~飛行戦艦イミタティオン~
ガガガ!!
激しい音を立て複数の作業員が戦艦に改修作業を行っている。
きゅっぱ「まさか
シュウにこれだけの人脈があったとはね」
イミタティオンは今、とある都市にいた。そこの施設で改修作業が行われているのであった。
シュウ「私には大した人脈はありませんよ。これも私のパトロンの人脈です」
きゅっぱ「そうかい」
シュウのパトロン(支援者)。それがいったい何者なのかは気になるが、シュウがその人物のことを話すとは思えない。
無駄な問答はしない主義のきゅっぱはパトロンについての質問はしないのであった。
シュウ「あぁ、それと」
きゅっぱ「なんだい?」
シュウ「ここでの改修作業が終わり次第、イミタティオンの操縦員、および整備員が到着する予定です。これからはあなた1人に艦の操縦を任せる必要はなくなります。これで少しはあなたの負担も減るでしょう」
きゅっぱ「…(それだけの人員を急遽集めることができるなんて…いや、もしかして前から計画していたのか?)」
シュウ「これも私の力ではありませんよ」
きゅっぱの考えを読み取ったかのように答えるシュウ。
シュウ「この戦艦を手に入れられたのも偶然。今回その人員を確保できたのもパトロンの力があってこそです」
きゅっぱ「そうかい。でもあたしの負担を減らしてくれるっていうなら大歓迎だね」
シュウ「きゅっぱ。あなたの力は頼りにしています。これからもよろしく頼みますよ」
きゅっぱ「どうせ行く当てもないんだ。あんたがあたしを必要とするっていうのなら力になるさ」
そういうときゅっぱはその場を後にした。
シュウ(きゅっぱ…思わずして彼女が力になってくれたのは助かりました。彼女やウルズ…この時代で私の力となってくれる存在は多くはありません。かといって今、表舞台に立つわけにもいきませんからね。私の目的…それを達成するためにも今はできることをしていくとしましょう。)
~イミタティオン甲板~
甲板へと来たきゅっぱ。そこには甲板の端の柵の近くで遠くを見つめるようなウルズの姿があった。
ウルズ「ん?」
きゅっぱが来たことに気づいたウルズ。
ウルズ「よう、きゅっぱ!どうした?」
きゅっぱ「特にようはないさ。なんとなく来ただけさ」
ウルズ「そうか。まぁ今はしばしの休息だからな。お前もゆっくり体を休めろよ」
きゅっぱ「そうさせてもらうよ」
きゅっぱはウルズの隣へと歩み寄り、柵に肘をかけ遠くを見る。
きゅっぱ(ここまでいろいろなことがあったな…まさか秘密諜報部から自分が居なくなるんなんて思いもしなかった)
遠くを見据えながら自身の過去を見つめなおすきゅっぱ。
きゅっぱ(元より身寄りがなかったあたしにはどんな環境だろうと秘密諜報部が居場所だった。任務に生きることがあたしの人生…そう思っていた)
だがそれは一変した。Nによる秘密諜報員の抹殺事件。なんとかその難を逃れたきゅっぱ。だがそれをきっかけに秘密諜報部は解体。生き残ったきゅっぱは自身の居場所をなくしてしまう。
それから彼女はNの手からきゅっぱを助け出したウルズと共にシュウの元へ身を寄せることになったのだ。
きゅっぱ(ここがあたしの新しい居場所…ね。そういえば…)
きゅっぱはウルズに対し気になることがあった。いい機会なので彼に質問をぶつけるきゅっぱ。
きゅっぱ「ウルズ。あんたはどうしてシュウと行動を共にしているんだい?」
ウルズがシュウによってNの元から連れ出されたのは以前聞いていたので知っている。その恩を返すためにウルズはシュウと共にしているのだろうか。
ウルズ「シュウに助けてもらった恩もあるが…」
きゅっぱ「それだけじゃあないのか?」
ウルズ「今はな」
きゅっぱ「というと?」
ウルズ「昴…あいつを元に戻すためだ」
きゅっぱ「あの女か…」
ウルズが連れてきた女性。彼女は自室から一歩も外に出ない。まるで人形のように。
ウルズ「あいつがああなってしまったのはNの実験によるものだ。以前Nに従っていた俺にもその責任の一端があるからな。昴をもとに戻すためには俺1人の力ではどうしようもない。シュウならなにかしらその方法を見つけてくれるかもしれないからな」
きゅっぱ「なるほどね」
確かにシュウなら昴を元に戻す方法を見つけるかもしれない。きゅっぱはウルズの考えに納得する。
きゅっぱ「あいつならその方法を見つけるかもな」
ウルズ「そういうことだ。それに…」
きゅっぱ「なんだ?」
ウルズ「俺も他に行く当てもないからな。なりいきって面が一番強いかもしれないな」
きゅっぱ「なりいきね…」
ウルズの話を聞いたきゅっぱは自身の境遇とウルズの境遇を重ねる。
きゅっぱ(シュウに助けられ成り行きでシュウの元にいる。あたしもウルズも同じようなものなのかもしれないな…でも)
きゅっぱ「成り行きだろうとそれがあんたの選んだ道なんだろ?」
ウルズ「そうさ。そのことについては後悔していない。それはお前も同じなんじゃないか?」
きゅっぱ「ふっ。自分で選んだ道だ。後悔なんてするはずないだろ。」
ウルズ「そうだな。じゃあ、おれは昴の様子を見てくるぜ」
ウルズはその場を後にする。
きゅっぱ(そうだ。あたしは後悔なんてしない。自分が生きてきた結果を。)
それを後悔すればそれは自身の否定になる。そんなことはしたくない。自分が必死に生きてきた結果が今なのだから。
きゅっぱ(流されてきた結果が今なのかもしれない…でも、それでも!)
前を見据えるきゅっぱ。その瞳には強い決意が見える。
きゅっぱ(あたしは自分を否定しない!今までも!これからも!)
これがきゅっぱの生き方なのであろう。自分で決めたこと…それがどんな結果をもたらそうと彼女はそれを受け入れる。
自分の未来を掴むために!
SIDE:9(98(きゅっぱ)) Fin
最終更新:2017年06月13日 20:24