お父さんすいっち「あ」3

279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:50:42.01 ID:3e3N4sjj0
やっとのことで辿り着いた我が家。
何時ものように玄関には明かりがついて、妻は料理をしているのだろう。
息子はきっとまた勉強もせず、ゲームをいじくっているのだろう。
だか俺はもう逃げないと誓った。
俺を気遣うように寄り添う娘を見下ろすと、うん、と頷いた。

「ただいま。」
「ただいまー」

パタパタと妻のスリッパが俺を出迎える。

「あら、一緒だったの?」
妻の声は明るい。しかし、顔はどことなく沈んでいるような・・・?
いや、気のせいか・・・?
なんにせよ、すべてを打ち明けようと俺の心は決まっていた。

「すまないが、ちょっとリビングに集まってくれないか。」


VIP連続小説  「お父さん、殺意のスイッチ」 「や」の章 完




289: 忍法帖【Lv=18,xxxPT】 :2011/06/26(日) 21:03:18.60 ID:9QI+6yqH0
いよいよクライマックスか…




305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:27:58.91 ID:SWGf9u6j0
勇気というものをこれほどまでに欲したことはなかった。
覚悟はある。しかしそれだけでは足りないのだ。

「お父さん」

娘が言う。俺は息を細く吐き出し、頷いた。
テーブルについた俺と、娘と、息子と、妻。俺が何よりも大切にしてきた三人。

「隠し事はなしにしよう」

妻の顔が僅かにひきつったのを、俺は見逃さなかった。
そのまま畳みかける。

「各堂は俺が殺した」
「――!?」

妻の声にならない声。対照的に、息子は何が何だかわからないような顔をしている。

「な、あ、なんで、あなた、それを」
「だから」

俺はそっと一枚の書類を取り出す。

「離婚してくれ」


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ゆ」の章    完




307:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:32:41.48 ID:3e3N4sjj0
どうなるんだ・・・ドキドキする・・・




308:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:34:39.61 ID:8ZfAPCUv0
よほどショックを受けたのだろう
妻の目の焦点はいまだ定まらない
探していた男は―――すでに死んでいたのだから

俺は妻がもう俺を愛していないことを認識せざるを得なかった
こんな姿、見たくなかった
事情を知る娘、何も知らない息子にも……
そして何より、愛し合って結ばれたはずの俺自身

「あ、あなた」

震える声で、妻は俺にやっとのことで声をかける

「あ、あなたが」

瞬間、俺は判断が間違っていたことを悟った
俺が飛び出すよりも早く妻は果物ナイフを手に取り俺に向けた

間には、娘


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「よ」の章    完




314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:44:49.61 ID:3e3N4sjj0
「らめぇぇぇぇ!!!」
俺を背に庇った娘が、拒絶するように両手を妻に突き出した。
すべてがスローモーションのようだ。

「ぅあああああああああああ」

妻の目には俺しか映っていない。
憎悪の眼に、茫然とした俺の顔が写りこんでいるような気がした。
ショックと恐怖で体が動かない。

「やめろぉぉぉぉぉおおおお」

ガタンと椅子を蹴飛ばして、巨体が妻を抑え込む。
もみ合う妻と娘を止めたのは、泣き出しそうな顔をした息子だった。


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ら」の章    完




318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:48:25.16 ID:zvohAcZW0
息子大活躍!


でも家族写真には写ってないんだっけか




321:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:50:14.80 ID:ALFWbn9x0
ここにきての息子おおおおおあ




325:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:53:56.67 ID:SWGf9u6j0
「理解できねぇよいきなりなんなんだよこれっ!」

激昂する息子をなだめながら、いまだ恐怖から覚めやらない娘が、事情を全て説明する。
各堂という男のこと。妻との関係。そして俺がそいつを殺したこと。
最初は信じられないようだったが、ここまで修羅場を演じてしまえば、信じるしかないようだった。

「なんだよ、それ……なんだよ、それ」
「すまん。俺は父親失格だ」

俺のことは別にかまわない。人殺しの汚名をかぶるのは問題ないのだ。
ただ、愛する家族が、「人殺しの子供」と謗りを受けるのはなんとしてでも避けたかった。
子供のことを気にしない親などいないのだから。

だからこその離婚届だった。それなのに……。

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

何に対して謝っているのか、妻が意気消沈気味に涙をこぼす。
最早ナイフを握る気力も、立ち上がる気力さえないようだった。

きっとこれで全てが終わったのだ。一連の出来事も、俺の家庭も。
そう、あとは俺が責任を全てかぶれば、それでいいのだ。


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「り」の章    完




329:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:00:21.27 ID:9aa0F0zr0
「留守にしております。御用の方は・・・」

そんなこんなで三年後
昼飯に出前でも頼もうと思い電話するも、ほっかほか亭は留守のようだ。社会を舐めてやがる。

あれから妻とは離婚した。
なんだかんだあって円満離婚だ。
ちなみに俺たちに子供がいたような気がしたが、俺の勘違いだったらしい。
記憶障害って奴だ。

「カツ丼食いてえなぁ・・・」

それにしても腹が減った。最近外食やコンビニ弁当ばかりで栄養も偏っていることだろう。
こんなとき嫁が欲しいと思うが、やっぱりもう懲り懲りだ。

ピンポーン

「ん?だれだ」ガチャ

?「お久しぶりです」

そこには信じられない奴が立っていた。


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「る」の章    完




330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:01:36.23 ID:pglrIDZa0
記憶障害!?








ふむふむ、なるほど




332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:03:05.47 ID:SWGf9u6j0
記憶障害……だと……?




336:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:05:09.70 ID:QEPARzc70
続き難易度高杉ワロタ




340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:09:38.32 ID:SWGf9u6j0
「例の件で来ましたよ」

相手は探偵――高田だった。
今日もまたよれよれワイシャツを来ている。三年たってもどうやら変わらないらしい。

「もう俺に世話を焼くな。金は払ったし、もうなんの関係もないだろう」
「いいませんでしたっけ。わたし、正義の味方になりたかったんですよ」
「それとこれとは関係ないだろう」
「あります」

そいつはにやり、と腹立たしい笑みを浮かべた。

「あんなに家族のために奔走したあなただ。
その努力を無駄にすることは、家族の絆を否定することです」
「……もうやめろっ」
「いいえ、やめません」

高田は後ろをちらと確認し、言った。

「お子さんたちと逢ってやってください」


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「れ」の章    完




344: 忍法帖【Lv=24,xxxPT】 :2011/06/26(日) 22:12:26.68 ID:+jrl/5Do0
こう繋ぐのか…やるな




348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:19:00.92 ID:8ZfAPCUv0
路地から出ると俺は探偵の車に乗り込む
あの時と変わらない汚い車内

俺は三年越しの説得にようやく応じることとなった
いや、そうしなければならなくなったというべきか

「その格好でいいんですか?」

スターターに手をかけながら奴は聞く
なるほど、俺の服装はとても感動の再開に似合ったものじゃない
ヨレヨレのシャツとしわのよった背広、ラインの消えたスラックス

「なぁに、あんたと一緒さ」

久方見せなかった笑みで探偵に皮肉ると
奴はにやりとだけして車をスタートさせた

今日、すべてが終わり、始まるのだ


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ろ」の章    完




355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:25:17.29 ID:SWGf9u6j0
忘れたかった。忘れられたかった。
あの出来事の後、俺は姿をくらました。

各堂殺しは公になることこそなかったが、俺と周囲の関係に入れた亀裂は甚大だ。
なにより、まかり間違って、俺が捕まってしまったときのことを考えると……

なにも捕まることが怖いのではない。愛する者たちに迷惑をかけるのが怖いのだ。

だから忘れた。忘れられた。そういう「ふり」をしていたし、そうするつもりだった。
しかし、そうできなかった。

車が停止する。

「感動の再会ですよ。水を指すなんて真似はしませんから」

いちいちかっこつけしいやつであった。
俺は、この探偵が、10年来の親友であった気さえしてくる。

「あぁ、行ってくる」

だから気のままにそういって、扉を開ける。

「お父さん!」

――幸せで死ぬかと思った。


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「わ」の章    完




360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:28:37.26 ID:3e3N4sjj0
355
おおおおおおすげえええ




361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:29:36.49 ID:QnWspqjF0
何かとんでもない才能の持ち主がまざってるぞ




380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:42:35.64 ID:8ZfAPCUv0
「―――を発見したと通報があり、現場に警察官が駆け付けたところ」

カーラジオがひっきりなしにニュースを告げる中、私は窓の外を眺めていた
窓の外では三年前私に相談を持ちかけてきた男が娘、そして息子と感動の再会を果たしている

おそらく、このニュースがなければ彼は永遠に子供たちと会おうとしなかったであろう
ラジオは各堂の遺体が発見されたことを告げていた

もちろん、警察はまだ各堂だということに気がついてはいない
しかし、前科がある男のことだ
DNAの保管ぐらいはされている恐れがある
それがわかれば、すぐ警察は彼にたどり着くであろう

昔の仲間からそれを聞いた私はすぐ彼にそれを告げた
そして三年越しの再会が相成ったわけである

やれやれ、これじゃあ私が正義の味方なのか悪の味方なのか、わかったものじゃない
だが、父親と笑顔を交わす子供たちは、まさしく天使そのものであった


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「を」の章    完




396:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:48:28.54 ID:SBUIY94Ii
「…ん?なんだいこれは?」
「えへへ、これね、子供向けのTV番組でやってるやつなんだけどね」
「子供向けだなんて、お前はもうそんな歳じゃないだろ」
「ずっと甘えられなかったんだから、ちょっとくらい童心に帰りたいの!」
「…そうだな。で、何をどうして遊ぶんだい?」
「あたしがこれを押した通りに、お父さんは動かないといけないんです!」
「ははは、よし、付き合ってあげよう!」
「じゃあまずはね…」

「お父さんスイッチ、『あ』!」


連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ん」の章    完




397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:49:10.24 ID:QnWspqjF0
396
感動した




399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:49:34.45 ID:vLfxwGYF0
396
泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。




400:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:49:45.37 ID:pglrIDZa0
396
これもこれで充分あり




401:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:49:51.70 ID:3e3N4sjj0
396
なんてきれいな終わり方!
感激した




405:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:50:17.22 ID:+wdWL1zA0
396
すばらしい




407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:50:42.65 ID:WVB+VN790
全員良くやった
大層乙である




409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:50:56.21 ID:lDn1K7qg0

面白かった




410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:50:57.53 ID:HOGH8MOp0
凄すぎる
皆ホント乙




418: 忍法帖【Lv=24,xxxPT】 :2011/06/26(日) 22:52:44.70 ID:+jrl/5Do0
素晴らしいクソスレだった




419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:53:17.15 ID:493YzNNB0
お前ら俺のクソスレでなにやってんだよwww




421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:54:14.51 ID:ya+86+TeO
419
張り付いて見てたんだろ?www




422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:54:16.53 ID:pglrIDZa0
419
お前なにしてんの?




424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:54:22.70 ID:u15+lSwr0
419
「へ」んじがない ただのしかばねのようだ


だからな! 次は間違えんなよ!




426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:54:38.06 ID:8ZfAPCUv0
419
おまえなにしてんだよ




428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:55:13.96 ID:3e3N4sjj0
419
やだぁ、見てたでしょ!




429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:55:31.52 ID:SWGf9u6j0
419
いまさらすぎるwww




423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:54:22.47 ID:F8SmyHES0
乙!正直「の」で各堂を勝手に殺してすいませんでした




430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:55:54.66 ID:8ZfAPCUv0
423
俺も死んでびっくりした

妻と一緒に俺に死ぬことを強要したりするかと思ったら
バラバラになっててワロタ




433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:57:05.01 ID:SWGf9u6j0
423
俺も驚き
だってあいつ喋ってねーんだぜ




434:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:57:35.61 ID:3e3N4sjj0
423
あれは確かに急展開過ぎだったw
でも今考えるとよかったのかもな




432:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:56:51.37 ID:493YzNNB0
一番びっくりしてんのは俺だよ馬鹿野郎共




436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:58:04.56 ID:lDn1K7qg0
432
お前もうちょっと頑張れよ




435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:57:44.21 ID:tPydJSTS0
このスレを超えるリレースレはもう出ないだろうな




439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:58:20.67 ID:8ZfAPCUv0
正直勝手に「各堂」なる人物を作って悪かった

中学と大学の同窓に「角藤」なるやつがいてだな……


重要なポジションなのに一言もしゃべらなかったなwww




440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:59:32.93 ID:QnWspqjF0
439
モデル付きかよワロタwwww
しかもバラバラwwwwww




441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:59:40.25 ID:SWGf9u6j0
439
勝手に「各堂」の犯罪者設定を作ってしまって悪かった
しかしまぁ喋らないのは、結局「家族の物語」だっていう理由でwww




444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 23:00:10.95 ID:j9N1Y2kK0
綺麗に納めやがって・・・




472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 23:08:44.32 ID:j7XllwsS0
久々にVIPPERの真髄をここに見た




502:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 23:30:39.43 ID:FyS/1n3h0
全部読んできたがすげぇなおい
書いたやつら乙
感動した




513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 23:46:15.55 ID:493YzNNB0
まさか勢いで立てたクソスレがこんな事になってしまうとは
ずっとニヤニヤしながらROMってました
皆様ありがとうございました

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最終更新:2011年08月11日 23:52