SIDE:L

聖ラウズレイ王国がコード・スクード率いる未元獣たちに襲撃されてから数日後…

~聖ラウズレイ王国・謁見の間~
ディサイブ「先日の未元獣の一件…みなのものよく戦ってくれた」
謁見の間に集まる騎士たち。
レオン「殿下…俺はあまり力になれませんでした。申し訳ありません」
ラインハルト「そうだな…レオン、聖国最強の騎士シュルツ・セイバーの№1であるお前は自身の力をもっと高めなければならないな」
レオン「その通りですね…ラインハルト卿…」
ラインハルトからの手痛い言葉を心にとめるレオン。
アーガン「私も傷が癒えた。これからはお前の鍛錬に付き合おう!」
レオン「お願いします!師匠!」
確かに先日の未元獣の襲撃は十也が居なければどうなっていたかわからない。それはディサイブも実感していた。
ディサイブ「私も自分の力をもっと高めなければならないな…」
ディサイブが決意を固めたその時…

バン!

突如、謁見の間の扉が激しく開かれる。

???「殿下!ただいま戻りました!」

扉の前には鎧に身を包んだ金髪の女性が立っていた。息も絶え絶えの様子から、相当急いでここに来たのが伝わる。
ラインハルト「ミリア!無事だったか!」
ミリア「はいラインハルト卿!ミリア・シクスタード、無事任務を終え戻りました!」
ミリアと名乗る金髪の女性。彼女はモゴラ大陸に突如現れた未元獣により襲撃された近隣諸国の応援に行き、そこで未元獣たちを退ける任務に就いていた。
ディサイブ「ご苦労だったなミリア」
ミリア「いえ、この程度私にシュルツ・セイバーである私にとっては造作もない任務です!」
アーガン「さすがだなミリア」
ミリア「シュルツ・セイバーの№2の称号をいただいた私なら当然の結果です!」
えへんと胸を張るミリア。
ミリア「それに比べて…」
レオンをにらみつけるミリア。
ミリア「レオン・ケーンズ!あなたはシュルツ・セイバー№1の称号を持つのに先の戦いで不甲斐ない戦いをしたそうですね!」
レオン「あぁ…確かにミリアの言うとおりだ…」
ミリア「そんなあなたがシュルツ・セイバーの№1だなんて…やっぱり私は認められません!」
ミリアはレオンがシュルツ・セイバーの№1に決まった時からこの調子だ。レオンの称号を頑なに認めようとはしない。
ラインハルトやアーガンがいくら説得しようとしても無駄だった。
ディサイブ「そうか…まだ納得できないのだな」
ミリア「殿下が何を言おうと無駄です!ラインハルト卿がいたポジションにレオンが納まるなど…どう考えても力不足です!」
レオン「確かに…ミリアの言う通りかもしれないな…」
レオンが先の戦いでディサイブの力になれなかったのは事実だ。ミリアの言葉に押され弱気になるレオン。そんなレオンの様子を見かねてアーガンがその口を開く。
アーガン「ならばミリア。レオンと騎士戦を行ってみるのはどうだ?」
ミリア「騎士戦?私がレオンと?」
騎士戦。それはラウズレイ王国で古くからおこなわれている騎士同士による模擬戦である。
ラインハルト「それはいいかもしれませんね。レオンが勝てばミリアも納得するでしょう」
ミリア「レオンが私に勝つ?ふっ!でしたら私が勝ったらレオンにはシュルツ・セイバー№1の称号は返上してもらいます!」
騎士戦では勝利した騎士は負けた騎士に1つだけ命令を課すことができるルールがあるのだ。
レオン(この騎士戦…シュルツ・セイバーの№1の称号を持つ以上、俺は断るわけにはいかない!)
レオン「わかった…その騎士戦受けさせてもらう!」
ディサイブ「では…二人の騎士戦を明日開催する!二人ともシュルツ・セイバーの名に恥じぬ戦いを期待しているぞ!」

こうしてレオンとミリアの騎士戦が行われることになった。シュルツ・セイバーの№1とナンバー2による騎士戦。それはラウズレイ王国始まって以来の異例の騎士戦であった。そして…

騎士戦当日

~聖ラウズレイ王国・剣闘場~
ディサイブ、ラインハルト、アーガンの3人が騎士戦の見届け人として二人の戦いを見守るなかレオンとミリアが対峙する。
アーガン「シュルツ。セイバー同士の騎士戦が行われるとはな…」
ラインハルト「だがあの2人ならこうなるのも必然だったのかもしれないな…」
2人は騎士団に所属したころからお互いに意識し合っていた。互いの力を研磨し合えるいいライバルともいえるが…
レオンがシュルツ・セイバーの№1になってからそれは変わっていった。聖国最強の騎士としてあらねばならないと思う焦りからかレオンはミリアの言葉に心を向ける余裕はなくなっていった。
アーガン「お互いの弟子同士の対決だな、ラインハルト卿」
ラインハルト「そうですね。」
レオンとミリアはそれぞれとアーガンとラインハルトを師匠に持つ。その2人の戦いに師匠としてアーガンとラインハルトも興味を持つ。
ディサイブ「では騎士戦開始!」
ディサイブの宣言により騎士戦が開始される。
ミリア「先手必勝!てやぁぁ!!」
ミリアは手にした剣をレオンに対して振りかざす。
レオン「聖斧パラシュ!」
レオンの手に斧が出現する。その斧をミリアの件に対して振り上げるレオン。

ガキン!

ミリアの剣が粉々に砕け散る。
レオン「聖斧パラシュに砕けぬものはない!」
アーガン「シュルツ・セイバー№4として戦っててきたときの力、聖器パラシュ。その力は全てを砕く。ミリアはどう戦うかな」
ミリア「くっ!(想像よりも挙動が速い!あの状況からパラシュで切り返してくるとは…)」
剣を砕かれ態勢を崩すミリア。
レオン「このまま一気に決めさせてもらう!」
レオンのもう片方の手にパラシュが出現する。両手に持ったパラシュでミリアへと攻撃を仕掛けるレオン。
レオン「はぁぁ!」
アーガン「決着だな」
レオンの勝利を確信するアーガン。
ラインハルト「ふっ」
不敵に笑うラインハルト。
ラインハルト「ミリアはこの程度でやられれるような軟な鍛え方はしていませんよ」

ガキン!

レオン「なっ!」
ミリア「この程度で私を倒せると思わないことね!」
ミリアがいつのまにか大きな盾を構えている。その盾に受け止められるパラシュ。
ラインハルト「シュルツ・セイバーの№6として戦ってきた彼女の力はそう簡単に崩せはしませんよ」
ミリア「聖盾(せいじょう)イージス!」
ミリアがシュルツ・セイバーの№6として戦う時に用いていた聖盾イージス。その盾はいかなる攻撃をも通さない。
アーガン「パラシュはどんなものをも砕く」
ラインハルト「いかなる攻撃をも通さないイージス」
アーガン「パラシュがイージスを破壊できなかったということは…」
ラインハルト「ミリアの精神力がレオンを上回っているということですね」
レオン「だが盾では!」
ミリア「イージスを甘く見ないことね!」
巨大な盾を軽々と扱いレオンの体制を崩すミリア。
レオン「なに!?」
ミリア「もらったわ!」
イージスが消える。
ミリア「聖鎌アダマス!」
ミリアの手には鎌が握らている。その鎌をレオンへと振りかざすミリア。
レオン「くらうわけには!」
パラシュを構えなおし防御しようとするレオン。
ミリア「馬鹿ね!」

ザシュ!

アダマスによる一撃がレオンの体に刻まれる。その攻撃はまるでパラシュをすり抜けるように行われた。
レオン「ぐっ!そうか…」
聖鎌アダマスは狙った地点に攻撃することができる。その攻撃にはどんな防御も無意味なのだ。
ミリア「聖器の特性も忘れるなんてね…もう終わりよレオン!」
アダマスによる不意の一撃によりパラシュが消える。その場に膝をつくレオン。
ラインハルト「どうやらミリアの勝ちみたいですね」
アーガン「レオン…」
ミリア「さぁ、さっさと降参しなさい!そしてシュルツ・セイバー№1の座を返上しなさい!」
レオン「おれは…」
体に力を込め、立ち上がるレオン。
レオン「こんなところで立ち止まるわけにはいかない!」
両手を上げ、集中するレオン。
レオン「メイネ・マシェト・フュア・ディン・ケーニヒ!(我が力は王のために!)」
レオンの手の中に光り輝く剣が出現する。
レオン「聖剣エクスカリバー!」
ミリア「シュルツ・セイバー№1である証…」
レオン「はぁぁ!」
エクスカリバーを手にミリアに斬りかかるレオン。
ミリア「聖盾イージス!」

ガキン!

レオン「な…に!?」
イージスにより受け止められるエクスカリバー。
ミリア「レオン。あなたの力は所詮その程度!その称号はあなたにふさわしくないのよ!聖鎌アダマス!」
盾を消し、アダマスにより攻撃を仕掛けるミリア。
レオン「ぐぁぁぁ!」
アダマスによる攻撃で倒れ込むレオン。
ラインハルト「レオン…彼はエクスカリバーの力をほとんど引き出せてはいない…」
アーガン「そのようだな…」
ラインハルト「聖剣エクスカリバーは聖国内では無類の力を発揮する聖剣。だがそれは聖国を守らなければならないという状況で発揮する力だ」
アーガン「騎士戦ではその力はまるで発揮されないわけか…」
ラインハルト「そういうことですね…」
ミリア「終わりだな。」
ディサイブ「レオン・ケーンズ、戦闘続行は不可能とみなし…」
ディサイブがミリアの勝利宣言を行おうとしたその時…
レオン「ま…まだだ…」
立ち上がるレオン。
ミリア「まだ立ち上がるのか…レオン。だがそんな状態で何ができる!」
レオン「俺は…立ち止まるわけにはいかない…殿下や師匠…そしてこの国に生きる人々…そのすべてを守り抜くんだ…」
ミリア「そんな状況で何を言っている!レオン、お前にそんな力はないんだ!おとなしく敗北を認めろ!」
レオン「俺は…」

そうだ。俺はあの時から聖国最強の騎士でいなければならないという考えに捕らわれていた…だけど!今は違う…今ならわかる!ミリアに勝てないのは俺の意思の弱さだ。自分の立場を守らなければならないという…この考え。それが間違えだったんだ。俺は…俺の本当の想いは!

レオン「そうだ…俺は最強じゃなくてもいい…」
ミリア「何を言っている?」
レオン「大事なのはこの国に生きる人々を守れる力…それがあれば俺は満足だ!だから!」
レオンの持つエクスカリバーが光輝く。
レオン「エクスカリバーよ!俺に…この小さな思いをかなえるだけの力を!」
ミリア「なんだ!?」
激しい光に包まれるエクスカリバー。光はエクスカリバーへと集束していく。そして…
レオン「これが…俺のエクスカリバー…最強である力じゃない…人々を守るための剣だ!」
レオンの手に握られるエクスカリバーはその姿を変えていた。
ラインハルト「エクスカリバーが!?」
アーガン「形を変えただと!?」
ディサイブ「今までこんなことは1度もない…レオン…そなたの想いはそれほどの力を…」
その事態に驚く3人。
ミリア「なんで!?エクスカリバーが!?」
ミリアも同じく驚いていた。
レオン「これが俺のエクスカリバー!『エクスカリバー・セーベスト』!」
ミリア「だ、だが無駄よ!聖鎌アダマス!」
アダマスによりレオンに攻撃を仕掛けようとするミリア。

パキン

ミリア「えっ!?」
突如アダマスが砕け散る。
レオン「無駄だ、ミリア。『エクスカリバー・セーベスト』はどんな攻撃も許さない。護るための剣だ」
ミリア「そんな…」
剣を構えミリアに突きつけるレオン。
レオン「お前のおかげで気づけたよ。俺の…自分の想いにな」
ミリア「何をいって…」
レオン「もうお前に俺に勝つ術はない。」
ミリア「くっ…(くやしいけどレオンのいうとおりね。今のレオンに勝てる気がしない…)」
ミリアはあきらめたように自身の負けを認める。
ミリア「わかったわ…私の負けよ。認めるわ…レオン。あなたがシュルツ・セイバーの№1よ」
レオン「ありがとう、ミリア」
ミリア「で、でも勘違いしないでよね!またあなたが不甲斐なくなったらまたすぐ私がその地位を脅かすわよ!」
そう言ってミリアは剣闘場を後にした。

ラインハルト「レオン」
レオン「ラインハルト卿…」
ラインハルト「今のお前なら私を超えることもできるかもしれないな。期待している」
アーガン「よもやエクスカリバーを進化させるとは思わなかったぞ、レオン」
レオン「それは…みんなの助言があってこそです。これからも精進していきます。そして、殿下」
ディサイブ「なんだ?」
レオン「俺は殿下も含め、この国の人々を守るためもっと力をつけます!これからもよろしくお願いします」
ディサイブ「あぁ。たのんだぞレオン」

新たな力『エクスカリバー・セーベスト』を手に入れた彼は守護騎士として名をはせていくことになる。
肩書に捕らわれず、自身の想いを理解したレオン。
彼はラウズレイ王国の人々を守るためこれからも力をつけていくだろう。

SIDE:L(レオン)   Fin

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最終更新:2017年05月23日 21:58