結末の行方‐sight of Tomo‐ 第2章

 次の休み時間、よみの姿が教室になかった。
 よみめー、逃げやがったか。
 でも、あいつは甘ちゃんだ。お前がどこに隠れているかなど、この智ちゃんにはお見通
しなのだ。お前の考えはワンパターンだからな。
 どうせトイレだろう。中学のときに私が邪魔をして、よみがトイレで隠れて本を読んで
いた事を忘れたのか。
 まぁ、そうやってまた同じ事を繰り返すんだから、あいつは面白いんだけどな。よし、
トイレでからかってやるか。
 智は確信を胸に教室を出て、トイレへと向かった。

 トイレのドアを開け、智は中へと入った。しかし、中には誰もいなかった。扉が閉めら
れた奥の個室以外は。
 ははーん、よみはここに隠れてるなー。
 智はゆっくりとよみが隠れているはずの個室へと歩き出し、ドアをノックした。
 しかし、無愛想にノックをし返す音が聞こえた。
 ふっ、私をトイレを使おうとしているほかの女生徒と勘違いしているのか。まぁいい。
 智はまたノックし返した。しかし、同じようなノック音が返ってきただけだった。
 ふっ、私だと全く気付いてないなんて、何ておめでたい奴だ。
 智はそう思いながら、よみが中に入っている個室のドアににじり寄った。

 「よみ~、そんなところに隠れても無駄だ~。出てこ~い」
と、低い声で叫んだ。
 「なっ、何でここがわかったんだ?」
 智がそう言った直後、よみの少し焦った声が返ってきた。智はよみのそんな焦った声を
聞いて、思わず笑みがこぼれた。昔のことを忘れて同じことをしていたのだからな、こい
つはお笑いだといった具合に。
 「お前がトイレに逃げ込んで、本を読むなんてお見通しだ~。お前は本当にワンパター
ンだなぁ。中学のときにも同じ事をしたのを忘れたのか?」
 智がそう言った後、まだしばらく沈黙が続いた。しかし、少しして、
 「くっ…」
と、ドアの中で悔しがっているよみの声が聞こえた。
 智はよみに対して勝った気分がした。さーて、もっとからかってやるか。

 「出てこないのか~。3秒以内に出ないと犯人の名前を言うぞ。さーん」
 ドアの中からは何の反応もなかった。このまま言ってしまってもいいのか?
 「にー」
 おや、徹底的にシラを切るつもりか?お前はもう包囲されているんだ。早く出てこない
と犯人の名前を言っちゃうぞ。

 「いー…」
 その瞬間だった。突然ドアが開くとともに、間近にいた智の頭にぶつかり、ゴンという
音が響いた。
 「痛ってー…」
 智はあまりの痛さに、額をおさえてうずくまった。
 「バカタレが!天罰だ!」
 智がうずくまっている間に、よみはそう言い捨てて、トイレから出て行った。
 智はフラフラと立ち上がり、まだ痛みの残る頭をおさえながらよみが出て行ったトイレ
の入り口のドアを見つめた。
 「くそー、不意打ちとは卑怯だぞ!このままで終わると思うなよー」
と、叫びながら。
(続く)

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最終更新:2008年03月21日 14:11