~静寂機関・6階~
涅尤「炭素装甲(カーボンアーマー)」
ブスブス…
煙を上げる黒い炭が涅尤の体を覆っている。まるで鎧のようだ。
№27「データにない技…」
涅尤「データばかり見ていても成果はだせない」
ズズズ…
涅尤の手元に炭が集まっていく。日本刀を思わせる炭の刀が形成される。
№27「『シャドーオン』!影たちよ!行きなさい!」
ズッ!
影が地面から這い出てくる。影で造られた分身が涅尤に襲い掛かる。
涅尤「炭刀(スミガタナ)」
ブン!
炭の刀を振るう涅尤。その一撃は地面と影の分身を切断する。地面から切断された影は消滅していく。
№27「私の影が…」
涅尤「影は地面から離れれば消滅する。それだけのことだ」
チャキ!
炭の刀を構え№27へと切りかかる涅尤。
№27「『シャドーオン』!」
ズッ!
自身の影へと姿を消す№27。
ガキン!
涅尤の刀は地面へ激突し、その刀身はバラバラになり周囲に飛び散る。
涅尤「消えたか」
№27「これならあなたが私を掴まえることはできない。どこから来るかわからない恐怖におびえなさい!」
涅尤「そうか」
バキン!
涅尤の体を覆っていた炭の鎧が剥がれ飛び散る。
涅尤「ならこれも無意味だな」
№27(こいつ…)
相手がいつ襲ってくるかもわからない状況で防御を解くとは理解できない行動だ。だがチャンスには違いない。
№27(もらった!)
ズッ!
涅尤の影から姿を現す№27。
№27「捉えた!死…ぐふっ…!」
何が起きたのか理解できない。突然息ができなくなり、喉をおさえ苦しむ№27。
涅尤「死ぬのはお前だよ」
№27「が…ぐっ…なんで…」
涅尤「僕は炭素装甲を解除した際、その構成していた炭をすべて大気中に舞わせていた。僕の周囲にはその炭が舞っている」
№27「ま…さか」
涅尤「おまえも知っているだろう。僕はその炭を操ることができる。操るということはその炭一つ一つの状態を把握できるということだ」
炭に何かが触れればそれは涅尤が知覚するということ。№27がどこから現れようと炭に触れた瞬間、彼には手に取るようにわかるのだ。
涅尤「お前が出てきた瞬間、お前の口から僕の炭を送り込んだ」
チリ…チリ…
№27の体内から聞こえる発火音。
№27「ま…まって」
涅尤「大人同士の戦いに待ったはないよ」
ボン!
№27の体内で爆発する炭。№27の口から吹き上がる炎。
№27「かはっ…!」
体内での爆発。その衝撃に耐えられるはずはなく一瞬で気を失う№27。
ブク!
№27の体が風船のように膨れ上がる。立て続けに体内で起きる爆発の衝撃のせいだ。
ボッ…
次の瞬間、体が裂け粉微塵になる№27。
涅尤「憂さ晴らしにはなったか。さて…これからどうしたものかな」
ピピピ!!
涅尤「んっ?」
携帯端末に連絡が入る。それは涅尤のではなく近くで倒れているだれかのようだ。
十一「うっ…」
意識を取り戻す十一。彼女の携帯端末に誰かからメールが入る。
ピッ!
内容を確認する十一。
十一「静寂静峰を確保…やりましたね先輩!すぐに他の治安維持委員にも連絡をいれないと」
タタタ!!
下の階から誰かの足音が聞こえる。
メルト「十一(シィイン)!!」
十一「メルト!」
お互いの無事を確かめ合い安堵する二人。壁の向こうで十一の話を聞き一人落ち込む涅尤。
涅尤「やはり社長は捕まったのか…はあぁ…」
ため息をつき、暗闇の中へと涅尤は姿を消す。
~静寂機関・最上階社長室~
ピピピ!!
十一から一凛の携帯にメールが入る。
十一「静寂静峰の確保を治安維持委員に伝達。それに伴い、各構成員は抵抗を辞め拘束されました」
一凛「これで終わったのね。さぁ、帰るとしますか」
意識を失った美天を担ぎ、下へと降りようとする一凛。
ポーン!!
エレベーターの表示が自分の居る階を指す。
ガーー!!
開くエレベーターの扉。
一凛「あんたは!」
エレベーターの中から現れた人物。それは…
リヴィエラ「よぅ。第4位風使い(エアロマスター)」
前に工場で会った女だ。だがなにか様子がおかしい…。服はボロボロでその両腕は縫われたような跡がある。その両腕の継目は痛々しく、まるでだれかの腕を縫い付けたかのように肌の色も違う。
一凛「あんたはあの時の…」
リヴィエラ「お前で準備運動と行くか。いくぜ風力使い!」
タタタ!!
リヴィエラが一凛へと距離を詰めてくる。
一凛「能力を使わないで肉弾戦…なんで」
バッ!
左手を一凛へと突き出すリヴィエラ。
ゴッ!
だがその手は風で作られた壁に阻まれる。
リヴィエラ「これだけ近づけば十分だろ。『下限空間(アンダーワールド)』」
ヴン!
リヴィエラの左手から前方に空間が展開される。
ジジジ…
一凛「うっ…これは!」
風の壁が消える。この能力はリヴィエラと一緒にいた女の能力だ。なぜ彼女がこの能力を使えるのだろうか。
リヴィエラ「うまくいってるな。ならこいつはどうかな?」
ピン!
右手で小さな爆弾を弾くリヴィエラ。
一凛「やばっ!」
能力を使えない状態では爆弾の爆発に耐えられない。この至近距離ではリヴィエラも同じはずなのに。
ドゴォン!
爆炎は二人を包む。
リヴィエラ「くくく…素晴らしいな!静寂機関の装置はよぉ!うまくいったぞ!」
右手を突き出したリヴィエラを炎が避けるように燃える。それはまるでスカイの能力『炎蔽(えんぺい)』を思わせる。
リヴィエラ「これなら一緒に戦えるなぁ!スカイ!アンダー!」
静寂機関の研究していた能力者研究。その中の1つに能力の遠隔使用に関する研究がある。能力者の脳波を電波で飛ばすことで遠く離れたところでも能力の使用を可能にする。
その条件として能力者の脳を特殊な装置の中に入れておく。そして能力を使用したいところに能力者のDNAを認識できるものがある。その条件を満たせば能力の遠隔発動が可能。
リヴィエラはその装置にスカイとアンダーの遺体を入れ、自身の両腕に二人の腕を移植(流体操作による細胞及び血液を強制循環させ動かしている)し自分の脳と二人の脳を装置で繋げることで能力の遠隔発動を可能としているのだ。
一凛「けほっ…」
爆炎の中から姿を現す一凛。多少の焼け傷は負ったようだがなんとか無事のようだ。
一凛「あんたは水を操る能力だったはず…」
リヴィエラ「今の私は3人分だ!風力使い、すぐに潰してやるよ!(№25を消し潰す!その前に立ちふさがる奴らも潰す!)」
一凛「どういう仕組みかわからないけど…やるしかないようね」
美天を下ろす一凛。
一凛「私もここでやられるわけにはいかない!いくわよ!」
リヴィエラ「こいよ!風力使い(エアロマスター)!」
最終更新:2020年12月29日 23:24