• 作者 412
  • 投下スレ 3代目スレ
  • レス番 412
  • 備考 鬱展開

412 名前: 恋哀(レンアイ) [sage] 投稿日: 2010/02/12(金) 02:09:35 ID:6sjAHvoQ

「……」
 ある日の木下家。
 リビングでは優子は、弟である秀吉を殺意を持って睨み付けている。
「あ、姉上。きょ今日はどうしたのじゃ」
「ねえ秀吉。アンタはさ、人を本気で殺したいほど憎んだ事ってある?」
「い、いや。ないのぅ。あ姉上は」
「いるわ。目の前に」
 優子の目の前に居るのは、秀吉である。
 今まで、理不尽な理由から関節技を決められたことは多々あったが、
 今日ほど本気の殺意を感じたことは今まで無かった。
「……実はね、アンタのクラスメイトの吉井くんと付き合っているの」
「――」
 衝撃の事実。
 だが、優子の殺意を併せ持つ威圧感の直撃を受けているため、声が出せない。
「そうね。ハッキリ言って吉井君とは、男と女の関係。吉井君のマンションで、一緒に寝たわ」
 オーラが。
 優子から黒いオーラが、噴出する。
「その時……吉井君、私のことをなんて呼んでくれたと思う?」
「――わ、分からぬ」
「――……。そう、なら教えてあげる。吉井君ね、私を抱きながら『秀吉』って呼ぶのよ」
「なっ!」
「私ではなく、弟で、しかも男のアンタの名前を呼ぶのよっ。『秀吉』『秀吉』って!!
 どんなに私が惨めか、アンタに分かる? 女として抱いてるのに、男のアンタに勝てない私の気持ちがっ。
 あの時ほど、アンタと双子である事を呪ったことはないわ」
「……あ、あねうえ」
 優子の目から涙が、こぼれ落ちる。

426 名前: 恋哀(レンアイ)2 [sage] 投稿日: 2010/02/12(金) 23:53:47 ID:i4BZ2dXr
 木下優子の激白があった翌日。
 文月学園では、ちょっとした異変が起きていた。
「……木下。優子はどうしたの?」
 Fクラスに、そう聞きに来たのはAクラスの代表、霧島翔子。
「――姉上がどうかしたのかの」
「……学校に来てない。先生たちも、何も聞いて無いみたいだから」
「――」
 優子は、学校生活においてこの上ない優等生を演じている。
 そのため教師の間では、社交性に富んでおり模範的な生徒のため人気があった。
 が、その優子が突然の無断欠席。
 病気なら電話があっても可笑しくないが、それもない。
(……流石に、昨日のことをありのまま言うのはまずいのぅ)
「姉上は少し気分が悪いんじゃ。心配せんでくれ」
「…………分かった」
 翔子は、秀吉の返事をきくと教室を出て行った。


「…………秀吉」
「ん。なんじゃムッツリーニ」
「…………昨日のデートの事を詳しく」
「何を言っておるのじゃ。昨日、儂は」
 秀吉の言葉を遮るように、ムッツリーニは一枚の写真を取り出す。
 そこに写っているのは、明久と楽しそうにデートをする秀吉の姿が。
 否、秀吉は昨日は家で次の公演の台詞覚えをしていたため、このような事はありえない。
 すると、この写真に写っているのは。
(姉上か)
 顔を見るだけでも、幸せそうなのが分かる。
 だが、昨日帰ってきてからの優子の事を思い出す。
(ワシは……、ワシはどうすればいいんじゃ)
「………秀吉?」
「のぅムッツリーニ。明久は、何処にいるか知らぬか?」
「…………まだ学校には来てない」
 無線機から声がする。
『A班、正門前。吉井明久の姿確認できず』
『B班、裏口。未だに吉井明久登校せず』
 どうやら優子同様に、明久も学校には来てないようだ。
「木下。昨日のこと、訊かせてくれる?」
「狡いです、木下君。明久君と一緒に……(デート)……するなんて!」
「い、いや。明久と一緒にいたのは、ワシではなく、姉上で」
「木下のお姉さん? そんなハズ無いでしょう。アキはバカの代名詞『観察処分者』。木下のお姉さんは、Aクラスの完璧超人。釣り合いが取れないわ」
「そうです。そんな嘘を吐くなんて、木下君らしくありませんよ!?」
「……嘘ではないんじゃ」
 そう反論しても、2人は聞く耳を持たない。
 が、そこに無線機から報告が入る。

『コチラD班・マンション前。吉井明久、挙動不審の状態で出現。何処から向かう様子。指示をどうぞ』
最終更新:2010年02月21日 19:37