~高霊山・十也龍静組~
深い霧が立ち込める高霊山。
???「グルルル」
そこを探索する十也と龍静の前に突如現れた2体の生物。
十也「こいつら…未元獣とは違うみたいだ。」
今まで十也が対峙してきた未元獣とは似ても似つかぬ姿をした謎の生物。
龍静(ロンジン)「こいつらがタウガス支部の仲間たちを襲った奴らか…」
???「ワレラノリョウチニフミイルモノハクラウ!」
化物の一体が言葉を発する。それは虎のような姿をし背中から翼を生やしている。
龍静「こいつ…それにもう一体のほうも…」
もう一体の生物に目をやる龍静。それは犬のような姿をしているが、犬にしてはあまりにも大きい。さらには自身の尻尾を咥え、走り回っている。
その2体の姿を見た龍静は何やら思うことがあるようだ。
十也「龍静。こいつらのことをなにか知っているのか?」
その様子を見た十也は龍静へと問う。
龍静「あぁ。この生物の姿…まるで古い書物に出てくる四凶(しきょう)にそっくりだ…」
四凶。それはタウガス共和国の歴史に出てくる4体の悪神。龍静の話ではそのうちの2体の伝承の姿に目の前の化物の姿は酷似しているという。
十也「じゃあこいつらはその悪神ってことか?本物の神様ってことかよ!?」
龍静「それはわからない。だがその姿にはなにか意味があるはずだ。それに相手が神だろうと平穏を乱す存在ならば僕たちがやるべきことには変わりはない!」
十也「それもそうだな!」
戦う態勢をとる十也と龍静。十也たちの前に現れた四凶に似た2体の化け物は彼らの動きに反応する。
???「グルルル…」
四凶の窮奇(きゅうき)に似た化け物は喉元を鳴らし2人に警戒を強める。
???「……」
四凶の混沌(こんとん)に似た化け物はいとも変わらず尻尾を咥え走り続けている。だがその瞳は2人を捉えている。
混沌「…」
混沌に似た化け物が素早くその場で回転し始める。その体を光が包む!
混沌「…」
光に包まれた混沌を模した化け物が十也に向かって回転しながら突撃してくる!
十也「やる気みたいだな!だったらこっちも!『ブラスト・リンカー』!!」
ゴオォォォ!!
十也の体を激しい突風が包み込む!
バシュン!!
突風の中から現れた十也の姿は鎧に包まれていた。それはまるで鎧を纏った騎士のような姿だ。
十也「『ブレオナク』!」
十也の手に4本の刃を持つ槍が出現する。
ガキン!!
4本の刃を持つ槍ブレオナクで混沌の攻撃を受け止める十也。混沌は攻撃を防がれ間合いを取る。
窮奇「グォオ!!」
窮奇に似た化け物が十也へと襲い掛かる。
十也「はぁぁ!」
ブレオナクを構え窮奇の攻撃をはじく十也。その隙を狙い混沌が再び十也へと襲い掛かろうとする。
龍静「させん!」
龍静の拳による攻撃が混沌の態勢を崩す。
混沌「…」
混沌は龍静へと狙いを定める。
龍静「こいつの相手は僕に任せろ!」
十也「わかった。俺はこいつの相手をする!」
窮奇「グルルル!」
十也と窮奇。龍静と混沌は互いに相手を見据える。
混沌「…」
混沌は再び回転しながら龍静へと突撃してくる。
龍静「タウガス支部の仲間たちの無念晴らさせてもらうぞ!」
独特な構えを取る龍静。タウガス共和国で主流の拳法であろうか。
ギュルルル!
高速回転した混沌が龍静を襲う。
龍静「はぁぁ…」
深く息をつきその左手を前へと突き出す龍静。その左手に混沌がぶつかる直前!
龍静「ふん!」
龍静はその攻撃を受け流すように回避する。
混沌「…」
回転をやめ、その場に足をつく混沌。だが尻尾をその口から離すことはない。
龍静「四凶を模した邪(よこしま)なるもの。その存在は人に凶を与える存在だ。その存在は僕が葬る!」
ダン!
地面を強く蹴り混沌との間合いを詰める龍静。
龍静「はぁあ!!」
龍静の拳による連撃が混沌へと撃ち込まれる。
混沌「…」
言葉は発しないが混沌の体がよろめく。どうやらダメージは通っているようだ。
龍静「ちぇりゃぁあ!!」
龍静が混沌の腹部へと重たい蹴り上げを放つ。その衝撃で倒れる混沌。
龍静「これが六任神拳(りくじんしんけん)だ!」
六任神拳。それはタウガス共和国の占星術六任神課(りくじんしんか)を元にした拳法。龍静の師匠が開発し形にした拳法である。
もともとタウガス共和国では『気』という力の流れを操る技が盛んに研究されてきた国である。六任神拳もその1つなのだ。
混沌「…」
混沌は立ち上がる。その表情からはどれだけダメージが通っているのかうかかがえない。
龍静「まだ倒れないか…」
混沌「…」
ジャキン!
突如混沌の体中を覆う体毛が針のように逆立つ。まるでハリネズミのような姿になる混沌。
龍静「何をする気だ…」
混沌「…」
ズババババ!!
次の瞬間、針のようになった全身の毛が周囲に向かって発射される。
龍静「なにっ!?」
とっさに両手を構え防御する龍静。その体に無数の針毛が突き刺さる。
龍静「ぐっ!これは…」
膝をつく龍静。
龍静「毒の類(たぐい)か…」
体が痺れ、うまく動かない。
混沌「…」
針毛を撃ち尽くした混沌の体から再び毛が生えてくる。
龍静「もう一度くらえば無事ではすまない…ならば!」
両手を地面につけ呼吸を整える龍静。
龍静「コォォォ…」
大地を通じ、龍静の体に気が流れ込んでくる。
龍静「気功治(きこうち)!」
龍静の体に刺さった針毛が抜け落ちる。毒が抜け落ちたかのように立ち上がる龍静。
龍静「大地の気は体を癒す。その力を用いれば毒を中和することなど容易だ!」
混沌「…」
混沌の尻尾を咥えていた口に力が入る。
龍静「なんだ…?」
混沌の口が徐々に開いていく。そしてその口を尻尾から離す。大きく開いた口が龍静の方を向く。
混沌「……」
キュィィン!
混沌の口へと光が集まっていく。集束する光。
混沌「…ワレハ鴻鈞邪道(こうきんじゃどう)混沌…ワガ一撃ヲウケヨ!」
バシュン!!
混沌の口から光線が龍静へと放たれる。
龍静「速い!避けることはできない…だが…」
襲われたタウガス支部の隊員の中に体に大きな風穴が空いて死亡していたものがいたのを思い出す龍静。それはおそらくこの混沌の攻撃を受けたものだったのだと気づく。
そんな攻撃を受ければ龍静といえども無事ではすまない。
龍静「ならば…!」
右手の指2本を立て印を切る龍静。
龍静「六任神拳の真価…。とくと見よ!」
龍静の体を淡い赤い光が覆う。
ゴォォ!!
直後混沌の口から放たれた光線が龍静へと直撃する。
シュゥゥゥ…
光線が直撃したかに見えた龍静だがその体には風穴が空いていない。代わりにその両腕には赤い炎のように気が纏われている。
混沌「…ナニ?」
その様子に驚く混沌。
龍静「火神朱雀の力だ。朱雀はどのような状況からでも蘇る不死の神。その力を身に宿した僕にはどんな攻撃も無意味だ。」
混沌「…グルル」
再び大きく口を開け、光線を放つ混沌。
龍静「無駄だ!」
炎のような気を纏った腕で光線を薙ぎ払う龍静。
龍静「破邪顕正!悪は疾(と)く滅ぶべし!」
気を纏った腕を天高くかざす龍静。
ボォォォ!!
その腕を覆うように巨大な炎の翼が形成される。
龍静「朱雀天翔拳!!」
巨大な炎の翼が混沌へと振り下ろされる。
混沌「ギャ…」
ボシュン!!
凄まじい高熱により瞬時に塵と化す混沌。
龍静「終わったか…」
龍静が纏っていた炎の気が消える。
龍静「くっ…」
膝をつく龍静。
龍静「気を使いすぎたか…。十也、あとは任せたぞ」
混沌を倒した龍静。残る敵は窮奇のみ。十也は果たして窮奇を倒せるのだろうか。
to be continued
最終更新:2017年04月09日 13:44