焼き鳥屋では、店主と客がWBRを肴に酒を飲んでいた……
「もう2シーズン終了ですね、
妹紅さん。
黒焔さんが頭一つ抜けてるみたいですけど」
「
レオラルド?は、なるほど。D-BR杯では負けてるから得点がのびなかったみたいだな。あの活躍があっただけに、惜しい。歴代
ランキング入賞のボーナスくらいあっても良さそうなのにな」
「でも、やっぱり上位は堅守高速ばかりですね。私、そういうの嫌いです」
「おまえも堅守高速だろうが」
「うぅ……耳が、痛い……」
「とはいえ堅守高速有利は否定できないな。だが、そんな中でオーラを放つのが、にょろ〜んの
ちゅるやさんだ。あの人のD-BR杯勝利数はすごいぞ。怒濤の4回防衛=5連勝で、
シーズンまたいでるからな。すでに3勝は3シーズン目にカウントされてるぞ。確定で30点だ」
「さすがは
前チャンピオンのキャラですね」
「ああ。緑の弟、もとい
30円?は堅守高速にはそこそこ優位に立てそうだが、攻撃重視の外野がそれを許さないわけだ」
「他人事みたいに言ってますけど、妹紅さんも攻防強化の外野ですよ」
「気にしたら負けだ。ニューカマーでは
レオン.が善戦してるな。スピードの塊みたいなヤツだが、勝負強い。さすがはスターウルフの
メンバーだ」
「あの人、ポワるのが好きなんですよね?」
「ちょっと待て。今さらりと危ないこと言っただろ!」
「はっはっは。気のせいですよ」
「……そうかい」
――カラン、とロック(もこう
ボックス)が音を立てた。
「ん? 早速か」
「これは、お便りですね。ロウさん、
武村さん、
霊夢さんについて語れ。とのことですよ」
「しかしまた、パッとした活躍のないメンツについて語れとは……
出資者は無理難題をおっしゃる」
「言いにくいことをズバッと言いますね」
「だってそう書いてあるんだから仕方がない」
「さすがは妹紅さん、
責任転嫁もお手の物ですね!」
「……炎が、おまえを呼んでるぜ?」
「熱ーーーーッ!?」
――閑話休題。
「まぁ、このメンツの順位が下の方なのは否定しがたいな」
「何が原因なんでしょうね……?」
「じゃあ逆に勝てる理由を考えようか。見たところ、上位陣の共通点は、だいたいが
思い切ったステータスをしているってことだな。1位と2位は共に最速組。バランス型にするのも案外勇気がいるもんだ。レオラルドだって、速度と防御に思い切った振り方をしてるだろ?」
「たしかにそうですねー。弾幕を恐れず突っ切るような気概を感じます」
「私が思うに、武村やロウはまだフォームの分岐点に立っている。そんな気がするな。まぁ、武村はじわじわと調子を上げてきてるみたいだが」
「あの、私もそんな感じのステータスなんですけど」
「そりゃ、作者は重戦車が好みだからな。堅守高速のまねごとをすると、おまえみたいになるわけだ。というか、基本形は私の攻撃と素早さを入れ替えただけだぞ」
「うぐ……私は偽物なんかじゃない! 私はサ(むぐむぐ)」
「ああ、それとな。今回は堅守高速が多いから、HPが高いと会心率がなかなか上がらずに先に会心喰らうことが多いと思うぞ。特に一発勝負のD-BR杯だと、会心撃ったもん勝ちだからな。決定力はほしいところ」
「ところで……霊夢さんは?」
「あれは私にもわからん。なんでランクインしてないのか、さっぱりわからん。勝ってるイメージが強いんだがなぁ……」
「ですよねぇ。たぶん、普段の不信心が祟ったんだと思いますよ、私は。ただでさえ薄い信仰を、白蓮さんがさらにむしり取っていきましたからね」
「なんというか、宗教の世界も世知辛いな」
「そうなんですよ……」
――カラン、と氷が音を立てて割れた。
しかしこの二人、こうもズバズバ言ってて大丈夫なのだろうか……くわばらくわばら
今日も今日とて投書が入った。
「
ディエンド……か」
「ディエンド……ですね」
「試合を見て
だいたいわかった。なんというか、同情を禁じ得ないくらい、運が悪いんだよな……」
「同情するなら勝ちをくれ!」
「一応、あのステータスはバランスのとれたものだ。ヤツは勝てるキャラのはずなんだ。だってのに、なんで命中率5割がことごとく当たるかねぇ」
「しっかり攻撃を当てられる速度が売りですけど……防御面が少しきついかもしれませんね」
「それが速攻重視だよ。というか、でかい攻撃を喰らうのは運が悪いとしか言えない。堅守高速でも、攻撃重視の一撃を"運悪く"喰らえば戦闘不能になるし、守備重視も痛烈な一撃でおじゃんだ。だからそこは運と相性の勝負。逆に言えば、私たちはそうやって勝利数を稼いでるわけだ」
「なるほど……だからたまに爆発するんですね。ウドンゲインも軍曹も」
「そういうこと。
HIT or DIEが攻撃重視の生き様だ。しかし今回、速攻重視は分が悪い。他の速いメンツは余裕で攻撃を当ててくるからな。ディエンドくらい頑丈でないとキツイ。ただ、それだと決定力に欠けるわけなんだよな……」
「難しいんですね、速攻重視って」
「というか、寡黙になってから勝率落ちてないか?」
「そうかもしれませんねぇ。スクリプトもそこら辺を考慮するのかもしれませんよ」
「んな馬鹿な」
――ジュゥゥ、と焼き鳥のタレが音を立てた。
カコン。もこうボックスが音を立てた。こそこそと去っていく女性の姿が視界の隅に映ったが、見なかったことにした。
「あー……
四退女王って言われてるけどさ、なんだかんだで、勝ってないか? あいつ」
「そうですよねぇ。D-BR杯も勝ってましたし。6位ですし。まぁ、凡退も目立ちますけどね」
「いんや。それは違うな。あいつと同じくらい凡退してるのも大勢いる。ただ、なぜか
四退が目立つんだ」
「彼女の
オーナーの問題かもしれませんね。
ネームバリューというやつですよ。あと、そうめんの陰謀もありますね」
「ねーむ……なんだって? 悪いな。横文字は苦手なんだ」
「投書箱にさらりともこう
ボックスって名付けた人が何を言ってるんですか?」
「がんばれ西尾維新! 私は応援してるぞー! 化物語の知名度上昇に原作厨の私、涙!」
「めちゃくちゃ現代っ子じゃないですか!」
「まー、ときどき外にも出かけてるからな。ジャンプも購読してるぜ?」
「はぁ……私はマーガレット派ですけど。
君に届け、いいですよね」
「アニメ化だっけ? ドラマ化だっけ?」
「どちらにせよ、
電波なんて届きませんよ、ここ」
「そうだよな……」
――近くで聞き耳を立てていた誰かが涙する。酒のない朝のことだった。
「そーなのかー」
「おう、いらっしゃい。なんだ、今日は夜雀のとこじゃないのか」
「今日は仕入れ日なの」
「まぁ、ヤツメウナギなんていつも手に入るものじゃないですからね。夏目さんと静流さんが奮闘していましたよ」
「そういえば静流は魚を捕るのがうまかったな。はは、夏目が足引っ張ってなきゃいいが」
「うー。夏目って人類にはいい思い出がないの。食べようとしたら殴られたし」
「そりゃ殴られるわな」
閑話休題。
「なんか知らんが、ロウと武村が頑張ってるようだぞ。ロウは7連勝、武村はD-BR杯2連勝だとよ」
「はっはっは。
奇跡の力のおかげと言ったところですね」
「そーなのかー?」
「んなわけあるか。ディエンドが泣くぞ」
「う……確かに。きっと不信心なんですよ」
「はいはい。ちなみに、実を言うと私は
朧月夜を応援しているんだ」
「あれ? 姫キャラは嫌いじゃないんですか?」
「別にそんなことはないぞ。
どっかの誰かと違って嫌味がないからな。それにかわいいだろ?」
「そーなのかー」
「ちなみに私は1位が逃げ切りの試合展開は嫌いなんだ。だから黒焔は応援してないぞ」
「うわ、ぶっちゃけましたよこの人! というか、ひねくれてますね〜」
「悪いか! ハリーポッターも読んでないぜ! というか高いだろあれ!」
「ここまでくると病気ですよね……」
「そーだなー」
「いいんだよ。斜に構えるのが私のアイデンティティだ。これを安易に揺るがすのはキャラ失格と言っても過言じゃあない」
「赤松健のようにはならない、というわけですね?」
「おまえ……また危険な発言を」
「それが私のアイデンティティですから」
「そーなのかー」
――マガジン編集部からの制裁はきっと来る。そう予感する妹紅であった。
。
最終更新:2009年10月10日 01:35