相打つ龍!タウガスの行く末は

~EGOタウガス支部・長官室~
黄龍「これはまた…予想外の客が現れたね」
???「……」
黄龍の目の前に現れたローブの人物。
黄龍「まさか君が生きているとはね。龍静(ロンジン)」

バッ!

ローブを外すとその男は紛れもなく龍静だ。だが彼は全身に傷を負っており以前とは雰囲気もだいぶ変わっている。
龍静「おまえとEGOの悪事。それを見過ごすわけにはいかない!僕がお前を倒す!」
黄龍「六壬神拳の奥義をくらって生きていることも驚きだが、こうして再び私に対峙しようとは。力の差をわかっていないのか?」
龍静「僕は以前の僕とは違う!もうお前には負けはしない!」
構えをとる龍静。
黄龍「ふ~。無駄な労力は使いたくはないんだけどね。どうしてもというのならば相手をしよう」
黄龍も構えをとる。
龍静「いくぞ!」

ガガガ!!

二人の拳が激しく交じり合う。常人には目にもとまらぬ速さで拳戟を繰り出しあう二人。
黄龍「少しは腕を上げたようだが…私には勝てない!」

ドゴッ!!

黄龍の一撃が龍静の腹部へと炸裂する。
龍静「ぐっ!」
地面へと手を付き腹部を抑える龍静。
黄龍「所詮はこの程度。六壬神拳を極めた私にお前が勝てる道理はない」
龍静「それはどうかな?」
黄龍「なに?」

ババババ!!

地面から無数の火柱が立ち上がる。それは黄龍を取り囲むように展開される。
黄龍「体を抑えるふりをして次の攻撃を!」
龍静「これでお前は身動きをとれまい!」
黄龍「無駄だ!水神の力で!」
地面に手を付ける黄龍。

バシュ!

次の瞬間、地面から水がシャワーのように噴き出る。

ザァァー

それをあびた火柱は徐々に小さくなっていく。
黄龍「どのような修行をしたか知らないが所詮はこの程度。六壬を極めた私には効きはしない!」
黄龍の目の前の火柱が消滅する。するとその先には龍静の姿があった。
龍静「僕にはお前のように六壬すべての属性を極めることはできない。だが!」

ボボボボ!!

龍静の右手を覆うように炎の翼が展開されている。
龍静「火神の力ではお前には負けない!くらえ!『朱雀天翔拳』」

ボゥ!!

炎の翼を衡龍へと振り下ろす龍静。
黄龍「無駄だ。『玄武剛盾(げんぶごうじゅん)』」
両手を構えそれを受け止める黄龍。

バシュン!

黄龍の両手に炎の翼がかき消される。
龍静「これでも…だめか」
黄龍「水神に火神では勝てはしない。いい加減無駄なことをやめたらどうだ?」
少し諦めたような様子で龍静へと話す黄龍。
黄龍「お前では俺には勝てない。力の差というのは埋まらないものだ。持って生まれた力を超えることはできはしないんだよ!」

???「それは違うな」

ブン!

突如部屋へと入ってきた人物が黄龍へと剣を振り下ろす。それを両腕で受け止める黄龍。
ディサイブ「これが気の力か。素手で剣を受け止めるとは…」
黄龍「聖国の王か。王でありながら自ら最前線で剣を振るうとは感心だ。だが!」

ザシュ!

ディサイブ「ぐっ!」

ディサイブの腹部に黄龍の指が深く突き刺さる。
黄龍「まずは一人。これで終わりだ。」
ディサイブ「お前の考えは否定する…生まれ持った力など大きな意味を持たない…」
黄龍「何の説教だ…」
ディサイブ「人はいくらでも変わっていける…それこそが人の力だ…」

ドサッ

その場に倒れるディサイブ。
黄龍「持って生まれたものがたわごとを…。さてつぎは龍静。おまえだ!白虎咆哮(びゃっこほうこう)!」

黄龍の構えから繰り出される一撃。それは龍静へと直撃する。その一撃により吹き飛ばされる龍静。

ビリビリ!!

その一撃により龍静の服が裂ける。
黄龍「なんだ…その傷は…」
露になった龍静の上半身。その体には無数の傷が見える。
龍静「お前のおかげだ。この傷は鍛錬の証。それが今の僕の力となる!」

~~

時はさかのぼり龍静が黄龍の一撃で吹き飛ばさた時、彼はタウガス共和国の某所に吹き飛ばされていた。
龍静「…うっ」
目を覚ます龍静。あたりを見回すとそこは見渡す限り木々が生い茂る自然に囲まれていた。
龍静「どこかの森か…。うっ…」ズキ!
体に痛みが走る。
龍静「全身が痛む…あの一撃を受けて生きていただけでも奇跡的だな…」
両手を地面へとつける龍静。
龍静「気功治(きこうち)!!」
地面から大地の気を取り入れることで龍静の傷が徐々に治っていく。
龍静「ふぅ。完治とはいかないがこれで少しはマシになったな」

サァァ…

遠くから何か音が聞こえる。
龍静「これは…水の音か。近くに水源があるようだな。とりあえず行ってみるか」
水の音のするほうに歩みを進める龍静。木々をかき分けて進むとそこは開けた場所になっており滝が流れていた。
龍静「ん?あそこに…だれか…」
滝の下には大きな石がある。その上に誰かが座禅を組み座っているのが見える。

ドドドド!!

強烈な流れの滝に打たれながらもその人物は目を閉じ一切心を乱すことなく平然と座っている。
龍静「あの方は!まさか!」
その人物の顔を見て龍静は驚いた様子だ。
龍勢「師匠!」
師匠「ん?」
師匠と呼ばれた人物は龍静の呼びかけに気づき、目を開け龍静の方を見る。
師匠「おまえは…龍静か。まさかこんなところで再開するとはのぅ」
龍静「それはこちらのセリフです。まさかこんな森のなかで師匠と再会できるとは思いもしませんでした。六壬神拳(りくじんしんけん)の最高位である師匠が引退なされてから行方不明だと聞いており心配していたのですよ」
こんなところで師匠に再開できるとは夢にも思っていなかった龍静は驚きを隠せない。
師匠「ふぉっふぉっふぉっ。心配をかけたのぅ。今は人里離れたここで隠居生活を満喫しておったのじゃ。そういうお前はそんな状態でこんな山奥に何の用じゃ?」
体の傷を治しても一目で龍静のダメージを見抜く師匠。
龍静「師匠にはかないませんね。実は…」
タウガス支部での黄龍との戦いを師匠へと話す龍静。
師匠「ふむ。そんなことが…黄龍のやつ悪へと堕ちたか…」
神妙な面持ちの師匠。
師匠「龍静。おまえと黄龍には期待しておったのじゃがな。互いに競い合い修練し、高めあう存在であるとわしは思っていた」
龍静「僕も黄龍のことをそう思っていました。ですが黄龍は違っていました」
師匠「それを見抜けなかったわしにも責任はある。あやつに六壬神拳の奥義を伝授してしまったことも含めてのぅ」
龍静「六壬神拳の奥義…」
黄龍により龍静に放たれた技を思い出す龍静。
龍静「全ての六壬を扱えるもののみが使える奥義ですか」
師匠「そうじゃ。黄龍にはその素質があった。あやつは火神、水神、木神、土神、上神、金神全ての六壬を使えた。六壬神拳は大気中のマナを変換し、己の体に宿す拳法。体に合わぬ技は使えぬが道理」
龍静「僕が水神の技を苦手としているのもそのためですね」
師匠「うむ。黄龍は特殊な体質なのじゃ。わしが生きてきた中で六壬神拳の奥義を使えたものは黄龍以外に1人もいない。」
龍静「…師匠。少し疑問があるのですがよろしいですか?」
師匠の話を聞き腑に落ちない点がある龍静。
師匠「なんじゃ?」
龍静「六壬神拳の奥義を扱えるものがそれほど少ないならばその奥義はどうやって伝承されてきたのですか」
師匠「ふぉっふぉっふぉっ」
大きく笑う師匠。
師匠「そこに気づくとはさすがじゃの龍静」
龍静「それと先ほどの話しぶりだと師匠も奥義は使えないということですか?」
師匠「ふむ。そうじゃ。わしも奥義は使えんよ」
龍静「ならばどうやって黄龍に奥義を伝授したのですか?」
次々と質問を投げかける龍静。そんな様子の龍静を鎮める師匠。
師匠「すこし落ち着け龍静」
龍静「はっ!申し訳ありません師匠」
師匠「お主が焦る気持ちもわかる。一刻も早く黄龍のことを止めなければと思っているんじゃろ?」
龍静「はい。このままではタウガスが大変なことになってしまいます」
師匠「冷静さを取り戻せ。冷静にならねば奥義を覚えることもできんぞ」
龍静「やはり…あるのですね。六壬すべてを使いこなすことができなくても奥義を習得する方法が」
師匠「おまえのその鋭さには恐れ入るのぅ。その通りじゃ」
龍静「師匠、僕にその方法を伝授していただけないでしょうか?その方法を習得すれば僕も黄龍に…」
師匠「まて龍静」
龍静の言葉を遮る師匠。
師匠「お前も力を手に入れたら黄龍のようになるかもしれんぞ」
龍静「僕が黄龍のように…それはありえません」
師匠「なぜそう言い切れる?」
龍静「僕は守るために力を振るいます。今までも…そしてこれからも!」
龍静の瞳をじっと見る師匠。龍静の瞳には少しの曇りもない。
師匠「いいだろう。一線を退いた身ではあるが…龍静!お前に奥義を習得する方法を伝授しよう」
龍静「ありがとうございます」
師匠「奥義を扱えるものは少ない。だがそれを我々凡人が習得するには並外れた努力が必要だ。まずは鍛錬だ!」
龍静「はい!」

こうして師匠と龍静の修行が始まった。滝に打たれ、森の中を走り、師匠との模擬戦。そして…

龍静「はぁ…はぁ…」
息も絶え絶えで師匠と向き合う龍静。
師匠「どうした龍静?わしを越えねば黄龍に勝つことはできんぞ」
龍静「えぇ…わかっています!はぁぁ!!」

バン!!

激しい戦いの末、地べたに寝そべる龍静と師匠。
龍静「はぁ…はぁ…」
師匠「なかなか…やるのぅ…」
龍静「師匠も…さすがです…ね」
師匠「ここまでやれるのならば…お主に伝授しよう」
龍静「奥義を習得する方法ですか?」
師匠「ふむ。だが正確には違うな」
龍静「どういうことです?」
師匠「奥義を超える奥義。秘奥義とでも言おうかの」
龍静「秘奥義…」
師匠「秘奥義を習得し、黄龍をとめよ龍静!」
龍静「はい!」

こうして奥義を習得した龍静は師匠と別れ、タウガス支部へと戻ってきたのであった。

~~

龍静「お前を倒すぞ黄龍!」
黄龍「お前では六壬を極めた私を倒すことなどできはしない!」
龍静「ふっ」
不敵な笑みを浮かべる龍静。
龍静「捲土重来(けんどちょうらい)、その力いまだ知るべからず!」
右手の指2本を立てて印を結ぶ龍静。
龍静「臨(りん)・兵(びょう)・闘(とう)・者(しゃ)・ 皆(かい)・陣(じん)・列(れつ)・前(ぜん)・行(ぎょう)!!」

バシュゥゥ!!

龍静の体を覆うように炎が沸き立つ。
龍静「六壬秘呪(りくじんひじゅ)・天神昇華(てんじんしょうか)!!」


to be continued

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最終更新:2019年07月07日 12:51