ああ、うるわしのドッチャー・アルフェンス > 第1話 ドッチャー現る 本家第1期前編

ある年の3月、夜空の中、とあるスタジアムでは歓声が鳴り響いていた。
「さあここバトルロイヤルスタジアム、第1300回D-BR杯に、まもなくドッチャー・アルフェンスの入場であります」
すると場内に赤いバトルコスチュームの青年が現れた。彼こそがドッチャー・アルフェンスだという。
「ドッチャー!がんばれーっ!」
「今日も良いプレーを見せてやれ!」
声援が飛ぶ。ドッチャーはリングに上がり、サポーターたちに手を振る。

それからリングにはドッチャーの他3人が上がり、いよいよ試合開始。白熱した試合展開の中、ドッチャーは華麗な身動きで敵の攻撃を次々と回避し、こつこつとダメージを与えていく。
「いけーっ!ドッチャー!ガンバレ!」
そして2人が脱落し、ドッチャーはついに
「あと一人!決めてやるぜ!」ドッチャーは赤いボールを敵に勢いよく投げつけた。ドッジボールさながらの強烈なアタックである。
そのボールは敵に命中。敵はダウンし、そのままカウントが入る。
「1,2,3,」
試合終了、ドッチャー・アルフェンスは見事に第1300回D-BR杯を優勝した。

その後、ロッカールームで監督に話しかけられるドッチャー。
「見事だ、」
「ありがとうございます」
「いやぁ、君は本当に凄いや。まさにバトロイ界のホープさ」
「そうですか」
「私は君のドッジボールの試合をずっと見てきた。バトロイでもドッジでも君の動きは俊敏そのものさ」


思えば、彼が初めてバトロイのリングに上がったのはその2ヶ月ぐらい前だった。
「何かおもしろい新人はいないのか」枦正一、彼は中国の国家主席でありながら、日本のバトルロイヤルに手を出そうとした。彼は日本で有望な新人を見つけようとした。
枦正一はスカウトに指図し、それからしばらくして候補に挙がったのは、島田真北、中原脩、そして星川弘だった。
それから1月、枦正一率いるバトロイチーム「ナショナル枦」が結成され、その3人もチームに入った。その中の星川弘は登録名を「ドッチャー・アルフェンス」にしてバトロイに出場しようとした。最初は中京ローカルの古いバラエティ番組のパロディのようなものだった。しかし、次第にプレイスタイルが変わってきた。彼はドッジボールで培った技術を上手くバトロイで発揮し、白星を何度も重ねていった。そしてあっという間に一線級で活躍できるほどに登り詰めた。
しばらくして、日本バトロイの本家に進出、「ナショナル枦」の記念すべき初登録キャラとしてドッチャーが抜擢された。彼は驚いた。まさか自分が一発目として選ばれる
とは思っても居なかったのである。
彼の心は大きく揺らいでいたが、何とか白星を挙げ、バトロイ界の名誉であるD-BR杯に出場した。
それから日に日に活躍し、D-BR杯の栄冠を何度も掴むようになり、上層部からの厚い信頼を受け、ほぼ毎日のようにバトロイのリングに上がっていた。

しかし、その3月の終わり頃のある日だった。彼に不振の時が訪れたのである。いつもとは体の動きが鈍いと観客はドッチャーの不調に次々と気がついていった。そして、彼はこの日、一度も勝てずにリングを去っていった。
「いったいどうしたんでしょうね」と、実況まで目を疑ったようであった。

その日の夜、彼は自宅に戻り、妹のヒッター・アルフェンスに話しかけた。
「なぜ今日は勝てなかったんだろうか」
「たまたまよ、次こそは勝てるって」と、ヒッターは落ち込んでいたドッチャーに元気づけさせようとした。

その時のドッチャーをヒッターは語る。
「スランプというものでしょうかね、彼は三日ほど気落ちしてました。」


それから次の出場機会を迎えたが、彼は1勝しかできず、リングを去っていった。その3日後、彼はまたバトロイのリングに上がった。しかし、この日も調子が出ず、未勝利のまま最後の1回を迎えた。
「さあ、ドッチャーよ、このまま未勝利で散るのか」と実況が心配そうにマイクの前で語る。
しかし、結果はファンの失望のどよめきを一斉に起こすようなものとなってしまった。そう、「未勝利敗退」という屈辱の5文字がまたのしかかったのである。
「ドッチャー!お前どうしたんや!」観客からは怒鳴り声も。
ドッチャーはとぼとぼとロッカールームに向かうしかなかった。ファンの非難の声に包まれて。

ロッカールームに戻ったドッチャー、ベンチで頭を抱え、ずっと落ち込んでいた。
「(俺、やっぱりダメなのか・・・・)」

その光景を傍らで見ていた中原脩は、こう語る。
「彼がスランプに陥っていることは明らかでした。なのに私には何もできませんでした。ただ彼が滅多打ちにされるのを見ることが唯一できることでした。」
このとき、中原もまた未勝利敗退を喫して出場停止を受けているところだった。


その3日後、バトロイのリングに、ドッチャーはまたも現れた。しかし、そこで待ち受けていたのは観客の冷酷な野次とブーイングだった。
「ドッチャー!お前またやられにきたのか!」
「今日もどうせ未勝利なんだろ!」
「名鉄電車ではよ帰れ!」
ドッチャーは観客に剣幕を見せるも、審判の制止によりなんとか落ち着く。
それから、彼の戦いは始まった。しかし、非常に険悪な雰囲気の前にドッチャーは本調子を出せず、白星を掴むことなく、また追い込まれた。
「おいドッチャー!お前の黒星もあと1回やぞ!」
そして5戦目、彼には良いところがなかった。結果は未勝利。彼はまたロッカールームでひどく落ち込んだ。

その後、彼はバトロイのリングに姿を現すことはなかった。その間の枦軍の主力はヒッター、怪傑播磨王と名乗っていた中原、そして船木平次郎だった。だが、チームそのものは不振が続き、しだいにドッチャーの復帰を望む声が高まってきた。

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最終更新:2009年03月29日 20:40
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