キュゥべえ VS 快傑ズバット

~『快傑ズバット』35周年記念作品~

キュゥべえ VS 快傑ズバット

作者 快傑まふっと




「ようやく君を追い詰めることができたよ。暁美ほむら・・・」

 朦朧とした意識の中に、そいつの声が響く。
 それに反応して目を開けると、先程までと変わらない光景が眼前に広がっていた。
 見た目の可愛らしさとは裏腹に、人の感情や価値観をまるで理解しようとしない白い獣・・・いや、悪魔と言っていい。
 その『キュゥべえ』と呼ばれる存在が今、大群となって押し寄せ、自分の周囲を取り囲んでいた。
 奴らの数は、どう見ても数千はいる。
 すでにほむらの体はキュゥべえ達の攻撃を幾度も受け、至る所が傷付き、その衣装は半分以上が赤く染まっていた。
 この絶望的な状況を前にして、今にも倒れそうになるほむらだったが、ギリギリの所で踏みとどまる。

 この街に、ワルプルギスの夜が襲来する日は近い。

 ここに至るまで、まどかを魔法少女にすることなく事を進めてきたというのに、もしここで自分が倒れたら間違いなくまどかは奴の魔の手に落ちる。
 それだけは絶対に回避しなければならない。
 そう思うと、もう動かないと思っていた自分の体に少しだけ力が戻ってくるのを感じる。
 ほむらは、持っていた拳銃をキュゥべえの群れへと向け、引き金を引いた。

「・・・・・・・・・!?」

 だが、何度引き金を引こうと、弾は出ない。

「くっ・・・!」

 悔しさのあまり、ほむらは拳銃をキュゥべえの群れに向かって投げ付けたが、それはどのキュゥべえにも当たらず床に落ち、乾いた音を空しく響かせた。

「どうやら、手持ちの武器弾薬は全て使い果たしたようだね。もう時間を操る魔力も残っていないみたいだし・・・これでチェックメイトかな?」

 そう言うや否や、群れの中から一匹が飛び出し、ほむらの喉元に向かって飛び掛かる。

「!!」

 咄嗟にほむらは足元に落ちていたショットガンの銃身を掴み、飛び掛かってきたキュゥべえの顔面を殴打した。
 まるでぬいぐるみのように軽く吹っ飛び、床に激突して砕け散るキュゥべえ。
 だが、それを合図とするかのようにキュゥべえ達は次から次へとほむらに襲い掛かり始めた。

(許さない、絶対に許さない・・・!)

 全ての怒りと憎しみを込めて、銃身でキュゥべえを殴り倒すほむら。
 しかし、それも最初の数匹までで、後はイナゴの様に群がるキュゥべえ達に圧倒され、為す術もなくその身に攻撃を受けるのみだった。

「あうっ・・・!」

 まるでサンドバッグのように打ちのめされ、床に倒れるほむら。
 さらに赤く染まる衣装が、ダメージの大きさを物語る。
 そんなほむらを前にして、キュゥべえ達はジワジワと包囲の輪を狭めるのだった。

「君は今まで、本当によく戦った。でも、それももうこれまでさ・・・」

 自分が最後に見る物が、こんな『白い悪魔』の顔だと思うと、何だかやるせなくなってくる。

「痛みを消せる美樹さやかならともかく、そうでない君の場合は、それだけの傷を負えば相当辛いはずだ。でも、これで終わったわけじゃないよ」

 一切表情を変えないまま、喋り続けるキュゥべえ。

「今まで何度も僕達の邪魔をしてくれた君には、もっともっと苦しんでもらわないと割に合わないからね。ソウルジェムを砕いてトドメを刺すのは、その後さ・・・」

 もう手の届く所までキュゥべえ達は近付いて来ていたが、ほむらは自分の意思に反して、手も足も満足に動かすことができずにいた。

「さて、君もそろそろ喋れなくなる頃だと思うから、最後に何か言いたいことがあれば、聞いてあげるよ」

 余裕の態度を見せつつ、キュゥべえは真上から自分の顔を覗き込む。

「そうね・・・そのお言葉に甘えて、一つ言わせてもらうわ」
「何だい?」
「あなた達に感情が無いなんて、嘘ね・・・どこからどう見ても、人を散々痛め付けて楽しんでいる、重度のサディストよ・・・」

 ほむらはそう言うと、力なく笑った。
 対するキュゥべえは相変わらず無表情のまま、少し首をかしげる様な動きを見せただけだった。

「やっぱり人間というのは、わけがわからない存在だ・・・それとも、血が残り少なくなったせいで頭がおかしくなったのかな?」
「少なくとも、あなた達よりはまともな神経を持っていると、自負してるわ・・・」
「まあ、そんなことはどうでもいい・・・君が意識を失う前に、『続き』を始めさせてもらうよ」

 ほむらの視界が、キュゥべえ達の姿で埋まる。
 この白い悪魔に向かって言いたいことは山ほどあったが、もはや声を出すのも不自由するくらいに、ほむらは消耗していた。

「さあ、地獄の苦しみを味わうといい。暁美ほむら・・・」

 その時だった。
 どこからともなく、爆音のような音が辺りに響いた。

 ゴオオオオン・・・

「な、何だ、この音は?」

 何やら遠くの方から音が聞こえてくる。まるで飛行機が飛んで来るかのような音が・・・。
 ほどなくして猛スピードで空から接近して来る物体が視界に入り、その独特のフォルムを見てキュゥべえは思わず声を上げた。

「何だ、あれは・・・!?」

 一見すると自動車のようにも見えるが、後部に巨大なファンとジェットエンジンを搭載し、主翼を展開させたその姿は、よくある飛行機とも全く違う異質な物だった。
 さらに驚くべきは、それに乗っている人物。
 赤いヘルメットとスーツを身にまとい、操縦席で仁王立ちする姿は、感情の無いキュゥべえにも得体の知れないプレッシャーを与え、今にも力尽きようとしていたほむらの度肝を抜いて目を覚ますほどにインパクト絶大だった。
 その飛行物体(ズバッカー)は、まるで時が止まったかのように凍り付くキュゥべえ達の頭上を悠然と旋回する。
 そして、そこから華麗にジャンプした謎の人物はキュゥべえの群れの中へと舞い降り、逃げ遅れたキュゥべえを数匹、容赦無く踏み潰した。
 その無言の迫力に圧倒され、一斉に後方へと下がるキュゥべえ達。
 そして数秒の後、その中の一匹がやっとの思いで口を開く。

「な、何者だ!?」
「ハッハッハッハッハッ・・・!」

 謎の人物は、ひとしきり高笑いした後、堂々たる名乗りを上げる。

「ズバッと参上、ズバッと解決!人呼んでさすらいのヒーロー!快傑ズバ―――――ット!!」
「か、快傑・・・ズバット?」
「いたいけな少女達を次々と騙して魔法少女に仕立て上げ、魔女と戦わせ、あまつさえ、暁美ほむらを集団で襲って殺そうとしたキュゥべえ!許さん!!」

 快傑ズバットは唯一の武器であるムチを取り出し、キュゥべえ達に向かってビシッと突き付ける。
 一方、ほむらは突如として訪れた、この一連の展開について行けず、ただ呆然とするしかなかった。

(い、一体・・・これはどういう事なの?)

 今まで一人で戦い続けてきたほむらにとって、自分の元に助けが来ることなど全く想像の外だった。
 しかも、こんな出で立ちの男が現れるとは・・・。
 ほむらは、自分が何か変な夢を見ているのではと思ったが、まぎれもなくこれは現実の出来事だった。
 そしてキュゥべえ達も同様、混乱する自分の頭脳を何とかして落ち着かせるのに、それなりの時間を必要としていた。

「ちょ、ちょっとわけがわからないけど・・・とにかく、たった一人で乗り込んで来るとは良い度胸だね。返り討ちにしてあげるよ!」

 キュゥべえ達は改めてズバットの周囲を取り囲み、一斉に飛び掛かった。
 白い津波のごとく押し寄せるキュゥべえ達に押し潰されたかのように見えたズバットだったが、次の瞬間!

「ズバ―――――ッ!!」

 まるで閃光のような一撃が走ると、白い波は一刀両断され、襲い掛かったキュゥべえ達は皆、衝撃波に打たれたかのように吹っ飛び、砕け散った。

「なっ・・・!」

 あまりの威力に、動揺の色を隠せないキュゥべえ。
 数の上では圧倒的に相手を上回っているというのに、一匹として前に出ようとする者はおらず、ムチの威力を恐れて皆一様に後ずさりするのみだった。

「どうしたキュゥべえ!それだけか?ならば、今度はこちらから行くぞ!」

 そう言うや否やズバットは駆け出し、キュゥべえの群れの中へと突っ込む。
 そしてムチが一閃する度に、まるで空間ごと削り取るかのように多数のキュゥべえが斬られ、潰され、バラバラになっていく。
 それを目の当たりにしたキュゥべえの群れは、一挙に恐慌状態へと陥った。
 一部の個体は脱兎のごとく逃げ出そうとしたが、ズバットの優れた動体視力と素早さはそれすら許さず、無慈悲な一撃をその頭上に次々と食らわせる。
 中には何とかしてズバットの死角を突いて攻撃しようとした者もいたが、その前にムチの餌食となるか、ズバットスーツの防御力に跳ね返されて、ズバットに傷一つ付けることなく倒されるのみだった。
 戦闘と言うより、もはや一方的な殺戮と言っていい状況に、端で見ていたほむらは体の痛みも忘れてその光景に見入るしかなかった。
 あれほど群れを成していたキュゥべえ達が、見る見る内にその数を減らしていく・・・。





 そして、三分後。
 最後の一匹となったキュゥべえが、まるでボロ雑巾のようになって地面に転がっていた。

「そ、そんなバカな・・・こんな短時間の内に、僕の仲間達が全滅するだなんて・・・!」
「ズバットのムチに、出来ぬ事は無い!!」

 もはや一匹を除いて、原型を留めているキュゥべえは存在しなかった・・・まさに死屍累々である。
 そしてズバットは、最後に残ったキュゥべえの首根っこを掴んで問い質す。

「二月二日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か!?」
「そ、そんな男は知らない・・・!」
「ウソをつくな!」
「ほ、本当に知らない!僕はその日、見滝原市で魔法少女の契約を取り付けていた!」

 ズバットは憎々しげにキュゥべえの顔面へもう一撃を食らわすと、そのままキュゥべえを空中高く放り投げて、とどめの必殺技を炸裂させた!

「ズバットアタ―――――ック!!」
「ぐぺぽ―――――っ!!!」

 ズバットアタックの直撃を食らったキュゥべえは文字通り粉砕され、雪のような粉となって散った。

「飛鳥・・・お前を殺した犯人は、こいつでもなかった・・・!」

 ズバットは粉々になったキュゥべえの残骸の上に、ズバットカードを投げつける。
 そのカードには、こう書かれていた。

『白い悪魔、インキュベーター全滅!』





「危ない所だったな、お嬢さん」

 快傑ズバットによって救われた暁美ほむらは、何とか立てるようになっていた。
 だが、塞ぎ切れていない傷口からは、今も血が流れ続けている。

「何者かは知らないけど、とにかく命拾いしたわ。ありがとう・・・またあなたに会うことがあれば、その時はできるだけのお礼をするわ」
「礼などいい。その気持ちだけで充分だ」
「そう・・・それじゃあ、これで失礼するわ」

 ほむらは傷付いた体をよろめかせながら歩き出した。
 しかし、その行く手をズバットが塞ぐ。

「そんな体で、どこへ行く気だ?」
「私には、まだ倒さなくてはいけない敵がいる・・・」
「・・・ワルプルギスの夜、だな?」
「よく知ってるのね」
「ああ。何かと有名な奴だからな」
「あいつを倒さない限り、私の戦いに終わりは来ないわ。だから、黙って行かせて・・・」

 そう言いつつ、ほむらはズバットを押しのけて再び進もうとする。
 しかし、出血と疲労から来る衰えは誰の目にも明らかで、ほむらは二、三歩歩いた程度で立ち止まり、大きく肩で息をする有様だった。

「そんな立っているのがやっとの状態で、何ができる?」
「大丈夫よ。魔力さえ充分に回復すれば、こんな傷なんてすぐに治せるわ」

 重い体を引きずって、なおも進もうとするほむら。
 だがその時、突如として怪しげな雲が、空一面を覆い始めた。

「こ、この気配は・・・!」

 愕然とするほむらを吹き飛ばすかのような勢いで嵐が巻き起こり、雲の中から『あいつ』が姿を現す。
 最強の魔女・ワルプルギスの夜が、この街を絶望に包むべく、不気味な笑い声と共に降臨した。

「そんな・・・予想よりも早くワルプルギスの夜が来るなんて・・・!」

 今のこの体で奴と戦っても、勝ち目は万に一つも無いだろう。
 だが、それでもほむらは逃げる訳にはいかない。
 この街には、自分が必ず救うと誓った、大事な人がいるのだ。

(たとえ・・・奴と刺し違えてでも、私はまどかを守る!)

 悲壮なる決意を胸に秘め、ほむらはワルプルギスの夜へと向かう。
 しかし、その前には再び快傑ズバットの姿があった。

「まだ私に、何か用かしら?」
「勝ち目の無い戦いに赴こうとする者を、見殺しにするわけにはいかない・・・」

 ズバットの言葉は静かな口振りではあったが、その底には明らかな怒気を含んでいる。
 まるで自分の親に怒られているかのような感覚を覚えたほむらは、思わず彼から視線を逸らした。

「武器をまた調達すれば、勝ち目は決してゼロではないわ・・・」
「それ以前に、そんな体で戦ったら確実に死ぬぞ!」
「覚悟はできているわ。ずっと前から・・・」
「君はそうでも、後に残された者はどうなる?死んでしまったら、君を想う人がどれだけ悲しむと思うんだ?」
「・・・!」

 ほむらの脳裏に、『あの時』のことがよぎった。
 あの時・・・まどかは死ぬと分かっていて一人、ワルプルギスの夜に戦いを挑んだ。そして・・・。
 その悲しみは、今もほむらの胸に深く突き刺さっている。

「私は・・・」

 不意に体から力が抜けて、ほむらは膝をついた。
 もし自分がワルプルギスの夜と戦って死ねば、今度はまどかがあの時の自分と同じ悲しみを味わうことになるだろう。

「もうこれ以上、悲しみを生んではいけない・・・」

 まるで自分の心を見透かすかのようなズバットの言葉に、ほむらは体を震わせ、涙を流した。

「でも、ワルプルギスの夜を倒さなければ、まどかだけじゃなく、この街のみんなが・・・!」
「そうだ。だが、君はもう戦わなくていい。ワルプルギスの夜は・・・この快傑ズバットが倒す!」
「えっ・・・!?」
「傷だらけの君が戦うより、五体満足な俺が戦った方が勝率は高い。そうは思わないか?」
「い、いくらあなたでも、ワルプルギスの夜が相手じゃ、さすがに分が悪いわ!」
「確かにそうだ。簡単に勝てる相手じゃないのは分かっているさ。だが、約束しよう・・・必ず奴に勝つと!」

 ズバットの力強い言葉が響く。
 それは理屈抜きに人を信じさせる何かを含んだ、まるで魔法のような力・・・。
 ワルプルギスの夜を倒すという『奇跡』を信じて、今まで何度も繰り返し時間を遡ってきたほむら。
 もしかしたらその『奇跡』とは、今自分の前に立っている快傑ズバットと名乗る人物のことではないのか・・・そう思えてくるのだった。

「君はもう充分に戦った。だからもう、こんな戦いの世界に身を置くのはやめて、普通の中学生らしい生活に戻るんだ」

 ズバットはほむらの肩に手を置き、諭すように言う。
 彼の手は手袋越しだというのに、なぜかとても暖かく感じられた。
 ほむらは、その温もりに促されるようにして、ゆっくりと頷く。

「君のその決断、決して無駄にはしない・・・」

 その時、大きな爆発音が響き、地震のような揺れが伝わって来た。
 どうやらワルプルギスの夜が本格的に破壊活動を開始したようだ。

「そろそろ行くとしよう。これ以上奴を暴れさせていたら、街の被害が増える一方だからな」

 ズバットはそう言ってほむらに背を向け、嵐に向かって歩き出す。

「待って」

 それをほむらが呼び止めた。

「一つだけ聞かせて。どうして、ここまでして私を助けようとしてくれるの?」
「・・・・・・・・・」

 ズバットは、その問いには答えようとはせず、代わりにほむらの背後を指差して、静かに言った。

「どうやら、君の『想い人』が来たようだ」
「え・・・?」

 ほむらが振り向くと、遠くに人影が見えた。
 それは、とてもよく知っている、自分が命を賭けて守ろうとした・・・。

「まどか・・・!」

 彼女の無事な姿が確認できて、ほむらは心から安堵した。
 ワルプルギスの夜の攻撃に巻き込まれてはいないかと、心配になっていた所だったのだ。

「どうして、この場所が・・・?」
「俺がさっき知らせておいたのさ。余計なお世話だったかな?」
「いいえ、とんでもない・・・!」

 自分の名前を呼びつつ、まどかが走り寄って来た。
 ほむらは倒れるようにして、疲れ果てた体をまどかに預ける。
 まどかは自分の制服が血で汚れるのも構わず、ほむらを優しくその胸に抱いた。

「ほむらちゃん・・・!何て酷い怪我なの!?」
「大丈夫よ、まどか。あなたが無事でいるのなら、この程度の傷なんて問題じゃないわ」
「白いギターを持った人に言われてここに来たら、こんな事になっててビックリしたよ・・・!」
「そう・・・そうなの・・・」
「ほむらちゃん、お願い。もうどこにも行かないって約束して。私と一緒にいて欲しいの・・・」
「・・・分かったわ、まどか。もう離れたりは、しないから・・・」

 もはや、ほむらの表情に『戦士』としての影は無く、そこにあるのはごく普通の、少女の顔だった。
 そんなほむらを見て、ズバットは満足そうに頷く。

「これからは、彼女のそばで穏やかに暮らすといい・・・」

 そう言うと、ズバットは二人に背を向けて走り出した。
 荒れ狂う嵐の中へと去って行くズバット。
 その背中が、涙で霞んだ。
 ほむらは何度も、何度も涙を拭って、彼の姿を一生忘れまいと、その目に焼き付けるのだった。

「ほむらちゃん、あの人は一体・・・?」

 まどかの問いに、ほむらがつぶやくように答える。

「ヒーロー・・・」
「えっ?」
「もう、この世のどこにも居ないと思っていた、本物のヒーローよ・・・・・・・」





 ここは、嵐の中心・・・もしくは、地獄の一丁目と言うべきか。
 家は燃え、建物は破壊され、美しかった街並みは瓦礫の山と化している・・・全てワルプルギスの夜の仕業だ。
 ズバットは、我が物顔で暴れ回るワルプルギスの夜を見据え、決意を新たにした。

「飛鳥・・・見ていてくれ。これが俺の戦いだ!」

 たとえ相手が何者であろうとも、怯む快傑ズバットではない。
 ましてや今度の戦いには、この街の人々の命と、暁美ほむらの平穏な人生が掛かっているのだ。
 熱い決意を胸に秘め、ズバットは走り出す。
 ズバットの接近に気付いたワルプルギスの夜が、悠然とズバットの方に向き直る。
 次いで、ワルプルギスの夜が放った巨大な光線がズバットのすぐ横をかすめ、背後の高層ビルを粉々に破壊した。

「なるほど。かなり腕に覚えのある魔女のようだな。ただし・・・」

 ズバットは自慢のムチを構え、そして天高く跳躍してワルプルギスの夜に向かって行った。

「その腕前は日本じゃあ二番目だ」








最終更新:2012年02月02日 00:02
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