正体(しょうたい)

~魔導都市・千百家~
最上階への階段を登る十一とフラッシュ。
十一「この先の扉を抜ければ…」
扉を開くとそこは開けた広間になっていた。そこで待ち受けていたのは…
千百一「ここまでたどりついたか。さすがはわが血筋とで言っておこう」
十一「一(シー)!」
フラッシュは十一の前に彼女を守るように立つ。
十一「お父様と林さんを怪異に変貌させたあなたを許しはしません!」
一「所詮は力がないからそれに飲み込まれたのだ。力があれば怪異なるものに飲み込まれることもない」
十一「御託はそこまでです!フラッシュ!」
十一の声に応じるように口を開くフラッシュ。

ゴオゥ!!

フラッシュの口から炎が放たれる。
一「ふっ」

バシュン!

一の手前で火球は消滅する。
一「低級な魔導ごとき俺には届かない」
十一「やはりあなたも…というより当然ですか」
千百家の始祖である一がその術式を持っていないはずがない。一子相伝のあの術式を。

バッ!

上半身の服を脱ぐ一。その体には無数の青い刺青のように光る術式が浮かび上がっていた。
一「おれにはわかるぞ。お前が今の術式の継承者だろう?」
十一「同じ術式を体に刻んでいるからですか…隠せはしませんね」
一「見せてみろ!お前の千百款染(スィンバイクァンラン)を!」
十一「くっ…(この男に勝つためには使う以外に選択肢はない…ですが…)」
能力と魔導が封じられたこの安寧世界。だがフラッシュの力を使えば、千百款染を使うことはできる。
十一「フラッシュ…」
フラッシュに目をやる十一。フラッシュはわかっていると言っているようにその目を見返す。覚悟を決める十一。
十一「わかった…いくよ!フラッシュ!」
フラッシュの口に魔導帳の1ページを食べさせる十一。直後!

コォォォ!!

十一の上半身に刻まれた模様と魔導文字の刺青が青く光る。それと同時に苦しむフラッシュ。
十一(ごめん…フラッシュ。今の私に魔導は使えない。だけど魔導の術式は体に刻まれている。その術式を発動できるものがいれば千百款染を発動できる)
十一がフラッシュに食べさせた魔導帳に刻まれていた術式は千百款染の発動術式。本来ならば自身の意思で発動できる術式だが、いざという時のため外部から発動できるよう持ち歩いている本当の危機が迫ったときに使うものだ。
それを使う今。今こそが、その本当の危機が目の前にあるということ。
十一(千百款染は使用者の生命エネルギーそのものをマナとして用いるという大きな代償がある。だけどこの発動方式をとれば、術式を発動したフラッシュの生命エネルギーも消費されていく)
十一「いきます!」
一「こい!」

ガガガガ!!

目にもとまらぬ速さで格闘戦を繰り広げる十一と一。
肉体強化魔導の効果でお互いに致命傷は回避しながらも、その体には風を切るほどの拳や蹴りによる攻撃で無数の裂傷がたまっていく。
一「この程度!」
十一「まだまだです!」
だがその無数の裂傷も気にも留めないかすり傷とでもいわんばかりに二人は激しい格闘戦を繰り広げる。
一「俺についてくるとはほめてやる!だが!」

バッ!!

手をひらき十一に向ける一。次の瞬間!

ドバババ!!

一の手のひらから激しい火炎、烈風、水流が同時に放たれる。
十一「この一瞬で!?(これだけの複数の魔導を使うなんて!)」
この距離では避けれない。だとすれば
十一(突っ込みます!)
体に防御魔導を纏い、突撃する十一。一の放った複数の魔導と十一の防御魔導が激突する。激突の衝撃で激しい閃光と共に爆発が起きる。
爆炎に包まれる二人。

ボッ!!

爆炎の中から飛び出るように距離をとる2人。
一「これも防ぐとはすばらしい。千百款染は随分と研鑽されてきたらしい」
十一「あなたを倒すのはお父様からたくされた私の使命!負けるわけにはいきません!」
一「その心意気は買ってやる。だがその鼻っ柱をへし折ってやろう!」

ヴン!!

突如、十一の体が透明な四角い箱に閉じ込められる。
十一「まずい!」
箱の壁に蹴りを放つ十一。その蹴りにより壁にひびは入るが破壊するには至らない。
一「黄帝雷(ホァンディレイ)」
それは禁忌の魔導の一つ。対象を透明な箱に閉じ込めたのちに、それは放たれる。

ピギャギャギャ!!

無数の雷。それが箱内部で壁を反射し、対象を焼き尽くすまで無限に放たれるのだ。

十一「きゃぁぁぁ!!」

雷に焼かれるものは絶命するまで無限の叫びをあげ続ける。
だが、この魔導は強力すぎるがゆえに術者にもそのダメージが返ってくる。
それゆえに発動した者もほぼ例外なく死に至るこの魔導は禁忌の魔導としてのちに使うものがいなくなったのだ。だが…
一「千百款染の力を引き出せばこの程度の副作用」
術式の副作用を中和するように回復魔導で自身の傷を治す一。

ガブッ!!

なにかが一の腕にかみつく。十一の召喚獣フラッシュだ。
一「邪魔をするな」
一がフラッシュに手をかざすと衝撃波で壁へと吹き飛ばされる。
一「さぁ、死ぬまで断末魔を響かせろ」
無限の雷は十一の体を焼け焦がしていく。いくら千百款染を発動してるとはいえ、このままではいずれ十一は…
十一「もう…これ以上は」
意識を保つので精一杯。
十一(ごめんなさいお父様…そして先輩…)
最後に浮かぶのはやはり一凛の顔。それを脳裏に浮かべた十一は、その瞼をゆっくりと閉じていく。

バキン!!

何かが十一を閉じ込めている透明な箱にぶつかる。

ビキビキビキ!!

箱全体にひびが入り、そして

バキャン!!

箱が割れ消滅する。箱から出た十一はその場に倒れる。
十一「はぁ…はぁ…なにが…」
息も絶え絶えながら、顔を上げると自身の眼の前には足が浮いていた。その足は細く女性のようだ。浮いている足の上の方をみると白い長髪が目に入る。
一「だれだ?俺の邪魔をするとは」
白髪の少女「やはり…これが気配の正体」
そう話す白髪の少女は手に持った長い日本刀のような刀を構える。
一「浮いている…(能力でも魔導でもない。なんだこいつは?)」
プカプカと浮いている少女は十一のほうに目をやる。
白髪の少女「大丈夫…そうではないですの」
十一「はい…でもおかげで助かりました」
十一は力を振り絞り立ち上がる。立ち上がって改めて見ると少女は自分と同じくらいか年下に見える。
十一「あなたは何者なの?」
ティスシス「私はティスシス。気になることがあってここに連れてきてもらいましたの」
そいうとティスシスはその眼を一に向ける。
ティスシス「私がこの街に来てから気になっていた気配はあなたでしたの」
一「俺の気配だと?」
ティスシス「はい。あなたからは虚像の気配を感じますの」
虚像の気配。それは偽りの魂による生命体。偽りの命。
一「虚像だと?この俺が?」
ティスシス「えぇ。入れ物の器に入りこんだ虚構の魂。造られた存在。それを私は感じていましたの」
一「俺が造られた偽物だと?」
十一「偽物…」
ティスシス「そう。本物を真似た存在」
一「ばかなことを。この器は初代千百家当主である俺千百一が復活するための…」
ティスシス「魂の復活。それはあり得ない話ではありえませんの。でもあなたはちがいますの」
十一「ティスシスさん。違うってどういうことなの?」
ティスシス「あれは模造品の体にそのオリジナルを模して入り込んだ異物。本物ととってかわろうとする怪異。いうなればドッペルゲンガーとかいうやつですの」
一「おれがドッペルゲンガー…そんなこと…」
様子がおかしい一。
十一「人に化ける怪異…妖狐(フーヤオ)ですか」
一「その名を呼ぶな!」
妖狐と呼ばれた瞬間、一の体が変貌していく。

バキバキバキ!!

鋭い目に獣の耳、大きな尻尾が生える。その姿はまさに狐の妖怪。
十一「妖狐(フーヤオ)!まさかほんとうに!?」
ティスシス「正体を見破られると姿が保てなくなるようですの」
妖狐「もうすこしで完全な姿を得られたものを」
十一「なんで!?いつから入れ替わって…」
妖狐「お前の思っている入れ替わるとは少し違う。俺は魂が弱った人間と入れ替わるのだ」
人造的に作られた千百一一。その精神が衰弱した際に、その体に妖狐は千百一として入り込んだ。そのまま正体がばれなければ妖狐は本物の千百一となる。これはそういう怪異なのだ。
ティスシス「精神が死んだ者に取り付き乗っ取る怪異…とってもゲスな怪異ですの」
十一「でもその力は本物…千百款染に禁忌魔導までも使いこなす」
記憶と記録から完全に再現する力。それがこの怪異の恐ろしさであり強さ。
妖狐「いまからでも遅くはない。お前たちを消せば、俺は再び千百一となる。だれも俺のこの正体を知るものがいなくなればな!」
妖狐は十一とティスシスに襲い掛かる。
ティスシス「ここは私が受けますの」
手に持った刀で妖狐の爪を受け取めるティスシス。
妖狐「甘いな!」
口を開く妖狐。その口から炎が放たれる。
ティスシス「まずいですの」
炎を避けようと距離をとるティスシス。
妖狐「かかったな!」
下がったティスシスの足元の床が隆起し、土で形成された手が宙に浮くティスシスの両足をつかむ。
妖狐「これで逃げられまい」
大きく腹を膨らませる妖狐。
妖狐「灼熱監獄(チョウオウチェンイ)」
腹にためた炎を吐き出す妖狐。その炎がティスシスへと放たれる。
ティスシス「くらうわけには!」

ザシュン!

自身の足をつかむ土の腕を刀で切り、その場を離れるティスシス。炎はティスシスが先ほどまでいた床にぶつかると四方に散る。壁を伝い部屋中を炎が覆いつくす。
妖狐「これで逃げ場はない」
ティスシス(能力が使えないとこれほど防戦一方になるとは…困りましたの)
十一「あの姿になっても魔導が使える…取り込んだものの力は失わないみたいですね」
よろよろと歩いて生きたフラッシュが十一の横に立つ。
十一「フラッシュももう限界が近そうです」
それは十一も同じ。千百款染が発動している今は立っていられるが、それが切れればもうしばらく立つこともできなさそうだ。
ティスシス「その子は召喚獣ですの?」
フラッシュに目をやるティスシス。
十一「はい!私の召喚獣フラッシュ・グリモア・ゴートです!」
召喚獣をみつめるティスシス。何かを感じたティスシスは刀を構える。
ティスシス「私もそれができる気がしますの」
目を閉じ集中するティスシス。

~千百家2階~
ゲイン「なんだ?」
ゲインの持つ輝鉱石が光を放つ。

~千百家・最上階~
ティスシス「来て!」

バシュン!!

ティスシスの呼びかけに応じるように何かがティスシスの横に現れる。
十一「えっ!?」
そこに現れたのはティスシスと全く同じ顔の白髪の少女。その顔はどう見ても同一人物にしか見えない。
ティスシス「これが召喚ですのね。初めまして、オリジナル・ヘレティス・シックス」
ヘレティスシックス「不思議な気分ですの。もう一人の自分が目の前にいるのは」
ティスシスが召喚した彼女は本物のヘレティスシックス。レーヴェンズによってティスシスを創る元となった人物だ。
ティスシス「行きますのえ~と…」
シックス「私はシックスでいいですのティスシス」
ティスシス「わかりましたのシックス」
シックス「敵はあの狐の化け物ですの?」
ティスシス「そうですの」
シックス「ではいきますの『コート・オブ・グラヴィティ』」

ジジジ!!

シックスの周囲に強烈な力場が発生する。その力場は収束していきシックスの体が力場に包まれ、一瞬消滅したように見える。直後!

バシュン!!

シックスが姿を現す。その身は黒い鎧に包まれ、手には身の丈に似合わない西洋風の長剣を持っている。
妖狐「姿が変わった?戦装束か」
シックス「それだけではないところをお見せしますの『グラヴィティ・プレッシャー』」

ズン!

妖狐が何かに押しつぶされるように地面にひれ伏す。
妖狐「な、なに!?」
体が常に上から押し付けられているようにその場から動くことができない。
妖狐「俺を捕らえるとは驚きだ。だが千百款染!」
妖狐の体中に刺青のように青い文字が浮かび上がる。その直後、妖狐の姿が消える。
シックス「あの状態から抜け出しますの!?」
ティスシス「シックス!後ろですの!」
妖狐「もう遅い!」
鋭い爪をもった腕がシックスの体を貫くように迫る。

ジジジ!!

だがその爪はシックスの体には届かない。シックスに近づこうとするほど、妖狐の体がシックスから離れようとするように反発する。
妖狐「なんだこれは!」
シックス「これが『コート・オブ・グラヴィティ』の力。お兄様たちのと同じく粒子制御の賜物ですの」
ジャーデ・フォーティアの作った『コート・オブ・グラヴィティ』は未元粒子を力場のように扱い、操る力を持つ。
シックス「あなたとわたしは今、磁石で言えばS極同士。近づくほどに反発する。そういうものですの」
妖狐「物理的に近づけないならば!」
手を開き、シックスへと向ける。その手のひらから激しい火炎、烈風、水流が同時に放たれる。
シックス「それも効きませんの」
シックスの周りに丸い壁があるかのように火炎、烈風、水流は阻まれその場に滞留する。
妖狐「力場は本体の周囲1mほどか…それ以上は近づけない。ならば!」
妖狐の足元に巨大な魔導陣が形成される。
十一「あれほどの魔導陣…まさか禁忌魔導!?」
妖狐「天羅地網(ティエン ルオ ディワン)」
妖狐の足元の魔導陣から青く輝く無数の鎖が飛び出てくる。その鎖は一斉にシックスへと伸びてくる。
シックス「無駄ですの」
シックスの力場に鎖は弾かれる。
妖狐「無駄かどうかその身で知るがいい」
弾かれた鎖が力場の壁を這うようにシックスを覆っていく。無数の鎖はシックスを覆う力場の壁ごと球体状にシックスを覆い、彼女の姿は完全に見えなくなる。
ティスシス「シックス!」
ティスシスの呼びかけに反応がない。
妖狐「この拘束魔導には太刀打ちできなかったな」
天羅地網(ティエン ルオ ディワン)。対象を無数の鎖で拘束する禁忌魔導。対象を拘束するだけなら禁忌と呼ばれるほどのものではないと思われるが、天羅地網の真価は対象を拘束してからなのだ。
妖狐「この鎖は触れてるものからマナを奪う」
未元粒子で作られたものであればそのエネルギーはうばわれていき、消滅してしまう。
シックスを覆っていた力場が消え、中のシックスが鎖で拘束される。
妖狐「次はお前のマナをもらおう」
シックス「ぐっ…」
ティスシス「このままではシックスが…」
十一「あの魔導は対象から奪ったマナを無尽蔵に発動者のマナに加える。そのマナの量に耐えられず発動者は死に至る…はずですが」
妖狐にそのような様子は見られない。
十一「怪異であるからか…副作用を克服しているみたいです」
妖狐「このままその命を吸いつくしてやる!」
ティスシス「やらせませんの!」
刀を構え妖狐へと向かっていくティスシス。
妖狐「無駄なことを」
妖狐の地面の魔導陣から青い鎖が飛び出しティスシスの体を拘束する。
ティスシス「まずいですの…」
妖狐「力があふれてくるぞ!お前たちの命は俺の力と化すのだ!」
拘束されたシックスとティスシス。負傷し立っているのがやっとの十一とフラッシュ。まさに万事休すの状況。
十一「もう…手はないの」
フラッシュが十一のもとによって来る。
十一「フラッシュ?」
フラッシュは十一の眼を見つめる。その意思が言葉を交わせなくても十一には伝わる。
十一「わかった…この状況を打破するにはそれしかない!」

ガブッ!!

十一の腕へと嚙みつくフラッシュ。
十一「痛っ!!」
十一の腕の皮膚を嚙みちぎりむしゃむしゃと食べる。
妖狐「勝てないと悟り、気でも狂ったか?」
フラッシュの体が青く輝いていく。まるで千百款染を発動しているかのように。
妖狐「召喚獣が千百款染を?何の真似だ?」
フラッシュに呼応するように十一の体に刻まれた魔導文字が輝きを増していく。その文字が変化し、その輝きは青から緑へと変わっていく。
妖狐「千百款染が変化しただと!?」
十一「フラッシュの力です」
フラッシュは食べたものを発動、合成することができる召喚獣。妖狐の姿になる前の千百一に嚙みつき、その皮膚を食べ、今十一の皮膚を食べたことで二つの千百款染を合成し新たなる千百款染を今誕生させた。その名は…
十一「『新生魔装(シンシェンモウファ)』!!忌まわしき伝承は今消えました!これは私だけの魔導術式!」
十一の体を緑のオーラが覆う。徐々に体中の火傷跡が消えていく。
妖狐「回復力も俺の千百款染並み…力は増したようだな。だが!所詮は子供の浅知恵!俺を倒すことはできはしない!」
一瞬にして十一の前に移動し、爪を振るう妖狐。
十一「あなたの動きは見えています!」
妖狐の攻撃がくるのがわかっていたかのように無駄のない動きで爪を避ける十一。そのまま手を開き、妖狐の腹部へと打ち込む。
十一「魔装掌底(モウファシャンディー)」

ドン!!

妖狐の腹部を衝撃波が突き抜ける。
妖狐「ぐはっ!」
あまりの衝撃に天羅地網(ティエン ルオ ディワン)が解除される。拘束されていたティスシスとシックスはその場に倒れる。
妖狐「なんだ…力がぬける…」
ティスシスとシックスからもマナを吸い取っていたはずの力が減っていく感じがする。
十一「『新生魔装(シンシェンモウファ)』は相手の力を中和します!このまま続けて!」
蹴り、拳を交えた連撃を繰り出す十一。その攻撃を受けるたび、妖狐のマナが減っていく。
妖狐「あ、ありえん…こんな力…」
妖狐の体から青い輝く文字が消える。千百款染も維持できないほどに体内のマナが消滅させられたのだ。
十一「私の一撃一撃はあなたのマナを放出させます。もう魔導も使えません!はぁぁ!!」
十一の力を込めた蹴りが妖狐へ打ち込まれる。その衝撃で天井高くへ打ち上げられる妖狐。
十一「これでとどめです!フラッシュ!」
魔導帳のページを破り、フラッシュへと食べさせる。
十一「閃光槍(シャングァンマオ)!!」
フラッシュの口から4本の光の槍が放たれる。光の槍は打ち上げられている妖狐の四肢に突き刺さり、その体を天井に張り付ける。
十一「魔装掌底(モウファシャンディー)!!」

ドン!!

十一の手から緑のオーラが放たれる。オーラが妖狐の体に直撃する。
妖狐「ぐぁぁ!!」
妖狐のマナが消滅していき、その体が光になっていく。
妖狐「こんな子供に…」

バシュン!!

黒い霧のように霧散する妖狐。
十一「やりました…ね」
意識を失い倒れる十一。肉体の表面的なダメージは回復しても、内面的なダメージまで回復したわけではないようだ。十一が意識を失ったと同時にフラッシュも消えていく。

「まさか…ここまでやるとは思いもしなかったぞ」

室内に聞こえる声。霧散していた黒い霧が集まっていく。黒い霧は集まると巨大な4足歩行の狐の化け物へと姿を変えた。これが妖狐の真の姿なのだ。
妖狐「憑りついていた肉体も消えた。次はお前に憑りつくとしようか」
十一へと狙いを定める妖狐。意識のない十一に成す術はない。
ティスシス「そうはさせませんの」
目を覚ましたティスシスとシックスが妖狐の前に立ちはだかる。
妖狐「死にぞこないたちが俺を止める気か」
シックス「もうティスシスも私を召喚し続けるほどの力もありませんの。だけど、もう一人の私ならあなたを倒すことぐらいならできそうですの」
シックスが来ている鎧がティスシスの持つ輝鉱石に吸い込まれていく。
シックス「あなたにそれを託しますの。私は魂だけの存在。また出てこれるかはわからない。あとはあなたがその心の赴くままに」
そういうとシックスの体が消えていき、消滅する。
ティスシス「シックス…」
妖狐「さっそく一人消えたか。あとはお前だけだ!」
ティスシス「感傷に浸る暇はあなたを倒してからにしますの『コート・オブ・グラヴィティ』」
ティスシスの持つ輝鉱石が輝き、彼女の周囲に強烈な力場が発生する。その力場は収束していき彼女の体が力場に包まれ、一瞬消滅したように見える。

バシュン!!

力場の中から姿を現したティスシスはシックスの装備していた黒い鎧を着ている。
妖狐「あの女の鎧…」
ティスシス「この力…着ると理解できますの」
手を妖狐へと向けるティスシス。その直後!

バキャン!

衝撃音が室内に響く。
妖狐「なんだ…」
突然、その場に倒れる妖狐。何が起きたか理解できない。
妖狐(動けない…なにが起きて…)
自身の足を見ると、4本の脚はあり得ない方向に折れ曲がっていた。そのことに気づいた瞬間、激痛が妖狐を襲う。
妖狐「うぎゃぁぁ!!」
ティスシス「うるさいですの」

バキャン!

妖狐「……!!」
妖狐の喉が粉砕される。もう声を発することもできない。
ティスシス「人を欺く怪異。もうあなたはおしまいですの」

バキバキバキ!!

妖狐の体が見えない何かに押しつぶされていくように圧縮されていく。そして
ティスシス「さようならですの」
完全に圧縮され消滅する妖狐。その姿は塵すらも残さず消滅した。

タッタッタッ!!

下の階から誰かが上がってくる音が聞こえる。
ティスシス「この足音は…」

一凛「十一!」

一凛とゲインだ。一凛は倒れている十一に駆け寄る。
十一「先輩…」
目を覚ます十一。
一凛「やったんだね十一!」
十一「はい…やってやりました…」
ゲイン「もう気になる気配はないかティスシス?」
ティスシス「はい。完全に消滅しましたの」

こうして千百一に擬態した妖狐を倒した一同。千百十と林、メルトを救護し十一は落ち着くまで千百家に残ることになった。
ゲインは魔導都市に来た縁ということでしばらくこの街の復興の手伝いをするということで街中へと消えていった。

~千百家・入口~
一凛「フォウバンの行方はわからなくなっちゃったなぁ」
千百一の件については片が付いたがフォウバンについての手掛かりは途絶えてしまった。さてどうしたものかと考えていると

ヒラヒラ…

空から小さな紙が降ってきた。
一凛「なにこれ?」
小さな紙を手に取る一凛。
一凛「これは…メモ?」
そのメモにはこう記されていた。

「探し物はミストラルシティにあり」

メモの裏には1枚の写真が張り付けてあり、その写真には千百家を出てどこかへ向かうフォウバンの姿が映っていた。
一凛「だれがこの写真を!?」
あたりを見回すが人影一つ見当たらない。
一凛「ほかに手がかりもない…怪しいメモだけど乗ってみる他ないか!」
一凛は十一に別れを告げ、一人ミストラルシティへと戻るのだった。

~魔導都市・某所~
黒髪マスクの男「あの少女が追うものはミストラルシティへ。そのヒントも与えた」
飛行機で怪異を生み出した男が一凛へメモと写真を渡したらしい。
黒髪マスクの男「あの街…ミストラルシティであの少女の力をいただく!」

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最終更新:2025年09月28日 18:06