~ミストラルシティ・廃ビル~
人もあまり寄り付かない廃ビル。そこに彼女たちはいた。
リヴィエラ「ったく。今度の任務はなんだよ?」
スカイ「大々的な任務みたいだよね。私たち以外の
構成員(メンバー)も集められているみたい」
リヴィエラ「他の構成員?共同任務か?そんなの聞いたことないな」
どうにもきな臭い。構成員はチームで活動している。ほかのチームとの協力しての任務などいままで一度もない。
アンダー「…なんにしても仕事だから」
リヴィエラ「ちっ、仕方がねぇな」
廃ビル内の一室に入るリヴィエラたち。
リヴィエラ「ここか」
スカイ「おや?他の構成員は見当たらないね」
リヴィエラたちの他に人の姿は見えない。
アンダー「だれもいない…」
リヴィエラ「わざわざ呼び出しといてなんだってんだ№25のやつ!」
部屋の奥から白衣を着た女性が姿を現す。
スカイ「あんたは?」
???「私は静寂機関所属の能力者だよ。構成員だね?」
リヴィエラ「静寂機関か」
構成員とは協力関係にある会社だとリヴィエラたちは聞いている。ここにいるアンダーも正式な所属は静寂機関だ。
???「君たち以外の構成員はもう現場に向かった。あとは君たちだけだ」
リヴィエラ「ここじゃないのか?」
???「ここは集合場所。君たちはここからとある場所へ飛んでもらう」
スカイ「飛ぶ?」
???「そう。私の能力でね」
ヴン!
リヴィエラたちの目の前の地面が光る。
???「ここに乗ってもらえば目的地に着くわ」
スカイ「なにそれ!?ワープでもするの?」
???「そんなところね」
リヴィエラ「それで目的地はどこなんだ?」
???「それは教えられないわ。あなたたちは言われた任務をこなすのが仕事。あなたたちの任務は治安維持員の排除。それ以上の情報は必要ない」
リヴィエラ「ちっ。まぁいいさ。いくよアンダー、スカイ!」
スカイ「おっけー!」
アンダー「うん…」
光る地面の上に乗る3人。すると!
ヴン!
3人の姿が消える。どこかに飛ばされたようだ。
???「これで最後だね…さすがに疲れた」
その場に座り込む女性。
ピピピ!!
女性の携帯端末に通信が入る。
???「はい」
№25『こちら№25。そっちの手筈はどうだ?』
???「ちょうど今、招集にした構成員は全員送り終えたよ」
№25『そうか。お疲れのとこ悪いがお前も早めに静寂機関に来てくれ』
???「あれだけの数の構成員を送ったのに…たかだか学生の治安維持委員に後れでも取っているのかしら?」
№25『治安維持委員も能力者が多数在籍している。たかだか学生だと舐めていると足元をすくわれるぞ』
???「そう。じゃあ私も早めに向かうわ」
№25『頼んだ』
通信が切れる。
???(まさか秘密諜報員同士で連絡を取り合って任務を行うとは思いもしなかったわね。それよりも私の他に構成員の管理役を任されている諜報員がいたのも驚きだったけれど)
バッ!
白衣を脱ぎ棄て、黒いスーツに着替える女性。
№27「諜報員№27(ニーナ)。任務を遂行する」
~ミストラルシティ・静寂機関ビル前~
ウォォォ!!
構成員(メンバー)と治安維持委員(セキュリティ)。互いに能力を駆使し、激しい乱闘が繰り広げられる。
美天「これじゃあ、ビル内に突入するのは無理そうですね」
一凛「これだけの数の構成員がでてくるなんて…静寂機関はもうなりふり構う気はないってわけね」
十一「でしたらこちらも本気でいきます!」
バッ!
魔導帳を手に持つ十一。
十一「
メルト!」
メルト「わかってる!」
宝剣を構える
メルト。
十一「道を切り開きます!」
ビッ!
魔導帳の1ページを破る十一。破った紙を空高く投げる。
カッ!
紙から放たれる光。あたり一帯を光が包む。あまりのまぶしさに全員が目を覆う。
メルト「今のうちです!私の手を!」
メルトの手を取る一凛、十一、美天。
シュン!
4人の姿が消える。
~静寂機関・1階受付フロア~
シュン!
ビルの入口内に転移した4人。
メルト「成功ですね。一度転移したことがある場所なのでうまくいきました!」
十一「これでビル内には入れましたね」
外では構成員と治安維持員が激しい戦闘を繰り広げている。
カタタタタ!!
ノートパソコンを目にもとまらぬ速さで操作する美天。
美天「ビル内のセキュリティシステムは掌握しました。監視カメラの映像に私たちの姿が写ることもありません」
十一「さすがね美天」
一凛「よし、それじゃあ見つかる前に…っていまさらだけどどこに向かうの?」
静寂機関と構成員を制圧するにはどこへ行けばいいのだろうか。
十一「指揮を執っているのは静寂機関社長静寂静峰のはず。目指すは社長室です」
メルト「ん~と社長室は…」
受付横の案内板に目をやる
メルト。
メルト「最上階ですね」
美天「エレベーターを使うのはおすすめしません。セキュリティシステムは掌握しましたが密室の閉所は対応されやすいので避けたほうがいいと思います」
一凛「階段でいくしかないわね」
4人は階段を上り最上階を目指す。目指すは最上階、社長室だ。
~ミストラルシティ・静寂機関ビル前~
ザッ!
ビル前に到着した零軌と
きゅっぱ。
零軌「間近でみるとなかなか鮮烈ねぇ」
学生とはいえ能力者同士の戦い。人が空を飛び、炎が舞い、氷柱が現れる。通常の世界では考えられない光景だ。
きゅっぱ「こいつらの戦いに参加するのかい?」
零軌「私は構成員には興味ないの。治安維持委員にもね」
きゅっぱ「それじゃぁ…」
零軌「私の待ち人は諜報部の人間。ミストラルシティ秘密諜報部」
スッ!
前方に手をかざす零軌。
零軌「私に触ったまま着いてきてもらえるかしらぁ」
そのまま手を前に突き出しながら激しい乱闘の中を進んでいく零軌。すると…
スッ…
零軌が進む道を譲るかのように、治安維持委員と構成員が避けていく。避けながらも彼らはなにごともないように戦いを続けている。
きゅっぱ「あんたの能力か」
零軌「そうよぉ。これで建物内には楽にいけそうねぇ」
きゅっぱ(こんな能力があるなら追手からも簡単に逃げれたはず…能力の使用になんらかの制限があるのか…)
~静寂機関・2階~
コソッ…
階段の陰から2階を除く一凛たち。
ウィィン!
無人AIのロボットたちがフロア内を徘徊している。警備ロボットだろうか。
一凛「見つかったら厄介ね」
バッ!
上から光に照らされる一凛たち。上を見ると小型のドローンが一凛たちを捉えていた。
十一「見つかった」
「おやおや侵入者か?」
一凛たちのまえに白衣をきた男が現れる。その男に一凛は見覚えがある。
一凛「機征械理!」
械理「また会うとは奇遇だね風力使い(エアロマスター)」
ウイルスによりAIの暴走事件を引き起こした機征械理。彼が一凛たちの前に立ちはだかる。
十一「あなたは更生院(カリキュラム)に送られたはず…」
械理「今の僕は構成員だ。更生院のなかでも優秀な人材は構成員として引き抜かれる。こうも早く君に復讐する機会が訪れるとはね」
一凛「やれるものならやってみなさいよ」
メルト「待ってください。ここは私が!」
前に出る
メルト。
メルト「皆さんは先に行ってください」
十一「こいつは危険よ。
メルト一人で大丈夫なの?」
メルト「私は大丈夫だから。静寂静峰を捕えなければ戦いは終わらないんですよね。だったら先を急ぐべきです」
一凛「
メルトさん…」
美天「相手はウイルスを使って人体の電気信号を操ることができます。注意してください」
メルト「わかりました!」
一凛「
メルトさん無理はしないでね」
十一「すぐに静峰を捕えるから!」
メルト「うん。ここは任せてシイィン!」
タタタタ!!
メルトを残し上階へと上がっていく一凛たち。
械理「風力使いの仲間か。どんな能力者だろうと僕のAIに敵いはしない!」
2階を徘徊していた警備ロボットたちが集まってくる。
メルト「私も負けるつもりはありませんよ!いきます!」
~静寂機関・3階~
3階へと到着した一凛たち。
「おっ?来やがったか」
3階で待ち受けていたのは…
リヴィエラ「風力使い…なんでてめぇがいやがる?」
スカイ「治安維持委員の排除って言われてたけど一緒にいるならやっちゃうよね」
アンダー「任務だからね」
一凛「あんたたちは…」
廃工場で戦った奴らだ。
十一「こいつらはあの時の!」
リヴィエラ「あんときの決着。つけようか!」
スカイ「今回は殺してもオッケーみたいだし。気持ちよくやっちゃう?」
アンダー「…うん」
一凛「こいつら相手じゃ一人じゃ勝てない…」
以前戦ったことがあるからわかる。一人で相手して勝てる相手じゃないことは。
十一「足止めを食らっている場合じゃないんですけど…仕方がないですね」
リヴィエラ「いくぜ!!」
リヴィエラたちが一凛たちに襲い掛かる。
バッ!
リヴィエラ「なんだ!?」
突如リヴィエラたちと一凛たちの間に割って入る黒いローブに身を包んだ人物。
一凛「だれ!?」
黒ローブ「……」
ガッ!
黒ローブの人物はリヴィエラたちの攻撃を受け止める。
黒ローブ「…いけ」
一凛「えっ?」
黒ローブ「上へ行け。こいつらの相手は俺がする」
一凛「わ、わかった」
一凛たちは上階へと向かう。
リヴィエラ「おい!てめぇ、何者だ?」
黒ローブ「データにあるな。構成員、リヴィエラ・キュリス。水を操る能力者か」
スカイ「何者だっていいよね。どうせ殺すんだし!」
シュッ!
手にもった爆弾を黒ローブに投げつけるスカイ。
黒ローブ「……」
黒ローブは爆弾を避ける。
カチッ!
だが避けた先の地面で音がする。
ドゴォン!
爆発が起きる。炎に包まれる黒ローブ。
スカイ「やりぃ!爆弾はブラフ。設置していた地雷が本命ってね!」
アンダー「さすがスカイ」
リヴィエラ「風力使いたちを追うか」
「そうはさせない」
炎の中から聞こえる声。黒ローブが炎で焼け、ところどころローブの中の姿が見える。スーツを着た男性のようだ。
黒スーツ「構成員…思ったよりやるようだな」
リヴィエラ「男か」
スカイ「なんだか№25に似てる格好だね」
黒スーツ「№25…諜報員か。俺の一個前のナンバーとは奇縁だな」
バッ!
炎で燃えるローブを投げ捨てる男。
にろく「俺の任務は構成員と静寂静峰およびそれに与する諜報員の排除。これより任務を遂行する」
最終更新:2020年12月06日 15:07