真北の大冒険 > 第53話 新兵器ドレッドノート

新戦力として、中原誠と一関智子が加わった日本人民軍。その2人はさっそく訓練に合流した。
2人はすぐに訓練と他の隊員との意思疎通に慣れ、フェニックス打倒計画は順調に進んでいた。
それから20日経ったある日。基礎訓練も終わりに近づいた頃であった。真北の提案で射撃コンテストを行うことになったのである。
「誰が一番かここで決めてやる。」
「どうせお前が一番なんだろ」と、中原脩
「いや、俺は出ない」
「誰が出るんだ」
「ここ10日の間、兵科問わず射撃訓練で優秀な成績を収めた10名」
「だから・・・」
中原脩は射撃成績表を見る。すると上位10名はの中には星川弘、高城麗奈、そして一関智子が入っていた。相本由香は12位、中原誠は16位と惜しくも入らなかった。
「なぁ、中原、この中で誰が勝つと思う?」真北は訊く
「微妙やな、」中原、誰を予想するか悩んでいる。
「俺なら高城が勝つ」と、真北
「確かに一般兵の中では高城が一番射撃が上手いんだな」
「高城、まずお前から撃つんだ」と、真北は指示する。
「はい」と、高城は返事をし、射撃場に立ち、小銃を構え、発射
バンッ、バンッ、バンッ 
見事3発ともど真ん中に命中。
「ほら見ろ、高城は強いぞ」
次に射撃地点に立つのは一関。
「さて、一関の射撃はいかなるものか」真北、そっと見つめる。
バンッ、バンッ、バンッ
これまた高城に劣らず正確な射撃。
「一関もなかなかだな」
結果、1位は高城、2位は一関で、星川は5位という結果となった。
「あんたやっぱりすげぇや」真北、高城に話しかける。
「ありがとうございます。」
「それに一関もええで」

そして数日後、いよいよ基礎訓練が終わり、3兵科分かれての訓練が始まった。突撃隊にいる者は真北に鍛え上げられ、電信隊にいる者は通信機器の使い方や発音を学び、そして後方支援隊では野戦砲を使った砲撃訓練が行われていた。
「凄いなぁ」と後方支援隊員は野戦砲の大きさに魅了されていく。
「どうだ、これがドレッドノートに載る127ミリ速射砲だ」と後方支援隊の上官は言う。といっても127ミリはまだ一般的な大きさである。しかし、そんな後方支援隊にも元から軍事に詳しい者はさほどいない。
ドレッドノートとは、もとはブラックアイヌ団が超兵器として開発した貨客戦艦である。貨客戦艦とは、貨物船、客船、そして戦艦の三つの機能を兼ね備えた艦船のことをいう。このドレッドノートは旧日本海軍の金剛型戦艦と同じ大きさに、127ミリ速射砲と多目的ミサイルを搭載し、CIWSと呼ばれる近代的な防御用機関砲を備え、乗員800人の他、1200人の輸送人員と、小型船、そして補給物資を載せることが出来る。そのドレッドノートはデイン戦争末期にアメリカ軍に取られたが、当のアメリカ軍はそれを不必要とし、横須賀でスクラップにしようとした。だが、天知駿一はそれを安く買い取り、現在は横須賀でデイン戦争記念の展示品として飾られている。
「まずこの300人のうち、くじで割り当てを決める。艦載砲砲手、ミサイル砲手、調理係、そして見張り、でも大半が見張りだからなぁ」
3分後、兵達はくじを引く。ある者は艦載砲砲手を望んでいたが見張りを引いてしまい落胆し、ある者は調理係を希望して見事引き当てて喜んでいた。そしていよいよ高城のターン。
「どれにしようかな・・・」と高城は念じつつくじを引く。するとくじには「艦載砲」と書かれていた。
「おお、高城は艦載砲砲手かな」と上官は言う。
「えっ!?本当ですか!?」
「そうだな」
すると高城は笑みを浮かべ、そのまま砲手担当の列で整列した。
そして全員がくじを引き終え、それぞれの担当に分かれて並んだ。

一方、突撃隊は
「いけーっ!」と真北の叫び声が響き渡る。どうやら紅白に分かれての模擬戦闘のようだ。炸裂すると絵の具が飛び散る銃弾や手榴弾使われ、戦闘服に絵の具がついた者は倒れなければならなかった。
「ぐわぁっ!」一人の兵士がやられる。
「ザオリクーッ!」と、その兵士の仲間が叫ぶ。
ピピーッ! 笛が鳴らされる。戦闘は中断され、するとその模擬戦闘を仕切っていた真北がその2人の兵士のもとへと駆け寄る。
「そんなザオリクとかどうせできやしないのにふざけてやんなや、腕立て伏せ10回!」と、真北は指図する。
その兵士2人が腕立て伏せを終えると、すぐに戦闘が再開された。紅組は星川の快足と手榴弾に中原の知略ある指揮、対する白組は竹取の軍刀使いで対抗する。この日は結局、紅組が勝利した。

それから半月ほど経ったが、ある問題点が発生した。天知と3兵科の隊長が会議をしていたときのこと。
「なんやと、一関が」と、突撃隊長の真北
「実は、あいつ機械音痴で滑舌悪いんだよ」と、電信隊長が言う。
「あーあ、田舎気質が露呈してしまったなぁ」
「10年前に息子と二人で映画見に行ったとき、島根にパソコンがないとか劇中で言われていたよなぁ」と、後方支援隊長
「でも今どの地方でもパソコンぐらい普及してるでしょ。しかし彼女の家を訪れたとき、最新の家電は見あたらなかった。テレビのアナログ放送がそろそろ廃止になろうというのに、受像器はブラウン管。当然チューナーもついてるはずがない。電話機にはファクシミリもついておらず、プッシュフォン黎明期のもの。冷蔵庫はノンフロンでもなく、パソコンもなかった。」
「農家らしいね、しかし、このままだと作戦に支障が出かねない」と天知は危機感をあらわにする。
「何とかしますよ、司令」と電信隊長

それから時は流れ、平盛23年5月3日、デイン戦争終結から5年を迎えようとしていた。日本人民軍隊員全員がグラウンドに集う。夕方、どうやら全ての訓練が終わったようすで、天知が壇上に上がってスピーチを行っている。
「本日、諸君らは全ての訓練を終え、いよいよ3日後に出撃の日を迎える。よく頑張った。中には痛みに耐え、困難を乗り越えた者もいた。」
5分ほどでスピーチは終わり、全員が敬礼をし、解散。夕食に入った。

ある食卓には星川、竹取、相本、高城、一関の5人が食事を終え、話をしている。
「結局私は見習い扱いですよ」と、一関、やはり機械音痴がネックで技能が十分ではない様子。
「だから私が智ちゃんの面倒を見るのよ」と、相本
「そうか、でも島田さんのあの気合いの入りようは凄かったさ、気合いだけでこの島を放火して焼け野原にそうなくらいだ」と、星川は
「やはり島田さんは元気な方ですよ。もう突撃隊という列車の運転士のようですから」と、竹取
「てかもうリアルに運転士だがよ」と、星川が言うと、5人はどっと笑う。

そしてついに迎えた出撃の日。日本人民軍はまず米原まで船とトラックで移動し、そこから新幹線をチャーターして新横浜まで移動。新横浜からドレッドノートが停泊している横須賀まで移動することになった。その移動中の新幹線でのこと。時刻は真夜中。
「いやぁ、米原から乗N700系はまた違うものだねぇ」と、グリーン車に座っている上官の中で真北は語る。
「てかよくN700なんてお願いできたものだ、葛西のおっちゃんなら断固拒否だろう」と、その真北の隣に座っている中原脩
大火器や物資の輸送は自衛軍が担当し、兵員だけを新幹線で輸送している。上官はグリーン車に乗り、一般兵は普通車に乗っている。
その普通車で、星川、竹取、中原誠の3人が隣席に座りあっている。列車はちょうど白いツインタワーのある駅を通過するところだった。
「あーあ、俺の故郷よ」と、星川
「俺たちはN700で名古屋飛ばしを体験したんだ」と、中原誠
「ふんっ、名古屋人が怒って線路内に立ち入って止めてしまうよ」
「ところで、星川さんには彼女いるんですか?」と、竹取は訊く
「作戦が終わったら話す。今語ったら俺の命はない」と、星川は答える。
1時間後、別の号車では相本、高城、一関が隣り合わせていた。
「さて、もうそろそろ横浜ね」
「いよいよ支度しないと」

朝7時、日本人民軍は横須賀に到着。いよいよドレッドノートとの初顔合わせである。大きい。米海軍のワスプ級強襲揚陸艦よりやや小さいくらい。ほとんどの兵士はドレッドノートを生で見たことはなかった。当然、実機など扱ったこともない。
兵士一同は艦内に入って性能などを確かめる。そのドレッドノートのドックに、真北をはじめとする突撃隊がいた。
「こんなでかい船でどうやって敵の陸に揚陸するんですか」と、一人の突撃隊員が真北に訊く。
「本来ならLCACというホーバークラフトやけど、予算の都合上、漁船。」
「ぎょ、漁船!?どうして!?」と、突撃隊員は驚く。
「心配はいらないよ、漁船はレーダーに反応せえへん。あのイージス艦ですら存在に気づくことができず、衝突さ。」
「なるほど、そういうことですか。」
前方の艦載砲の周辺にいるのは後方支援隊。そして艦橋の司令室にいるのは電信隊であった。

果たして、日本人民軍の戦士達はドレッドノートを扱うことはできるのか
続く。
最終更新:2009年04月02日 11:56
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