帰ってきた!? フラン(伊)とゴリラの大冒険!! 第5話『vs四葉』



フランとゴリラはとっても仲良し。
今日も一緒にお散歩します。

「今日は希望崎学園の初等部をお散歩しましょう」
「ウホウホ」

フランとゴリラが初等部へ行くと、高島平四葉が思案していました。

「ごきげんよう!」
「ウホウホ」
「賑やかそ―ぜ!」
「ウホウホ」


※ ※ ※


高島平四葉はどこまでもお子様に過ぎない己の慢心を悔いた。そして即座に『次』への思考を開始した。
自身の大望である世界征服の端緒になるであろう学園のハルマゲドンに番長陣営として潜り込んだ。
その第一ステップに成功に気を良くしていた。浮かれていた。
敵が開戦前に攻めてくるなど、常套手段もいいところではないか。

声の主は知っていた。生徒会陣営のフランとゴリラ。コロッセオを武器にする武闘派の二人。
四葉は内心で忌々しいと舌打ちした。この人選は自分の能力が相手に割れている事を示している。
距離もまずい。既に近づきすぎている。何をするにも自分まで巻き込まれる。打てる手は限られていた。
つまるところ――イチかバチか、四葉は小さな四肢の全力でフランとゴリラから逃げ出した。

「あっ! 待って! 待ってください!」
「ウホ!」

背後で何か聞こえたが、耳を貸さずに四葉は走った。
階段にさしかかり、壁に身体をぶつけながらも上階へと駆け上がるその刹那。
背後で何か人間大の質量が転ぶ音がした。
何とか自分の能力と作戦が功を奏したらしいと、息切れにあえぐ頭の隅で四葉は思った。

四葉の能力『モア!モア!モア!』は敵(と認識した存在)の持つ武器よりちょっと強い武器を召喚する。
敵がナイフを持っていればより大きなナイフが、銃を持っていればより強力な銃が瞬時に手に入る。
使用者さえ優れていれば強力無比なこの能力は、能力対象の『敵』が広範に渡る為、更に凶悪さを増す。
例えば逃走する四葉にとって床の汚れが全力疾走の敵であれば、より滑るワックスが召喚される。事もある。

階段の踊場でUターンする際、フランとゴリラがワックスまみれで階下に転げているのが目に入った。



校舎の屋上中央に陣取り、四葉は屋上入り口の扉に向けてモミジのように小さな手を差し出していた。
ここならばもう負けはしない。ここまでくれば自分の勝ちは揺るがない。
あどけない顔立ちに強者の眼差しを添えて、全身の感覚を研ぎ澄まして四葉は身構えていた。
次に敵が姿を見せた瞬間。それが決着の時であると四葉は確信していた。

『モア!モア!モア!』は強力にして凶悪な能力であるが、幾つかの弱点もまた確かに存在した。
その内の一つが、四葉自身が扱えない武器を扱う敵の存在である。
コロッセオという巨大建築物を武器にするフランとゴリラなど、その筆頭と言えよう。
より巨大な建物、例えばギザの大ピラミッドなど召喚したところで、四葉には観光しか使い途はない。

しかし、それでも四葉にはこの状況を打破する策があった。
それがこの位置取りである。

「いつでもおいで……吹っ飛ばしてあげるから……」

緊張で乾く唇を舐めて、四葉は小さく己を鼓舞する言葉を吐いた。
四葉の目に射し込む光明――それは『モア!モア!モア!』の特性にあった。
『モア!モア!モア!』は敵の武器よりちょっと強力な武器を召喚する。
そして、召喚された武器は四葉にとって安全な状態で召喚されるのである。

いまにも転びそうな全力疾走の最中ならば、ワックスは走る自分の後ろ側に。
大きな建造物ならば、潰されないよう差し出した手の先、自分の前方に。
そして瞬時に召喚された武器は、召喚される直前までその空間にあった物を押しのけて出現する。
それがコロッセオを超えるサイズともなれば。
武器召喚の瞬間、四葉の眼前にある物は全て塵となって吹き飛ぶだろう。

屋上に続く階段を登る足音が二つ、神経を尖らせる四葉の耳に届いた。
あるいは足元を崩してコロッセオが突き出てくる可能性も考慮していたが、敵もそこまで無茶はしないらしい。
大質量のぶつかり合いならば、位置エネルギーがモノを言う。
下から襲われた時は一気に押し潰すつもりでいたが、着地の心配をせずに済んだと四葉は思った。

キィ――

鉄扉がきしみ、陰から華やかな赤地の絵羽織をまとったフランチェスコの姿が見えた。
隣には頭からキノコを生やした毛むくじゃらのマタンゴリラ。
正面から堂々と現れるあたり、自分達の実力に絶対の自信があったのだろう。
そういえばエンカウント時も不意打ちでなくわざわざ声をかけてきていた。正々堂々が好きな性格なのだろうか。
どちらにしても、ありがとう。おかげで私は勝利する――四葉は心で勝利宣言をし、『モア!モア!モア!』を発動した。

「いましたいました。いきなり逃げないでくださいよー」
「ウホウホ」
「高島平四葉さん、であってますよね?」
「ウホウホ」
「私はフランチェスコ・ロマーナー。こちらはマタンゴリラさんです」
「ウホ!」
「それでは改めて」
「ウホウホ!」
「賑やかそ―ぜ!」
「………………あれ?」

にこやかに賑やかに笑いながら歩み寄るフランとゴリラを見て、自分の手のひらを見て。
もう一度フランとゴリラに顔をやり。

「高島平ちゃんって呼んでもよろしいでしょうか?」
「ウホ」

自分の早とちりにようやく気付き、四葉は酷く赤面した。

――後日。この経験を糧に、四葉は能力発動の有無を使って敵の識別をする戦闘スタイルを編み出す事になる。
だが、それはまた別の世界線のお話。


※ ※ ※


「今日もしっかり元気づけられましたね!」
「ウホウホ!」
「明日もお散歩しましょうね!」
「ウホウホ!」
「明日はどこに行こうかなぁ」

めでたしめでたし。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年04月15日 23:42