~ミストラル号~
十也たちの車両の乗客たちは全員後方車両へと非難していた。
十也「さーてあとはこいつをどうするか」
十也たちがが見据える方向、車両の前方には駆動鎧が立ち尽くしていた。
駆動鎧「…」
スライ「列車の異常の原因を突き止めるには運転席にいかなければならないだろう」
トニー「ええ。このまま動かないでもらえると助かるのですが…」
スライが足を踏みだす。
ピピピ
駆動鎧から機械音が発せられる。
駆動鎧「コレヨリ迎撃モードニ移行シマス」
駆動鎧の目が光る。
スライ「ちっ。やっぱりやるしかないか」
電車内の通路は人が2人通れるほどの広さである。激しい行動をとることを考えれば3人同時に戦うというのは難しい状況だ。
トニー「この狭さが厄介ですね」
スライ「あぁ。本当ならトニーの能力で一気に動きを止めてしまいたいところだが…」
窓の外を見るスライ。外の景色は目にもとまらぬ速さで過ぎていく。
トニー「この状況で能力を使うのは危険です」
スライ「あぁ。窓ガラスを破壊するのは避けたいな」
十也「2人とももしかして能力者なのか?」
トニー「そうです。ですが私の能力はこの状況で使うのは…」
スライ「俺が行こう」
2人の前に出るスライ。
十也「気をつけろよ!」
トニー「スライ!お気をつけて!」
駆動鎧「ターゲット確認」
駆動鎧がスライへ近づいてくる。
スライ「いくぞ!」
構えを取るスライ。
駆動鎧が拳を振り下ろす。
その拳をいともたやすくいなすスライ。
スライ「ここだ!」
駆動鎧の足元に攻撃を浴びせる。
バランスを崩し倒れこむ駆動鎧。
十也「すげー!何かの拳法か!」
トニー「これが私たちの流派、果倉部流です!」
スライ「能力を使うまでもないな」
駆動鎧が立ち上がる。
再びスライに向かって拳を振り下ろす。
スライ「何度きても…」
再びスライは攻撃をいなそうとする。だが
スライ「何!?」
駆動鎧の腕の装甲が展開する。その中には何か筒状の突起物がみえる。
突起物から突如炎が発せられる。まるで火炎放射器だ。
トニー「スライ!」
すかさず防御体勢をとるスライ。
スライ「くっ!」
駆動鎧のパンチがスライに直撃する。
スライ「ぐっ!」
後方に吹き飛ばされるスライ。
十也「大丈夫か!?」
スライ「あぁ。だがさすが最新鋭の駆動鎧といったとこか」
トニー「他にも何かギミックをもっているかも知れません」
スライ「十也とかいったな」
十也「あぁ!」
スライ「ここは俺たち2人がくいとめる!お前は運転席に向かえ!」
十也「でも…」
トニー「安心してください。私たちなら大丈夫です。それよりも早く止めないと大変なことになりますよ!頼みました!」
十也「わかった」
スライ「いくぞトニー!」
トニー「はい!」
駆動鎧と対峙する2人。駆動鎧が攻撃する。その攻撃を2人はいなし、カウンターする。
スライ「いまだ行け!十也!」
トニー「お願いします!」
十也「あぁ!わかったぜ!」
前の車両への扉を進む十也。
スライ「さーて!トニー!」
トニー「えぇ!私たちの力を見せてやりましょう!」
スライ「この駆動鎧野郎にな!」
~E.G.Oミストラルシティ支部・局長室~
ネオ「緊急事態だ!ミストラル号が暴走している!原因は不明だ!現在の速度から2時間後に駅ターミナルへ到達することが予想される。なんとしてもターミナル到達前にミストラル号を止めるんだ!各隊員出撃せよ!」
ネオが高らかに隊員に支持をだす。正座で。
ネオ「ね、ねぇカレン君?」
カレン「なんだ?」
ネオ「緊急事態ですよ?」
カレン「あぁわかっている。私もこれから現場へ向かう」
ネオ「いやそうじゃなくてね」
チラッと自分の足元をみるネオ。
カレン「お前の正座のことか?」
ネオ「おぉ!わかってくれたんだね!さすがカレン君!よっ副局長!」
カレン「調子に乗るな!」
ネオ「ひぇ!」ビクッ
カレン「緊急事態だからといってお前が反省しなくてもいいということにはならない。そのまま正座していろ!私は現場に向かう!」
ネオ「い、いってらっしゃーい」
カレンに手を振るネオ。
カレン「あっ」
何かを思い出し振り返りネオのほうを見るカレン。
カレン「ちなみにお前がちゃんと正座を続けているかどうか後で監視カメラを確認させてもらうからな」
ネオ「そ、そんな~」
~ミストラル号・後方車両~
前方の車両から人が押し寄せ混雑する後方車両。
???「なにやらただならない事態みたいだな」
パニック状態の乗客の中で男は至って冷静だった。
???(上はこの事態を予期していたのか…いや、まさかな)
男は数時間前のことを思い出していた。
E.G.Oミストラルシティ支部の地下にある秘密諜報部「無機室」。彼はそこである任務を受けていた。
『本日行われるミストラルベースの記念祭に参加し、ミストラル号に試乗せよ』
男の名はにろく。E.G.O秘密諜報部の構成員である。
にろく(俺は俺の仕事をするとしよう)
にろくは自分の席に設置されている電車の端末に手をかざす。
すると端末にプラグが出現する。そこに自分の電子端末を接続する。
にろく(メインコンピュータはウイルスにかかっている様子はない…)
にろくは他の情報もチェックする。
にろく(これは駆動鎧…こんなものまで搭載されているのか…)
駆動鎧のデータを見ていたにろくは異変に気づく。
にろく(なんだ?駆動鎧の状態表示データ…全機稼働中?)
にろく「そうかなるほどな」
にろく(考えられる選択肢は2つ。それを確かめるには駆動鎧と直接対峙する必要があるな)
席を立つにろく。
乗客の間をすりぬけていくにろく。彼はそのまま前方車両のほうへと姿を消していった。
~ミストラルシティ・マンション屋上~
EGO隊員「到達予定時刻まで残り1分!」
カレン「各員!準備はいいな!」
隊員たち「問題ありません!」
カレンたちE.G.O部隊はミストラル号の通過地点を先回りしていた。隊員たちの手には狙撃用ライフルが握られている。
EGO隊員「カレン副局長!目標到達まで20秒です!」
カレン「いいか!ミストラル号の車体にはあてるなよ!足を狙え!乗客への被害はだすな!」
EGO隊員「ラジャー!」
EGO隊員「5秒!」
遠くにミストラル号の姿が見える。見る見るうちに近づいてくる。とてつもない速さだ。
EGO隊員「3、2、1」
カレン「いまだ!いけー!!」
バンバンバン!
隊員たちの狙撃銃から銃弾が発射される。ミストラル号の車輪にむかって発射される銃弾。
狙撃銃の銃弾は特殊なものであった。高速で動く物体を止めるために開発された銃弾。
スローバレットと呼ばれるその銃弾は円形状の高速回転物体に打ち込むことでその重量を徐々に増加させることで
減速させ対象の動きを止めるというものであった。
カレン「きまったな!」
銃弾の命中を確信するカレン。しかし銃弾が命中することはなかった。
EGO隊員「副局長!すべての銃弾が当たっていません!」
カレン「なに!?どういうことだ!」
EGO隊員「どうやらミストラル号には対銃撃用のジャミングシールドが張られているようです!」
カレン「そんなものカタログスペックには書かれていなかったぞ!くそ!作戦失敗だ」ドン!
壁をたたくカレン。
ピピピ
カレン「なんだ?」
カレンの端末に通信が入る。
ネオ「やぁ首尾はどうだい?」
カレン「すまない…失敗だ。どうする?あれを止める術はあるのか?このままでは…」
ネオ「いや~まいったね。ハハハハ!」
カレン「何を笑ってるバカ長官!」
カレンの怒号にびびるネオ。
ネオ「ご、ごめんごめん。でも心配することはないさ。こんなこともあろうかと上のほうに掛け合って応援を要請してあるからね」
カレン「応援だと?今から駆けつけて間に合うものか!」
ネオ「大丈夫さ!彼らはすでにあそこにいるみたいだからね」
カレン「あそこ?まさか!」
~ミストラル号・車内~
十也「次の車両を抜ければ運転室か!」
電車内の案内標識を確認する十也。十也は先頭車両の扉を開ける。
十也「なに!?」
そこには2体の駆動鎧がいた。
駆動鎧「ターゲット確認」
駆動鎧の目が光る。
十也「やっぱりすんなりと運転室にはたどり着かせてもらえないか!」
駆動鎧の1体が十也に襲い掛かる。
十也「いくぜ!我が身を覆え!疾風の鎧!『コート・オブ・ブラスト』!」
その掛け声とともに十也の体を風が包み込む。
十也「うぉぉ!!」
風の中から鎧に身を包み十也が現れる。手にした槍で駆動鎧の攻撃を受け止める。
十也「なんてパワーだ!このままじゃ押し負ける!」
距離をとる十也。しかし駆動鎧は背中のブースターを噴射し一気に距離をつめに来る。
さらに駆動鎧は手の甲の部分から刃渡り50cmほどの剣を出す。
その剣は赤熱しており対象を焼ききることができそうだ。本来は鉄を焼き切り、人命救助や脱出のために使うのであろう。
そんな剣を構え突進してくる駆動鎧。
十也「ちっ!あんなのくらったら体が2つになっちまう!」
距離をつめ腕を上げ、剣を振り下ろす駆動鎧。
十也「『ブラスト・デバスター』!」
次の瞬間、十也の姿が消えた。駆動鎧の剣は床に突き刺さっている。
十也「おりゃぁぁ!」
駆動鎧の後ろから槍を突き出す十也。
ガガン!
駆動鎧の背中に槍がささる。床に串刺しにされる駆動鎧。
十也「やはり中に人は入っていないか。ふぅ」
安堵する十也。
十也「さてと残りは1体だな!」
床に刺さった槍を抜こうとする十也。
十也「あ、あれ?」
しかし深く突き刺さった槍は抜けない。
もう1体の駆動鎧が十也めがけて突撃してくる。
十也「わわ!ま、まった!『ブラスト・デバスター』!」
駆動鎧の攻撃が空を切る。
十也「あ、あぶねぇ!」
十也は運転室の入り口前にいた。
十也「このまま運転室に…」
ガチャ、ガチャガチャ
運転室の扉は開かない。
十也「こいつを倒さなきゃ運転室へは行けないってことか」
駆動鎧「…ピッ、ピピピ」
十也「なんだ?」
駆動鎧から赤外線レーザーが車両内に張り巡らせられる。
十也「なんだこれ?対象感知用の赤外線レーザー?こんなもの張ったところで!」
十也「『ブラスト・デバスター』!」
姿を消す十也。
そして突如駆動鎧の背後に現れる!
十也「くらえ!」
拳を握り殴りかかる十也。しかし駆動鎧は十也の攻撃をよけ、反撃のパンチを食らわした。
十也「な、なに?」
吹き飛ばされる十也。
駆動鎧「対象ノデータヲ確認。対象ノ能力ハ高速移動トオモワレマス」
十也「ちっ!俺の動きを捉えるための感知センサーか!」
そう十也の能力は高速移動。高速移動による空気摩擦に耐えるための鎧。それが『コート・オブ・ブラスト』である。
駆動鎧「対象ニ有効ナ攻撃ヲ開始シマス」
駆動鎧は前方に電気の網を展開した。
十也「電磁ネットか?だが近づかなければ…」
ジジジ…
十也「なんだ?徐々に近づいてきている!やばいぞ!いったん後に…」
後ろを見るとそちらからも電磁ネットが迫ってきている。
両側から迫る電磁ネット。
十也「万事休すか…」
電磁ネットに捕らわれる十也。十也の体に電流が浴びせられる。
十也「うわぁぁ!!」
バリバリバリ
あまりの衝撃に意識を失う十也。とともに『コート・オブ・ブラスト』が解除される。
駆動鎧「対象ノ沈黙ヲ確認。システム通常モードヘ…ピピピ!」
駆動鎧のセンサーに反応がある。十也は意識がない。ではだれが?
???「そろそろ俺の出番かな?ヒーローは遅れてやってくるもんだぜ」
駆動鎧が声のするほうに反応する。
そこには壁に寄りかかり腕を組む男がいた。その顔には龍を模したような仮面を被っている。
駆動鎧「排除スル」
駆動鎧は電磁ネットを展開する。
???「逃げ場はない…ね。だが…」
赤い長髪をなびかせ仮面の男は足を踏み出す。電磁ネットに向かって。
???「ヒーローに後退はないぜ」
男の体が電磁ネットに触れる。しかし男は何事もなかったかのように電磁ネットをすり抜ける。
駆動鎧「ピピピ」
駆動鎧は手の甲から赤熱の剣を展開する。背中のブースターを展開し、仮面の男に突撃する。
???「コードチェンジ!」
男の掛け声とともに男の黒い服が真紅に燃える炎のように赤みを増す。同時に彼の長髪も赤く輝く。
男は突撃してくる駆動鎧に向かって片手を突き出す。
駆動鎧は仮面の男の突き出した拳に向かって剣を振りおろす。男の拳が赤熱した剣により溶断されると思われた。
しかし男は無傷だ。攻撃した駆動鎧の剣が粉々になっている。
仮面の男は続けて駆動鎧の顔にパンチを叩き込む。その一撃で床に叩きつけられ駆動鎧の顔は粉々になり機能を停止した。
???「どうだい?俺の一撃は効くだろう?」
十也「う、う~ん」
十也が目を覚ますとそこには仮面の男が立っていた。その下には顔を砕かれ機能を停止した駆動鎧が。
???「おっ?ちょうど目を覚ましたようだな。まったく世話の焼ける野郎だな」
十也「あんたはいったい?」
???「今は説明している時間はない。タイムリミットはもう少しだ。急げ!」
十也「えっ、あっ、わかった!」
十也は運転室へと入っていった。
???「さーて俺の出番はこんなところかな。あとはたのんだぜ天十也!」
~~~
トニー「よし!やりました!」
スライ「あぁ!」
スライとトニーの連携により倒れる駆動鎧。
スライ「これで」
ピーピー!
前方の車両から2体の駆動鎧が現れる。
トニー「まだいるんですか!」
スライ「ちっ!」
~~~
前方車両に向かうにろくの電子端末に通信が入る。
「駆動鎧の中には人が入っていない」
誰からの通信だ?だがこれが本当なら
にろく「そういうことか。なら駆動鎧を止めることはできる!」
にろくが次の車両の扉を開ける。
にろく「なッ!」
扉を閉めるにろく。
にろく「なんであいつらがここに?」
その車両では見覚えのある2人が駆動鎧と戦っていた。
トニーとスライ、2人は駆動鎧との連戦で消耗していた。
そっと戦況を覗き込むにろく。
にろく「しょうがない。助けてやるか」
にろくは電車のシステムにアクセスする。
~~~
スライ「くそっ!さすがに体力が…」
トニー「スライ!あれを!」
トニーが指差す方を見るとそこには電光掲示板が。
『駆動鎧の動きを止めろ!一瞬でいい!』
スライ「なんだ?どういうことだ?」
トニー「でもやってみましょう!このまま戦い続けては…」
スライ「あぁ!そうだな!一か八か!シャイニーマジック!『ドッペル・ゲンガー』!」
駆動鎧が分身に襲い掛かる。駆動鎧の攻撃は空振りする。その隙をついた一瞬!車両の後方から全身を布切れで覆った男が駆動鎧とスライたちの間を駆け抜けていった。
直後、駆動鎧は機能を停止した。
スライ「うまくいったのか?」
トニー「みたいですね。でも今の人は一体…」
~~~
にろく「ふ~。うまくいったな」
にろくは体を覆っていた布切れをゴミ箱に投げ捨てる。
にろく「やはり駆動鎧にウイルスが仕込まれていたのか」
手に持った電子端末を見るにろく。
にろく「だがこのタイプのウイルスは勝手には作動しない。だれかこれを起動したものがいるはずだ」
~~~
ガチャ
運転室に入る十也
十也「これは!」
運転席には駆動鎧が座っていた。どうやらこいつがミストラル号を操作しているようだ。
駆動鎧は十也に目もくれず操作を続けている。
十也「もう『コート・オブ・ブラスト』を使うだけの余力はない…。どうやってこいつを運転席からどけさせれば…」
考え込む十也。
十也「だめだ!考えてるあいだにも時間は過ぎていく!何か使えるものは…」
あたりを見渡す十也。
十也「んっ?あのボタン」
そのボタンには緊急停止と表記されている。
十也「もしかしてこれを押せばとまるんじゃあないのか!よし!」
ボタンに手を伸ばす十也。ポチッ
アナウンス「緊急停止システムが作動しました。乗客の皆様は衝撃に備えてください」
十也「よし!」
安心したのもつかの間、駆動鎧は運転をやめ十也の方に向かってくる。
十也「や、やばい!」
十也にむかって拳を振り下ろす駆動鎧。
十也「う、うわぁぁ!!」
手で顔を覆いガードしようとする十也。
その時!十也の右腕に痣が浮かび上がる。光り輝く痣。
十也「これは!?なんだ体から力があふれてくる!これなら行ける!『コート・オブ・ブラスト』!てりゃああ!!」
駆動鎧の顔を槍が貫く。そのまま駆動鎧は機能を停止した。
十也「や、やった!でも今のは一体…俺の失われた記憶と何か関係が…」
~~~
十也たちの活躍によりミストラル号暴走事件は悲惨な結果を回避することができた。
事件後、十也と果倉部道場はE.G.Oミストラルシティ支部から表彰を受けた。
様々な謎を残しつつ、この事件は幕を閉じる。
???「くっくっくっ…間違いないこれも奴の影響…特異点の力か」
to be continued
最終更新:2016年09月04日 23:10