アルカディア北部の平原地帯。
北方より侵攻を始めた女傑部隊(アマゾン)は、アルカディア軍と激しい戦闘を繰り広げていた。
戦況は均衡し、長期戦の様相を呈していた―――
北方より侵攻を始めた女傑部隊(アマゾン)は、アルカディア軍と激しい戦闘を繰り広げていた。
戦況は均衡し、長期戦の様相を呈していた―――
「アマゾンめ…流石にしつこいな」
自ら兵を率いて、戦場を縦横無尽に駆け抜けるレオンティウスは、彼らしからぬ苛立った様子だった。
「母上以外の女は苦手だ…粘着気質の女となれば、私にとってはもはや憎しみの対象ですらある…」
「そんなことを言っている場合ではありませんぞ、陛下」
彼の隣に陣取るカストルが、口を尖らせる。
「分かっているさ。この状況―――何か一つ欲しいな。味方にとっても敵にとっても予想外の事態。できれば我らに
有利に働くような…いや、そんなことを言っても始まらないな。それより、女王は…アレクサンドラは、まだ戦場に
出ていないのか?」
「はっ。今のところ、誰も彼女の姿を見てはおりません」
「そうか。勿体ぶっているのかもしれんが、できれば顔を合わせたくないな…あの女は、世間的には絶世の美女なの
だろうが、私にとっては傍迷惑なじゃじゃ馬としか思えぬ」
はあ、とカストルは溜息をついた。
(本当に、これさえなければ、文句のつけようのない王者だというのに…)
その瞬間、遠目に女傑部隊の弓兵が矢を番え、弓を引き絞るのが見えた。
「いかん…!こっちを狙っておるぞ!」
周囲の兵達に警告を促すが、それで敵の動きが止まるわけではない。嵐の如く矢が放たれ―――
自ら兵を率いて、戦場を縦横無尽に駆け抜けるレオンティウスは、彼らしからぬ苛立った様子だった。
「母上以外の女は苦手だ…粘着気質の女となれば、私にとってはもはや憎しみの対象ですらある…」
「そんなことを言っている場合ではありませんぞ、陛下」
彼の隣に陣取るカストルが、口を尖らせる。
「分かっているさ。この状況―――何か一つ欲しいな。味方にとっても敵にとっても予想外の事態。できれば我らに
有利に働くような…いや、そんなことを言っても始まらないな。それより、女王は…アレクサンドラは、まだ戦場に
出ていないのか?」
「はっ。今のところ、誰も彼女の姿を見てはおりません」
「そうか。勿体ぶっているのかもしれんが、できれば顔を合わせたくないな…あの女は、世間的には絶世の美女なの
だろうが、私にとっては傍迷惑なじゃじゃ馬としか思えぬ」
はあ、とカストルは溜息をついた。
(本当に、これさえなければ、文句のつけようのない王者だというのに…)
その瞬間、遠目に女傑部隊の弓兵が矢を番え、弓を引き絞るのが見えた。
「いかん…!こっちを狙っておるぞ!」
周囲の兵達に警告を促すが、それで敵の動きが止まるわけではない。嵐の如く矢が放たれ―――
「罠カード発動―――<聖なるバリア・ミラーフォース>!」
その瞬間、アルカディアの兵士達を光の壁が包み込む。矢はそれによって跳ね返され、弓兵達は自ら放った矢を受け
苦鳴を上げながら蹲る。
「む…!?今のは一体何事か!」
「アルカディアの諸君!俺達が来たからにはもう安心だ!」
レオンティウスに答えるように、ザッと地を蹴り付ける足音。アルカディア軍の目の前に、奇妙な闖入者が現れた。
そう、言うまでもない。我らが主人公・闇遊戯率いる四人であった。
「我々は星女神の命を受けた一行・勇者オリオンとその他愉快な仲間達である!故あって、これよりアルカディア軍
に助太刀いたーす!」
オリオンはそう大見栄をきったが―――どっからどう見ても、怪しすぎる四人組にしか思えないのが、辛いところで
あった。
闇遊戯はやけに仏頂面で。城之内とオリオンは何故か既にボロボロで。
特に、ミーシャの格好は異様そのものである。
胸元が大きく開き、太股まで丸出しな超ミニスカートの年齢的にはちょっぴり厳しい魔法少女的衣装。頭にはやはり
魔法使いっぽいトンガリ帽子を被っている。手には勿論それっぽいステッキである。
「クリ~」
その肩には、ふわふわしたまんまるな体型とお目々が愛らしい謎生物が乗っかり、クリクリと鳴いていた…。
苦鳴を上げながら蹲る。
「む…!?今のは一体何事か!」
「アルカディアの諸君!俺達が来たからにはもう安心だ!」
レオンティウスに答えるように、ザッと地を蹴り付ける足音。アルカディア軍の目の前に、奇妙な闖入者が現れた。
そう、言うまでもない。我らが主人公・闇遊戯率いる四人であった。
「我々は星女神の命を受けた一行・勇者オリオンとその他愉快な仲間達である!故あって、これよりアルカディア軍
に助太刀いたーす!」
オリオンはそう大見栄をきったが―――どっからどう見ても、怪しすぎる四人組にしか思えないのが、辛いところで
あった。
闇遊戯はやけに仏頂面で。城之内とオリオンは何故か既にボロボロで。
特に、ミーシャの格好は異様そのものである。
胸元が大きく開き、太股まで丸出しな超ミニスカートの年齢的にはちょっぴり厳しい魔法少女的衣装。頭にはやはり
魔法使いっぽいトンガリ帽子を被っている。手には勿論それっぽいステッキである。
「クリ~」
その肩には、ふわふわしたまんまるな体型とお目々が愛らしい謎生物が乗っかり、クリクリと鳴いていた…。
何故、このような一言では形容しがたい事態に陥ったのか―――話は、つい数時間前に遡る。
戦場からやや離れた町で宿を取っていた遊戯達は、情報収集しながらこれからについて話し合っていた。
「この近くで、アルカディアは女傑部隊(アマゾン)ってのとドンパチやってるらしいな」
「ああ。それはオレも聞いた」
闇遊戯が頷く。他には特に目ぼしい情報はなかった―――しいて言うなら、奴隷市場が襲撃されただのなんだのと、
物騒な話題もあったのだが、あまり自分達に関係ありそうには思えなかった。何しろ古代世界である。新聞やネット
なんて文明の利器がないため、集められる情報というのも限度があるし、正確さにも疑問がある。
「戦争やってるってんなら、そこで乱入してド派手に活躍すれば、王様と直々に話す機会もできるんじゃねえか?」
とは、城之内の意見である。
「うーん…まあ確かに、アルカディアは今んとこ女傑部隊に苦戦させられてるみたいだしな。そう言う意味じゃあ、
悪い案でもないか」
「未来から来たオレ達がこの時代の戦争に参加するのがいいことだとは正直思えないが…海馬やエレフがどう出る
のかも分からない以上、手段を選り好みしていられる状況でもないな。」
オリオンと闇遊戯も、城之内の案に同意する。
「けどよ、ミーシャはどうするんだ?女を一人でここに残すってのも危なっかしいぜ」
何しろ古代ギリシャの治安というのは、非常に悪い。ヨハネスブルグも真っ青だ。ならば、戦場に連れていくべきか
といえば、それはそれで言うまでもなく危険である。
「ミーシャ。一応訊くが、戦闘的な技能の心得はあるか?」
ミーシャはちょっと考えて、ぐっと握り拳を作ってみせた。
「遊女見習時代に、先輩から仕込まれた火を噴く鉄拳が」
「どんな先輩だよ」
「高級遊女メリッサ…彼女はその鉄拳で、灰色熊をも屠ったと言われているわ」
「それは高級遊女じゃねえ!むしろ超級闘女だ!」
ミーシャとオリオン。仲良しな二人のやり取りではあったが、闇遊戯は口をへの字に結んで嘆息する。
「どうにも不安だが…仕方ないな。ミーシャ、オレ達もできる限りはキミを守るつもりだが、いざという時には自分
の身は自分で守ってもらうしかない。そこで<ブラック・マジシャン・ガール>召喚!そして魔法カード<融合>を
発動するぜ!」
「え…きゃあっ!」
召喚された黒魔導師の少女とミーシャの姿が一つに重なり、七色の光を放つ。その瞬間、ミーシャの衣服が分解
され(当然その一瞬は全裸になったが、残念ながら光で目が眩んでいたので誰も目撃できなかった)代わって
新しい衣装が装着された。
「こ、これは…!」
「この発想はなかったぜ…!」
オリオンと城之内が目を見張る。そう―――融合の効果により、ミーシャの服装はBMGのそれとなったのである!
「とりあえず、これである程度は自衛ができるはずだ」
闇遊戯はやたら自信ありげだ。ミーシャはというと、大きく開いた胸元や大胆ミニスカートにちょっぴり恥ずかしく
なりつつも、その気になってくるくるとステッキを振り回したりしている。どうやら意外に気に入ったようだ。
「そして仕上げに<クリボー>召喚!」
「クリー!」
勢いよく飛び出したまんまる毛玉・クリボー。クリクリ鳴き声をあげつつ、ぽよんぽよん飛び跳ねながら、ミーシャの
肩にマスコットよろしく乗っかった。闇遊戯はその姿に、ぐっと親指を立ててみせた。
「完璧DA!」
何がどう完璧なのかは分からないが、とにかく完璧である。闇遊戯が言ってるんだから間違いない。
「これでキミはもうミーシャじゃない…<ブラック・マジシャン・ガール・ミーシャ>だ!」
直訳すると、黒魔法少女ミーシャ。本人もすっかりその気になって、ポーズを決めてみたりしている。それを横目に
しつつ、オリオンは城之内に囁きかけた。
「城之内…唐突だが、俺の年齢は十九歳だ」
別に誰も気にしてなさそうな設定である。
「それがどうしたんだよ?」
「そして、ミーシャの年齢も十九歳だ」
「…………」
「お前は、十九歳で魔法少女とか抜かす女をイタイと思わないのか?」
N・Tさんから苦情と砲撃が来そうな意見だったが、城之内も内心(それはキツい!)と思っていた。そんな二人に、
ミーシャは無邪気に問いかけた。
「えへへ。オリオン、城之内。どうかしら、この格好?」
「…………」
さあ、究極の選択だ!
①とっても似合うよ!
②うーん、ちょっと変かな?
③ケッ!この年増が!
これが好感度を稼げばいいだけの恋愛ゲームなら①を選べばいいだろう。しかし現実問題、厳しいことを言ってやる
のも友人の務めというものである。二人の選んだ答えは。
「「ケッ!この年増が!」」
美しい友情だった!例え自分が憎まれようと、彼等はミーシャを思えばこそ正しい道を選んだのだ!誰がどう言おう
と、城之内もオリオンも立派だった!…しかし、それが理解されるかどうかは別問題だった。
「遊戯…」
「…なんだ?」
「これで、どうやって戦えばいいのかしら?」
「…倒したい相手に向かってステッキを振り翳し<黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)>と叫ぶんだ。すると
魔力が爆発を起こし、敵を打ち砕く」
「ありがとう」
ミーシャはステッキを城之内とオリオンに向ける。二人は悟りを開いた表情で、それをただ受け入れた…。
「この近くで、アルカディアは女傑部隊(アマゾン)ってのとドンパチやってるらしいな」
「ああ。それはオレも聞いた」
闇遊戯が頷く。他には特に目ぼしい情報はなかった―――しいて言うなら、奴隷市場が襲撃されただのなんだのと、
物騒な話題もあったのだが、あまり自分達に関係ありそうには思えなかった。何しろ古代世界である。新聞やネット
なんて文明の利器がないため、集められる情報というのも限度があるし、正確さにも疑問がある。
「戦争やってるってんなら、そこで乱入してド派手に活躍すれば、王様と直々に話す機会もできるんじゃねえか?」
とは、城之内の意見である。
「うーん…まあ確かに、アルカディアは今んとこ女傑部隊に苦戦させられてるみたいだしな。そう言う意味じゃあ、
悪い案でもないか」
「未来から来たオレ達がこの時代の戦争に参加するのがいいことだとは正直思えないが…海馬やエレフがどう出る
のかも分からない以上、手段を選り好みしていられる状況でもないな。」
オリオンと闇遊戯も、城之内の案に同意する。
「けどよ、ミーシャはどうするんだ?女を一人でここに残すってのも危なっかしいぜ」
何しろ古代ギリシャの治安というのは、非常に悪い。ヨハネスブルグも真っ青だ。ならば、戦場に連れていくべきか
といえば、それはそれで言うまでもなく危険である。
「ミーシャ。一応訊くが、戦闘的な技能の心得はあるか?」
ミーシャはちょっと考えて、ぐっと握り拳を作ってみせた。
「遊女見習時代に、先輩から仕込まれた火を噴く鉄拳が」
「どんな先輩だよ」
「高級遊女メリッサ…彼女はその鉄拳で、灰色熊をも屠ったと言われているわ」
「それは高級遊女じゃねえ!むしろ超級闘女だ!」
ミーシャとオリオン。仲良しな二人のやり取りではあったが、闇遊戯は口をへの字に結んで嘆息する。
「どうにも不安だが…仕方ないな。ミーシャ、オレ達もできる限りはキミを守るつもりだが、いざという時には自分
の身は自分で守ってもらうしかない。そこで<ブラック・マジシャン・ガール>召喚!そして魔法カード<融合>を
発動するぜ!」
「え…きゃあっ!」
召喚された黒魔導師の少女とミーシャの姿が一つに重なり、七色の光を放つ。その瞬間、ミーシャの衣服が分解
され(当然その一瞬は全裸になったが、残念ながら光で目が眩んでいたので誰も目撃できなかった)代わって
新しい衣装が装着された。
「こ、これは…!」
「この発想はなかったぜ…!」
オリオンと城之内が目を見張る。そう―――融合の効果により、ミーシャの服装はBMGのそれとなったのである!
「とりあえず、これである程度は自衛ができるはずだ」
闇遊戯はやたら自信ありげだ。ミーシャはというと、大きく開いた胸元や大胆ミニスカートにちょっぴり恥ずかしく
なりつつも、その気になってくるくるとステッキを振り回したりしている。どうやら意外に気に入ったようだ。
「そして仕上げに<クリボー>召喚!」
「クリー!」
勢いよく飛び出したまんまる毛玉・クリボー。クリクリ鳴き声をあげつつ、ぽよんぽよん飛び跳ねながら、ミーシャの
肩にマスコットよろしく乗っかった。闇遊戯はその姿に、ぐっと親指を立ててみせた。
「完璧DA!」
何がどう完璧なのかは分からないが、とにかく完璧である。闇遊戯が言ってるんだから間違いない。
「これでキミはもうミーシャじゃない…<ブラック・マジシャン・ガール・ミーシャ>だ!」
直訳すると、黒魔法少女ミーシャ。本人もすっかりその気になって、ポーズを決めてみたりしている。それを横目に
しつつ、オリオンは城之内に囁きかけた。
「城之内…唐突だが、俺の年齢は十九歳だ」
別に誰も気にしてなさそうな設定である。
「それがどうしたんだよ?」
「そして、ミーシャの年齢も十九歳だ」
「…………」
「お前は、十九歳で魔法少女とか抜かす女をイタイと思わないのか?」
N・Tさんから苦情と砲撃が来そうな意見だったが、城之内も内心(それはキツい!)と思っていた。そんな二人に、
ミーシャは無邪気に問いかけた。
「えへへ。オリオン、城之内。どうかしら、この格好?」
「…………」
さあ、究極の選択だ!
①とっても似合うよ!
②うーん、ちょっと変かな?
③ケッ!この年増が!
これが好感度を稼げばいいだけの恋愛ゲームなら①を選べばいいだろう。しかし現実問題、厳しいことを言ってやる
のも友人の務めというものである。二人の選んだ答えは。
「「ケッ!この年増が!」」
美しい友情だった!例え自分が憎まれようと、彼等はミーシャを思えばこそ正しい道を選んだのだ!誰がどう言おう
と、城之内もオリオンも立派だった!…しかし、それが理解されるかどうかは別問題だった。
「遊戯…」
「…なんだ?」
「これで、どうやって戦えばいいのかしら?」
「…倒したい相手に向かってステッキを振り翳し<黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)>と叫ぶんだ。すると
魔力が爆発を起こし、敵を打ち砕く」
「ありがとう」
ミーシャはステッキを城之内とオリオンに向ける。二人は悟りを開いた表情で、それをただ受け入れた…。
そんな辛い過去を肉体的な意味での痛みと共に思い出しつつ、場面は戦場に戻る。闇遊戯達の出現によって、戦況
は明らかに傾いていた。新手に戸惑う女傑部隊に対し、アルカディア軍は確実に追い詰めていく。
「しかし、あの力…」
カストルは槍を振るいつつ、闇遊戯を眺め眇める。
「彼もまた陛下と同じく、神の眷属なるやも知れませんぞ…陛下?」
「ああ、そうだな…」
レオンティウスは聞こえているのかいないのか、生返事である。彼の瞳は、ただ一点だけを見つめていた。その先に
いるのは―――城之内である。レオンティウスは、彼に熱い視線を送っていた…。
「好みのタイプだ…」
「へ、陛下?」
そんなちょいヤバめな熱視線に気付かず、城之内はレッドアイズと共に果敢に戦っていた。
「ドンドン行くぜ、レッドアイズ!」
その内に城之内は一人、敵陣深くへ斬り込んでいく。
「待て、城之内くん!一人じゃ危険だ!」
「あのバカ…!」
こういう場合、一人で前へ突っ込む=敗北フラグである。しかし城之内は猪突猛進しか知らぬおバカさんだったので、
そんなもの何所吹く風とばかりに突撃であった。それでも傍らで健気に城之内についていくレッドアイズの横顔には、
どことなく哀愁が感じられた…。さながらダメな夫を支える良妻の図である。
「いくぜ―――<漆黒の豹戦士・パンサーウォリアー>召喚!」
新たに召喚されたモンスター―――黒き豹の頭部を持つ獣戦士が、手にした剣を振り回す。男顔負けの体躯を持った
屈強な女傑部隊が、次々と薙ぎ倒されていく。たじろぐ彼女達に向けて指を突き付け、城之内は叫んだ。
「いくら戦争でも、女相手に暴力振るいたくねー…これ以上怪我したくなきゃ、国に帰りな!」
女傑部隊が一歩、後ずさる―――そこに。
「―――ほう、レオンティウス以外は雑魚と思っておったが、イキのいい男もいるではないか」
凛とした、美しい声。それを聴いた女戦士達が、まるで示し合わせたように真っ二つに分かれて道を作る。滑らかな
動きで、一人の女が悠々と歩いてくる。
「う…!?」
その姿を見た城之内は、絶句した。月桂冠で彩られた、鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪。女性としてこれ以上ない
ほどの見事な曲線を誇る肢体。その身を包む簡素な革鎧も、彼女が着ればまるで豪奢なドレスだ。顔立ちは―――
詳しく書くまでもない。男が百人いれば、その内九十九人が、絶世の美女と褒め称えるだろう…残る一人は真性ホモ
野郎だけである。誰とは言わない。
「はァっ!」
駆け抜ける、疾風。黒き豹戦士の首が、瞬時に刈り取られた。愕然とする城之内に、彼女は妖艶に微笑む。
「ふむ…レオンティウスの前の、ほんの前菜といったところか」
ひゅんひゅんと風を斬り、美しき刃が煌く。
「女傑族が女王・アレクサンドラ―――私が相手となろう、オードブルくん」
は明らかに傾いていた。新手に戸惑う女傑部隊に対し、アルカディア軍は確実に追い詰めていく。
「しかし、あの力…」
カストルは槍を振るいつつ、闇遊戯を眺め眇める。
「彼もまた陛下と同じく、神の眷属なるやも知れませんぞ…陛下?」
「ああ、そうだな…」
レオンティウスは聞こえているのかいないのか、生返事である。彼の瞳は、ただ一点だけを見つめていた。その先に
いるのは―――城之内である。レオンティウスは、彼に熱い視線を送っていた…。
「好みのタイプだ…」
「へ、陛下?」
そんなちょいヤバめな熱視線に気付かず、城之内はレッドアイズと共に果敢に戦っていた。
「ドンドン行くぜ、レッドアイズ!」
その内に城之内は一人、敵陣深くへ斬り込んでいく。
「待て、城之内くん!一人じゃ危険だ!」
「あのバカ…!」
こういう場合、一人で前へ突っ込む=敗北フラグである。しかし城之内は猪突猛進しか知らぬおバカさんだったので、
そんなもの何所吹く風とばかりに突撃であった。それでも傍らで健気に城之内についていくレッドアイズの横顔には、
どことなく哀愁が感じられた…。さながらダメな夫を支える良妻の図である。
「いくぜ―――<漆黒の豹戦士・パンサーウォリアー>召喚!」
新たに召喚されたモンスター―――黒き豹の頭部を持つ獣戦士が、手にした剣を振り回す。男顔負けの体躯を持った
屈強な女傑部隊が、次々と薙ぎ倒されていく。たじろぐ彼女達に向けて指を突き付け、城之内は叫んだ。
「いくら戦争でも、女相手に暴力振るいたくねー…これ以上怪我したくなきゃ、国に帰りな!」
女傑部隊が一歩、後ずさる―――そこに。
「―――ほう、レオンティウス以外は雑魚と思っておったが、イキのいい男もいるではないか」
凛とした、美しい声。それを聴いた女戦士達が、まるで示し合わせたように真っ二つに分かれて道を作る。滑らかな
動きで、一人の女が悠々と歩いてくる。
「う…!?」
その姿を見た城之内は、絶句した。月桂冠で彩られた、鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪。女性としてこれ以上ない
ほどの見事な曲線を誇る肢体。その身を包む簡素な革鎧も、彼女が着ればまるで豪奢なドレスだ。顔立ちは―――
詳しく書くまでもない。男が百人いれば、その内九十九人が、絶世の美女と褒め称えるだろう…残る一人は真性ホモ
野郎だけである。誰とは言わない。
「はァっ!」
駆け抜ける、疾風。黒き豹戦士の首が、瞬時に刈り取られた。愕然とする城之内に、彼女は妖艶に微笑む。
「ふむ…レオンティウスの前の、ほんの前菜といったところか」
ひゅんひゅんと風を斬り、美しき刃が煌く。
「女傑族が女王・アレクサンドラ―――私が相手となろう、オードブルくん」