~実験室ルート・
アポロン~
アポロン「ここか」
大きな扉を開けるとそこには広大な広さの部屋が広がっていた。そしてその奥には巨大な装置が設置されていた。
アポロン「なんだあの装置は…んっ?」
巨大な装置の上の方にカプセルが設置されていた。その中には人影が見える。そしてその人影はアポロンのよく知る人物だった。
アポロン「キノ!」
キノ・イーストン。彼女がそのカプセルに捕えられていたのだ。
ヴァ―ダンド「ようやく来たか。待ちわびたぞ」
コード・ヴァ―ダンドが巨大な装置の前に立ちはだかっている。
アポロン「ヴァ―ダンド!キノは一体何をされているのだ!」
ヴァ―ダンド「そう案ずるな。キノ・イーストンは無事だ。ただノルンの生体コアとなっているだけだ」
アポロン「ノルン…だと?」
ヴァ―ダンド「そうだ。我らを生み出したこの装置。これがノルンシステム。我らの母だ」
アポロン「生み出した?」
ヴァ―ダンド「そうだ」
仮面を外すヴァ―ダンド。その素顔は…
アポロン「我と同じ顔…」
ヴァ―ダンド「我はアポロン、お前をもとに造られたクローンだ」
アポロン「クローンだと!?そんなものが…」
ヴァ―ダンドから語られた衝撃の正体。それはアポロンのクローン人間であった。
だがそんなこと技術的に可能なのだろうか。いまだかつてこの世界で人間のクローンが作られたなんてことは聞いたことがない。
ヴァ―ダンド「我と
コード・スクードはそれぞれアポロンと
カレン・ネティスをもとに造られたクローン。だがただのクローンではない」
アポロン「ただの…」
引っかかる言い方をするヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンド「その先を知りたければ我を倒すことだ!」
アポロン「そなたたちのふざけた野望を打ち砕き、キノは返してもらう!」
背中に背負った大剣を構えるアポロン。
アポロン「感得の大剣エクス=ペリエンス」
ヴァ―ダンドは背中から柄だけの剣を取り出す。
ヴァ―ダンド「神涜の大剣ディス=エクスペリエンス」
両手で柄を構えると刃が生成されていく。その姿はまるで黒いエクス=ペリエンスだ。
ヴァ―ダンド「ゆくぞ!」
大剣を構えアポロンへと斬りかかるヴァ―ダンド。
アポロン「くっ!」
自身の大剣で受け止めるアポロン。
アポロン「以前よりも力が上がっている!」
ヴァ―ダンド「ぬぉぉぉ!」
アポロン「ならば!」
力を抜き攻撃を受け流すアポロン。力が余ったヴァ―ダンドはそのまま地面に剣が突き刺さる。
アポロン「はぁぁ!」
アポロンの大剣による一撃がヴァ―ダンドに直撃する。
ヴァ―ダンド「ぐっ!」
だがヴァ―ダンドのダメージは瞬時に回復する。
アポロン「自己治癒能力…厄介な力だ」
ヴァ―ダンド「はぁぁ!」
ヴァ―ダンドの大剣による横なぎがアポロンを襲う。その一撃を喰らえばひとたまりもない。
アポロン「くらいはしない!」
大剣を逆手で縦に構え防御するアポロン。だがあまりのパワーにそのまま吹き飛ばされてしまう。
アポロン「くっ…」
ヴァ―ダンド「さすがだなアポロン。それでこそ我がオリジナルだ」
アポロン「そなたは何故そこまで私にこだわるのだ?」
ヴァ―ダンド「理由などない!我は我が使命を果たすのみ!」
アポロン「使命だと?」
ヴァ―ダンド「そうだ!我はNの目指す世界のために戦うのみ!」
アポロン「ならば我も我が使命を果たすのみだ!」
ガキィン!
激しくぶつかり合う両者の大剣。
アポロン「世界はそなたらの好きにはさせん!」
ヴァ―ダンド「ならば我を倒して見せろ!」
ガキン!
ガキン!
ガキン!
何度もぶつかり合う両者の大剣。
ヴァ―ダンド「力は互角。ならば我が必殺の一撃でソナタを葬る!」
ヴァ―ダンドの大剣の刀身がなくなり柄だけの状態に戻る。
アポロン「何をする気だ…」
ヴァ―ダンド「神涜の大剣ディス=エクスペリエンス!その真の力を示せ!」
大剣の柄を横に構えるヴァ―ダンド。
ジジジジ!
大剣の刃がエネルギーの刃となって生成されていく。
アポロン「なっ!」
しかもその長さは100mはあろうかというほどの長さだ。
ヴァ―ダンド「ぬぉぉぉ!!」
両手に渾身の力を籠めディス=エクスペリエンスを振るうヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンド「一刀必殺!『神薙(カンナギ)』!」
エネルギーの強大な剣と化したディス=エクスペリエンスがアポロンへと迫る。
アポロン「くっ!」
これだけの大きさの剣だ。逃げ場はない。エクスペリエンスを構え、防御するアポロン。
ガガガガ!!
凄まじい衝撃がアポロンを襲う。
ピシ!
アポロン「なっ!」
エクス=ペリエンスにヒビが入る。
ヴァ―ダンド「露と消えろ!アポロン!」
アポロン「持ってくれ!エクス=ペリエンス!」
ヴァ―ダンド「ぬぉぉぉ!」
ヴァ―ダンドの両手にさらなる力が込められる。
アポロン「うぉぉぉ!」
カッ!
激しい光が部屋中を包み込む。光が消えるとそこには…
ヴァ―ダンド「ふん…」
通常の刃に戻ったディス=エクスペリエンスを持つヴァ―ダンドの姿があった。そして…
アポロン「はぁ…はぁ…」
息を切らすアポロン。その手にはボロボロになったエクス=ペリエンスが握られている。
ヴァ―ダンド「我が必殺の一撃を耐えるか…」
なんとかヴァ―ダンドの攻撃を耐えたアポロン。だが彼の体もエクス=ペリエンスもボロボロだ。
アポロン「くっ…」
ヴァ―ダンド「だがもう持つまい。決着をつける!」
大剣を構えアポロンへと振り下ろすヴァ―ダンド。
アポロン「くぅ!」
ガキン!
ボロボロになったエクス=ペリエンスで攻撃を受け止めるアポロン。だがその力の差は歴然だ。徐々に押されていく。
ヴァ―ダンド「このまま押し切らせてもらう!」
アポロン「まだだ…」
だがアポロンの意思に反して、エクス=ペリエンスはもう今にも砕け散りそうなほどボロボロだ。
ヴァ―ダンド「終わりだ!アポロン!」
アポロン「我は…我の天命を全うするまで…倒れるわけにはいかない!」
アポロンの意思に呼応するようにエクス=ペリエンスが光を放つ。
ヴァ―ダンド「なんだこれは!?」
アポロン「はぁぁ!!」
光に包まれるエクス=ペリエンス。
ヴァ―ダンド「くっ!」
なにかを感じいったん距離を取るヴァ―ダンド。
アポロン「エクス=ペリエンス…!」
光がエクス=ペリエンスの中へと集束していく。
ヴァ―ダンド「なんだと…」
先ほどまでボロボロだったエクス=ペリエンスがその傷が一つもない。それどころか…
ヴァ―ダンド「姿を変えただと!?」
以前の形とは違う形になっていた。
アポロン「エクス=ペリエンスは成長する剣。だがこんなことは初めてだ…」
その力を増していくことはあっても姿形が変わったことは今まで一度もない。
ヴァ―ダンド「だが形が変わったところで!」
アポロン「いくぞ!エクス=ペリエンス!」
ガキン!
ヴァ―ダンド「なっ!」
ヴァ―ダンドの大剣が弾き飛ばされる。
ヴァ―ダンド「なんて力だ!」
以前とは比べ物にならないほどの力を発揮するエクス=ペリエンス。
アポロン「はぁぁ!」
ザシュ!
アポロンの一刀がヴァ―ダンドへ振り下ろされる。
ヴァ―ダンド「が…」
アポロン「まだだ!」
ヴァ―ダンドの体が再生するよりも早く次の攻撃を繰り出すアポロン。
ヴァ―ダンド「な…に…」
アポロン「これで!はぁぁ!!」
ザシュ!
アポロンの一撃がヴァ―ダンドの体を貫く。
ヴァ―ダンド「ぐふっ…」
エクス=ペリエンスを引き抜くアポロン。ヴァ―ダンドはその場に倒れ込む。
アポロン「エクス=ペリエンス。お前のおかげだ」
ヴァ―ダンド「さすがだ…な」
ヴァ―ダンドが膝をつき立ち上がる。そしてディス=エクスペリエンスを手に取る。
アポロン「まだやる気か…」
ヴァ―ダンド「はぁ!」
ヴァ―ダンドはディス=エクスペリエンスを投げつける。
パリィン!
投げつけた先はノルンシステムのカプセルだ。カプセルが割れ中からキノが落ちてくる。
アポロン「キノ!」
落ちてきたキノを受け止めるアポロン。
ヴァ―ダンド「そなたの勝ちだ。我はこれ以上戦う力は残っておらぬ。我が母ノルン…キノ=イーストンを頼んだぞ」
アポロン「ヴァ―ダンド…そうかそなたは…」
ヴァ―ダンドは元々Nのために戦っていたわけではなかったのだ。彼は自信を生み出したノルンシステムの生体コア…キノを守るために戦っていたのだ。
それが彼の彼自身に課した使命。元々の人格であるアポロンの影響か彼はノルンシステムによる精神制御を完全には受けきっていなかったのだ。
???『おいおい勝手なことをしてもらっちゃ困るね』
実験室内に放送が流れる。
ヴァ―ダンド「アージ・アレジェーネか…」
アージ『勝手にノルンシステムの生体コアを取り出すなんて…君もアポロンと一緒にここで始末しておいた方がよさそうだね』
部屋の扉が開く。
仮面の軍団「…」
そこには仮面をつけた軍団が立っていた。
アージ『僕の兄弟たちが君たちを始末してくれるよ!じゃあね!』
アポロン「なんだこいつらは…」
ヴァ―ダンド「こいつらはアージと同じハイ・ヒューマンだ。我々を始末するつもりらしい」
紫色のエネルギーの刃を構える仮面の軍団。
アポロン「くっ…この数…今の状態では…」
ヴァ―ダンドとの激闘によりアポロンの体力は限界だ。これだけの数を相手にするほど余裕はない。
ヴァ―ダンド「ぬぉぉぉ!」
ヴァ―ダンドがディスエクス=ペリエンスを手に立ち上がる。
アポロン「ヴァ―ダンド!」
ヴァ―ダンド「キノ=イーストンを頼んだぞ。神涜の大剣ディス=エクスペリエンス!」
ディス=エクスペリエンスの刀身がエネルギーの刃となる。
ヴァ―ダンド「我らを阻む敵を撃ち滅ぼせ!ぬぉぉぉ!」
ガガガガガ!
地面を削りながら仮面の軍団へと迫るディス=エクスペリエンス。
ブシュ!
ヴァ―ダンドの腕からは血が噴き出す。今にも腕がもげそうなほどだ。
ヴァ―ダンド「我が体よ!あと少しでいい!持ってくれ!ぬぉぉぉ!」
体から黒い霧が噴き出すヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンド「一刀…必殺!『神薙(カンナギ)』!」
エネルギーの刃が仮面の軍団を襲う。肉体を再生する暇もなく消し炭と化していく仮面の軍団。
ヴァ―ダンド「我が…ディス=エクスペリエンスの前に…露と…消えよ」
ディス=エクスペリエンスの刀身が消滅する。
カラン!
大剣の柄を床に落とすヴァ―ダンド。そしてそのまま倒れこんでしまう。
アポロン「ヴァ―ダンド!」
ヴァ―ダンドの体からは黒い霧が溢れてきている。
ヴァ―ダンド「早く…行けアポロン。また追手が…来るぞ」
アポロン「そなたの生き様しかと見届けたぞ…。キノ=イーストンは私が必ず守る!」
キノを抱え部屋を去っていくアポロン。
ヴァ―ダンド「ふっ…頼ん…だぞ」
ブシュー
黒い霧と共に霧散し消滅するヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンドとの決着をつけ、キノを救い出したアポロン。彼の想いを無駄にもしないためアポロンはNのもとを目指し進んでいくのであった。
to be continued
最終更新:2016年12月31日 19:03