???「天十也!お前もすぐ始末してやる!」
青髪の仮面は十也に手をかざす。
十也「なんだ?」
十也の周りの空気がやけに冷たく感じる。気温が急激に下がったような…
ディサイブ「避けろ十也!」
???「無駄だ!もう遅い!」
十也の足元が凍り付いていく。
十也「ちっ!」
???「ははは!あっけなかったな。こんなものか?」
十也「とりゃあ!」
???「なに!?」
先ほどまでいたはずの場所に十也がいない。十也はいつのまにか青髪の仮面の背後に回り込み、手にした槍を振るう。
十也「くらえ!」
ガキィン!
???「さすが
オリジンを倒しただけのことはある。だが甘いな」
青髪の女性への攻撃は氷の壁により阻まれる。
十也「くっ!そう簡単にはいかないか」
パリィン!
突如目の前の氷の壁が砕ける。砕けた無数の破片が弾丸のように十也目がけて打ち出される。
???「氷の弾丸(アイスバレット)!」
十也「だめだ!間に合わない!」
咄嗟に身を固めて防御する十也。その鎧に無数の氷の破片が突き刺さる。
???「これで!終わりだ!」
氷の破片が十也の鎧を覆っていく。
十也「まずい!」
ディサイブ「十也!」
両手両足を氷漬けにさせられ身動きが取れないディサイブ。今の彼には力になれることは何もない。だがこのままでは聖国が奴らの手に落ちてしまう。
ディサイブ(なにか手は…んっ?あれは…)
十也が手にしている槍。それは聖国の宝物庫から持ち出した槍だ。
ディサイブ(あの槍…あれは確か…)
ディサイブは聖国の王になるものとして、幼き時から聖国の歴史を学んできた。宝物庫に収められている武器についてもそのすべてを把握しているほどだ。
ディサイブ(初代聖王ダリウス・ラウズレイ。彼は世界を救った英雄と共に旅をしていたという…。彼らは地球の危機に度々立ち向かい、その危機を救っていったという。その中で手に入れた武器を悪用されないよう、ダリウス・ラウズレイはラウズレイ王国に数々の武器を保管することを決めた)
十也が手にしているのはその中の武器の一つだ。ディサイブが十也ならばその武器を正しい使い方をしてくれると見据えて託したものだ。
ディサイブ(その中でも強力な力を持つ武器。十也のもつあの槍…魔槍ブレオナクもその一つ。あの槍は…)
ダリウス・ラウズレイがとある一族と戦った時に手に入れた魔槍ブレオナク。過去の文献にはその力を引き出せれば一騎当千の力を発揮したという記述がある。
ディサイブ(この状況では…あの槍の力にかけるしかない!)
ディサイブ「十也!おまえの持つ槍!魔槍ブレオナク、その力を発揮するんだ!」
十也「えっ?槍の力?」
突然そんなことを言われてもどうすればいいのか。全く見当がつかない。
十也「くっ!どうすれば!」
???「そんな都合のいい逆転劇など起きはしない!お前たちはここで氷漬けになり永遠の時を過ごすのだ!」
十也「槍の力…いったいどうすれば…」
悩む十也。しかしその答えは見つからない。次第に十也の体の大半を氷が覆いつくしていく。
十也「だめだ!思いつかない!」
ディサイブ「くっ…ここまでなのか…」
十也「おい!ブレオナク!」
突然槍に話しかける十也。
???「死の間際でとうとう頭がおかしくなったか?」
十也「俺はこんなところで死ぬわけにはいかない!お前の力を俺に貸してくれ!」
???「そんな無駄なことを…」
魔槍ブレオナクが光を放つ。
???「なんだ!?」
ディサイブ「これは!?」
~~~
十也「…んっ?ここは…」
いったいどこだ。あたり一面が光に包まれている。さっきまでラウズレイ王国で仮面の人物とたたかっていたはず。
???『ここはお前の心の中だ』
十也「だれだ?」
声の主を確認する十也。その声の主は人間ではなかった。
十也「ド、ドラゴン!?」
その体は氷のような白さを持ち、2枚の羽根を持つ龍。それが彼の眼の前に立っていた。
???『私はブレオナク。お前の持つ槍の最初の持ち主だ』
十也「龍…そんなものが存在しているのか…」
ブレオナク『本来の私は人だ。と言ってもすでに遠い昔に亡くなっているがな。これはあくまで私の残留思念が形となって姿を造っているに過ぎない。』
十也「そうなのか。それで何の用があってお前がでてきたんだ?」
ブレオナク『何の用?用があるのはお前だろ?』
十也「えっ?おれ?」
ブレオナク『そうだ。私は長い間眠りについていた。それを呼び覚ましたのはお前だ』
十也「そういえば…そうだな。俺がお前に助けを求めたんだったな」
まさか槍が意思を持っているなんて思ってはいなかった。予想外の事態に戸惑う十也。
ブレオナク『さて、それでは本題に入ろうか』
十也「本題?」
ブレオナク『そうだ。お前は私の力を借りたいといった。それはすなわち私と契約を結ぶということ』
十也「契約だと?」
ブレオナク『な~に簡単なことだよ。魔槍ブレオナクの力をすべてお前に使わせてやる代わりに私の願いを一つ聞いてくれればいい』
十也「願い?」
ブレオナク『それも簡単なことだ。奴らが出てくることがあれば、それを全力をもって叩き潰してくれればいい。』
十也「奴ら?」
ブレオナク『奴らはもう消滅しているかもしれないがな。だからこの契約はもしも奴らがいれば倒してくれってことさ』
十也「ん?てことはそいつらがいなければただでお前の力を貸してくれるのか?」
ブレオナク『そういうことだ』
十也「そりゃあかまわないぜ!あっ!まてよ!奴らっていうのはどうやって見分ければいいんだ?」
ブレオナク『その点は問題ない。奴らの方から私を狙ってくるだろうからな。それでわかる』
十也「おっけー!今はこの状況を打開するのが最優先だ!お前との契約!結ぶぜ!」
ブレオナク『承知した。では契約の証を』
ブレオナクから十也に契約の言葉が伝えられる。十也はその言葉を復唱する。
十也「天十也は魔槍ブレオナクと契約を結ぶ!」
ブレオナク『契約は完了した。では私はその時まで眠るとしよう』
十也「ちょっ!お前の力は?」
ブレオナク『契約を結んだお前なら勝手に使えるだろうから気にするな。あっ!そうそう一つ伝え忘れていたな』
十也「なんだ?」
ブレオナク『奴らは十中八九現れるだろうからその時は頼んだぞ』
十也「えっ!おい!」
ブレオナクは姿を消した。眠りについたのだろうか。
十也「ずるい野郎だ…。だが今は目の前の事態を打破するのが先だ!」
~~~
十也「ブレオナク!」
魔槍ブレオナクは十也の呼びかけに応じるように光を放つ。
???「なに!?」
ディサイブ「体の氷が…」
二人の体を包んでいた氷が解けていく。
十也「これが契約の力ってことか。お前の力が頭に入ってくる。」
魔槍ブレオナクのもつ力がわかる。契約を結んだことでその力の使い方を理解した十也。
ディサイブ「魔槍の力を使いこなすとは…さすがだな十也」
???「ちっ!何度でも凍らせてやる!」
十也「無駄だ!ブレオナク!」
十也の体は凍り付かない。
???「なぜだ!なぜ凍らない!?」
十也「魔槍ブレオナクの力だ。」
ディサイブ「魔槍ブレオナクを持った人間はどのような束縛も効かなかったという逸話がある。そうか…なるほど」
十也「ブレオナクの力は自由を拘束させない力。その力は所持者の体の自由を奪うことを許さない」
???「そんな力がその槍に…。」
十也「終わりだ!」
???「氷漬けにならないくらいで!いい気になるな!」
青髪の仮面は両手を地面につける。
十也「何をする気だ?」
???「お前たちを葬る!いでよ!」
大地から氷で形作られた蛇が姿を現す。
ディサイブ「なんだ!?」
十也「で、でかい!」
???「氷輪蛇(ウロボロス)!奴らを呑み込め!」
氷の蛇は十也たちを丸呑みしようと突撃してくる。
十也「くっ!ブレオナク…お前の力を信じるぞ!」
ブレオナクを構え、氷の蛇に突撃する十也。
十也「うぉぉぉ!!」
氷の蛇と激突する十也。二つの力がせめぎ合う。だが次第に十也は押されていく。
ディサイブ「まずい!」
???「ははは!そのまま呑み込まれろ!」
十也「やられるわけには…いかないんだぁ!コードCBT!」
『音声コード承認。コードチェンジ・ブレイク・スルー。ブレイクモードに突入します』
赤く輝く十也の鎧。
???「なに!」
先ほどまで押し負けていた十也が氷の蛇を押し返していく。
ディサイブ「いけるぞ!十也!」
十也「うぉぉぉ!」
氷の蛇を弾き飛ばす十也。
十也「はぁぁぁ!」
鎧の輝きが魔槍ブレオナクに集まっていく。
十也「くらえ!『ブレイクランス』!」
氷の蛇の口の中へ突撃する十也。そのまま蛇の体の中を駆け抜ける。
???「なっ!」
蛇の体を突き出る十也。氷の蛇の体には十也が駆け抜けた大きな穴が空く。
十也「ブレイクアウト!」
氷の蛇の体が光を放ち爆発する。バラバラの氷の破片となる氷の蛇。
???「そんな馬鹿な!?」
青髪の仮面は自分の氷の蛇が倒されたことで驚く。その隙を十也は見逃さなかった。瞬時に青髪の仮面の前に移動し、その槍を振るう。
???「くっ!」
咄嗟に避ける青髪の仮面。しかしその回避は間に合わず、その仮面の半分が砕ける。
十也「なっ!?あんたは!」
その素顔を見て驚く十也。
ディサイブ「あなたは…」
ディサイブにも見覚えがある顔だ。
オリジネイターとの戦いで目にしているその顔。それは
カレン?「ちっ!」
カレン・ネティス。その人だ。
十也「なんでカレンさんが!?」
ディサイブ「あなたはバインザーとの戦いでわたしたちを助けてくれた。何故あなたが…」
カレン?「ふん。私には関係のないことだ。私は
コード・スクード。与えられた任務を遂行するのみ!」
十也「いったいどういうことなんだ…」
スクード「撤退する!」
スクードの背後の空間がゆがむ。そこに吸い込まれるようにして姿を消すスクード。
ディサイブ「逃げられたか…」
十也「カレンさん…」
ラウズレイ王国を襲った未元獣たちは十也とディサイブたちの手によって退けられた。また襲ってくる可能性がある以上ディサイブは自国の警備を強化することに専念するようだ。
十也は新たな武器とコード・スクードと名乗る新たな仮面の女性の情報を手にミストラルシティへと戻るのであった。
アポロンとカレン。彼らはいったい何のためにこのようなことをしているのだろうか。謎は深まるばかりだ。
to be continued
最終更新:2016年11月27日 16:08