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- 備考 小ネタ スカートの中 盗撮
34 :名無しさん@ピンキー[sage]:2007/11/14(水) 22:37:55 ID:y2yPBugc
「…………明久」
放課後、さっさと帰宅しようと鞄を背負うと、ムッツリーニに呼び止められた。
「珍しいね。ムッツリーニから話しかけてくるなんて」
「…………とても重要な相談」
ムッツリーニの表情からただならぬ何かを感じる。確固たる意志を持った眼差しが眩し
い。
「…………魅力的な提案がある」
僕は固唾を呑んだ。ムッツリーニにとって魅力的なものは、世の男性諸君にとっても魅力的であるに違いない。彼は男の欲望を具現化したような存在なのだから。きっと素晴ら
しい提案だ。
「…………ここでは話せない」
「なるほど……他に漏れてはいけない内容なんだね? わかったよ。場所を移そう」
「どうした、二人とも? 帰らないのか?」
声の主はFクラス代表にして唯一無二の悪友、坂本雄二だ。かつては神童と称された頭
脳の持ち主で、それは主に試召戦争で発揮されている。リーダーシップというかカリスマ
性というのか、最下層軍団であるFクラスをまとめられるのは雄二しかいない。
「…………好都合」
雄二を引き連れ、三人で屋上へ向かった。放課後にここを訪れる物好きもいないはずで、
密談をするにはうってつけの場所だ。
隅の方で固まる男子生徒三人。教師が見たら確実に放っておかない光景だろう。
「で、提案があるそうだな」
「…………(コクリ)」
雄二の問いに、ムッツリーニが頷く。
数秒の間を置いて、提案の内容が語られた。
僕の召喚獣を使って、女子のスカートの中を盗撮する。
35 :名無しさん@ピンキー[sage]:2007/11/14(水) 22:38:42 ID:y2yPBugc
空気が凍る。屋上ってこんなに静かだったんだ。
僕と雄二は顔を見合わせ、お互いの意志を確認した。
「すごいよムッツリーニ。名案じゃないか」
「ああ、どうして俺たちはこんな簡単な方法に気付かなかったんだ」
僕の召喚獣は物に触れることができる。デジカメやらビデオカメラやらも然りだ。そし
て雄二の持つ白金の腕輪は、召喚フィールドを作成可能だ。スカートの中を見るためだけ
に試召戦争を起こす必要もない。完璧だ!
こんな妙案を浮かべられるのは寡黙なる性識者、土屋康太以外にいるだろうか。いや、
いないだろう(反語)。
「あらかじめ明久の召喚獣を出しておく。俺は腕輪を起動させたままさりげなく、召喚獣が真下へ入り込める位置まで獲物に近付く。作戦はこれでいいな?」
この作戦はムッツリーニの指示、雄二の追跡技術が鍵を握っている。そして僕(の召喚
獣)が上手く撮影できるかどうかは、作戦決行後の見返りを左右する最大のポイントだ。
獲物に存在がバレてしまったら、しばらく校内を歩けそうにない。
「なかなかハイリスクだね」
でもやる価値はある。ムッツリーニは盗撮の限界に挑戦しているんだ。有り得ないロー
アングルからの撮影を実現するため、僕を頼ってきたんだ。協力してあげるのが義理人情
じゃないか。
「…………練習」
そうか。付け焼刃の技術ではボロが出る。練習を積んでおかなければならない。
「でも一体、どうやって練習するんだ? 男を被写体にしてもモチベーションが上がらな
いだろう」
雄二の意見はもっともだ。が、その問題を解消する術を僕は知っている。
「秀吉に頼もう」
「…………!!(ボタボタ)」
「ムッツリーニ! 血を流すには早過ぎるよ!」
想像だけで鼻血を垂らすなんて、尊敬に値する。
「だが秀吉がこんなことに付き合ってくれるかどうか……」
「いや、女子風呂覗きのときに力を合わせた仲間だ。きっと僕らの情熱は伝わるよ」
「ああ……そうだな。秀吉なら分かってくれる」
信じ合える仲間っていいね、本当に。
36 :名無しさん@ピンキー[sage]:2007/11/14(水) 22:39:30 ID:y2yPBugc
短いスカートから伸びる脚。どんな角度から見ても、この脚が男のものだと推測できる
要素はない。
「どこから調達してきたのじゃ? この制服」
強化合宿のときになぜか雄二が持っていたセーラー服に身を包んだ秀吉は、セーラー服
と機関銃を脱がさないでみたいな感じだ。要するに似合っている。
「感謝するぞ秀吉。こんなバカげた作戦に加わってくれて」
雄二が礼の言葉を漏らすのも頷ける。今回は僕らの身に危機が迫っているわけでもない
し、秀吉は盗撮をしてまでスカートの中を覗こうとする人間でもない。
「よく分からんのじゃが……三人が鬼の形相で頭を下げにきたのでな」
そんなに怖い顔してた? 優しく穏やかにお願いしたはずなのに。
「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」
「ムッツリーニ! 撮影するには早過ぎるよ! でも後で二百枚ちょうだい!」
「そんなにもらってどうするんだ、明久」
「売り飛ばすのさ!」
「ワシに肖像権はないのかのう……」
この際秀吉の人権は無視する。もうこれは「性別が男の木下優子さん」なんてレベルじ
ゃない。清楚なセーラー服をまとった一人の美少女がここにいる。
「さて、おふざけはこのくらいにして、訓練に移ろう」
雄二が手を叩き、場を仕切る。
いくら夕方前とはいえ、夏の屋外は熱線をまともに食らわないといけないのが辛い。し
かし僕らには夢がある。太陽のいじわるになんか負けない!
「じゃあ秀吉は適当に歩いてくれ。行くぞ、明久――起動!」
「了解――試獣召喚!」
白金の腕輪が起動され、召喚フィールドが展開される。そして僕の召喚獣が顔を出し、
あとは秀吉を追跡して撮影するだけだ。
「…………(サッ)」
ムッツリーニからデジカメを受け取り、僕の召喚獣の任務が始まる。
秀吉の動きに合わせて雄二が追い、さらに僕と召喚獣も付いていく。ムッツリーニの的
確な指示を受け……よし、上手く下に回り込んだ。
「男の下着を見て嬉しいのじゃろうか?」
もっともな意見だけど、相手が秀吉なら話は別だ。嬉しいに決まってる。
しかしいくら僕が召喚獣の扱いに慣れているとはいえ、角度や位置を調節することは難
しい。
「…………三センチ前」
エキスパートの望む撮影とは、ここまで細かいレベルのものなのか。奥が深いよムッツ
リーニ。
羞恥に頬を紅く染める秀吉の顔がなんとも言えない。その表情もばっちりカメラに収め
られてるし。
「このくらいでいいんじゃないか? シュミレーションだと限界がある」
「そうだね。秀吉、お疲れさま」
「ふう……なかなか疲れるぞい。精神的に」
「…………明日は、本番」
これできっと上手くいく。まだ見ぬスカートの中を想像し、僕らは解散した。
明くる日の昼休み、昼食を光の速さで済ませて、教室の隅で打ち合わせする。
「秀吉は見張り役だ。何者かが現れたら早急に知らせてくれ。ムッツリーニも監視しなが
ら明久に指示を送る。俺は十メートルギリギリの位置にまで近付き、あとは明久の力量に
全てを委ねる。いいな?」
『おー!』
37 :名無しさん@ピンキー[sage]:2007/11/14(水) 22:40:08 ID:y2yPBugc
この作戦を成功させるには、なるべく人通りの少ない場所を選ばないといけない。バレ
ては全てが水の泡だ。一人でいる女子を探すのは骨が折れるけど、それしかないようだ。
とりあえず保健室前に向かうことにした。今日は養護の先生がいないらしいから、突然
誰かが保健室から現れる心配はない。近くに女の子がいなかければそれまでだけど。
「…………発見」
ムッツリーニが呟いた。これはラッキーだ。神は僕たちに味方している。
「待て、あれは木下の――」
「姉上じゃな」
脚立に上り、廊下の蛍光灯を替えている。これなら下を見ることはまずない。千載一遇
のチャンスじゃないか!
「身内が盗撮されるというのも複雑じゃ……」
「ごめん秀吉。僕らに選択の余地はないんだ。このチャンスを逃して何が男だ!」
「よし、行くぞ――起動」
雄二が角を曲がり、さりげなーく木下優子さんに歩み寄る。存在を悟られないよう、静
かに一歩ずつ進む。
アイコンタクトで意志疎通を図る。間合いに入れたという合図が来る。
「…………(コクリ)」
ムッツリーニが頷いた。
「試獣召喚」
召喚獣が現れる。デジカメという名の武器を携え、射程距離に踏み入った。
あとは僕の技術と情熱で、撮影されたもののでき映えが左右される。緊張の瞬間だ。
唾を呑み込み、僕はシャッターを――
「……犯罪はダメ」
雄二が保健室に消えた。
なんで? なんで霧島さんが保健室に? それ以前にどうやって鍵を? 雄二を連れ去
って何をするんだ? ベッドの上で何をするんだー!
「や、やめ、翔子、おい明久! 助けてくれ!」
「だ、誰? 何?」
悲痛な叫びを聞き、優子さんが振り向く。角から半身を乗り出していた僕と、真下にい
る召喚獣の存在に気付かれてしまった。
「ちょ、な、なにこれ? デジカメ?」
「まずい! 秀吉、ムッツリーニ、逃げよう!」
「雄二は置いてけぼりでいいのじゃな?」
「うん! 尊い犠牲を無駄にしちゃいけない!」
「秀吉? いま秀吉って言ったわね? いるのね秀吉!」
「逃げるしかなさそうじゃな」
いい判断だよ、秀吉。
「さあ行こうムッツ――っていない? 早っ!」
ぼけっとしている暇はない。一刻も早く逃げなければ。
階段を駆け抜け、廊下を疾走し、教室まで逃げ切った。でもここは安全地帯ではなく、
ここに僕らが逃げてくることは秀吉のお姉さんでも勘付くはずだ。
「いた! 秀吉、どうして盗撮なんてことに協力しているのか分からないけど、止めても
よかったんじゃないかなぁ?」
「目が怖いぞ姉上? どうして首を掴むんじゃ――くっ、そんなに強く握ったら息がっ……」
その場にいたら僕にも被害がくるのは明らかだったので、逃げることにした。
「でもどこに逃げよう……」
「吉井。キョロキョロしてどうした?」
「ああ鉄――西村先生。このままだと窒息死しそうなんで困ってるんです」
「そうか。じゃあ俺に撲殺されるといい。なあ、盗撮魔?」
もしかして、僕らの悪行ってもう広まってる? 教師陣の情報網ってすごいなあと感心、
している場合じゃない。
「今日は早退します」
「待てえ、吉井!」
奔走するも鉄人に捕らえられた僕は、教育的指導という名目の体罰を受け、挙句の果て
に噂を耳にした美波と姫路さんに折檻とおしおきを食らった。ムッツリーニも翌日、同じ
目に遭ったらしい。
雄二の貞操は知らない。
最終更新:2009年12月31日 11:17