SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ内検索 / 「第098話 (4-1)」で検索した結果
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永遠の扉 第090話 ~ 第099話
...) (8) 第098話 (1) (2) (3) (4-1) (4-2) (4-3) (4-4) (4-5) (4-6) 番外編 「毒島華花、音楽隊を引率する」 登場人物一覧 偽キャラクターファイル(※ 一部ネタバレを含みますので閲覧注意) №1 総角主税 №2 小札零 №3 栴檀香美 №4 栴檀貴信 №5 鳩尾無銘 №6 鐶光 -
第098話 (4-1)
「とにかくだ。武術に筋量は必要ない」 「本当にそうなんスか? キャプテンブラボー」 手を挙げたのは中村剛太。武術……というか鍛錬とは無縁そうな人物である。 「剣術はなんとなく分かりますけど、殴ったり蹴ったりするのはけっこう力要りますよ? そうでもしなきゃナックルダスターや スカイウォーカー通りませんってホム相手に」 前半耳にした瞬間わずかに目の色変えた男がふたり。 (……フ。剣士でもマッチョな奴は居たけどな) (飛天御剣流。総角の振るう流派の何代目かの継承者が確か……) 最近思うところあり古流について調べている秋水だから思い当たる。平生バネの付いたひどく重い外套で力を押さえていた 男の話を。 「ブラボー。流石は戦士・剛太。なかなか鋭い質問だ」 話の腰を折られた形だが防人は涼しい顔だ。むしろ質問大歓迎という風でこう述べる。 「じゃあとりあえず順を追って説明す... -
第098話 (4-6)
鐶。 Dブレーンの果てより現れた暗斑帝國・ネプツガレ! 突如侵攻してきた彼らに人類は成す術なく追いつめられた! 唯一の希望は葦嶽アマツが父の命と引き換えに受け継いだ可塑型次元城砦……その名も爆燃砦ヴァクストゥーム! 父の仇を探し闘う彼は次々と各都市を奪還するが、ネプツガレ四棺原譚の1人、ルヴェリエの卑劣な策謀に嵌り絶対 絶命の危機に陥る。消えるアマツの意識。傷つき、動けなくなるヴァクストゥーム。 危機を救ったのは政府防備軍「瓜生」の道祖神ロボ小隊であった。 思わぬ邪魔に激昂したルヴェリエは専用機・十元弩リーベスクンマーの力で破願滅黯の大雨を降らせ洪水を起こす。 呑まれゆく街の中、道祖神ロボ小隊隊長、黒又山キシタ(28)は、直ちに部下たちに撤収を命令。 自らはいまだ動かぬヴァクストゥームを抱え飛び立った。 黄土色の濁り水が轟々と流れる大河川。その... -
第098話 (4-3)
「えーと」 「んーみゅ」 その本を閉じると斗貴子は面をあげた。横の香美が正面のテーブルめがけ一瞬雪崩れ込みかけたが不自然に硬直し 背筋を正す。貴信が躾けたらしいが今の斗貴子にツッコむ余裕はない。テーブルの向こうに座る作務衣姿の少女への 応対で手一杯だ。 彼女は問う。神妙な、様子で。 「どうでしょうか斗貴子先輩」 「どうって言われても」 難しい顔でテーブルに本を置く。 「予め断ったと思うが、私は文芸にそれほど詳しくないぞ? 意見を述べたとしてもそれがキミのためになるかどうか……」 作務衣の少女……若宮千里はちょっと考え込む仕草をした。 彼女と斗貴子の親交はさほど深くない。カズキの妹の友達の1人……程度だ。 カズキという共通の知人あらばこそ何度か顔を合わせているが、結局それは知り合いの知り合い程度の間柄。 マンツーマンでいきなり親しく話... -
第098話 (4-5)
──「ブラボー。これもそれなりの修練はいるが目指すところは単純だ。『相手に攻撃を察知させない』。たったそれだけを 実現するため俺は体を鍛えた。いいか。鍛錬そのものが目的じゃない。武術的な機微で相手より優位に立つため鍛えるんだ」 ──「突き詰めれば中村。キミと武術の相性は案外いい。最終的には智謀や精神がモノをいう世界なんだ」 (……これだ。2人は武術を通じて俺の頭を鍛えようとしている。ケッ。乗せられるのは癪だが──…) 来るべき決戦で斗貴子の力になれるなら。 「来いよニンジャ小僧。今度は俺がいろいろ試す番だ」 無銘めがけ親指以外で手招きする。挑発的な行為に「何を!」と無銘は憤りそして構えた。 (よし。中村。やっと俺と戦士長の意図を分かってくれたか) 「フ。同時に秋水をも鍛える、か」 「彼に必要なのは人と交わるコトだから... -
第098話 (4-2)
『という訳で寮内に戻った訳だけど! 困ったな!! 自由時間といえど門限は近い! 従って外には出辛い!!』 「えー外出たいじゃん外!! なんでダメな訳よ? 垂れ目さっきチチーって外行ってたんじゃん」 「あれはあまり感心しないな。というか誰がお前らホムンクルスを夜の街に放り出すか。危なっかしいにも程がある」 廊下。並んで歩く影2つ。 『む!! 特訓終わったのに僕らの監視とかお疲れ様だなセーラー服美少女戦士!!』 「じゃあさじゃあさじゃあさ! あんたでもいいじゃんこのさい! 遊ぶ! ヒマだしフサフサぴょこぴょこして遊ぶ!!」 「うっさい!! 誰が貴様らなんかと馴れ合うか!」 一喝をくれると2人は黙った。それを幸い斗貴子は眉を釣り上げ距離を詰める。 「忘れているようだが本来お前たちは始末されても仕方ない立場だからな。ヴィクター討伐で疲弊した戦団が、大戦士長救 出まではと仕方な... -
第098話 (4-4)
8本目。 「古人に云う! ごがあぶりてんりしっていしっていしってい!」 「打ち込みが弾かれた!?」 剛太の面が弾かれ咽喉もとに竹刀が突きつけられる。勝負あり。 14本目 「古人に云う! おんあにちまりしえいそわか!」 「ぶごっ!?」 剛太はみぞおちに膝蹴りを入れられた。悶絶したところで面を打たれ勝負あり。 22本目 「古人に云う! かんまんほろほん!」 「え……? あ!」 剛太は竹刀を奪われたうえ投げられ頭を打たれた。勝負あり。 「後半剣道じゃねえ!!」 剛太の怒号が響いた。 「なんだよアイツ! 蹴りとか投げとか平気で使いやがる!!」 まったくひどい戦いだった。 「打ち込んでもアイツ跳ぶし! ピョンピョン跳んで竹刀避けるし! くそう! 今度こそ! 剛太は無銘めがけ突っ込んだ。そうして... -
第098話 (1)
【9月13日・夜】 「ああそれか。俺もできるぞ」 寄宿舎管理人室地下トレーニングルームで秋水が防人衛の言葉に目を丸くしたのは20時も半ばを回ったころ。そろそ ろ生徒たちが寝静まる時間である。 「できるんですか?」 我ながら面白くない質問だと思いつつ秋水。 「一応な。ウソだと思うならやってみるか?」 事もなげにいう防人はいま素顔。シルバースキンは未着用だ。 代わりのツナギも今は上半分がはだけている。 黒いシャツに覆われた肉体は、細い。イザ戦ったときの防人がどれほど絶大な破壊力を振りまくか知っている者なら拍子 抜け間違いなしなほど細い。痩せているというより標準体型、筋骨隆々の逆三角とはほど遠い。 ただ秋水は知っている。少なくても剣において逆三角の体は機能しないと。 防人のような筒型の方が術理を極めるに向いている。 で、ある... -
永遠の扉 第010話 ~ 第019話
第001話 ~ 第009話 第010話「レティクルに出会いし銀の星、ルーキーが踏みし銀の土」 (1) (2) (3) 第011話 「READY STEADY GO!」 (1) (2) 第012話 「混戦」 (1) (2) 第013話 「分岐の先の、その向こう」 (1) (2) 第014話 「バトンタッチ」 (1) (2) 第015話 「降り注ぐ数多の星に思い馳せて」 (1) (2) 第016話 「忍法無銘伝(前編)」 第017話 「忍法無銘伝(後編)」 第018話 「歪(前編)」 (1) (2) (3) 第019話 「歪(後編)」 (1) (2) (3) (4) 第020話 ~ 第029話 登場人物一覧 ... -
永遠の扉 第001話 ~ 第009話
ここより前の話 永遠の扉 第003話 「探しものはなんですか?」 (1)(2) 第004話 「ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ」 (1)(2) 第005話 「総ての序章 その1」 (1)(2) 第006話 「今は分からないコトばかりだけど」 (1)(2) (3) 第007話 「みんなでお食事」 (1)(2) (3) (4)(5)(6) 第008話「総ての序章 その2」 (1)(2) 第009話「例えばどんな風に悲しみを越えてきたの?」 (1)(2) 第010話 ~ 第019話 登場人物一覧 偽キャラクターファイル №2 小札零 №3 栴檀香美 -
永遠の扉 過去編
【過去編 ──接続章── 】 「”代数学の浮かす” ~法衣の女・羸砲ヌヌ行の場合~」 1 2-1 2-2 3-1 3-2 3-3 4 5 ──接続章── 「”過去は過去でなく輪廻して今”~音楽隊副長・鐶光の場合~」 1 【過去編第001話 「動き始めていた時間の真ん中で(前編)」】(1-1) (1-2) 【過去編第002話 「動き始めていた時間の真ん中で(中編)」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) 【過去編第003話 「動き始めていた時間の真ん中で(後編)」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) (1-6) (1-7) (1-8) (1-9) 【過去編第004話 「探した答えは変わり続けていく」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) (1-6) (1-7) ... -
永遠の扉 第096話 (4)
【銀成学園】 「……という訳だ。ここまで何を話したか、ちゃんと把握したか?」 「ああ」 「まったく。まひろちゃんのためとはいえ少し遅いぞ」 プリプリと怒りの蒸気を噴く斗貴子を秋水は少し不思議そうに眺めた。無愛想で血の気が多い癖に妙なところで親切だ。 「なんだ」 「いや、教えてくれて感謝する」 その横をエンゼル御前が独特の飛行音を奏でながら通過した。ピンク色の饅頭を思わせる不格好な人形はしばらくふら ふらと上下していたが、やがて止まった。どこからともなく取り出した煎餅は顔とほぼ同じ大きさだが、一齧りで半分ほどが 口へ消えコナゴナと咀嚼された。そして食事が終ると彼女は 「つーかよー、なんで10年前負けたんだよマレフィックども」 といった。その頬が内部からぼこぼこと滑らかに隆起しているのを見ながら秋水は──時々本当にこれが姉の内面なの ... -
永遠の扉 第096話 (1)
「やれやれ。照星君もなかなかしぶといね。あれだけの拷問を受けながらまだまだ理性は残している」 「そろそろ気づいた頃かもな。ウチらの本当の目的に」 「おやデッド君。よくここまで来れたね」 拷問部屋から出るとムーンフェイスは視線を下に移した。 奇妙な来訪者だった。 陳座していたのは1mほどの赤い筒だった。重々しい存在感は視界に入るなり「でん」、無遠慮なる音を立てた。 「ああもう、遅、遅かった。ウィルさぼらんように見に来たけど、あかん、あかん。やっぱウチの武装錬金、めっちゃ重い。 便利で頑丈なんやけど重すぎるさかい、移動、移動、めっちゃしんどい。着くの遅い。しかも通気性悪いから暑い、死ぬ」 息も絶え絶えという調子だ。薄く目を細め廊下を見ると荒れ果てていた。壁のところどこどに爆破の跡があり、更に何か 印刷された紙が焦げも露に散らばっている。床のところどこ... -
永遠の扉 第091話(4)
「ハーッハッハッハ! この店は俺が占拠したぞ! 命が惜しければおいしい物沢山持ってこい!」 「きゃああああああああああああ!」 絹を裂くような叫び。店内中央付近でどよめきが上がり人の波がぞわりと引いた。 (まさか──…) (ホムンクルス!?) 目配せし合った剛太と秋水は叫び惑う人々の中をかき分け騒ぎの中心点へと駆けた。桜花は神妙な面持ちで防人へ 連絡を入れ、まひろは固唾を呑んで成り行きを見守り始めた。頭上のネコが飛び降り、ゆっくりと歩きだす。 「馬鹿な! ポッキーゲームが廃止されているだと!? おのれえディケイド! 貴様はメイドカフェさえ破壊するのか!」 「きゃあ! 助けてー!」 「うるせえ! うまいもの沢山持ってきたら解放してやる! 静かにしろ!」 人混みをかき分け最前列に出た剛太たちの目の前には──…2人の男と... -
永遠の扉 第091話(1)
9月10日。夕方。 「いらっしゃいませー!」 耳をつんざく甘ったるい歓声に中村剛太は顔をしかめた。 (やっぱ入るんじゃなかった) 振り返ると真新しい強化ガラス製の自動ドア越しにハートマークだらけのA型看板が見えた。なぜそれを見た段階で踵を 返さなかったのかと5秒前の自分を呪いたくなるほど頭の悪そうなA型看板だ。薄いパールピンクで塗装され、丸っこい文 字で「メイドカフェ ぎんせーえんじぇるす!」と銘打たれている。輪郭には数えるのが馬鹿らしいほどのハートマーク。 (本当にここで良かったのか?) 右手に握ったメモ切れを自問自答がてら見る。そのまま広告に載せられそうなほど丁寧に書かれた地図と様々な要素を 照合。残念ながら住所店名立地条件全てが符号。流麗な知人の文字が恨めしい。 「いらっしゃいませー! 1名様ですか!」 黄色い髪を両側で縛っ... -
永遠の扉 過去編 第001話 (1-1)
玉城青空(たまき あおぞら)の声帯は生後11か月にしてその機能の大半を奪われた。 母親のせいである。彼女は新婚生活に夢のみを描いている若い女性にありがちな育児ノイローゼを発症し、いまだ座らぬ ──11か月にして、まだ。発育不良によって将来を悲観させるには十分な──青空の首を発作的に絞めた。 治るはず、締まるはず、みんなのように座るはず……時に人は攻撃の暴発をもたらしたありとあらゆる悪感情を行為ごと その中で無自覚に弁護し、整合性を取りたがるらしい。少なくても青空の母親はそうであった。我が子の首にかけた十指 におぞましい力を込めながら「治るはず、締まるはず、みんなのように座るはず」と頑なに信じていた。我が子がむせ、チア ノーゼをきたし非定型的縊死への道を緩やかに歩んでいるのを見てもなお、たとえば首ヘルニアへ牽引を用いるような加療 意識によって我が子の首を絞めていた。それが... -
永遠の扉 過去編 第002話 (1-1)
妹の誕生によって玉城青空が最初に被った被害はインフルエンザだった。 小学校卒業を控えた冬、生後間もない妹──玉城光──が原因不明の高熱で入院した。義母は泊まり込みで看病し、 多忙な実父は会社から病院に直行し、家で少し寝てからまた出勤という生活をするようになった。 青空は、結果からいえば放置された。 「もうすぐお姉ちゃんになるんだし自分のコトは自分でやってね」 とは病院へ行く義母が放った伊予弁の翻訳結果だが、青空自身は心から素直に従うコトにした。もし病気が長引いて、 妹のノドがつぶれ自分のようになっては大変だと思ったのだ。もともと自立的で、周りに迷惑を掛けたがらない──言いか えれば他人に頼れない──性格である。誰も待っていない暗い自宅の鍵を開ける日々を受け入れた。(この頃祖父母は 4人とも死没していた) だがある朝起きると、ぞっと寒気に覆われるのを感じ... -
永遠の扉 過去編 第003話 (1-1)
そのマンション襲撃の後始末は他の戦士長の管轄だったから筋からいえば別に防人衛が心痛を覚える必要はなかった のだけれど、例えば誰かが事後処理の進捗具合──といっても手がかりのなさを再確認するだけの空虚なやりとり──を 囁きあっているのを聞くだけでもう覆面の奥が蒼い哀惜で、だからだから剣持真希士は当惑した。 「燻ってんのさ。奴はずっと」 橙色の光輝のなか面白くなさそうに呟いたのは火渡赤馬。何かの任務で珍しく同じ班になった彼がこれまた珍しくかつて の同輩評をさほど親しくもない真希士に漏らしたのは、会話の端緒が、この時まだ新人(ルーキー)に毛が生えた程度の 後輩への文句づけだったからで、それはやがて師匠筋の防人へのダメ出しにスライドした。 「燻ってんのさ。奴はずっと」 とはつまり日頃抱えているかつての朋輩への他愛もない不満の表れなのだろう。 「... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (1)
『鐶光は鳩尾無銘が大好きだ。 彼女はむかし義姉に両親を殺された。その挙句監禁され、5倍速で年老いる人外へと……。 瞳が暗色に染まるほどの戦いを強いられ続けるうち果たした出会いが運命を変える。 ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ。標的を殲滅した流れの共同体を急襲し、小札、貴信、香美と立て続けに重傷を負 わせた鐶光の前に立ちふさがった者こそ……当時まだ人型になれずいたチワワ姿の鳩尾無銘。 苛烈を極めた戦いは引き分けに終わる。 鐶が無銘を好きになったのはその後だ。 折悪しくやってきた戦士から、鐶を、命がけで守ったから。 好きになった。お世辞にも自分より強いとはいいがたい、チンチクリンなチワワが、傷だらけになりながら戦士を退け …………守ってくれた。 救ったのは命だけじゃない。 親も尊厳も失い悲嘆にくれる鐶に彼は、... -
第095話 「演劇をしよう!! (前編)」 (4)
そんな華道部に明るい声が響いた。 「ブラボーだ! 聞け、戦士・秋水! 遂に音楽隊も演劇部に加入だ!」 「総角たちが?」 頭を押さえながら秋水は布団をはだいた。上体を起こすのもまだ辛い。鈍い頭痛に思わずこめかみを押さえると、今度は 軽い嘔吐感が襲ってきた。隣ではまだ桜花が白目を剥いている。白目!? 最初流した秋水さえ思わず二度見するほど 衝撃的な光景だった。才色兼備の桜花。男子の憧れの的である桜花が露もなく白目を剥いている。 「……!! …………!」 戦慄(わなな)く唇から声にならない叫びを上げつつ桜花を指差すと、防人はポンと手を打った。 「ああそれなら大丈夫だ。人払いはしておいた。一般生徒に見られてはいない」 手袋に指差されるまま振り返る。そこには即席のカーテンが広がっていた。どうやら外界との仕切りらしい。 そうやって作られた2畳ほどの部屋の中に防人が立... -
第095話 「演劇をしよう!! (前編)」 (1)
栴檀貴信(ばいせんきしん)。肉体年齢は17歳である。 遡るコト7~8年前、ホムンクルスと化した「やかましい」青年であるところの彼は。 裂けたレモンのような巨大な双眸に芥子粒のような四白眼を泳がせている彼は……困っていた。 「ああもうヒマじゃん! ヒマ!」 「静かにしろ」 「ヘーイ! 転入生のカノジョー!! ヒマなら俺とお話しないー!」 原因は”前”である。 (余談だが栴檀は本来「せんだん」と読む。「ばいせん」とは無論誤用だが、響きがいいので使っているらしい) ホムンクルスの製造には「幼体」が用いられる。動植物、または人間の細胞を基盤(ベース)にしたそれらを投与された 場合、大抵の者は精神を”基盤”のそれに蝕まれ、体を乗っ取られてしまう。 だが貴信は『ある事情』によってそれを免れた。投与された「幼体」の基盤は……当時彼が飼っていたノルウェージ... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (4)
桜花たちと別れた無銘と鐶はそのあとしばらくデパートをウロウロした。 デート、である。鐶は浮かれていた。 (なう! いっつぁしょーたい!! 最高のシチュエーション!!) 未来なんて見えない、だから目の前だけを見つめて突き進むだけさなのである。 まず巨大ロボットがカイジュウと戦うハリウッドの映画を見た。 (おお……スパロボにはない…………大迫力……です) (頑張れ忍者ロボ! 頑張るのだー!!) 次に向かったのはブティックショップ。無銘は、柄にもなく鐶の服を一緒に選んだ。 「き、貴様はいつも羽毛だからな。実は服きとらん。服に見えるのは毛だ。体毛……なのだ」 「どうして……そこで……赤くなる……の……ですか?」 「黙れダマレエ!! とにかくいまは銀成の制服着てるが、この際だ、服着る習慣をつけろ!」 「……でも…………戦っ... -
第096話 「演劇をしよう!!」(中編) (1)
「不肖がいまおりますのは銀成学園の1-A! ただいまこちらでは発表に向け猛練習の真っ最中!! この熱気が分かる でしょうか!!」 ハンディカメラの液晶の中をロバが泳いでいる。ロバといってもそれは属性で風体はもちろん違う。 パリっとしたタキシード姿の小柄な少女。シルクハットを被り肩に1つずつお下げをたらしている。同学年の中で最も中学生 に近いヴィクトリアよりもさらに幼い顔つきだ。 (小札零。なんで私が音楽隊なんかと……ホムンクルスと一緒なのよ) 「ちなみに不肖たちは演劇のメイキングをば収録中」 (黙って!!) ヴィクトリアは口角をみちみちと引きつらせた。家庭用、だろうか。収録に当たりとある部員から貸し出されたそれは片手で 十分なほど小さい。こういう時を想定したのか筺体には黒いバンドが(やや破れとほつれが目立っているが)あり、何とか無事 に保定されている。 何か見... -
第093話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」前編 (4)
「ががが、ががが、がおがおがー! ががが、がががが、がおがおがー!!」 ポニーテールにかんざしを差した小さな少女──銀成学園理事長──が1匹、廊下を走り抜けた。 彼女はひどく楽しそうにキラキラと笑い、両腕を横へめいっぱい伸ばし、走っていた。 ただそれだけです。別に本筋とは関係ありません。 「ねえ斗貴子さん。最近のジャンプって敵が出てくるたび修行するよね。ドラゴンボールもそうだったけど今のジャンプって ラディッツ出てきたら修行、サイバイマン出てきたら修行って感じだよね。あと修行の内容がほとんど新技習得っていうのは 分かりやすくていいんだけど、でもホラさ、やっぱり新技っていうのは死闘の最後のギリギリな時、本当負けそうになりなが ら自力で思いついて最後の決め手に……って感じが熱いしありがたみが出てくると思うんだ」(声色) 「知るか! カズキの声真似はよ... -
第094話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」後編 (1)
修行。 或いは、恩返し。 【9月6日】【9月7日】 どちらともとれる境界線上の夜。 ──────パピヨンの研究室で────── パピヨンが図面片手に指示を出し、ヴィクトリアが従う。 そんな光景がもう何時間か続いていた。 分厚い合金の板が山と積まれパイプの束が散乱し、大きな箱から零れんばかりに集積回路が覗いている。 そんな研究室の中で彼らは時おり諍いつつも作業を続けている。 彼らの前にある物体を一言で形容するなら、”金属で編まれた皿” 直径5mほどのそれはひどく平べったく、内外を行き来するヴィクトリアは事も無げにひょいひょい跨いでいる。 作られ始めて間もないのだろう。皿は骨組がよく目立った。そこを跨いだ少女が屈みこみ、粗笨(そほん)極まるスカスカ 空間へ曲った合金をはめ込んでいく。パズルの如く、... -
第093話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」前編 (1)
【9月6日】 闇の中に無数の根が這っていた。太いのもあれば細いのもある。それらは雑然と曲がりくねり、或いは絡まり合いながら 闇に向かって這っている。根は多いが辺り一面埋めつくしているというほどでもなく、1つ1つの隙間から白い地面が見えた。 厳密にいえば地面は何かの鉱物を切磋したものらしい。床。どこからか差し込む紫の光を淡く跳ね返しながら闇と根の間 をくぐり抜け、果てしなく広がっている。 根が生えているのは人口建造物の内部のようだった。 不思議なことに”根”の密集地帯の近くには必ずといっていいほど『機械』があった。巨大なラジエーター型の機械もあれ ば机付きのパソコンもある。一番多いのはガラス張りの円筒とシリンダーとパイプを雑然と組み合わせた名称不明の機械 で、それは薄暗い部屋の中で時おり蒸気を吹いてもいる。丸太ほどある丸いガラスケースの中では色のついた液体── ... -
第094話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」後編 (11)
──どこかで── 「あなたはまだ、破壊への希求を捨てていないようですね」 ひび割れたサングラスの奥。理知的な瞳が捉えるのは、流れるような金髪。 どこまでも綺麗に梳られたそれは、持ち主の目鼻を隠し、表情までもを隠している。 「しかしメルスティーン。ヴィクターの盟友だったあなたはいつどこで、何を、誰を、どう破壊しようとしているのですか?」 「あとどうしてあなたはスカートを穿いているのですか? 確か男性だったと思うのですが」 坂口照星は、眼前に佇む男へ静かに呼びかける。 神父風の衣服は所々が破け、口元や目元に赤黒い血がこびりついているが、口調には何ら消耗が感じられない。 それまで受けてきたであろう凄惨な暴行などなかったように。 まるで戦団の執務室で部下に呼びかけているように。 照星は、静かに呼びかける。 「... -
過去編第004話 1-1
「さてあれから20kmは駆けた不肖たち一行であります! 鐶どのの背中に乗りますればあっと言う間に移動は可能! さ れど副リーダー就任直後の任務がそれではしまりませぬ! よって不肖たちは走ってあの場を移動したのであります!」 ロッド代わりのマシンガンシャッフルを片手に小札は景気よく吠えていた。 「そもどうして移動をしたかといいますれば、先ほど鐶どののポシェットに潜んでいた愛らしき自動人形のせいであります! 自動人形は創造主と感覚を共有致しまするゆえ、不肖たちの所在は少なくても鐶どののお姉さんには筒抜けなのです! もしそれがあの方属する『組織』へ流されますれば大ピンチ! 9年前より不肖たちは追われる立場! 栴檀どのお2人の ように幹部級より逆恨みを買う片とているのですっ! よって大兵力を差し向けられる恐れアリ!」 ゆえに退避しました。などと捲し立てるお下... -
過去編第005話 1-1
私の名前は秋戸西菜。ぶ厚いメガネがトレードマークの小学3年生。 今日はまだ幼稚園の女のコ連れ込んじゃっています。ここは人気のない公園の裏手。今にもオバケや痴漢さんが出てき そうでこの上なく怖いです(ドキドキ) 「ママー」 「ママー」 「ママー」 しかしくじけてはなりません。私はこの子のお母さんを探すためにここまで来たのですから。この上なく大事な用事だって あります。頑張れ。負けるな私。ファイトです! 始まりはいつも突然! 大事な用事のために街を歩いていた私は、お母さんからはぐれたこのコと出会いました。そして ここまで来ました。 「ママー」 「ママー」 「ママー」 ……ぬぬっ。見つかりませんね? しかしそれもその筈、実はここにお母さんなんていません。「ここで見掛けたから一緒 に行きましょう」 連れ出すときに私はそう言いましたが実はこれ、真赤なウソだ... -
永遠の扉 第014話 「バトンタッチ」 (1)
第014話 「バトンタッチ」 晦冥の廊下を銀影が詰めたとみるや、千歳は咄嗟に身を捻った。 千歳の真横を拳が通りすぎ、嵐のような風切り音が耳をたたく。 正中線はからくも外せた。あくまで、からくも。 冷汗に全身ぐっしょりと濡れそぼる千歳のすぐ横には防人──ただし何らかの効能により ヘルメスドライブより出でた偽者──が依然として佇んでおり。 覆面の中で鋭く息を吐くと、回し蹴りを繰り出した。 ここは廊下。いささか狭い。だが千歳は背中を壁に叩きつけんばかりの勢いで飛びのいた。 転瞬。重機のような衝撃が千歳のいた空間をなぎ払い、廊下の壁を抉り取っていた。 例えば巨大な彫刻刀で石膏を削らばこうなるか。 コンクリート製の壁に刻まれた蹴りの軌跡に、千歳は戦慄する思いだ。 固い壁に背中を激突させたせいで軽い呼吸困難をきたしているが、直撃に比べればまだま だ... -
第006話 「時間も分からない暗闇の中で」 1-1
当事者 4 バラけていく。崩れていく。脚部に力が入らない。張り詰めていた神聖な集中力が虚空の彼方へ散っていく。脇を見る。男 3人が割れた人混みへ吸い込まれる。彼らは山のように連なっていた。揺れていた。両端の屈強な水色の間で貧相な緑が 揺れる。その緑の嵐が飛びかかってきたのは何秒前? もう何分も? 追いつかない。縮められない。 バラけていく。崩れていく。 ──積み上げてきたからこそ分かるものがある。 規約にある数値。観測で明文化される数値。それらは決して感情的な挙措で覆せるものではない。規約に従い観測に 照らさなくてはならない。栄冠を目指すという事はつまりそれだ。タバコを控え酒を控え節制に励み好物の脂身さえ口にせず 友人どもが恋人とベッドの中で甘く囁いている明け方にはもう20kmほど走っている、そんな生活を年単位で送り、足から 少しでも多くブヨつい... -
過去編第007話 「傷だらけの状況続いても」 1-1
当事者 3 (ウチを舐めたらあかんで。今いるマレフィックの中では一番若手。けれどまだまだ伸び盛りや) 筒の中。疵のある目がくつくつと歪んだ。 実感があった。 これからの運命を総て総て掌握しているという……実感が。 目論見の初手は──… 当事者 1 あっという間に決着した。 車の影から躍りあがった瞬間、金髪の持ち主がゆるやかに振り返った。目が合うより早く手にした凶器を振り下ろす。日 本刀。鎖分銅ほど馴染のない武器が相手の腕へ吸い込まれるまで1秒と掛からなかった。腕が飛び、血の匂いが立ち込 める。ここは地下駐車場、換気はすこぶる悪い。鉄錆の、ねっとりとした臭気が吐胸をつく。舞い上がる腕を見た瞬間、貴 信の全身から血の気が引いた。 (切断するつもりはなかった。……なかったんだ) ただ... -
永遠の扉005-2
第005話 「総ての序章 その1」 (2) 山の中腹で最初に見たのは、顔の右半分が破裂した西洋人の死体。 まだ死臭は薄く、飛び散った歯も唾液と血液に濡れ光っていた。 熊にやられたとかそういう類の傷ではない。 打撃点に向かって一気に、まるでねじ込まれる様な…… 同様の死体が他にも2つ転がっている。 首から上が破裂している者、肩口を抉られたまま恐怖の表情で事切れている者。 皆総て、紺地に幾何学模様をあしらった制服を着用していた。 それが錬金戦団における再殺部隊の制服だとは、爆爵は死ぬまで知らなかった。 目を引いたのは、躯の傍らに落ちている六角形の金属片。 爆爵は文献で読んだからそれが何か知っている。 核鉄。 だが欲し続けたそれをも凌ぐ昂揚感が爆爵を突き抜けた。 未知への震えに口腔が乾く。少年時代、錬金術の本を見つけた時のように。 ……視線の先。 切り開かれ... -
永遠の扉 第064話
話は、八月二十七日の夜──屋上で空を見上げて泣くまひろを秋水が見た頃──に遡る。 銀成学園の職員室で鐶は生徒手帳を広げ、沙織の写真と、それそっくりの顔を並べていた。 「……似てますか?」 「カッコは似てるけどさ、そのタルい話しかたは何とかならんワケ?」 「やっぱり? 私このコの喋ってるとこを無銘くんの忍法で見たけど、すぐ覚えるの無理みたい」 「……うーんとさ。うまいかもしれんけど、キャラかわりすぎじゃん」 突然の豹変に香美は鼻の頭にシワさえ寄せて困惑した。 「はぁ……でも……まだ定着しないというか……友達の呼び方を間違えてバレそうな……」 『ふはは!! その不備を補うべく僕たちはココにいる!! まぁ僕は人間関係について努力 しようとして挫折したクチだが!!』 「ところでさひかりふくちょー。あたしのマネとかできる?」 沙織に扮した鐶の口が明... -
永遠の扉 第015話 「降り注ぐ数多の星に思い馳せて」 (1)
第015話 「降り注ぐ数多の星に思い馳せて」 彼女の前には中身を平らげた丼が3つ。それからいま攻略中の丼が1つ。 秋水は思わず箸を止め、見入ってしまっている。 それだけまひろの食べ方は威勢がいい。 レンゲいっぱいに豆腐や名称不明のペーストを掬いとっては、子犬がドッグフードにありつく ようにがふがふと咀嚼して飲み込んでいる。 「君はもう少し、噛んで食べた方がいい。胃に負担がかかる」 「ふひゃ?」 真正面で勢いよく顔を上げたまひろに、秋水はあやうく噴出しそうになった。 頬はハムスターのように左右対称に膨れている。 可憐な唇も台無しだ。麻婆豆腐のタレが幾筋もたれて、顎に糸を引いている。 (このコは繕うという事を知らないのだろうか) 桜花とのあまりの落差に自制を要した。かなりの自制を。 奥歯を噛み締め丹田に力を込め、心情を整えた。 秋水... -
永遠の扉005-1
第005話 「総ての序章 その1」 (1) 1850年(嘉永3年)6月28日。 というから「怪談」で知られる小泉八雲に1日遅れた事になる。 ともかくも、彼は生まれた。 生まれた当時は他の人間がそうであるように、ただ泣き喚き乳を欲し、排泄物の処理を他 者に委任していた彼であるから、後年起こる数多の出来事──… 1853年 (03) 黒船来襲 ※()内は年齢 1854年 (04) 日米和親条約締結 1858年 (08) 安政の大獄 1860年 (10) 桜田門外の変 1863年 (13) 新撰組結成 1864年 (14) 池田屋事件 禁門の変 1866年 (16) 薩長同盟成立 1867年 (17) 大政奉還 1868年 (18) 明治元年 鳥羽・伏見の戦い 1869年 (19) 東京遷都 鳥羽・伏見の戦い終結 1777年... -
永遠の扉007-4
第007話 「みんなでお食事」 (4) 「見るな」 「う、うん」 まひろの切り替えは早い。すぐさま指示に従い秋水の後ろへ隠れる。ただ、 (何が起こったんだろう) 純粋な子どもじみた恐怖と心配を抱いて、眼前にそびえる逞しい背中に頼りたくなる。 秋水は頼られるとも知らず、名にこもった「切れ味の良い刀剣」じみた目線で総角を見る。 ただのホムンクルス同士のいざこざであったのならばこうはならなかっただろうし、事実、逆 向はL・X・E所属のホムンクルスである。 ただしその装束はなぜか銀成学園の制服。ゆえに誤解が生じた。 つまり、総角が一般生徒を殺害したという単純極まる誤解が。 単純極まるといえば日本刀という兵器の機能もそうであり、殺傷能力を追求する過程で期せ ずして美術品へと昇華してしまうように、切れ長の瞳に湛えられた蒼き冷光は、一種凄然な 色気を秋水に与えている。 ... -
永遠の扉 第011話 1
第011話 「READY STEADY GO!」 (1) 何年前だっただろうか。その言葉を掛けてもらったのは。 ──キミにもいつか戦う目的が出来る時が訪れるかも知れない。 樹海でのサバイバル訓練で、傷を負い、無様にはいつくばった自分へその人は。 ──どうしても斃さねばならない存在(モノ)が現われた時 ──どうしても守りたい存在(モノ)が出来た時 ──その時、自分の非力に涙しない様、キミは今、ここで強くなっておけ 優しく真っ向から語り掛けてくれた。 ──さあ、立ち上がろう剛太 赤ン坊の頃、家族をホムンクルスに皆殺しにされ、過去も現在も実感できなかった自分へ。 未来への指標を見せてくれた。 だから剛太はその人──津村斗貴子に対して、憧憬を抱いている。 助力できるコトがあれば断じて惜しまないし、現にこの夏の前半部は火渡率い... -
永遠の扉004-1
第004話 「ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ」 (1) 彼女は知った。 いかに気をつけて行動していても、偶然や他者の恣意、あずかり知らぬ慣習がそれを打ち 崩すコトがままあると。 失敗。 綿密に練った計画ですら状況の如何によってはそちらへ触れる。 反射的にとった言動ならば、なお。 幸い大きな綻びには至らなかったが……軽挙妄動は慎むべき。 彼女は、潜入生活の始めにそう学習した。 「全く。まひろといいあなたといい、門限を破るなんて」 「ごめん千里ちゃん」 「? 珍しい。私をあだ名で呼ばないなんて」 「あ、えと。あちこち歩き回って疲れてるせいかな。あはは。まひろみたいについ忘れてて」 「ホントに疲れてるみたいね。まひろまであだ名で呼ばないなんて…… ブラボーさんに謝っ たらすぐ寝なさい。夏休みだってもうすぐ終わるんだから、そろそろ生活のペースを戻さな... -
永遠の扉006-1
第006話 「今は分からないコトばかりだけど」 (1) ──8月28日。昼。 やっぱ変わっている。 居並ぶ剣道具の一団からそんな声が漏れると、みなひそひそながらに同意を示した。 彼らの前で展開される打ち合いは、実に濃淡鮮やかだ。 片や紺の剣道着にオーソドックスな黒の防具。 片や白の剣道着に気障ったらしくすらある白篭手と白面。 早坂秋水その人だ。 彼は面金の奥から鋭い叱責を飛ばす。 「動く時も左手はヘソの辺りに固定する事! 左手のブレは足にも響く!」 「は、はいっ!」 対する黒い防具の部員はまだ1年と年若い。 おたおたと必死に左手を直して、容赦なく注ぐ竹刀の雨に応戦する。 打ち合う竹刀がぱちぱち鳴るたび、彼の足取りは徐々に徐々に押されていく。 退き方も実にぎこちなく、一歩後ろへいくごとに体がブレてますます体勢が崩れていく。 それでもまだ、打ち込まれて... -
永遠の扉007-1
第007話 「みんなでお食事」 (1) 客足が遠のいたとはいえそれなりに忙しいお昼時をすぎると、バイト少女は一息ついた。 銀成市にはある意味でとても有名なハンバーガーショップが存在する。 名をロッテリや。 一時期、銀ピカの全身コートや蝶マスクのタイツ男、中国風の巨漢2人などなど、筆舌に尽く し難い変態どもの巣窟となっていたため、「変人バーガー」という蔑称の方が市民になじみ深い。 さて、お昼をすぎたとはいえやらねばならんコトはたくさんある。 例えばハンバーガーを入れる袋。 これは大きさに応じて4号袋(たい)、6号袋、10号袋とそれぞれ分かれているが、この内6 号袋はかなりの頻度で使用されるので、消耗が激しい。 うっかりしていると折角ハンバーガーができても入れる袋がないという事態を招き、お客様へ の円滑な商品引渡しが不可となるので補充はこまめに行わなければならない。... -
第094話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」後編 (5)
【9月12日】 まひろ所属するところの演劇部は最近とみに活気を帯びている。 もちろん元々みんな演劇に意欲的だったのはいうまでもないが、それが最近とても良い方向に刺激されている。 だからまひろは最近部活がとても楽しい。 「でもびっきー、あまり部活に来てないよね。カゼかなあ? 体の調子が悪かったらどうしよう」 「しばらくアルバイトで忙しいみたいよ。何でもやりたいコトのためにお金貯めたいんだって」 「お父さんたちから仕送り貰っているのに立派だねびっきー。メイドカフェでも毎日一生懸命働いているし」 「そういえばヴィクトリアのご両親って何してる人なんだろう。今は離れて暮らしているらしいけど、あの子、家族のコトはあ まり話したがらないから……」 「そそそそそそれはきっとホームシックになりそうだからだよ! う、うん。きっとそうだよ」 「? ? なんでまっぴーが慌て... - @wiki全体から「第098話 (4-1)」で調べる