十也「たぁぁ!!」
十也の槍が相手の肩をかすめる。
???「ふん!」
相手の男は手に持った大剣を十也目がけて振り上げる。
十也「くっ!『ブラスト・デバスター』!」
姿を消す十也。
???「ちっ!どこに行った。」
十也と男が戦っている場所は部屋の中だ。入り口の扉は閉められ、部屋の上部にはガラスが張られている。そのガラスの向こうには老人のほか白衣に身を包んだ研究者風の男たちが2人の戦いを観戦している。
十也(いったいなんなんだ。急に知らない場所に来たと思ったら、いつの間にかこんな戦いをさせられて。それに…)
十也の意志とは別に体が動き、発言する。まるで主観で映画でも見せられているみたいだ。
十也(映像にしては感覚が生々しすぎる。…まさかこれは…)
十也「もらった!」
???「しまった!」
男に十也の槍が直撃する。男はその場に倒れこむ。
???「ぐっ…」
十也「これで終わりだ…」
倒れこんだ男に槍を突き立てる十也。
十也(やめろ!もう決着はついてる。これ以上は…)
槍を振り上げる十也。
十也(やめろーーー!!)
ブン!!
ザシュッッ!
次の瞬間、十也の目の前には血まみれで動かなくなった男が転がっていた。生々しい感触が十也の手に、意識に残る。
十也(これは…俺の記憶…なのか…)
老人「おめでとうXXXX!次の決闘まで充分休息をとってくれ。」
十也は部屋を出て行った。
老人は部屋に転がった男の死体を眺める。
老人「う~ん。セブンはなかなかいい線いっていると思ったんだけどね。」
セブン…男の名前だろうか。
老人「生死をかけた戦い…極限の緊張状態による能力の覚醒を狙っているんだけどなかなかうまくいかないものだね」
研究者「新たにシリーズを補充しますか?」
老人「そうだね。セブンに代わるやつを選別しておいて」
研究者「わかりました。一番条件に近い素体を選別しておきます」
老人「さーて実験を続けようか!」
~~~
十也は控室のような部屋についた。椅子に腰をかける。
十也(この感触は他人のものじゃあない。俺は人を…)
赤髪の男「おい!」
十也「…」
十也(あれは昨日の部屋にいた…)
赤髪の男「XXXX、お前も生き残ったみたいだな。なかなかやるみたいだが次はどうだかな。」
十也「彼女は…?」
十也(彼女…昨日の白髪の少女のことか?)
赤髪の男「あぁ、奴なら…」
白髪の少女「私がどうかしましたか?」
部屋の扉が開き少女が入ってきた。
赤髪の男「よう!ここに来たってことは生きのこったってことか!」
白髪の少女「えぇ、そうですわね。お兄様たちも無事生き残ったみたいで…」
十也「スリーとフォーがいない…」
赤髪の男「スリーは俺がやったぜ」
白髪の少女「フォー兄様は私の相手でしたの」
十也「そうか…」
二人の表情には微塵も後悔や恐怖の感情は感じられない。ここにいる者たちにとってはこれが普通なのだろうか。
十也(生きるか死ぬかの戦いが当たり前なのか…。相手を殺してもこいつらは何も感じないのか…)
十也はそんな状況に恐怖する。今の自分がいる状況からは考えられない。しかしこれが自分の記憶だとすれば…
十也(俺はこんなところで生きてきたのか…)
赤髪の男「あとはファイブとエイトか」
白髪の少女「そうですわね」
部屋の扉が開く。そこにいたのは
老人「さて明日の予定についてだが…」
老人だった。
赤髪の男「おい!あいつらはどうしたんだ?」
老人「んっ?あぁ、ファイブとエイトか。決着はついたんじゃがちょっとな」
赤髪の男「ふ~ん。まぁいいさ。俺たちから何か聞いたところで教えてもらえるわけじゃあないからな」
老人「ふぉっふぉっふぉっ。話が早くて助かるな。明日はお前たち二人の決闘を最初に行う。」
老人は2人を指さす。赤髪の男と白髪の少女だ。
老人「では各自準備を怠らないようにな」
老人は部屋を出て行った。
十也(俺は…いったいだれなんだ…)
~~~
老人「ふぉっふぉっふぉっ。まさかファイブがあのような力を発揮するとは。」
老人は一人、大きな部屋でつぶやく。
老人「だが力の源がわからないあの力は危険だ。とりあえず奴は拘束しておいたが…」
老人は部屋の奥のほうに目を向ける。そこには大きな機械装置が設置されている。何に使うものだろうか。
老人「まずはあれを得るための器を完成させなければならない。そしてそれさえできあがれば、あとは…」
老人「この装置、DSシステムさえあれば…あれを探し出すことができる!」
老人「ふふふ…ふっふっふっ!」
不敵に笑う老人。彼の目的はいったい…
そして迎えた翌日。十也は昨日の控室のような部屋にいた。
十也(あの2人が今たたかっているのか…)
部屋の扉が開く。そこにいたのは…
赤髪の男「よう!」
赤髪の男だった。つまり白髪の少女は…
赤髪の男「あいつもなかなか強かったが俺には及ばなかったな」
十也「そうか…。これで残ったのは俺とお前か…」
赤髪の男「そうだな」
十也「なぁ」
赤髪の男「なんだ?」
十也「お前はこの状況に疑問を抱かないのか…」
赤髪の男「疑問?そんなものは俺にはないね。俺たちはこのために存在している。だから…」
男は十也の顔から何かを感じ取ったのだろか。
赤髪の男「俺は全てを受け入れる。そのうえで俺がやるべきことをやるのさ。そのために俺は死ぬわけにはいかない」
十也「…」
部屋の扉が開く。これから二人の最後の戦いが始まる合図だ。それが老人から告げられるのだろう。
???「対象確認しました!これから対象の殲滅を開始します!」
予想に反して、現れたのは装備を固めた兵士たちだった。その手には銃が握られている。
赤髪の男「なんだ!?」
十也「こいつらは!?」
???「お前たちは我々EGOに反逆する行為をおこなった!ここで粛清を行う!」
十也(EGOだって!?)
銃を構えるEGO隊員。
赤髪の男「ちっ!」
十也「『コート・オブ・ブラスト』!」
十也と赤髪の男はEGO隊員を蹴散らす。
赤髪の男「何が起きていやがる…」
十也「まずはここを脱出する!」
二人は部屋を抜け出し通路を駆けていく。まるで迷路のような通路だ。出口はどこにあるかもわからない。
通路には多数の研究者やEGO隊員の死体が転がっている。
十也(いったい何が…なんでEGOが…)
EGO隊員「みつけたぞ!各員、構え!」
通路の先に現れたEGO隊員。銃を構え十也たちに向ける。
十也「『ブラスト・デバスター』!」
EGO隊員「なっ!一人が姿を消したぞ!どこだ!」
EGO隊員の背後に現れる十也。そして
ザシュッッ! ザシュッッ! ザシュッッ!
EGO隊員たちは十也の槍に串刺しにされ息絶えた。
赤髪の男「やるな!」
十也「先を急ごう!」
目の前に転がるEGO隊員たちの死体。それはまぎれもなく十也が殺したものだ。
十也(おれは…こんなにも多くの命を…うあぁぁぁぁ!)
発狂する十也。しかしその叫びはだれにも届かない。むなしく響く十也の叫び。しかし十也の想いとは無関係に事態は進んでいくのであった。
~~~
老人「まさかEGOに私の計画が漏れるとは…」
EGO隊員A「覚悟を決めるんだな、ジャーデ・フォーティア!」
EGO隊員B「貴様の計画は我々EGOに対する反逆行為だ!それを見過ごすわけにはいかない!」
ジャーデ「くそっ!あと少しだったというのに…。」
銃を構えるEGO隊員。
ジャーデ「私の計画は破たんした…だが!」
ジャーデは手に持った端末から何かを起動させる。
ジャーデの背後にある巨大な機械装置が作動する。
ジャーデ「ふははは!DSシステムよ!私を新たな地平へいざなえ!」
EGO隊員「撃てー!!」
EGO隊員たちが銃を放つ。
ジャーデ「ぐふっ…」
ジャーデの体に無数の穴が開く。多数の銃弾をその身に受けたジャーデはその場に倒れる。
ジャーデ「私は…たい…きょ…くを…」
息絶えるジャーデ。しかしその後ろの装置は動きを止めない。
EGO隊員「なんだ!?」
光り輝く装置。その光があたり一面を呑み込む。
EGO隊員「うわぁぁ!!」
~~~
十也と赤髪の男はEGO隊員たちを倒しながら出口に向かって進んでいく。そして
赤髪の男「見ろ!出口だ!」
二人の目の前に大きな扉が現れる。
扉を開け、外に出る二人。
十也「これが外の世界…」
赤髪の男「そうだ…そして俺も俺のやるべきことを果たす!」
赤髪の男は十也に向けて剣を突き立てる。
十也「なんのつもりだ…」
赤髪の男「お前との決着をつけるのさ。俺の目的…そのためにお前を殺す!」
十也「なんだ!?」
突如十也に対して銃が撃たれる。とっさにかわす十也。後ろを見ると多数の鎧に身を包んだ人々がいた。
十也「こいつらは!?」
赤髪の男「俺たちの兄弟さ。こいつらも俺に協力してくれるみたいだな。さぁ始めようぜ、XXXX!」
十也(まだ俺は戦わないといけないのか…あれだけの命を奪って…。もう俺は…戦いたくない…)
~~~
ビシオン「さて」
ビシオンの前には十也が立ち尽くしている。まるで人形のように動かない。その眼はうつろだ。
ビシオン「天十也。この様子では君も期待外れだったかな」
ビシオンは剣を手に持ち十也に近づいていく。
ビシオン「俺の能力『闇怯(あんきょう)』はお前に過去のトラウマを見せる。人間は弱い生き物だ。トラウマを乗り越えられるものはそうそういない。君もただの人だったか」
剣を振り上げるビシオン。
ビシオン「さらばだ、天十也!」
振り下ろされるビシオンの剣が十也を襲う。
ガキン!!
剣が何かに当たった。この音は人を切った音じゃあない。
???「おいおい。俺の腕に傷をつけるなんてなかなかいい剣じゃないか」
男が腕で剣を受け止めている。
ビシオン「なに!?」
驚き距離をとるビシオン。
ビシオン「何者だ?いつのまに現れた?」
???「俺は通りすがりのヒーローさ。てか、人の名を聞く前に自分の名前を言えって親に教わらなかったか?」
ビシオン「…」
ビシオンは男を見る。黒いスーツに龍を模したような仮面。そこから赤い長髪が出ている。異様な格好だ。
ビシオン(俺の剣を生身で受け止めただと…こいつはいったい…)
???「どうした?びびっちまったか?」
ビシオン「ふん。俺は
オリジネイターの一人、幻影のビシオン。名乗るのはかまわない…どうせ貴様もこいつと同じくなるのだからな」
???「へー、そうかい。オリジネイター、ね。」
仮面の男は不敵な笑みを浮かべる。
???「ちょうどよかったぜ!これでおれのミッションも完遂できそうだ」
ビシオン「ほざけ。たかが人間が俺の能力を突破はできん!」
剣を構えるビシオン。
???「ほ~、やる気だねぇ。あ!そうそう!」
ビシオン「?」
???「せっかくお前が名乗ってくれたんだからな。俺もお前らオリジネイターに名乗っておくぜ!」
仮面の男は言葉を続ける。その態度からは余裕が感じられる。
コード・ウルズ「俺の名はコード・ウルズ。お前らを倒すヒーローの名だぜ!きっちり覚えときな!」
to be continued
最終更新:2016年10月05日 22:25