お前、ゾンビなのか!? 地獄のドライブ

 (高中……絶対に生きろよ。)
 山田は心の中で強く願っていた。
「ところで嬢ちゃん、名前はなんだい? 俺は山田直樹だ」
 少女は山田の声に反応する事なく、放心していた。
「ち、無理もないぜ。あんな化け物に襲われちゃあな」
 実際に山田自身もショックを隠しきれない。同じアルバイトの後輩である田所、そして店長の死。山田さえこの現実をどう受け止めてよいのか分からずにいた。
「なあ、嬢ちゃん。生き残りたかったらもっと元気を出すことだ。俺だってこの先どうなるか分からないけどよ、警察に行けばなんとかなるってもんだ」
 言ってみるものの、山田は警察署まであの化け物でいっぱいだったらと考えると不安でいっぱいになってしまうのだ。
(だめだ、俺がしっかりしなくちゃこの子は守れない)
 山田は無理矢理、気持ちを前向きに変えた。
 町を見ると混乱している人がたくさんあふれかえっていた。まだ全ての人が化け物になったわけじゃない。警察だって動いてるはずだ。
「ジージー……今、町は危険な状態になっています。東地区に避難所を設置しました。みなさん、そこまですみやかに移動願います。」
 スピーカーから市民に向けて指示がだされた。
「ようやくかよ。東地区っていうと……ここから近いな。助かったぜ」
「や、山田さん。山田さん!」
 少女がいきなり大きな声を出した。
「なんだ? まだ避難所にはつかないぜ?」
「違うの、後ろ! 後ろを見て!!」
 少女は真っ青な顔である。山田はミラーで後ろを見る。
「……まじかよ」
 山田が見ると、後ろから今まで見たこともない巨大な化け物が猛スピードで車を追っていた。
「嬢ちゃん、ちょっとスピードを出すぜ! つかまってな!!」
 山田は気合いを入れるとギアをマックスまでいれた。
「これで追ってきたら、やばいぜ」
「だめ、追いついてきたわ! 私達食べられちゃうよ!」
 少女の悲痛な叫び声が聞こえる。
(そうだ、あきらめちゃいけない。高中と約束したんだから、生き残るってな)
 次第に近づく巨大な生物。山田の額からは脂汗が流れ落ちる。
 「だ、だめだ。俺達……死ぬ」
 化け物はもう車に密着するところだった。
 パーン! 銃声が一つ響く。化け物は頭に銃弾をくらい、転げ回った。
 「おい! 速く避難所に行け!」
 警官風の男が銃を構えていた。
 「ありがとう!」
 山田は一つ礼を言うと避難所の方に入っていった。
最終更新:2008年11月20日 09:03
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