ラウズレイ王国武術大会が始まった。大会に集まった強者たちによるバトルロイヤル。
この大人数の中で勝ち残るにはいかに敵の数を減らすか。いかに労力を使わずに。
そうなるとこの状況で狙われるものは絞られてくる。
ティム「…」
シュルツ・セイバーの№5ティム・クラインを取り囲む大会参加者たち。
参加者A「へっへっへっ!まずは体の弱そうな騎士さんよ!あんたを倒させてもらうぜ!」
ティム「1対多数とは…情けない…」
参加者B「なんとでもいいな!これが合理的な考えってやつだぜ!いくぜー!」
参加者たちがティムに襲い掛かる。
ティム「ふぅ…仕方が…ないな」
1対多の不利な状況にまったく焦りを見せないティム。
ティム「メイネ・マシェト・フュア・ディン・ケーニヒ!(我が力は王のために!)」
ティムが何らかの術式を唱える。
参加者「なんだ!?」
さきほどまで何も持っていなかったティムの手に大きな剣が出現する。
ティム「…ふん!」
長さ3メートルはあろうかという大剣を軽々と振り回すティム。その一撃によりティムに襲い掛かった参加者たちは吹き飛ばされる。
ティム「我がアロンダイトの前に…露と消えよ…」
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アーガン「ふははは!ぬるい!ぬるいぞ!」
アーガンの前に膝をつく参加者たち。彼かのからだはぼろぼろだ。
アーガン「だれか骨のある奴はいないのか?これでは張り合いがないぞ!」
ボルク「おれが相手をしてやるよ!」
アーガンの前に立ちはだかるボルク。そう彼もこの大会に参加していたのだ。
アーガン「ほぅ。少しは骨のありそうなやつだな!いいだろう!いざ!」
ボルク「いい気になっていられるのも今のうちだぜ!」
ぶつかり合うボルクとアーガン。互いに一歩も譲らぬ戦いを続ける。
ボルク「いいねぇ!あんた最高に熱いぜ!おれもたぎってきたぜぇ!」
アーガン「他の連中とは違うようだな!貴殿となら思う存分戦うことができる!」
ボルク「炎迅全開!『アクセルフレイム』!」
ボルクの気合が炎として具現化する。
アーガン「メイネ・マシェト・フュア・ディン・ケーニヒ!(我が力は王のために!)」
アーガンが右手を上に掲げる。すると彼の手に槍が出現する。
アーガン「我が槍ゲイボルグ!その力を身をもってうけるがいい!!
ボルク「さっきよりも強力なプレッシャー!だからこそ俺は燃えるぜぇ!」
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ジェイド「君はなかなか骨がありそうですね」
トニー「いきます!『ライトニングボルト』!」
空からジェイドに向かって雷が降り注ぐ。
ジェイド「なるほど。雷を操る能力ですか」
とたんジェイドに直撃する雷。
トニー「どうです!」
ジェイド「ふ~。危ないところでした」
ジェイドは無傷だ。手には先ほどまでなかった鎌を持っている。
トニー「僕の雷がきかない!?」
ジェイド「いいえ。あなたの攻撃は確かに僕にあたっていましたよ。僕の聖鎌(せいれん)アダマスにね」
トニー「くっ!まさかこの人も以前戦ったあの人と同じような能力を…」
ジェイド「今度はこちらの番です!ふん!」
手にした鎌を振り下ろすジェイド。トニーは距離をとる。しかし
トニー「えっ!?」
トニーの体に傷が。確かに避けたはずなのに。ダメージだけが襲ってくる。
ジェイド「ほらほらいきますよ」
鎌を振り回すジェイド。
トニー「くっ!」ザシュザシュ!
どんなに攻撃を避けたつもりでもダメージが入る。一体なぜ?疑問を考えてる暇もない。とそのとき
スライ「選手交代だ!俺がお前の相手をする!」
トニー「スライ!でも相手がどんな能力かもわからないのに…」
スライ「俺に考えがある!」
ジェイド「ほぅ。いいでしょう。シュルツ・セイバーの№2ジェイド・マグナイド。いざ!」
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十也「てりゃーー!!」
鎧を纏い戦う十也。順調に周囲の参加者を蹴散らしていく。
ティム「その鎧…お前も騎士か…」
十也の前に現れたティム。
十也「騎士か!それもいいかもな!地を駆ける騎士!大地の騎士なんてな!」
ティム「ふっ…おもしろいやつだ。だが手加減は…しない!」
手に持った大剣を構えるティム。
ティム「我がアロンダイトを…受けよ」
振り下ろされる大剣。
十也「そんな攻撃!『ブラスト・デバスター』!」
ティム「なに?…消えた?」
十也の高速移動は目にもとまらぬ速さ。聖国の騎士といえどもその速度を捕らえるのは至難の業だ。
十也「ここだー!くらえー!」
ティム「私の背後に!?」
突き立てられる槍。その一撃がティムの鎧に直撃する。
ティム「ぐはっ!」
十也「どうだ!これが俺の力だ!」
ティム「目にもとまらぬ速さ…。ならば…」
目を閉じるティム。
十也「何をする気だ?」
ティム「我がアロンダイトの能力を…見せよう…はぁ!」
次の瞬間、目を見開いたティム。そして手に持つ大剣アロンダイトを天に掲げる。
ティム「アロンダイトよ!その真の姿を開放せよ!」
その大剣は見る見る大きくなっていく。3メートルほどの大剣が10メートルはあろうかというほどの大きさの剣へ変貌する。
十也「な、なんだそれ!?」
あまりの衝撃にあっけにとられる十也。
ティム「これぞ…我が能力聖剣アロンダイト…。すべてを切り裂く…剣(つるぎ)だ」
10メートル級の大剣が横になぎ払われる。周囲の参加者たちはわけもわからぬままアロンダイトに吹き飛ばされていく。
十也「あんなのあたったら無事じゃすまないぜ!『ブラスト・デバスター』!」
姿を消す十也。ティムが大剣でなぎ払う攻撃を終えた隙、そこを狙う!それが彼の作戦だ。
十也「いまだ!」
空中に姿を現す十也。しかしこの瞬間を狙っていたのは十也だけではなかった。
ティム「やはり…くると思ったぞ」
十也「なに!?」
ティムは手にした大剣の刃を上に向け振り上げる。10メートルもの大剣を振るっているとは思えない速度の切り返しだ。
ティム「この一撃…空中ではかわせない」
十也「くっ!」
槍を横に構え大剣を受け止めようとする。しかしアロンダイトの大きさは伊達ではない。それに見合うだけの破壊力を兼ね備えているのだ。
十也「ぐぁぁ!!」
槍は弾き飛ばされ、アロンダイトの一撃が炸裂する。その衝撃で弾き飛ばされる十也。
ティム「少しは…やるようだが所詮は…その程度…だ」
十也「はぁはぁ…」
息も絶え絶え。今の一撃で倒れなかっただけでも奇跡に近い。
十也「このままでは…」
自分の能力。高速移動。十也はミストラル号の暴走事件で駆動鎧に自分の能力が簡単に破られてから自分の能力について考えていた。
十也(俺の能力は高速移動。でもそれって今の状態では足が速いの延長だよな。それではダメなんだ。能力は使いよう。だから俺の能力だって!)
ティム「終わりだ。」
十也(俺が高速移動できるのは足が速くなっているわけではない気がする。おれの能力の仕組み。それを考えれば…)
ティムの大剣(3メートルほどに戻ったアロンダイト)が十也に振り下ろされる。
十也「そうか!もしかしたら!」
突如ティムの大剣がはじかれる。いやはじかれたのはティムの腕だ。
ティム「なに!?私の腕に攻撃を!?いったいだれが…」
十也「俺だ!」
ティム「ぼろぼろの状態で…どうやって?(こいつは高速移動を使っていない…何をした…)」
十也「うまくいったぜ!この使い方ならいける!」
ティム「所詮は虫の息…この一撃で!」
再びアロンダイトが振り下ろされる。
十也「くっ!たしかにおれは高速移動するぐらいの力は残っちゃいないが!でもこの使い方なら!」
両の腕に力を込める。
十也「『アクセル・アサルト』!」
ティム「奴の腕が消えた!?」
またしてもティムにダメージが入る。
ティム「くっ!…そうか…腕の動き…を加速させたのか!」
十也「そうだ!これが俺の新技!『アクセル・アサルト』!」
ティム「ただの高速移動使いだと思って…甘くみていたな」
十也「いくぜ!『アクセル・アサルト』!」
加速する攻撃。目にもとまらぬ速さの攻撃が繰り出される。
ティム「私の初速を上回る攻撃…。みごとだ…」
倒れるティム。
十也「やった…ぜ…。でも俺も…もう…限界だ…」
ドサッ
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ボルク「うぉぉぉ!!!」
アーガン「ぬぅぅ!!」
互いに一歩も譲らぬ激闘が繰り広げられている。
アーガン「ゲイボルグ!敵を貫け!」
ゲイボルグによる一突。だがその一突は30もの突きとなってボルクを襲う。
ボルク「まだまだぁ!」
30もの突きを受けてもボルクは全然ピンピンしている。
アーガン「ふははは!面白い!こんな強者が世界にはうじゃうじゃしていると思うと、昂ぶるぞ!」
2人の戦いはまだまだ続きそうだ。
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スライ「シャイニーマジック!『フォース・キャリア』!」
無数の光の結晶がジェイドに襲い掛かる。
ジェイド「無駄ですよ!聖鎌アダマス!」
スライ「やはり攻撃はとおらないか…」
ジェイド「さてあなたは僕を楽しませてくれますかね!今度はこちらから行きますよ!」
振りかぶられるアダマス。かわすスライ。しかし
スライ「くっ!」
スライの体に傷が。
ジェイド「どうですか?僕のアダマスは。」
スライ(こちらの攻撃は防がれる。よけても当たる攻撃…)
ジェイドの能力。それがわからないと勝ち目はない。何かヒントは…ふと、地面に落ちた光の結晶が目に入る。
スライ「これは…」
さきほどスライの攻撃『フォース・キャリア』によって生み出された光の結晶。それが刃物で切られたような形で落ちていた。
スライ(俺の攻撃は防がれたのではなく、すべて切り落とされていた…。しかし奴はそんな動きはしていない…そうか!もしや!)
スライ「見つけたぜ!お前を倒す糸口!シャイニーマジック!『スペリオル・ミラージュ』!」
ジェイド「なんだ?なにかかわったのか?」
場の状況に変化は見られない。
ジェイド「なんのつもりかわかりませんがいきますよ!」
鎌を振りかざす。スライはその攻撃をかわす。
ジェイド「無駄ですよ!」
先ほどのようにスライの体に傷が…
ジェイド「なに!?」
できなかった。ジェイドの回避不可の攻撃が当たらなかった。
スライ「いくぞ!シャイニーマジック!『フォース・キャリア』!」
ジェイド「一度効かなかった技をまた撃つとは!」
しかしジェイドの予想に反し、スライの攻撃は直撃する。
ジェイド「なんだと!?」
予想外の事態に慌てるジェイド。
スライ「やっとその顔から余裕が消えたな!」
ジェイド「なぜだ!?確かに君の攻撃をとらえたはずなのに…」
スライ「やはりな!お前は今俺の攻撃を捉えたと言った。つまりお前の能力はお前が認識した地点に発生する!その地点に攻撃を発生させる能力だ!」
ジェイド「ふっ…まさか僕の能力を見破るとはね。そう、僕の能力聖鎌アダマスは自分が決めた地点に攻撃を発生させる。だが…」
スライ「なんで俺に攻撃が当たらないか…だろ?」
ジェイド「えぇ。解せませんね。一体あなたは何をしたんです?」
スライ「お前の認識をずらしているのさ!」
ジェイド「認識をずらすだと?」
スライ「俺は光を操る!光の屈折力を変化させることでそれを可能とするのさ!」
ジェイドはスライの発言により理解した。自分が攻撃を発生させた地点にはスライは存在していなかったのだ。
スライの能力『スペリオル・ミラージュ』により本来の位置とは違う地点にスライの姿を認識していた。それが攻撃が当たらない理由。
ジェイド「なるほど。ならば!てぇぇやぁぁ!」
アダマスを振り回すジェイド。
ジェイド「認識がずれているというのならところかまわず攻撃を繰り出すのみ!アダマス!」
無数に繰り出される認識のずれなど関係ないと言わんばかりの攻撃。
スライ「ぐわぁぁ!!」
数多の斬撃がスライを襲う。
ジェイド「どうです?これならばよけられまい!」
スライ「そうだな。だがもらった!」
スライの声がジェイドの真下から聞こえる。なぜ?スライは確かに無効にいるのに?
真下からスライの一撃が炸裂する。至近距離での不意を突かれた一撃によろめくジェイド。
ジェイド「どういうこと…です?はぁはぁ…」
状況を呑み込めないジェイド。スライの強烈な一撃により息も絶え絶えだ。
スライ「『ドッペル・ゲンガー』。光による分身だ。」
ジェイド「なる…ほど。くっ」
ひざをつくジェイド。
ジェイド「どうやら僕の負けみたいだね。これ以上は君とは戦えそうにないよ。まさかこれほどの実力をもっていたとはおそれいったね。」
スライ「まだまだ俺たちは強くならなければいけないからな!」
繰り広げられる強者たちの激闘。その時は突如訪れた。
大臣「時間です!これにて予選は終了となる!」
大臣の一声により予選が終了された。ここで立ち残っていたものが決勝に出場となる。
大臣「無事立っているものは…」
会場を見渡す大臣。倒れていないものは…
大臣「全部で4人か」
アーガン、ボルク、スライ、トニーの4人である。彼らはこの激闘の中倒れることはなかった。
大臣「よし!それでは…」
大臣が言いかけたその時、一人の男がふらふらと立ち上がる。
大臣(たしかあやつは…ティムと戦っていた…本来ならば失格じゃがシュルツ・セイバーと互角に戦ったその実力に敬意を表してやるかの)
大臣「コホン!ではアーガン・クラム、ボルク、トニー、スライそして天十也の5人を決勝進出とする!各々明日の決勝にむけて十分に休息をとるように!」
こうして大会予選は幕を閉じたのであった。
そしてその夜。
~聖ラウズレイ王国・王宮~
聖王の玉座が設置されている謁見の間に集まる聖王とシュルツ・セイバーたち。
ジェイド「殿下。申し訳ありませんでした。シュルツ・セイバーの№2であるこの私が…」
膝をつき頭をさげるジェイドとティム。
ディサイブ「頭をあげよ。お前たち二人はよくやってくれた。ましてや今の状況では大会にも集中できまい。」
アーガン「そうだ。おぬしら2人は毎晩の任務で疲労もたまっておろう」
ジェイド「申し訳ありません。ですが今夜こそ騎士狩りの犯人を見つけ出して見せます!」
ティム「シュルツ・セイバーの名に懸けて!」
???「あまり無理はするなよ。貴殿らの体調は本調子ではないだろう」
聖王のよこに立つ騎士。彼こそが聖国最強の騎士シュルツ・セイバーの№1である。その名をラインハルト・シュナイズ。
ジェイド「ラインハルト卿、ありがたきお言葉です。しかしこの事件はなんとしても解決せねばなりません。この国のためにも一刻も早く!」
ラインハルト「その気概、私が心配するまでもなかったようだな。」
ジェイド「では我らは城下へと…」
ジェイドとティムは謁見の間を後にした。
聖ラウズレイ王国。聖王が納めるこの国で一体何が起きているのだろうか。
騎士狩りとはいったい…
to be continued
最終更新:2016年09月11日 23:00