開かれしゲート!現れる訪問者!

~グリフ大陸・EGO研究施設(元EGOグリフ大陸支部)~
人も寝静まった深い夜。研究施設の最奥、大きな機器類につながれたそれは静かにそこに佇んでいた。

次元門。

巨大な天使の輪を思わせるそれはオウリギンいわく数多の世界を繋ぐ門。
再びそれが動き出すとき、それが世界にもたらすのは吉兆かそれとも災いか。

ゴゥ…

次元門につながれた計器類が反応を示す。

ピーピーピー!!

異常な数値反応。それは次元門が稼働したことを示している。

ヴン!!

門から光が発生する。その強烈な光は部屋中を包みこむ。

コツ!コツ!コツ!

部屋の中に反響する足音。

「やっと門が繋がったか…。この世界はどうだ」

門の中から現れた何者かは手に持ったレーダーのようなものに目を向ける。

『早速反応ありか。当たりだな』

ニヤリと笑う男。服からスキットルを取り出し、その蓋を開ける。

グビッ!

スキットルの中の酒を飲む男。実にうまそうに酒を飲む。

「まずはこの反応のある場所に向かってみるか」

~翌日・EGO本部長官室~
カレン「グリフ大陸からの報告は確認した」
グリンツ「次元門が稼働した痕跡が見られたとの報告ですね」
カレン「真夜中のことで直接見たものはいないが、計器類の反応、防犯カメラの映像から間違えないようだ」
カメラには部屋中が光に包まれる瞬間が写されていた。あまりにまぶしい光で映像がまともに映ってはいないがかすかに人影がみえるとの報告であった。
カレン「門から何者かが現れた…」
グリンツ「至急調査の必要がありますね」
カレン「グリフ大陸支部の方でも調査は行っているが次元門から現れたものの行方はまったくつかめずだそうだ」
グリンツ「本部からも応援を送りましょう」
カレン「頼んだ。なにか起きる前に対処できればいいが…」

~ミストラルシティ・路地裏~
「おらおら!」
不良グループたちが喧嘩をしている。安寧世界を経験した後とはいえ、こういう小さな争いはまだなくなりはしないようだ。

「ずいぶん盛り上がってんなぁ。俺もちょっと混ぜてくれよ?」

スキットルを片手にふらふらと歩く男が不良たちへと近づいてくる。
「なんだおっさん!酔っ払いか?」
「うまいぞ。お前たちも飲むか?」
「うっ!こいつ酒くせぇ!だいぶ飲んでやがる!」
「おこちゃまには早かったかな?」
「なめやがって!おい!お前ら!やっちまうぞ!」
先ほどまで喧嘩していた不良たちが一斉に男の前に立ちはだかる。

「いいねぇ。さて楽しませてくれよ!」

~EGOミストラルシティ支部~
EGO隊員「A地区で不良グループによる喧嘩だそうです」
マードック「う~ん。ここの所多いなぁ。仕方ない十也、至急現場に向かってくれ」
十也「了解!いってくるぜ!」

~ミストラルシティ・路地裏~

グビッ!

「ったく、最近の若い連中はたるんでいやがるなぁ」
酒を飲みながら座り込んでいる男。その周りにはうめき声をあげうずくまる不良たちの山。

十也「おい!EGOだ!喧嘩は終わりだ!」

現場に到着した十也。だがすでに不良たちは全員倒れている。そしてそこには怪しげな中年が一人。
十也「おまえがやったのか」
スキットルを手にした中年。服装は軍服のようだが、どこ所属のものだろうか。まったく見覚えがない。それにこの距離でもわかるくらい酒の匂いがする。
「あぁそうだ。ここの治安組織か?腕慣らしも足りてないからな。ちょうどいいか」
立ち上がる男。酒を飲みすぎているせいか、少しふらついているようにも見える。
十也「お前は何者だ?どっかの軍に所属してるのか?」
「ボウズ、親に教わらなかったか?人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんだぜ」
十也「はっ!そうか!俺は天十也!EGOミストラルシティ支部所属だ!」
自信をもって名乗る十也に男はあっけにとられる。まさか今の返しに馬鹿正直に答えてくるとは微塵も思わなかった。
「(こいつ…ただのバカか。それとも動揺をさそっているのか?)まぁいいさ。どちらにしてもだ」
十也「俺は名乗ったぞ!お前も名乗れ!」
「仕方ねぇな」
頭をポリポリとかきながらけだるそうに答える男。
ブラッド「俺はアストレア帝国第1師団長ブラッド・シオンだ」
十也「アストレア帝国?」
聞いたこともない国だ。だが男が嘘を言っているような感じでもない。
ブラッド「考えるだけ無駄だ。いくら考えてもわかりやしねぇよ。それよりも俺をとらえるんだろ?」
十也「そうだったな!細かいことを考えるのはやめだ!まずは捕まえてから考える!」
ブラッド「かかってきな。さっきのガキどもよりは骨がありそうだ」
十也「たぁ!」
素手でブラッドを捕えようとする十也。だがそれをたやすく躱し、ブラッドは十也の腕をつかんで地面へと投げつける。
十也「カウンター!?だけど!」
地面に手を向ける。
十也「ブレオナク!」
十也の手に槍が出現する。

ガッ!

地面へと槍を突き刺しその反動で逆にブラッドを投げ飛ばす。
ブラッド「能力者か…少しは楽しめそうだな」
投げ飛ばされながらも近くにあった建物へ捕まり態勢を会って直すブラッド。

ポロッ…

ブラッドのポケットから何かが落ちる。何かのレーダーのようだ。レーダーに目をやるブラッド。
ブラッド「こいつは…!」
レーダーの反応は目の前を示している。つまりそれはブラッドの目の前にいる人物が対象だということ。先ほどまでとブラッドの顔つきが変わる。
ブラッド「まさかおまえがとはな。探す手間は省けたか」
十也「なにを言ってる?」
ブラッド「お前の持っているコアをもらう」
十也「コア?」
まるで何のことかわからないという様子だ。
ブラッド「コアを知らない?覚醒すらしてないのか?」
何かを念じるようにブラッドが両目を見開く。
ブラッド「こいつ…なるほどな。イミテーションか…」
十也「コアだのイミテーションだの…なんだかよくわからないが…一気に決める!『ブラスト・リンカー』!!」

バシュン!!

鎧をまとう十也。
ブラッド「粒子と物質の相互変換。間違えないな…こいつは」
十也「てりゃぁ!!」
ブラッド「『ウォークライ・ブラッド』!」

バシュン!!

ブラッドの足元から血のように赤い旋風が巻き起こり、ブラッドの体を包み込む。

ガキン!!

ブレオナクが何かに受け止められる。
十也「なっ!?」
ブラッドの姿が変わっている。2本の槍をその両手に携え、その身は紫の鎧に包まれている。細部は違えど、その姿はまるで…
十也「俺と似た能力!?」
ブラッド「はぁ!」

ブン!!

大きく薙ぎ払われるブラッドの双槍に吹き飛ばされる十也。
十也「同じタイプの能力者…」
ブラッド(こいつの反応を見る限り…俺のことはわからないみたいだな)
ブラッド「だが…イミテーションはその存在そのものが俺たちの誇りへの侮辱。目障りだ。消えてもらう!」
双槍を構え、十也へと切りかかるブラッド。
十也「そっちが2本なら!こっちも!『ブレオナク・ツヴァイ』!」
2つに分離したブレオナクで応戦する十也。激しくぶつかり合う十也とブラッド。
十也「こいつ強い!」
ブラッド「ほらほら!どうした!そんなもんか!」
十也「こうなったら!AS(アクセラレート・シフト)!」

ギュォォン!!

十也の鎧が赤く輝く。
ブラッド「イミテーション・コアの力か…!」
十也「うぉぉ!!」
高速で攻撃を繰り出す十也。その攻撃を防御するのに手一杯なブラッドは、次第に押され始める。
ブラッド「ここまでやるとは…ぐっ!」
ふらつく男。その隙を十也は見逃さなかった。
十也「もらった!」

ガキン!

十也「なっ!止められた!?」
今のタイミング。確実に入ったと思われたその一撃はブラッドに止められてしまう。
ブラッド「残念だったな!今度はこっちの番だ。イミテーションと本物の差ってやつを見せてやる!」

キュォォン!!

男の鎧を青い光が包み込む。直後!

ザシュ!!

十也「うわっ!」
ブラッドの姿は見えないが、十也の鎧が切り刻まれていく。目にもとまらぬ速さに成す術もない。
十也「く…そ…来いブレオナク・・・ドラゴン!」
十也の呼びかけに応じるようにブレオナクドラゴンがブラッドの前に立ちはだかる。
ブラッド「召喚術も使えるとはな。だが…」
両手を重ねブレオナクドラゴンへと向けるブラッド。
ブラッド「超粒子ブラスター!!」
両手から放たれる粒子の光線がブレオナクドラゴンを焼き尽くす。黒く焦げ、地面と落下するブレオナクドラゴン。
十也「うそ…だろ」
ブラッド「終わりだ」
ブラッドの槍先が獲物を見据える。

ブシュッ!!

十也の左胸を貫通するブラッドの槍。
十也「が…はっ」
その槍先には十也の体の中から貫かれた心臓ほどの大きさの光る球体が刺さっている。
ブラッド「イミテーション・コアは破壊する」

パキン!!

ガラスのように砕け散る球体。ブラッドは槍を十也の体から引き抜き十也をその場へと投げ捨てる。
ブラッド「俺のコア『揺らがぬ天秤(ゆらがぬてんびん)』にイミテーション(模造品)ごときが太刀打ちできると思うな」
ピクリとも動かない十也。それを確認したブラッドは通信機を手に取る。
ブラッド「俺だ。イミテーションを一体排除した。ほかの反応もイミテーションの可能性がある。一度、態勢を組んでから再びこの世界に侵攻する。あぁ、すぐにそちらに戻る」
通信が終わるとブラッドはその場を後にした。

ピクリ…

ブレオナクドラゴンがなんとか起き上がる。その眼は動かなくなった十也を見据えている。

ブレオナクドラゴン「…」

自らの背中に十也を乗せ、ぼろぼろになった体で飛び立つブレオナクドラゴン。彼が向かう先は…

to be continued

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最終更新:2023年01月03日 00:48