~ミストラルシティ中央駅・ミストラルベース~
駅長「え~、みなさま本日はミストラルベース開設50周年記念式典においでいただきまことにありがとうございます」
駅長の挨拶。この日はミストラルベースで記念式典が行われていた。そこには大勢の観客たちが駅に押し寄せていた。
駅長「当駅は開設から50周年を向かえることができました。そもそもこの駅が造られたのは…」
お約束の駅の成り立ちから始まる長い話が始まる。
大勢の観客たち。その中に彼もいた。
十也「ん~、なんだか長くなりそうだなぁ」
十也は退屈そうにあくびをしている。駅内を見回す十也。
十也「改めてみるとこの駅ってずいぶん広いんだな」
記念式典を見ようと集まった人々たちの数は数え切れないほどだ。しかし駅内はまったく窮屈感を感じさせない。
そうこうしているうちに…
駅長「ご清聴ありがとうございました」
観客たちの拍手。どうやら駅長の話が終わったようだ。
十也「おっ?やっとか?」
そわそわし始める十也。
司会「続きまして…」
十也「まだか!」
十也は司会の言葉に落胆する。
司会「E.G.Oミストラルシティ支部局長からのご挨拶です」
E.G.O支部局長と紹介された男はオールバック姿でスーツに身をつつんでいた。やはり局長というだけあってどこか凛々しさを感じさせる雰囲気をかもし出している。
ネオ「今ご紹介に預かりました、E.G.Oミストラルシティ支部局長のネオです」
また長々と話が始まるのかと十也が思っていると…
ネオ「ん~、なんだか駅長の長話を聞いていたら疲れてしまったので私の話は無しにしましょう!」
ざわつく会場。
ネオ「こんなおじさんの話を聞くためにここにきたんじゃない!そうでしょう、皆さん!皆さんが待ち望んでいるもの!それは!」
パチン!
ネオが指を鳴らす。すると駅に1台の列車が入ってくる。
ネオ「駅長、後は頼みましたよ」
駅長「えっ!?あっ、はぁ」
どもつく駅長。
駅長「で、では皆さんに紹介いたします!これがミストラルシティで開発された新車両ミストラル号です!」
観客A「おー!これが!」
観客B「生でみると迫力がちがうなー!」
興奮する観客たち。
十也「こ、これが…ミストラル号」
十也「か、かっけー!!」
十也は機械的なものに目がなかった。歓喜する十也。しかし彼の目的はこれを"見る"ことではなかった。
他の観客たちもそれは同じだ。だれもがこれを"見る"ためにきたのではなかった。
司会「ではこれから皆様おまちかねの試乗抽選会を開催いたします」
そう。彼らは最新鋭の機能を有したミストラル号への試乗。そのためにここへいるのだ。
試乗できる人数は200人。その枠をかけた戦いが今火蓋を切って落とされる。
その方法とは…
司会「みなさん列をみださないでくださいねー!」
くじである。運による完全なランダム。これに勝ち残ったものだけが試乗できるのである。
人々がくじで試乗券を手にしようと奮闘するなか、ネオはひっそりと駅をあとにする。駅を出たその時ネオの端末に通信が入る。
???「おい…」
女性の声だ。
通信相手の声からは画面越しとは思えないほどのものすごい怒りの感情が伝わってくる。
ネオ「や、やあ。どうしたんだいカレン君?」
カレン「さっきの記念式典の様子、中継でみていたぞ」
ネオ「へ、へ~」
カレン「とっとともどってこい!バカ長官!お前はいい加減自分の立場というものをだなぁ…」
プツン
通信を切るネオ。
ネオ「こりゃあ帰ったらお説教かな」
ネオは肩を落としながらとぼとぼと帰っていったのであった。
十也「よっしゃあ!きたぜ試乗券!」
十也の手には試乗券が握られている。くじで勝ち取ったのだ。
程なくしてすべての抽選が終了した。
司会「では試乗券をお持ちの方はミストラル号にお乗りください」
ミストラル号に乗り込む人々。最新鋭の電車はその中も近未来を思わせるなような姿をしていた。
十也「すげー!」
興奮を隠せないでいる十也。
ピンポンパンポン
車内アナウンスだ。
アナウンス「みなさま当選おめでとうございます。これからミストラル号は発車いたしますので席にご着席いたしますようお願いいたします」
駅を発車するミストラル号。どの乗客も最新鋭の電車に乗れたという興奮を隠し切れないでいる。
~ミストラル号・運転席~
車掌「さすが最先端の電車はちがうなぁ」
運転席に着席しながら、車掌は感嘆していた。
ミストラル号は基本的に操作の必要はない。すべて機械がオートで操縦してくれるからだ。
車掌「え~とトラブルが起こったときだけこのボタンを押せばいいと…」
マニュアルをみながら確認する車掌。
車掌「まぁ!そんなことないだろうけどな!あれっ…?」
なんだか頭がぼんやりする。
車掌「う~ん。急に眠気が…まぁ、ちょっとぐらいなら大丈夫だろう…」
目を閉じて眠りにつく車掌。その背後には何者かの姿が…
???「…」
運転席の機械を操作する謎の人物。
???「くっくっくっ…さぁ奴はどうでるかな…」
~ミストラル号・乗客車両~
十也「いい景色だな~」
外の風景を見ながらくつろぐ十也。
十也「あれ?」
外の景色の流れが速くなっていく。
十也「この速度おかしくないか?」
異変に気づく十也。その時!
ピーピー
車内に警報が鳴り響く
アナウンス「緊急事態発生!緊急事態発生!ただいまミストラル号のシステムに異常が発生いたしました。乗客の皆様は万が一の事態に備えてください」
どよめく車内。
十也「いったいなにが起きてるんだ?」
急激に速度を上げていくミストラル号。
あまりの速度に席から放り出される乗客。
乗客「きゃあーー!」
???「大丈夫ですか?」
1人の男が乗客を助けた。
???「いったいなにがおきているんです?」
???「さあな。だがなにかよくないことがおきているのは確かだ」
乗客を助けた男と顔の似ている男が冷静に判断する。
???「今こそ日頃の鍛錬の成果をみせるときです、スライ!」
スライ「まずは乗客の安全の確保だ!いくぞ、トニー!」
トニー「はい!」
その時、乗客車両の扉が開いた。
扉の向こうから現れたのは
十也「なんだ、あれ?ロボット?」
乗客「たしかあれって…」
カバンからパンフレットを取り出しページをめくる乗客。十也の隣の席の乗客はパンフレットを十也に見せる。
乗客「やっぱりあった!これですよ!」
『ミストラル号には最新鋭の機能が多々搭載されています。その1つがこれ!最新鋭の駆動鎧(パワード・スーツ)!昨今の世界情勢から
ミストラル号には防犯対策として自動制御式の駆動鎧が搭載されております。使い方はあら簡単!ただ着るだけで勝手に稼動します!』
十也「駆動鎧…そんなのも搭載してるのか」
乗客「俺たちのことを助けるために電車の人がきてるんだろ!これでひと安心だな!」
ホッと息をつく乗客。
十也「…」
しかし十也は怪訝な顔をする。
十也(車内に武装した奴らがいるわけでもないのになんで駆動鎧をきてる?…おかしくないか))
乗客の1人が駆動鎧にかけよる。
乗客「おい!あんた!早く電車を止めてくれよ!一体どうなっているんだ!」
駆動鎧「…」
駆動鎧は言葉を発しない。
乗客「おい!なんとか言え…」
男の言葉が詰まる。直後男は床に倒れこんだ。
乗客「きゃあー!!」
乗客「うわー!!なんだ!?」
パニックになる乗客たち。乗客たちは我先に後ろの車両へと逃げようとする。
トニー「ちょ、ちょっとまってください!」
スライ「みんな落ち着け!」
スライとトニーはパニックになる乗客たちを落ち着かせようとするがあまりに急な事態に混乱は収まらない。
スライ「まずはあいつをなんとかしないとか!」
トニー「いきましょう!スライ!」
十也「ちょっと待って!俺も加勢するぜ!」
スライ「お前は?」
十也「あんなごつそうなの相手に2人だけじゃ大変そうだろ!おれも手伝うぜ!」
トニー「ありがとうございます!ですが危険な相手ですよ?無茶はしないほうが…」
十也「こんな状況を放ってはおけないさ!俺の性分的にな!」
スライ「わかった。だが気をつけろよ。相手は生身の人間じゃあない」
駆動鎧と対峙する十也、スライ、トニー。
暴走するミストラル号。
はたして3人の運命は!?
to be continued
最終更新:2016年09月04日 15:06