秘密諜報員(ナンバーズ)

~廃工場近くの高層ビル・屋上~
№25「一瞬で決める!」

バッ!

ビルに手をつく№25。次の瞬間!

ドシュ!

零軌(れいき)「がっ…はっ…」
ビルから生えた植物の触手が零軌の体を貫く。
№25「『ヴェジテイトオン』。決着だ」

ブン!

触手が零軌の体を投げ飛ばす。

ガシャン!

屋上のフェンスにぶつけられ人形のように倒れる零軌。
№25「あのデータからS(エス)にまでたどり着くとは驚きだったが」
データ内に秘匿されていたSの情報。それは何重にもロックが掛けられていて、たどり着くのは至難のはずだ。そもそもデータを閲覧するのも強固なセキュリティがかかっていて難しい。
№25「戦いにおいては雑魚といわざる得なかったな。自分の力の底も理解できないとは…」
零軌の死体に歩み寄る№25。
№25「さて…何かこいつの正体に繋がるものは…」
零軌のことを調べようとする№25。

「乙女の体をまさぐるなんていただけないわねぇ」

№25の背後から聞こえる声。
№25「なに?」
声のする方を振り返ると…
№25「なっ!?」
目の前で死んでいたはずの零軌が立っていた。
№25「くっ!」
死体を確認する№25。先ほどまであったはずの死体がそこには存在しない。
№25「なんらかの能力か」
零軌「どうかしらぁ?」
№25「『ヴェジテイトオン』!」

バシュ!

植物の触手が零軌に襲い掛かる。

ズッ!

零軌の体を貫く触手。だが触手が零軌の体を貫いた瞬間、零軌の体が霧のように消える。
零軌「どこを狙っているのかしらぁ?」
再び№25の背後から聞こえる零軌の声。振り返ると零軌の姿がそこにある。
№25「幻惑系の能力か。ならば!」
両腕を交差する№25。
№25「その姿をあぶりだす!」

バッ!

交差した両腕を振り開く№25。

ドドドド!!

ビルの屋上に生える無数の植物の触手。

ブン!ブン!ブン!

屋上で暴れまわる触手。
№25「どこにいようとこれなら避けられまい」

ドゴン!ドゴン!

触手が屋上の地面を破壊しながら暴れる。

ズッ!

空を切ったと思われた触手が何かを貫く。
零軌「くっ…」
露わになる零軌の姿。その右腕を触手が貫いている。

ポロッ!

零軌の右手から何かが落ちる。それは更生院のデータ端末だ。

パッ!

それを手に取る№25。
№25「データ端末は取り戻せたな。あとは…」

ズン!

零軌「かは…」

地面から生えた無数の触手が零軌の体を貫く。
№25「お前を消せば終わりだ。切り刻め!」

バシュシュシュ!!

無数の触手が零軌の体を切り刻んでいく。粉みじんになる零軌の体。
№25「痕跡は残さない。それが秘密諜報員だ」
データ端末を手に高層ビルを後にしようと、屋上からビル内に入るドアノブへと手をかける№25。
№25(なにか…違和感を感じる。なんだ…)
なにかが腑に落ちない。それが何かはわからないが何かに対する違和感を抱いているのは事実だ。
№25(そうだ!)
その違和感の正体に気づいた№25。
№25(俺が対峙していた相手…それは俺が知っている人物だったはずだ)
確かあいつは更生院(カリキュラム)のランキングにいた。第6位の…
№25「響零零軌(ひびおれいき)。奴だった…」
なぜ自分は対峙した時点で彼女だと気づかなかったのだろう。彼女を倒してからその存在について認識できた。これは…
№25「思い出した!奴は確か…」

「もう遅いわよぉ」

スッ

№25の背中に当てられる鍵。

「『開錠(アンロック)』」

ガチャ!

№25が意識がなくなったかのようにその場に立ち尽くす。

零軌「さ~て探らせてもらうわよぉ」

№25が殺したはずの零軌が後ろに立っている。
零軌「私の能力は戦闘向きじゃないけど、使い方次第なのよねぇ」
№25が先ほどまで見ていた光景。零軌と対峙してから消すまで。そのすべては№25が見ていた幻(まぼろし)だったのだ。
零軌「先手さえ取れば『記録構成(メモリー・コンストラクト)』からは逃げられないのよぉ?」
響零零軌(ひびおれいき)の能力『記録構成(メモリー・コンストラクト)』。彼女の能力は記憶または記録を読み取る。
記憶および記録の閲覧には鍵を使って直接対象に鍵を当て、鍵を回す。対象がデータ端末ならば、どんな強固なセキュリティでも解除し内容を知ることができる。
そのほかに一定範囲内にいる対象の脳波に作用し、認識阻害をおこすこともできる。
零軌「今知りたいのは『member(メンバー)』のこと。私があそこにいたころには聞いたことがない名前よねぇ。あなたの記憶のぞかせてもらうわよぉ」

ブスブスブス…

№25の体から煙が上がる。
零軌「なに!?」

カッ!

次の瞬間!爆発し飛び散る№25。激しい爆炎に包まれる屋上。とっさに両腕で身をかばう零軌。
零軌「ぐっ!これは…」
はじけ飛んだ№25の体はよく見ると植物でできている。擬態植物。人の姿に似せた植物に後ろ姿だったため気がつかなかった零軌。いつのまにか植物と入れ替わっていた№25はその植物内に爆弾を仕込んでいたのだ。

№25「響零零軌。お前ごときに俺を倒せると思うなよ!」

どこからともなく現れた№25が零軌へと蹴りかかる。
零軌「きゃぁ!」
蹴り飛ばされる零軌。
№25「お前の認識阻害には制限時間がある。認識阻害が解け、お前を認識している今。もう俺には通用しない」
零軌「そうみたいねぇ…」
ヨロヨロと立ち上がる零軌。
№25「元居た鞘に戻ったらどうだ?そうすれば今回の件は見逃してやる」
零軌「あそこに?もしかして、今のあそこが『member(メンバー)』に繋がっているのかしらぁ?」
№25「察しがいいな…というよりお前ならあのデータ端末の中身は全て見たんだろ?だったらわかっていての質問か」
零軌「確信はなかったけどぉ。あなたと話して確信したわぁ。私のいた研究機関は『member(メンバー)』と繋がっていたってわけねぇ」
№25「そうだ。更生院(カリキュラム)と研究機関から排出された人材を用いて構成されたのが構成員(メンバー)だ。それがお前の知りたがっている答えだ」
零軌「それを私に話すってことは選択の余地はないってことかしらぁ?」
№25「そういうことだ。構成員(メンバー)として働くならば、今まで通りの生活を保障する。そうじゃなければお前に与えられるのは…」
零軌「命の終わりってことかしらぁ」
№25「そういうことだ」
零軌「う~ん」
両腕を組み頭を傾け悩む零軌。
零軌「困るわぁ。まだ高校生なのに人生を終えるなんてしたくはないしねぇ」
№25「決めるのお前自身だ」
零軌「そうねぇ…」
う~んと悩みながらも零軌は答えを出す。
零軌「決めたわぁ!」
№25「どちらでも俺は構わない。どうする?」
零軌「私は…こうすることにするわ」

ぐらっ…

№25「ぐっ…な…んだ!」
頭を抑えよろめく№25。強烈な頭痛が№25を襲う。
零軌「あのデータ端末にあった私のデータは古いのよねぇ。研究機関にいたころの私のデータなんだものぉ」
№25「認識…阻害なのか…おまえは…一度使用したら…しばらくは…できない…はず…」
零軌「能力は洗練されるものよぉ。ましてや私はまだ成長期なのだからぁ」
零軌の右手には鍵が握られている。
零軌「認識阻害は能力の使い方の一つに過ぎないわぁ。これはまた別なのよぉ」
№25へと歩み寄る零軌。
№25「…ぐっ…」
№25は酒でも飲んで酔っぱらったかのように千鳥足でフラフラしている。
零軌「あなたでは私に勝てないのよねぇ」
意気揚々に鍵を指先に乗せ、回す零軌。
零軌「私の能力も研究機関にいたころより進化しているのよぉ」
№25「なん…だと…」
最初に№25と対峙した際はあえて、認識阻害の能力だけを使っていた零軌。
零軌「ということでぇ。あなたの記憶見させてもらうわよぉ」
№25「ま…だ…」
鍵を手に持つ零軌。
零軌「あなたを探れば、すべてはわかるわねぇ」

タタタタタ!!

ビルの中から聞こえてくる足音。
零軌「もしかして…」
№25はこの事態をも想定した可能性はある。だとすればこの足音は…
零軌「構成員(メンバー)…だとしたら長居はできないわねぇ。あと一歩だったのだけれど…しょうがないわねぇ」

~~

バン!

屋上の扉が開かれる。
リヴィエラ「おい!どこだ№25!」
スカイ「ここが合流地点だよね」
アンダー「あっ…あそこ」
№25を発見するリヴィエラたち。
№25「待っていたぞ…」
随分と疲れた様子でその場に佇む№25。
№25「お前たちのほうはどうだ?」
リヴィエラ「こっちも問題はないさ」
スカイ「也転一凛からデータ端末は取り返せなかったけど」
№25「それは問題ない…」
リヴィエラ「あん?」
№25「データ端末は俺が取り戻した」
№25の右手に握られているデータ端末。
リヴィエラ「なんでおまえがそれを持ってんだよ?」
№25「情報が正しくなかったということだ…」
スカイ「どういうこと?」
№25「也転一凛は囮。響零零軌が裏で糸を引いていた。奴を追う」
アンダー「響零零軌…裳丹高校の生徒だね」
リヴィエラ「へぇ~。第4位の次は第6位かぃ」
スカイ「任務ならなんだってやるよ。ね、リヴィ?」
リヴィ「あぁ。こっちも也転一凛との戦いで消化不良だからな。そいつとは最後までやらせてくるならなんでもいいいさ」
№25「奴の能力はデータバンクに記載されているものよりも強力になっている。奴と対峙するときは注意しろ」
リヴィエラ「こっちにはアンダーがいる。遅れはとらないさ」
スカイ「そういうこと!ちょちょいとやってやろうじゃない!」
№25「奴は生け捕りにしろとはいわない。殺してもいい」
アンダー「学生は殺すと厄介…じゃなかったけ?」
№25「奴に関しては別だ」
リヴィエラ「なら遠慮する必要もないな!手っ取り早くてやりやすい!」
スカイ「加減しなくていいのは最高だね!」
№25「任せたぞ(相手は響零零軌…リヴィエラたちで無理ならあいつらを動かすか…)」

~ミストラルシティ・某所~
零軌「構成員(メンバー)ね。更生院(カリキュラム)を利用して秘密諜報部の下部組織を造っていたなんて。このことはEGOは知っているのかしらぁ?それともぉ、秘密諜報部で独自に行っていることなのかしらねぇ」
ミストラルシティの中を歩く零軌。
零軌「なんにしてもぉ、秘密諜報員に目をつけられた以上…このままでは平穏な生活は送れそうにないわねぇ」
すぐにでも追手が彼女に差し向けられるのは予想がつく。
零軌「こちらも手を打つ必要があるわねぇ」

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最終更新:2020年10月04日 20:25