まちあわせから、もう三時間。近藤仁史は一行に現れない。
「待ち合わせ場所を間違えたのか」
高中は不安になり、足の震えが止まらない。
「もう、三時間。待てないぜ」
高中はもういらつきを我慢できず、一人でアンブレラゾンビラーメン屋に入ってしまった。
「らっしゃい!!」
店に入ると頭が丸ごとはいるようなマスクをした店長が威勢よく挨拶をした。
「おっちゃん、どうしたん? 風邪でもひいたん?」
「ああ、それがよ。最近体の様子がおかしくてよ、誰かにうつしちゃいけねえからこうやってマスクしてるんだい」
高中は一瞬でこのおっちゃんを江戸っ子だと確信した。
「おっちゃん、
お勧めはなんだい?」
「ああ、このTウィルスラーメンはどうでい?」
「ああ?なんだいそりゃ? みそくれ!」
みそと言ったとたん、おっちゃんの顔つきが変わった。
「なんでい?」
「だから、みそをくれよ」
おっちゃんの顔が崩れた気がした。
「ぬにゃんであい?」
「おっちゃん!?」
おっちゃんが付けていたマスクが落ちる。
「う、うわ!? なんだこりゃ!!」
高中は驚き、大きな声を上げた。
マスクのとれたおっちゃんの顔は真っ青で、白目をむいていたのだ。
「にゅしょはぬゆいあ」
おっちゃんは他の客のところに倒れた。
「おい、大丈夫か?」
心配そうに客がおっちゃんをみると、おっちゃんは口から大量に血を出していた。
「おい、どうしたんだ! あ、あれ? いて……」
客は目を大きく見開いて驚いている。
「あ、あああ!!」
客の足を見ると太ももの肉が大きくえぐられ、そこから大量の血が流れていたのだ。
「なんだ! やべえぞ!!」
高中はこの以上自体に急いでラーメン屋から出ようとしたが、足は完全に止まった。
扉をあけると外で人が人を食べ合っていたのだ。
高中は外に危険を感じて急いで厨房のほうに逃げた。
「くそ、この町はもうゾンビだらけじゃねえか! 誰か生き残った人はいねえのか!」
まだゾンビを三体しか見ていないのに、高中はもうこの町中がゾンビであふれかえっていると思ってしまった。
「の~」
ゾンビの気持ち悪い声が聞こえてきた。
「やべえ、武器が必要だ!」
厨房にいたコックはようやく異変に気がついた。
「お客さん、困りますよ。厨房に入っては」
アルバイトらしい男は困ったようにみている。
「馬鹿野郎、向こうで店長がゾンビになって人を食ってるんだよ!」
熱くなって話す高中を店員は困ったように見ている。
「店長、ゾンビになっちゃったんですか?」
一瞬で店員は固まった。
「お、お客さん……。そこにある包丁を持って下さい。田所! お前もだよ」
「え? どうしたんすか、山田さん」
田所という店員は訳が分からない様子だ。
「店長、まじでゾンビになってる!!」
「はあ? 馬鹿言わないで下さいよ。あ! 店長、何やってるんですか! お客さんはごはんじゃないですよ! 神様ですよ!」
「あの馬鹿……」
「ぎゃー!!」
近づいていった田所を店長は餌だと思ったのだろう。差し出した手を食いちぎってしまった。
「田所! はやく逃げろ!」
山田という店員はゾンビが怖くて近づく事ができない。
「山田さん! 助けて下さい! 山田さん!」
田所はゾンビに押さえつけられて動くことができない。その間に、他のゾンビが店に入店していた。
「くそ! お客さん、逃げますよ。田所には悪いけど、もう助けられない」
「ああ、分かった」
高中は山田と一緒にラーメン店の奥に入っていった。
「ここの裏口から逃げましょう。私の車があるので、それで警察までいけばなんとかなるはずです」
高中と山田は警察に出頭した。