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のび太 IN バキ - (2009/11/29 (日) 14:30:19) のソース
「この時代にも、いや僕らの時代には既に帝愛があるのか…」。 のび太は、喫茶店の座席でやや前傾姿勢となり頭を上げた。 小学生だけでは入店できなかった区内の喫茶店。トイメンに座るのはロン毛の黒服だ。 だからというわけでもないだろうが、その人は黒川と名乗った。 「で、どうする?まだ強くなりたい?」 黒服の黒川は、のび太に問う。 それへの返事を先延ばしにしたいからか、先ほどの20世紀で味わったものでは屈指の「リアル」を 思い出してやや体が震えたからか、のび太は両膝の上に置いた手に力を入れ再び下を向く。 そして、コーラフロートをチュゥゥッと一喫。そして息をつぐと開口一番に…。 「はい、今度は地道にしたいです」。 黒川は、裏物DVDを収録・再製(気の遠くなるダビング作業)・出荷する秘密工場を視察に来ていた。 秘密工場といっても、収録だけは別の場所で行われる。しかも、帝愛の息がかかった民家とかだ。 そこで、体育用の長細いマットに行楽用のビニールシートを巻いた物体の上でシコってる最中の… のび太と出遭った。 強くなるため深夜徘徊に行ったのび太は、裏DVD業者にコロッと騙されて別の日にはこういうところに居るのだ。 脇でアクロバティックな姿になって応援してる、ドキュソ風の女性(19歳ぐらいか?)が彼のマネージャーらしかった。 ドキュソ女は、のび太ぐらいの年齢(ころ)初めて下着を売ったクチだ。 それが長じて、半分は情欲のためこういうことをしているのだろう。 とりあえず、債務奴隷でもない奴にこういうことをしたらダメなので撮影が終わってから こういうことを認可したアホどもを召集してデータ収録の装置を全てクリーンアップさせた。 そして、なにげなく黒川はクッションをけった。ドキュソ女が腰の下に敷いていた四角いクッションなのだが。 それを、なんとなくキャッチしたのがのび太。その流れで、黒川はのび太を外へ誘い出した。 それから、腕を組んで歩きながらどういうことだったのか訊いた。それと同時に、のび太が置かれていた状況を教えた。 呆れたことに、それでものび太は闇金のことを「民間でも筋肉だけに頼らずケンカに勝つすべを知っている集団」としか 認識していなかった。弱いくせに、もはやジャンキー…。それもパワージャンキー。破滅型…。 それを見かねたのか、「こんな面白い餓鬼めったにいないぞ」とでも思ったのか黒川はのび太を実家の道場に招いた。 当日、ドラえもんも同行して来た。 「裸の美女が夜のNYを歩くようなものだ」という喩えを聞いたことのある黒川だが、 こいつまさにそれだとしか思えないのび太にかつて見た人物を思い出す。 何がこいつをそこまでさせるのか。それもプロボクシングで勝ち上がるとかじゃなく、漠然と強くなりたいだなんて。 そんな黒川も、あのような出逢い方をした対象に実家の道場の所在地を教えてる時点でけっこー毒されてる。 のび太は、ジャージ姿で道場に来た。入り口で「スリッパはどこですか?」などと聞くのは愛嬌か。 あとあと(中学の挌技室とか)、のび太がヘンに思われたりしないよう一般常識ぐらい教えてやる。 それから、挨拶も早々に立ち合い。なぜなら、土曜日はまだ半ドンのところが多くて夕方まで誰も来ないから。 その半ドンも、のび太にとっては土曜日が半分潰れる苦難という意味を為すようだ。これは鍛え甲斐がある。 隅で正座するドラえもんの脚を不思議に思い見つめながらも、黒川はのび太に相対する。 鯉口が鳴らないので、気分を出すために「シャキーン」とほざいてみる黒川。「ギャッ!」と飛び退くのび太。 そのぐらい、予想すべきだ。ここが少林寺拳法とかの道院やジムに見えるのか。 黒川は”中身”を無造作に、畳やゴザの成れの果てが形作る山へ投げ捨てた。 そして、鮮やかな桜色の鞘をのび太に投げて寄越す。 隅で”中身”が陽光に煌めいているからまだびびってるのび太だが、なぜか黒川が鞘を帯から抜くときの 違和感が頭を離れなかった。ずっとアゴを引いて体の正面に向いていた黒川の貌。 いつの間に、帯から鞘を抜き去ることなんかできたのか。 それからの展開は、のび太がいくつか痣を作るだけに終わった。 鞘をフルスイングするのび太を、手刀や刈り技で崩す。のび太が床に強打しないように、両手で支えてやる。 10分ほどで、こんなルーティンワークと化した。さながら、ヘンな社交ダンスみたいだ。 のび太の属する世帯への”浸透”を既に済ませているとはいえ、あんまり痣を作ったらやばいので 乱捕りは早々に止めた。痛みに呻くのび太はしかし、この黒川より更に強い人間―ここの道場主―に興味を持った。 なぜなら、黒川はすべての技をその人物から教わったに過ぎないと言ったから。 だがその日・・・! 予想外の事態が発生・・・! 「うわっ! それどうしたの!?」「!」「センセイッ・・・」「師範っ・・・」 「くぅわっ、水くれー」。 道場主が、練習の開始時刻に30分余り遅れて道場に帰り着いた。それも、フルボッコで。 「まさか俺がらみじゃ!?」 門弟の木崎という人が、心配そうに訊いてる。でも、道場主はカブリを振る。 それでも依然、道場主は満身創痍だからホッとはできない。 黒川が差し出したお冷。道場主はそれをクイッと飲み干し…コップをコースターに置きつつ別の方を向く。 道場の出入り口がある方だ。そこに、一目で別の武道をしてるとわかる格好の男性が立っている。 蛍光灯の光が、拳法着に反射してキラキラしてる割にはそれがとても体にフィットしてそうだ、 「落し物です」。それだけ言うと、拳法家風の男性は黒い棒のようなものを上がり框に置いて去っていった。 後ろ向きに発進したのに、道場の敷居で蹴躓かなかったし最初の一歩にしては妙に速かった。 そして黒い棒のような物。微妙に湾曲している。それは重厚な黒塗りの鞘だった。 道場主。この闘い方の「八段範士」。先ほどの果し合いの経緯、その話に違和感を覚えるのび太。 道場主は、「一足一刀の間合いから構え合って始めた」「得物は鞘、いつもの稽古のように」とのたまう。 なるほど、確かに抜く手を柔術で捕られて~みたいな展開ではなさそうだ。しかし、違和感。 初めての道場の緊張感と、間近に見た暴力製の”作成物”を見たことで自制心が緩んでいたのだろう。 のび太は挙手した。つい、「野比くん、だったね」と当ててしまう道場主。 「なんで、本身を抜いた果し合いにならなかったんですか?」 本当は、一足一刀の間合いから数抜きをしたのだ。相手も―得物の有無の他は―同じ条件で。 そのうえで、ついぞ一本もとれなかった。それを、ごまかした。 のび太の晴眼を一笑に付して黙殺。だが、せめてもの詫びにと「子守ロボット」とやらに望みを託す。 強敵・龍書文への紹介状。誰への詫びなのか。その悩みの雲が晴れるのを待たず、のび太は次のステージへ向かう。 電気スタンドに照らされた、畳敷きの一室。ショックガンに突き上げられた鉛筆が、薄明かりの向こうで泳いでいる。 本人も、後から認識してるんじゃないかってぐらい普通に・・・途中から二挺拳銃に変わってる。 ロンがショックガンの間合い・・・いや射程距離で勝負を受けてくれるかどうかわからない。 それに、勝ててもショックガンの力によるところが大きい。それでも、早抜きなればこそ。 きっと、ロンは認めてくれる。勝てば、認めてくれる。その想いは確信に近かった。 素手と短銃の違いはあれど、自分の遥か先を歩く人物であろうと。 早抜きを選択(えら)んだ者同士のシンパシィ!! かつて夜の時間帯を利用した月までの踏破計画。あれは挫折したが、今度ののび太は時差を利用して中国へ往く。 そして、夜明け頃に帰ってくる。強くなりたいという思い。 ※予定ありませんが、続きます。金本や野生のエルクを当て馬にする予定もあります。