岩堀を追い返した後、勇次は一つ息を吐いて気を抜くと振り返った。
隠れるように背後に立っていた珠姫に安心させるように微笑む。

「大丈夫だった? タマちゃん」
「あ、あの、ユージくんありがと……」

上目遣いに勇次を見上げながら、おずおずと言う珠姫。
その頭をぽんぽんと撫でた勇次は珠姫の小さな手を取った。

(アイツ、タマちゃんの手に気安く触って……)

ぷにぷにとした柔らかな手触りと、竹刀タコの硬い張り。
しっとりと柔らかな質感を、勇次はすりすりと撫でながら確かめる。

「んっ、ユージくん……?」

手の平を指先で撫でられて、くすぐったさにぴくっと珠姫の身体が跳ねる。

「あの人に触られて、イヤじゃなかった? 大丈夫?」
(ぷにぷにに。タマちゃんのぷにぷにに触りやがった、アイツ……!)

優しい言葉をかけながら、珠姫の手のぷにぷにをぷにぷにしまくる勇次。
くすぐるようなマッサージするような慰撫に晒された珠姫が頬を染める。

(……手をマッサージされると、どうして全身が熱くなるんだろう)

くすぐったさを堪える珠姫は、そんなことを思いながら首を横に振った。

「大丈夫……その、もう、忘れちゃったから」

岩堀に触られた感触は、勇次が何十倍も触った感触に完全に上書きされていた。
胴着の中が少し汗ばむのを感じながら答えると、勇次が笑顔になって手を離す。

「良かった。さっきのことは忘れて、試合頑張ろうねタマちゃん!」
「うん!」

微笑み合って、試合に臨む心構えを良い形で整える。
その後珠姫は、ぷにぷにしていた勇次を目撃していた室江高校メンバーに
寄ってたかってぷにぷにされまくってフラフラになりながらも大将の勤めを果たした。
そして。

(……ユージくんのぷにぷに、気持ちよかったかも……)
(……タマちゃんのぷにぷに、気持ちよかったなぁ……)

「オレはもっと(ry」

岩堀の身を切るような叫びが響く中、勇次と珠姫は頭の片隅でそんなことを思っていた。おしまい。
最終更新:2009年01月30日 23:34