黄龍の策略を打ち破れ!炸裂する魔導!

~EGOタウガス共和国支部・一階エントランス~
支部内に突入したナル・メルト・ディサイブの3人。
ナル「…敵の気配がない」
ディサイブ「ここの隊員たちはどこに…」
ナル「まさか…あの未元獣に!」

「御名答。隊員たちは全員奴ら四凶獣の餌となった。ここにいるのは私のみだ」

ナルたちの前に姿を現した男。それはEGOタウガス支部長官。
メルト「黄龍!」
黄龍「予期せぬ敵の襲撃だ。まさか四凶獣たちで防ぐことができないとは…」
突如現れたモリコーネにより戦線が崩された黄龍。
黄龍「だがそれもお前たちを倒せば関係のないこと」
構えをとる黄龍。
ナル「メルディア=シールの時のようにはいかない!」
メルト「そうです!」
ディサイブ「わが聖国を取り戻すため、ソナタを討つ!」
黄龍「そうですか。ではかかってきなさい」
三人は黄龍へと剣を手に切りかかる。

ドゴォン!

三人の眼前の天井が崩れる。あたりは白煙に包まれる。
メルト「なんです!?」

ガッ!!

何かにつかまれるメルトの体。

ミシミシ…

メルトの体を押しつぶすようにそれの力は徐々に強くなる。
メルト「うっ…!」
黄龍「これで一人…」
ナル「そうはさせない!『水蒸熱(シュイ・ゼンツィ)』!」
地面に向けて宝剣を突き刺すナル。

ブシュウ!!

それにより白煙が消え、あたりの状況が見えるようになる。
ディサイブ「はぁぁ!」

ザシュ!

メルトを掴んでいる手を剣で斬るディサイブメルトを掴んでいたそれはその痛みで手を放す。
メルト「きゃ!」
その場にしりもちをつくメルト
ナル「これは…」
メルトを掴んでいたもの。それは…

???「ぐるるる……」

ナル「四凶獣…なのか?」
四凶獣と似た姿をしているそれ。だがその姿は四凶獣の二倍はあろうかという大きさをしている。
黄龍「四凶獣・廻(かい)。奇襲で一人は仕留められるはずだったが…まぁいい。お前たちの相手はこいつだ」
ナル「正々堂々と戦う気など最初からなかったというわけだね」
ディサイブ「卑怯な!」
黄龍「私たちが行っているのは決闘ではない。戦争だよ。戦争に卑怯もクソもない。勝利こそがすべてだ」
メルト「いけ好かない奴ですね!」
黄龍「じゃあ私は引き続き君たちの戦いを観戦させてもらうよ」
そういうと黄龍は二階へと姿を消した。
ナル「なんにしてもこいつを倒さないと先には進めないわけだ」
四凶獣・廻「ぐるるる…」
ディサイブ「ならば倒して進むのみ!」
剣を構え四凶獣・廻へと立ち向かうディサイブ
四凶獣・廻「ぐるる…」

ばくっ!

大きく口を開けた四凶獣・廻はディサイブの剣をその口に呑み込む。
ディサイブ「なっ!剣が!」

バリバリ!

咀嚼する音が響く。

ペッ!

吐き出されたディサイブの剣は粉々に砕け無残な姿でその場に転がる。
ディサイブ「なんという…」
メルト「わたしたちの剣も食べられたらおしまいです!」
ナル「宝剣を食べられるわけにはいかないね」
四凶獣・廻「がぁぁぁ…ぺっ!」
何かを口から吐き出す四凶獣・廻。吐き出されたそれはナルたちに向かって飛んでくる。
メルト「うっ!」
それを見て怪訝な顔をするメルト。吐き出されたそれは球体でその面に顔がついている。

「うぅぅぅ…」
「あぁぁ…」

それぞれに声を発する球体。その声はどこか悲しそうにも聞こえる。
メルト「き、気持ち悪い!なんですかあれ!」
ナル「人の顔…もしかして!」
黄龍は支部の隊員を四凶獣の餌にしたと言っていた。考えたくはないがあの顔はもしや…。
ディサイブ「この支部の隊員たちか」
ナル「そう…だろうね」
メルト「人の顔って思ったら余計に気味が…うぷっ!」
口を押えるメルト。うめき声をあげながらナルたちに飛んでくる球体。
ナル「せめてもの弔いだ。静かに眠れ『地葬槍(ソウ・ギージュゥ)』」

ザシュ!

地面から突き出す石でできた槍。それが球体を貫く。

「あぁぁ…」

うめき声をあげながら消滅する球体。
ナル「趣味の悪い化け物だ」
ディサイブ「同感だ」
メルト「早く倒してしまいましょう!」
四凶獣・廻「げふ…げふ…」
四凶獣・廻がせき込むような動作を見せる。
四凶獣・廻「げふぉぉーー!!」

ドボボボボ!!

四凶獣・廻の口から流体があたり一面にまき散らせられる。それに体を覆われる三人。
ナル「うっ!体が…」
ディサイブ「動かない!」
メルト「まずいですよ!捕まっちゃいました!」
三人の体を覆った流体。それは粘性が強く、体の身動きが取れない。
四凶獣・廻「がち!がち!」
歯を鳴らし、獲物を見定める四凶獣・廻。
ナル「なんとか…しないと」
メルト「万事休すです~!!」
ディサイブ「くっ!」
ナル「このままじゃあ…なにか手は…」

~EGOタウガス共和国支部入口~
ボルク「おし!この調子ならこの化け物どもも倒せそうだ」

バシュン!バシュン!

空から降り注ぐ水弾が四凶獣の体を貫いていく。
ボルク「あの青いやつ。だれだかわからないが俺たちに協力してくれてるみたいだからな。」
モリコーネ(青鬼人)「カルマートカランも目覚めた。もう我はこの地に用はない。ディスコネクト」

フッ…

姿を消すモリコーネ。その場には巨大な水蛇の石像だけが残る。
ボルク「こいつで終わりだな!」
カルマートカラン「……」

ゴゴゴゴ!!

四凶獣をすべて倒し終わろうとしたその時、カランはその眼をボルクたちに向ける。

ギュィン!!

カランの眼が光る。
カラン「ギョルルル!!」
奇怪な鳴き声を上げるカラン。

ザァァァ!!

再び降り注ぐ雨。雨はカランの口に収束していく。その雨をすべて飲み干すようにその中に雨が入っていく。
カラン「……」

シュィィン!!

カランの口の中から聞こえる音。直後!

バシュゥゥン!!

その口から圧縮された水がボルクたちに向かって発せられる。
ボルク「なに!?」
炎下一〇八部隊「くぅぅ!!」
強烈な水圧により吹き飛ばされるボルクたち。
ボルク「こいつ!味方じゃないのか?なんで俺たちを…」
カラン「……」
カランはボルクたちに狙いを定めている。
四凶獣「…」
背を向けたカランに襲い掛かる四凶獣。

バシン!

四凶獣はカランの尻尾に地面へと叩きつけられ砕け散る。

シュィィン!

再びカランの口から発せられる音。
ボルク「またさっきの水鉄砲か!」

ドシュゥゥン!!

カランの口から放たれる水は地面へと打ち出される。

ガガガ!!

その水圧は先ほどまでよりも強く地面を削るほどだ。
ボルク「あんなもんくらったら!みんな逃げろ!」
炎下一〇八部隊へと号令を出すボルク。カランの口から放たれる水が徐々に彼らへと迫っていく。
ボルク「だめだ!間に合わない!こうなったら!『炎陣全開!フルスロットル』!!」
炎下一〇八部隊の体を覆っていた炎がボルクに集約していく。ボルクの体を包んでいた炎が先ほどより大きくなる。

バシュン!

その身でカランの水を受け止めるボルク
ボルク「くっ!」
ボルクの体を覆う炎が徐々に小さくなっていく。
ボルク「相性最悪だ。水と炎じゃあ…時間の問題か」
ボルクを覆う炎が寸前の灯(ともしび)となる。
ボルク「もう…耐えられない!」
火が消えればボルクの体が打ち貫抜かれるのは明白。
ボルク「ここまでか…」

「水を放つ蛇。その名の通り水蛇というわけか」

ボルクの背後で聞こえる声。その声がする方向に目をやるとそこにはローブで体を覆った人物が立っていた。
???「火の力で水蛇の攻撃を受け止めようとは。蟷螂の斧とも捉えられる行いだな」
ボルク「だれだおまえ?」
???「愚公山を移す。どんなに無謀な行いでも他者のためにおこなったそれは報われる。」
構えをとるローブの人物。その両手を地面へと打ち付ける。
???「大裳裂衡(たじょうれっこう)!」

ガガガガ!!

ローブの人物の両手から発せられた衝撃波が地面を伝いカランへと向かっていく。

ガギン!!

そのまま衝撃波はカランの体を駆けていく。カランの口へと達した衝撃波は口から放たれる水へとまきつくように走っていく。

バシュン!

その衝撃波により消滅する水。
???「土神の力は水を打ち消す」
ボルク「あの水を消し去りやがった!助かったぜ」
???「気を抜くな!まだあの水蛇が倒れたわけではない。」
ボルク「お、おう…」
???「だがしばらく水蛇はあの水流砲は使えまい。君の力でも対抗できるはずだ」
ボルク「あんたは?」
???「僕は行くところがある。ここは君に任せよう」
そういうとローブの人物はタウガス支部内へと入っていった。
ボルク「よし!いくぜ」

~EGOタウガス共和国支部・一階エントランス~
四凶獣・廻により体の動きを封じられた3人。魔導を使おうにもナルとメルトはその手を動かすことさえできない。
四凶獣・廻「がばっ!」
大きく口を開く四凶獣・廻。身動きを封じられた3人になす術はない。

バッ!

四凶獣・廻が大きく口を開けたままナルたちへと突撃する。

「ちぇりゃぁ!」

ドン!

四凶獣・廻が突如現れたローブの人物の蹴りにより吹き飛ばされる。
ナル「だれだ?」
ローブの人物は右手の人差し指と親指を合わせて立てる。
???「火翔爪(かしょうそう)!!」
合わせた指をナルたちに向かい突き刺す。するとその指から炎の刃が放たれナルたちに向かい飛んでくる。
メルト「また敵ですか!?」

バシュン!

ナルたちの身動きを封じていた粘性の液体が炎に包まれ燃え散る。
メルト「私たちを助けてくれた?」
ディサイブ「味方なのか?」
???「君たちに害を加える気はない」
ナル「いったい…」
四凶獣・廻「がるる…」
ナルの言葉を遮るように四凶獣・廻の唸り声が響く。
???「その姿…四凶を混ぜ合わせたような醜悪さ。見るに堪えないな」
ローブの人物は構えをとる。
???「青龍咆撃拳(せいりゅうほうげきけん)!」
両手を合わせ四凶獣・廻へと突き出すローブの人物。

ボシュン!!

その両手から圧縮された気の塊がレーザーのように放たれる。
四凶獣・廻「ぐぅ……」

ババババ!!

四凶獣・廻の体へ打ち付けられる気の塊。
???「邪なる存在よ!吹き飛べ!」

ドゴン!

ローブの人物の攻撃が直撃し吹き飛ばされる四凶獣・廻。
???「沐猴(もっこう)にして冠す。外身だけは伝記上の四凶に似せたようだが所詮はまがい物だ。」
ナル「君はいったい…?」
???「僕はこの支部の長官に用がある」
ディサイブ「長官?黄龍か?」
???「そうだ。やつに借りを返す」
ローブの陰から除くその眼は闘志に満ちていた。
ナル「そう。だったらここは僕たちに任せてくれ」
???「任せて?どういうことだ?」
ナル「まだあれはやる気みたいだからね」
四凶獣・廻「……」
四凶獣・廻が立ち上がる。
ナル「君と黄龍がどういう関係なのかは知らない。でも君を信じるよ」
???「あって間もない人間を信じるとは…裏切られても知らんぞ」
ナル「大丈夫。この判断は間違っていない。僕の『マスタープルーフ』でそう感じている」
???「ふっ、そうか。ならばここは任せた。僕は長官室へ向かう」
ナル「あぁ。たのんだよ!」
???「恩に着る。この恩は必ず返そう」
そういうとローブの人物は二階へと進んでいった。
ナル「さて僕たちも気を引き締めようか」
ディサイブ「先ほどのように捕まるわけにはいかないからな」
メルト「そうですね!今度こそけちょんけちょんにしてしまいましょう!」

ギロッ!

四凶獣・廻がメルトへと狙いを定めるように見つめる。
メルト「ひっ!」ビクッ!
ナル「驚いている場合じゃないよメルト
メルト「は、はい!」
ディサイブ「それでどうするんだ?」
ナル「奴の行動はまるで読めない。奇妙な行動から突然攻撃してくる。だから奴を倒すには隙を与えないことだ」
ディサイブ「というと?」
ナル「少しの間でいい奴を足止めしてくれ」
ディサイブ「わかった。任せてもらおう」
ディサイブは折れた剣とは別に剣を取り出す。
ディサイブ「この役割果たさせてもらう!」
四凶獣・廻へと立ち向かうディサイブ。激しく激突するディサイブたち。
メルト「それで私は何をすれば…」
ナル「メルト。あれをやろう」
メルト「あれ?あれって?」
ナル「君の考えた魔導だよ」
メルト「私の考えた魔導?」
少し考えた末、何かを思い出すメルト
メルト「まさか私が冗談でいったあれですか!?」
ナル「理論上は可能なはずだ」
メルト「でもなんでこんな時に…」
ナル「こんな時だからこそだよ。今世界はEGOにより混沌に満ちている。僕らも今まで以上に力をつけなければいけない。だからこそ試す価値はある」
メルト「ですけど私なんかに…」
いつも失敗ばかりの自分を思い出すメルト
ナル「メルト。あんまり自分を卑下しないで。君は僕の大切な仲間なんだから」
メルト「高鳴(ガオミン)様…そうですね。私もやってみます!」
やる気を出すメルト
ナル「よし!じゃあいくよメルト!」
メルト「はい!」
背中合わせに立つ2人。2人は互いに両手で剣を構える。

フォン!!

二人の体を包むように光が広がる。
ナル「大気中のマナを」
メルト「取り込んで!」
その光は二人の剣に集中していく。

ビシビシ!!

メルト「うっ!」
態勢を崩しそうになるメルト
ナル「集中してメルト
メルト「は、はい!」
再び態勢が安定するメルト
ナル「行けるね?」
メルト「はい!任せてください」

バッ!

2人は背中合わせのままそれぞれ左手と右手で剣を四凶獣・廻へと向ける。
ナル「水のマナと火のマナ。相反する二つのマナを同時に」
メルト「これならいけそうです!」
ナル「よし!」

シュゥゥ!!

ナルの宝剣に水が渦巻く。

ボォォ!!

たいしてメルトの剣には炎が渦巻く。
ナル・メルト「混成魔導!『前后火焰水(チェンホウ・ヒュアエンシュイ)』!!」

バシュン!

二人の剣から炎と水が渦巻きながら四凶獣・廻へと向かっていく。

バシュ!!

四凶獣・廻へと直撃した炎と水の渦はその体を巻きつくようにグルグルと回っていく。そして四凶獣・廻の体を覆うように炎と水の渦が取り囲む。
ナル「メルト!」
メルト「はい!」

2人は同時に剣を振り払う。すると四凶獣・廻を取り囲んでいた炎と水は徐々に混ざり合っていく。水の球体の中で燃える炎。それが四凶獣・廻を覆う。
ナル「これで」
メルト「終わりです!」

キン!

剣を鳴らすように互いの剣を合わせる2人。

ボコボコボコ!!

水の中の炎が激しく燃え上がる。

バシュゥゥ!!

四凶獣・廻「ぐぅぅ…」
水の中で苦しみもがく四凶獣・廻。だがどんなあがこうともその水の球体から脱出することはできない。

ブクブク!!

水の中でものすごい数の気泡が発生する。直後!!

ボゴォン!!

水の中で爆発する炎。その爆発で球体の中が見えなくなる。

ドシュゥゥン!!

徐々に小さくなっていく水の球体。それは最後には消滅してしまう。中にいたはずの四凶獣・廻もその姿は消えてなくなってしまった。
ナル「混成魔導。うまくいったね」
メルトが冗談で言っていた魔導。メルト「相反する属性の魔導を2人で合わせたらどうなるんですかね?もしかしてものすごい魔導ができたりして!」そんなメルトの冗談から生まれた魔導だがその威力は絶大だ。
メルト「まさかすぎて驚きです!」
ディサイブ「作戦はうまくいったようだな」
ナル「君が足止めしてくれたおかげだよ」
メルト「ですね!まぁ私のおかげもあるかもしれませんがね!」えっへん
鼻高々のメルト。ずいぶんと調子がよさそうだ。ナルとディサイブはそんなメルトのことは気にもせず話を続ける。
ナル「僕とメルトは外の様子を見てくる。あの石像も気になるからね」
ディサイブ「そうか。では私は二階に向かったあの男を追う」
ナル「僕も外の様子を確認したらすぐに向かうよ」
ディサイブ「ではまた後で会おう」
ナル「うん」

~EGOタウガス支部・二階長官室~

ウィィン!

長官室の扉が開く。
黄龍「ん?」
扉の方に目を向ける黄龍。そこに立っていたのはローブに身を包んだ人物だ。

???「黄龍。決着をつけるぞ」

to be continued

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最終更新:2019年02月08日 21:29