小ネタ:催眠アコチャー3(しんそーきゅーめいへん)

―― 世の中には何もかも思い通りに出来るほど簡単に出来てはいない。

勿論、あたしだって子どもじゃないんだから、そんな事はとっくの昔に分かっている。
そんな万能感はもう20年は前に卒業しているのが普通なんだから。
だけど…それでもあたしは今、人生と言うもののままならなさに深い落胆を感じていた。

憧「…はぁ」

そうあたしがため息を吐くのはシーツを交換したベッドの上だ。
日常的にその上で犯されているとは言え、流石に朝までノンストップは流石にやり過ぎである。
部屋の中に淫臭残る感覚は決して嫌いではないけど、でも、流石にグチョグチョになったベッドで眠る気にはなれない。
そう思ったあたしがシーツだけはと交換したものの、やっぱりどこかベタついているのは否定出来なかった。

憧「まったく…幾ら何でもあんなプロポーズはないわよ…」
京太郎「…ごめん」

そんなあたしに答えるのはあたしの身体を後ろから抱きしめる京太郎だった。
太ももの間にあたしを座らせながら、子どものように抱っこする彼の身体はあたしと同じく一糸も纏ってはいない。
お陰で未だ興奮冷め切らぬ硬い肉棒があたしのお尻に押し当てられ、ちょっぴりドキドキしちゃう。
でも、あたしはそれ以上に、強い落胆を感じていたのだ。

憧「…確かに…そろそろプロポーズして欲しいとは言ったけどさ…アレはないでしょ、アレは」

その理由は勿論、あたしがつい半日ほど前に受けたプロポーズが原因である。
あたしを犯して、壊して、狂わせて、逃げられないようにしてから放たれたそれには流石のあたしもガッカリしていた。
勿論、今までが今までだっただけに決して彼が思い通りになるとは思っていなかったものの、まさかあんなプロポーズをされるなんて。
生涯にたった一度の経験が体液塗れのものだと思うと、何ともまぁ…微妙な気分になってしまう。

憧「…まぁ…それでもちゃんとしてくれたのは嬉しいけどね♪」
京太郎「…ん…」

それでも彼のことが嫌いになったりしないのは、あたしが京太郎の事を心から愛しているからなんだろう。
勿論、それは年頃の少女が、恋という感情を勘違いして口走るようなものではない。
幼い頃から彼とずっと一緒にいたあたしには、彼の良い所も悪いところも全て知っているんだから。
この程度で幻滅したりしなければ、嫌いになったりもしない。
残念だったのは事実ではあるけれど、でも、それと同じくらい嬉しいのもまた否定出来ないものだった。

憧「(…それにまぁ、主因は多分、あたしの方だしね)」

京太郎がこの歪んだ関係に思い悩んでいたのはあたしも理解していた。
だけど、あたしはそれを解消しないまま、彼にプロポーズを頼んだのである。
結果、暴走した京太郎は幾重にも絡まるあたしの言葉の中からあの答えを導き出してしまった。
それを彼の責任だと非難するほど、あたしは恥知らずな女じゃない。

憧「(…そう。だって…京太郎の心はあたしのものなんだから…♥)」

勿論、京太郎はそれを知らない。
あの雑誌に書かれていた催眠術のやり方を真っ先に試したのは誰なのか。
京太郎がどうして催眠術なんてものに手を出そうと思ったのか。
思い悩みながら、今もそれを手放せない理由は、どうしてなのか。
何も知らない…知らないようにあたしが『決めた』んだから。

憧「(だって…京太郎があんなに…他の子にも優しくするんだから…)」

幼い頃から京太郎に恋慕を抱いていたのは決してあたしだけではない。
快活で、優しくて、強引で、ヘタレてるけれど、たまに凄い大人で。
そんな京太郎に恋心を抱いている少女たちは数多くいた。
そしてそんな彼女たちは皆、とても魅力的で…だからこそ、あたしは…京太郎が取られるんじゃないかって不安になったんだ。

憧「(だから…あたしは催眠術なんてものに手を出した)」

最初は勿論、半信半疑どころか、効くはずがないと思い込んでいた。
しかし、運命の悪戯か、あたしの催眠に京太郎が掛かってしまい、何でも言う事を聞いてくれるようになったのである。
それに心踊らせながら、何でも言う事を聞いてくれる事が嬉しくて…ついつい要求がエスカレートしていった。
最初は京太郎があたしの事を撫でてくれるだけで、抱きしめてくれるだけで良かったのに、次はキス、次は愛撫、次はフェラとなっていって…そして最後は… ――

憧「(…エッチまでしちゃったんだよね…)」

今から思い返すとそこがターニングポイントだったんだと思う。
だって、その所為で、あたしは処女という大事なものを失ってしまったんだから。
勿論、それは京太郎に捧げたものではあれど、彼の記憶には残らない。
それでも、あたしは恋人とのセックスを捨てられず、何度も京太郎に犯して貰ったんだ。

憧「(…そうして行き着いた果てが彼に同じ十字架を背負わせるっていう倒錯したものであるのは自分でもどうかと思うけれど)」

でも、そうやって同じ罪を背負い合う中で、あたし達の仲は確実に深まっていった。
それは勿論、表のあたしと裏の京太郎、そして裏のあたしと表の京太郎がガッチリと噛み合っているからだろう。
それを認識してるのはあたしだけではあるけれど、でも、そうでなければ六年も今の関係が続くはずがない。
多少、夢見がちな事を言えば、あたしと京太郎は運命だと言っても良いくらいに相性が良いんだろう。

憧「(身体も…心も…ね♥)」

彼が催眠術を使ってどんな事をしたのかは全て『あたし』が把握している。
勿論、表のあたしが犯された後には忘れてしまうけれど、それらは全て睦み事の後に彼の口から聞くようにしていた。
それらは日を追う事に倒錯的な内容になり、初な少女であれば聞いているだけでも逃げ出してしまいそうなものになっている。
しかし、最早、そのような初さを欠片も残していないあたしにとって、京太郎の報告はアソコからエッチなお汁を漏らしてしまうくらいに刺激的だった。

憧「(…でも、流石に…やりすぎちゃったかな?)」

あたしが男性恐怖症と言うのは決して嘘ではない。
中学の頃、あわやレイプされる寸前まで言ったあたしは本質的に京太郎以外の男性を信用していなかった。
彼以外と二人っきりになったりなんて決してしないし、公共機関もまた京太郎がいなければ使えない。
その分、京太郎と一緒の時はしっかり者のつもりだけれど、あたしは基本、彼がいなければろくに旅も出来ないポンコツ女なのだ。

憧「(…その分、京太郎との接触に飢え過ぎちゃったんだよね…)」

御父さんでさえ心から信頼出来る相手ではないあたしにとって、京太郎は心の拠り所にも近かった。
きっとあたしは彼から見捨てられてしまったら、死ぬしかないんだろう。
そんな強迫観念に突き動かされたあたしにとって京太郎と触れ合う時間は幸福と言っても良い時間だった。
しかし、だからこそ、ところ構わずスキンシップを取りたがる自分をウザがられてはいないかと…そう不安に思ったのである。

憧「(だからって…京太郎に触れられる事すら怯えるって言うのは…自分でも盛り過ぎだと思っていたんだけれど…)」

一人で暴走して何も知らない京太郎とセックスしちゃった負い目というのも少なからず関係していたのだろう。
そんな自分を戒める為に、そして彼に嫌われない為に、あたしは彼の記憶と自分の性格を書き換えた。
しかし、そうしてお互いに表と裏を使い分けるその生活は、彼にとって負担が大きなものだったんだろう。
全てを理解するあたしならともかく、何も知らない京太郎にとっては簡単なスキンシップすら出来ないくらいに怯えられるんだから。
あたしの暗示によってあたし以外が目に入らない彼にとって、それはとても苦痛だったはずだ。

憧「(…それでも止められなかったのは京太郎のセックスがあんまりにも激しかったからで…)」

そうやって溜まった鬱憤を晴らすようにして京太郎はあたしを激しく求めてくれた。
それこそ学校でも路地裏でも…どんな場所だってあたしを犯してくれたのである。
そうやって愛しい人に調教される感覚と言うのは抗えないくらいに素晴らしいものだったのだ。
こうして六年経った今でも手放せないくらいに…あたしはもうその生活にどっぷりハマってしまっている。

憧「(だけど…それもそろそろ卒業…ね)」

彼の手によって表のあたしは京太郎を何処でも求める淫乱メス奴隷と化した。
そんなあたしを優しい彼は決して無碍に扱ったりはしないだろう。
催眠という力がなくても、京太郎はあたしの事を終生愛し続けてくれるはずだ。
かなり遠回りはしたし、思っていた答えからはズレたりしたものの、あたしは望んだ通りの結果を得られたのである。

憧「んふぅ…♪」

その悦びに身体を震わせた瞬間、京太郎のオチンチンがピクンって反応しちゃった。
もうガチガチに勃起しているそれを京太郎はあたしの背中に擦りつけてくる。
先走りを微かに漏らしながらのそれはまるであたしを必死にマーキングしようとしているようだ。
…でも、そんな事しなくてもあたしはもう心も身体も京太郎のものなんだからね。

憧「…本当に仕方のない子なんだから…♥」

こうして全てを把握し、ある種、黒幕だと言っても良いあたしも彼の暗示から無縁じゃない。
勿論、暗示から切り離す事は不可能ではないだろうけど、でも、それじゃあんまりにもフェアじゃないんだから。
それに…まぁ、あたしも表のように京太郎に溺れるのは決して嫌いじゃなかったし。
何より、イかされる度に京太郎をさらに好きになっていく感覚と言うのは身体中が好きで満たされるように感じるんだ。
彼の手で堕とされていくそれをもっともっと味わいたくて…あたしはゆっくりと身体を前へと倒していく。

憧「…ほら…おいで…♥ケダモノ同士の種付け交尾…しよ…っ♪」

まるで彼の手から逃れようとするあたしに京太郎が一瞬、寂しそうな顔を見せた。
しかし、それはあたしがそのまま後背位の姿勢でアソコを開けば、すぐさま興奮の色へと変わる。
そして…あたしの暗示によって大きくなった肉棒を、開いたあそこに躊躇なく挿入れて来るんだから。
既に愛液でビショビショだったとは言え、躊躇のないその一撃にあたしは簡単にイッてしまった。

憧「ひきゅぅっ♪♪ふ…ぅぅん…♥♥」

そんなあたしの中を京太郎は絶え間なく犯し続ける。
催眠によって欲望を肥大化された彼にとって、あたしの膣肉はまさに極上の名器のように感じるんだから。
一瞬で欲情に飲み込まれ、ただ腰を振るだけのケダモノに堕ちてしまう。
精液の量や、射精の回数だってあたし好みに調整されている彼があたしに溺れないはずがない。

憧「あはぁっ♪♪京太郎ぉ♥京太ろ…ぉ♥♥」

そして、それはあたしも同じだ。
京太郎の手によって、開発された身体は彼の男根には抗えない。
一突き毎にアクメさせられ、膣内を愛液で満たしていく。
自然、それによってスムーズになる抽送にあたしの身体がビクンと跳ね上げられる。
最初から何の躊躇もなく自分の射精だけを目指すピストンはそれくらい激しいんだから。

憧「好き…ぃ♥♥京太郎…ぉ♪好きらよぉ……♥♥」

勿論、そんなもの何の免罪符にもならない。
幾らあたしが京太郎の事が好きでも、彼を傷つけ、悩ませた事は消えないんだから。
しかし、だからこそ、あたしはこの催眠という力を捨てられない。
彼があたしに心を許してくれているのだと教えてくれたこの力を、愛しい人と心と身体が繋げてくれたこの力を。
そして、ご主人様を誰よりも気持ち良く出来るこの力を…あたしはどれだけ穢れていると分かっていても、使い続けるしかないのだ。
それを使わなければ、こんな自分勝手な女を、京太郎が好きで居続けてくれるはずないんだから。

憧「ふきゅぅぅぅんっ♥♥♥」

何時も通りの自嘲と欲情。
その2つに板挟みにされながら、あたしが悦楽に飲み込まれていく。
既にそれから解放された彼とは違い、あたしは永遠にそれに苛まれ続けるんだろう。
けれど…あたしはそれでも決して構わなかった。
ダメだと分かりながらもそれに頼らなければいけないのは、辛く苦しいけれど、でも、それはあたしの罰なんだから。
京太郎の心を書き換えて…彼の全てを玩具にしているあたしに出来る贖罪なのだ。

憧「もっろ激しくして…ぇ♪♪何も分かんなくなりゅくらい…ぃ♥♥あたしをレイプして…ぇ♪♪♪」

こうして彼に性玩具にされるのも、その贖罪の一つ。
そう思うあたしとは裏腹に、身体と心がさらなる悦楽を求める。
自分の何もかもを溶かすようなオルガズムを強請るあたしに京太郎の腰は激しさを増した。
パンパンとお尻の肉が弾ける音を鳴らすくらいのそれに、あたしの中から自嘲が削ぎ落とされていって… ――




―― 結局、その日は昼前まで犯され続け、あたしは意識を失うように京太郎と共にベッドへと倒れこんだのだった。
最終更新:2014年01月29日 20:56