姿の玄田は豪快に笑っている。
深紅の胸元が深く切れ込んだワンピースの水着を身に付けた折口が玄田に寄り添って、
「ほらぁ、みんなびっくりするって言ったのに」
平然と玄田の腕をつついていた。
並んで水際に向かう二人が通り過ぎてから、一同はそれぞれがひそひそとつぶやく。
「何かやらかす人だとは常から思ってたが」
「折口さんも凄いっすね。アレと平然と並んで歩けるんだ」
「やっぱり20年以上の付き合いだけのことはあるよね」
「それにしても、折口さんには負けたかも。あの年であの水着を着こなせるなんて」
「『あの年』ってお前、聞こえたら殺されるぞ。それにスタイルだったらお前の方が」
「あらーっ、あたしなんかで鼻の下伸ばしたりしてていいんですかぁ?笠原に言っちゃおっかな」
「バカっ!客観的な意見だ!」
「玄田隊長と同い年だから、もう40過ぎててあの体型を保ってるのが凄いってことだね」
「そうそう、いくらあたしでも40過ぎであれが着られる体型でいられるか」
つぶやいた柴崎をつい眺めてしまって、男性陣全員がそろって気まずくなり、また全員があらぬ方を向いたのだった。
玄田ショックから立ち直ってしばらくしてから、ようやく毬江が登場した。
「毬江ちゃん、その水着は……」
「小牧さん、こーゆーのがいいかなって思って」
毬江が用意してきたのは、高校生のときに使っていたスクール水着だった……
ご丁寧に胸元には『3-B 中澤』と名札までついている。
「それが趣味じゃ、男性陣で一人だけまともな水着着てる俺が一番変態になるでしょ。着替えてきて」
「はーい」
駆け出した毬江の後ろ姿を見送りながら、小牧は自分の趣味を誤解されるポイントがなかったのか、真剣に悩んだのであった。
最終更新:2008年09月24日 21:17