〜はるか昔〜
とある星に光が堕ちた。本来はひとつだけ、堕ちるはずだった。だが、その時堕ちた光はふたつだった。
ひとつの光は、星に命を与えた。
ひとつの光は、星に知を与えた。
いずれこの光は、どちらかひとつになる、その時が訪れるその時に。
〜夜の光が凪ぐ海の上で〜
目が覚めたとき、最初に抱いた感情は「後悔」だった。
どうやっても手に入らない、しかしそれを諦めることは決してできない。自分自身が生まれながらにしてそんなことを憂い嘆くのはなぜか、きっと本能に近い何かの所以なのだろう。
しかしながら…
イナ「この星はなんと退屈なのだ」
彼の目にはこの世界すら退屈に見えたのだ。こんな環境ではあまつさえ所望するそれを手に入れることは決してできない。
イナ「つまらなき この上なき世ぞ おもしろき」
指を鳴らすと世界に色が灯った。のちにこの色はこの世界に“能力”をもたらすことになるのだが…そして我の命を奪うやもしれぬ…だが…
イナ「カーカッカッカ!!」
だが、その時はそんなことよりも憂いが消えたことが愉快でならなかったのだ。
リジン「そなた、いまさら目覚めたと思えば無駄なことをしておるな。すでにこの世には世界の理、ルーツ、源理の力が満ちておるのだ」
振り向いた先には翼をたたえた存在がいた。
イナ「…」
リジン「まぁよい。好きにするがよい」
そう告げると、金色の頭髪を靡かせながら姿をふっと消したのだ。
イナ「…それを手に入れるには、遥かに障害があるということか。おお、大いなる母よ、何故これほどの障壁を与えるのですか」
しかしそれでも諦めきれない。それを手にするためには。
決して逃れられない運命は、決して避けられない未来につながる。それなら「後悔」している暇などないのだ。そう、退屈な世界であるのなら、「豪快」に楽しめばよいのだ。
イナ「時間は永遠。命は無限。ゆっくり待たせてもらおう」
そして私は玉座に腰を下ろした。
その時が来るまで。それを手にするその日まで。
SIDE:U(Unavoidable Futre) Fin
最終更新:2020年03月11日 10:29