夜が明け大会決勝当日を迎えたラウズレイ王国。
城下町の宿を出て王宮へと向かう十也たち。
王宮の広場につくとなにやら騒がしい雰囲気だ。何かあったのだろうか?
スライ「なにかあったのか?」
トニー「う~ん。なんだかただごとじゃなさそうですね」
十也「ちょっとあそこにいるやつに聞いてみるか!」
騎士の一人に話を聞いてみる十也たち。
騎士「申し訳ないが今は貴殿らに説明する時間はない。失礼する!」
急ぎ足で騎士はかけていった。状況が呑み込めず困惑する十也たち。そこへ大臣がやってきた。
大臣「おぉ~。そなたたちか!すまぬが今日の大会決勝は中止じゃ!」
十也「中止!?なんでだよ!」
大臣「大会を開いてる状況ではなくなったということじゃ」
スライ「この国でいったい何が起きている…?」
大臣「他国の人間であるそなたたちを巻き込むわけにはいかぬ。これは我が国の問題じゃ。よもやこのようなことになろうとは…」
焦りを隠せない大臣。なにかよほどのことがあったのだろう。
トニー「私たちで力になれることであれば教えてください!」
大臣「じゃ、じゃが…」
十也「のりかかった船だろ?なんだか大変なことになってるのにほっぽって帰るなんて後味悪いぜ!」
スライ「そうだな。」
大臣「…」
少し考えた後、大臣は十也たち3人を謁見の間に連れていくことを決意した。
~ラウズレイ王宮・謁見の間~
大臣「この非常事態。本来なら我が国のもので決着をつけるのが筋ですが、今はそんなことも言っておれませぬ」」
ディサイブ「そうだな。客人たちよ。礼をいう。」
スライ「まさか王様に感謝されるとはな。」
トニー「ス、スライ!失礼ですよ!」
ディサイブ「そなたらほどの力があるものが我々の味方になってくれるのは心強いことだ。」
十也「それでいったい何が起きているのか説明してくれよ」
ラインハルト「状況の説明は私からさせていただこう」
十也「あんたは?」
ラインハルト「私はシュルツ・セイバーの№1ラインハルト・シュナイズだ。よろしくお願いする。」
スライ「こいつが例の…」
トニー「すごいオーラですよ!」
噂に聞いた聖国最強の騎士を前にしてそのすごさを実感する3人。やはり本当の強者というものはその立ち振る舞いだけでもその強さがにじみ出ているものなのだろうか。
ラインハルト「まずはこの国でここ数日起きていた騎士狩りについて話そう。」
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ある日、夜の城下町を巡回していた騎士が何者かによって殺害された。不意を突かれた一瞬の出来事だったそうだ。騎士は抵抗する暇もなく殺されていた。
そしてその事件は日に日に続いていった。しかし犯人はいまだつかまらない。事態を重く見た我々シュルツ・セイバーは我々自身が巡回しながら
犯人を捜すことにした。昨日の夜はジェイド卿とティム卿の2人が巡回にでたのだ。だが2人はいつもの時間に王宮に戻ってこなかった。
2人を心配したアーガン卿は探索に赴いたのだが…。
今朝のことだ。アーガン卿が王宮に戻ってきた、意識不明の重体となって。アーガンを発見し、王宮に連れてきた騎士の話だとアーガンは倒れる前に騎士に言伝を頼んだそうだ。
『急いで王宮の守りを固めろ!ジェイド卿とティム卿が部隊を率い城へと攻めてくる!』と
~~~
ラインハルト「そうして今に至るわけだ」
十也「その2人って昨日の大会に出てた…」
トニー「そうですね。そして聖国を守る騎士シュルツ・セイバーでもある」
スライ「なんでその騎士がここに攻めてくるんだ?何かの間違いじゃないのか?」
ラインハルト「そう思いたいのはやまやまなのだが、2人の率いる部隊の隊員の姿もどこにも見えないのだよ」
十也「ってなると信憑性が高いってことか…」
トニー「いったいなぜ?なにか思い当たるふしはないんですか?」
ディサイブ「全く見当がつかない。彼らは優秀な騎士だ。それが王宮を攻めるなど…信じたくもない事態だ」
???「もしかしてそいつら2人が騎士狩りの犯人なんじゃないのか?」
謁見の間の扉の外から声が聞こえる。その声の主は扉を開く。
スライ「お前は!」
ボルク「よう!おれもこの戦い参加させてもらぜ!」
トニー「ボルク!」
ボルク「話は全部聞かせてもらったぜ。アーガンのおっさんとの決着もついてなかったのによ。この鬱憤は奴らで晴らす!」
ラインハルト「これでだいぶ戦力はそろったな。それでは各々配置についてくれ。いつ襲撃が来るかわからない。気を引き締めてくれ」
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各々配置についた十也たち。先ほどまでの王宮内のあわただしさがうそのように静かだ。本当に襲撃など起きるのだろうか。
そんなこと起きないでほしい。誰もがそう思っていた。しかし、平和を願う気持ちは淡くも打ち砕かれる。
騎士「敵襲~~!!」
ジェイドとティム、二人が部隊を率い王宮に攻め込んできた。
ジェイド「いいか!狙うは聖王の首ただ一つだ!進めー!」
ティム「御意…」
ジェイドとティムは部隊を散開させ王宮内へと攻め込もうとする。
ボルク「おっと王宮内には入れさせないぜ!」
ボルクと騎士たちが立ちはだかる。
ジェイド「あなたは確か、昨日の大会にいた…」
ボルク「へっ!予選落ちしたお前たちが決勝まで残った俺に勝てるとは思わないが…いくぜ!」
ティム「…かまっている暇は…ない!」
ティムは大剣アロンダイトを巨大化させボルクに振り下ろす。
ボルク「そんなもの!うぉぉ!!」
なんとボルクは巨大な剣を両手で受け止めた!真剣白羽取りだ!
ティム「なに!?」
ボルク「てりゃぁ!!」
そしてそのまま大剣をへし折る。
ティム「そんなばかな!?我がアロンダイトが折れた…だと」
10メートルもあろうという大剣が素手で折られるというあまりの事態にたじろぐティム。
ボルク「俺の能力『アクセルフレイム』にはお前は勝てやしないぜ!」
ティム「そうか…」
ティムは手に持つアロンダイトを投げ捨てる。
ボルク「なんだ?降参か?」
ティム「これほどの…力をもつとはな…仕方がない…」
ボルク「あいつの目からはあきらめを感じない…何をするきだ?」
ティムは自分の能力である聖剣アロンダイトを捨てた。彼は何をする気なのであろうか。
ティム「決着を…つける前に…貴様に…教えてやろう。」
ボルク「決着?自分が負ける前にってことか?」
ティム「シュルツ・セイバーは…聖王から能力をあたえられる。そしてそれは…本来の能力に上書きされる…」
ボルク「どういうことだ?何をいいたいんだ?」
ティム「私の能力…聖剣アロンダイトは…聖王から与えらえた能力。本来の…能力は別に…ある」
ボルク「だからどうしたってんだ!その能力を使えばお前は俺に勝てるっていうのか?できるもんならやってみな!」
ティム「そう…だな。ならば私は…宣言する。シュルツ・セイバーをやめ…聖王を討つ!」
ボルク「かなわない願いだな!お前はここで俺にやられるのだから!」
ボルクがティムに攻撃を仕掛ける。
ボルク「終わりだ!」
ティム「…」
ボルクの一撃がティムに直撃する。その衝撃が地面を砕く。
ボルク「あっけなかったな」
勝利を確信したボルク。しかしなにかおかしい…ティムは吹き飛ぶこともなく微動だにしない。
ティム「終わりなのは…貴様だ!」
ボルク「なに!?」
ティム「『魔剣アロンダイト』!」
ティムの手にはいつの間にか剣が握られている。
ボルク「な、なんだ!?」
ボルクの体が吹き飛ばされる。地面にたたきつけられるボルク。
ボルク「ぐはっ!」
体中に激痛が走る。なんだ?そんなダメージでもないはずなのに。
ティム「これが私の本来の能力『魔剣アロンダイト』。魔剣アロンダイトは…暴食の剣。貴様からのダメージを…すべて食べる。」
ボルク「すべての攻撃が…きかないってことかよ!?」
ティム「こいつは…食べたダメージの量に比例して相手にダメージを反射する…。お前は今の一撃で…決着をつけようとしたな。それが…アダとなったのだ。」
ボルク「くそっ!!」
予想外の大ダメージ。体が動かない。ボルクは敗北したのだ。
ティム「命は奪わん…ことが終わるまで…そこでおとなしくしていろ…」
ティムが率いる部隊は王宮の中へと侵入していった。
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王宮の中では聖王を守ろうとする騎士たちとジェイド率いる聖王討伐を掲げる騎士たちが死闘を繰り広げていた。
ジェイド「このまま聖王のいる謁見の間を目指せ!」
聖王討伐隊の目的地は謁見の間。ジェイドを筆頭に彼らは猛進する。その勢いは衰えを知らない。しかしそんな彼らの前に立ちはだかるのは。
十也「ここから先へは行かせないぜ!」
スライ「俺たちがいる限りはな!」
トニー「この争いをおわりにします!」
十也たち3人だ。彼らはジェイドの前に立ちふさがる。
ジェイド「あなたたちですか。僕は聖王を討つ。その前に立ちはだかるというのなら客人であるあなたたちといえど容赦はしませんよ」
すさまじい気迫だ。圧倒されそうになる3人。
トニー「『ライトニング・ボルト』!」
先手必勝。トニーはすかさず雷を落とす能力を発動する。
ジェイド「それは利かないのは証明済みです!聖鎌アダマス!」
鎌を構えるジェイド。聖鎌アダマスは認識した地点を攻撃する能力。その能力でとらえた雷を切り裂く。
トニー「それはどうです?スライ!」
スライ「まかせろ!シャイニーマジック!」
雷が軌道を変える。
ジェイド「何!?曲がる雷だと!」
スライ「俺の能力は光を操るんだぜ。トニーの雷を操り軌道を変えた!」
ジェイドの予想と違う方向から襲い来る雷。ジェイドはよけ切れず雷が当たる。
ジェイド「ぐぁぁ!!」
十也「やったか!?」
スライ「だといいんだが…」
トニー「油断は禁物です」
ジェイド「なかなか…やりますね」
ジェイドはダメージは負ったが倒れていなった。
スライ「さすがは聖国№2の騎士ってことか。だったらこれで反撃もさせはしないぜ!シャイニー・マジック『スペリオル・ミラージュ』!」
ジェイド「ふっ。認識をずらす技ですか…。昨日はそれにしてやられましたね」
トニー「これであなたの能力は封じたようなもの。おとなしく降参してください!」
十也「俺たちも無駄な戦いをしたくはないんだ」
ジェイド「無駄…だと?」
十也が放った無駄という言葉。その言葉がジェイドを激昂させる一言になってしまった。
ジェイド「この国のことを知らないよそ者が!僕たちがなぜ戦っているかもわからぬ者たちが!」
十也「な、なんだ!?」
トニー「やめてください!抵抗は!」
ジェイド「抵抗だと?違うな。お前たちは勘違いしている。お前たちごときが僕をとめれると!」
スライ「お前の能力はわかっている!やめるんだ!」
ジェイド「ほざけ!僕は宣言する!シュルツ・セイバーの力は捨てる!聖王を討ちとる!」
聖鎌アダマスを投げ捨てるジェイド。
スライ「あいつ!自分の武器を捨てた!?」
トニー「なにを!?」
ジェイド「我が大義の前に…立ち塞がるものを塵とかせ!禁忌の魔剣!『レーヴァテイン』!」
ジェイドの手には禍禍(まがまが)しいオーラを放つ剣が握られている。
十也「あの剣…なんかやばそうだ!」
スライ「あぁ。近づかないほうがよさそうだ。『スペリオル・ミラージュ』がかかっているこの状態で一気にきめる!トニー!」
トニー「はい!『ライトニング・ボルト』!」
雷がジェイドに向かう。しかし雷はジェイドに当たる直前消滅する。
トニー「なんで!?」
ジェイド「僕の魔剣の前ではすべてが無力だ。今度はこちらからいくぞ!」
スライ「認識がずれている状態で攻撃が当たるはずが…」
しかしスライの予想は外れジェイドの魔剣がスライを切り裂く。
スライ「ぐぁぁぁ!!」
倒れこむスライ。
トニー「スライ!くそー!『ライトニング・ボルト』!」
ジェイド「無駄だ」
またも雷がかき消される。
ジェイド「終わりだ!」ブンッ!!
振り下ろされる魔剣。
十也「くっ!」
トニー「十也!」
鎧に身を包んだ十也が槍で攻撃を受け止める。
ジェイド「ふん。僕の魔剣を受けたな。」
十也の槍が粉微塵になって消えた。
十也「えっ!?俺の槍が!」
ジェイド「魔剣レーヴァテインは触れた能力を打ち消す剣。いかなる能力も僕の前には無力だ。」
トニー「そんな力が!」
十也「こいつはまずいぜ…」
~ラウズレイ王宮・謁見の間~
謁見の間ではディサイブとラインハルトの2人が襲撃に構えていた。
ディサイブ「なぜこんなことになってしまったのだ…。」
ラインハルト「殿下。お気を確かに。私めがついております。」
ディサイブを気遣うラインハルト。
ディサイブ「すまない。ジェイドとティムが私に刃を向けようとするなど思ってもみなかったのでついつい気が動転してしまった。」
ラインハルト「殿下…。私は外の様子を確認してきます。殿下はここを動かぬように。」
ディサイブ「すまない。頼んだぞラインハルト。」
ラインハルトは謁見の間を出て行った。
ラインハルト「なぜジェイドとティムが…。彼らは国のために戦っててきてくれた。そんな彼らが…」
ラインハルトもディサイブの前では冷静を保っていたが彼ら2人が聖王を討とうとしているのがにわかに信じられない。
ティム「国のためだから…ですよ」
ラインハルト「ティム!?」
ティムはとうとう謁見の間の前についたのであった。
ティム「あなたは真実を…知らない…」
ラインハルト「どういうことだ?おまえ!その剣は!」
魔剣アロンダイト。それを持っているということはティムはシュルツセイバーをやめたということ。
ラインハルト「なぜだ!なぜそこまでして殿下を討ち取ろうとするんだ!」
ティム「…あなたに言っても信じないでしょう…私たちがみた真実…騎士狩りの真実を…」
ラインハルト「騎士狩りの真実!?いったいお前たちは何をみたのだ!まさか犯人をみつけたのか!」
ティム「えぇ…あなたにもお教えしましょう…騎士狩りの犯人…それは…」
騎士狩りの犯人。その名を聞いたラインハルトは唖然とした。
ラインハルト「そ、そんな馬鹿な!そんなはずはない!ありえない!」
ティム「やはり…あなたはそういうと思いました。ですが…それが真実…です」
ラインハルト「何かの間違えだ!ティムお前は騙されているんだ!」
ティム「この目でみました…騎士が刺されるのを…。それでもですか…」
ラインハルト「くっ!だが私は殿下を…守る!」
ティム「相容れませんね…では…」
魔剣アロンダイトが怪しく光る。
ティム「押しとおる…のみ!魔剣『アロンダイト』!」
ラインハルトは腰に携えた剣を引き抜き攻撃をガードする。ティムは攻撃を続ける。防戦一方のラインハルト。
ティム「どうしました?…」
ラインハルト「くっ!」
ティム「やはり…あなたは迷っている…本来のあなたならこの程度…簡単にいなせるはず…」
ラインハルト「だが負けるわけには!メイネ・マシェト・フュア・ディン・ケーニヒ!(我が力は王のために!)」
ティム「…きますか…」
ラインハルト「『聖剣エクスカリバー』!」
ラインハルトの持つ剣が光を放つ!
ラインハルト「うぉぉ!!」
光放つ聖剣の一撃がティムに放たれる。
ティム「魔剣アロンダイト!!」
アロンダイトでその一撃を受け止める!
ラインハルト「なに!?」
ティム「迷いのある剣など…今の私たちには利きはしません!」
ティムの反撃に吹き飛ばされるラインハルト。
ラインハルト「ぐはっ!」
ティム「本来のあなたなら…私に負けるはずはなかった…。あなたの…迷いが…剣を鈍らせた…。さらばです」
振り下ろされるアロンダイト。
ティム「聖王…いやディサイブ・ラウズレイ。奴を討つ…」
謁見の間へとティムは歩を進めるのであった。
聖ラウズレイ王国で起きたシュルツ・セイバーによる聖王討伐の反乱。この反乱の裏に隠された真実とは…
そして十也たちの運命は…
to be continued
最終更新:2016年09月14日 22:13