暗い研究所。そこに三人の人物がいた。
「なんだよ、ラーメン屋にこんな所があるなんて」
高中と会う前、近藤はラーメン屋に異変を感じていた。
「おい、次来る客にTウィルスラーメンを食わせろ」
「できないす」
「じゃあお前に感染しているウィルスを除去してやらないぞ」
「……分かった」
いったい何の話をしているのか近藤には意味が分からなかった。一人の科学者とは思えない風貌の男が去っていった。
「Tウィルス? なんの事だ」
近藤は勇気を振り絞って奥に進む科学者の後を追う事にした。
「おい、町のアンブレラ食品にはちゃんとTウィルスを混ぜたんだろうな?」
「はい、この町は私達に莫大な研究成果をもたらすでしょう」
「くっくっく、それは面白い。あとはこの店長がゾンビになればはじまりってわけだ」
「ええ、それでは私達も逃げましょう。ここは危険です」
話終わった二人の科学者が近づいてくる。
(まずい! とりあえずトイレに隠れろ)
近藤は研究所のトイレまで引き返してそこに隠れた。
「あぶなかったぜ……店長がゾンビ? 何を言ってるんだ」
近藤は疑問に感じながら研究所の奥深くに言ってみることにした。
「おいおい、なんだよこりゃあ」
近藤の目に映ったものは、鉄格子の中にある夥しい人の死体。しかも、それら全てが腐りながらも生きている。
「こんにちわ、何してるんすか?」
「ぬぉおおおあああ」
「へ、理性のかけらもねえじゃねえか」
近藤は身に恐怖を感じた。これがもし、ここから出てきたら……。そしてこれがこの町中にいるとしたら。
「……高中! やばい逃げろ!」
慌てて研究所から近藤は逃げ出した。
(高中は、どこだ!)
しかし、高中の姿はどこにもない。人といってもラーメン屋の前では二人の男が喧嘩をしているだけだ。ふと、腕時計を見るとあれから三時間もたっていた。
「帰ったか……ならいいのだが」
近藤は少しだけ安心してここから去ろうとした。
「だ、誰か! 救急車を呼んでくれ! 友達が倒れたんだ!」
少年が地面にうずくまっている。まだ中学生のような風貌である。
「どうしたんだ!?」
近藤は少年の方に近づく。
「さっき、いきなり友達が倒れたんだよ。おじさん助けてくれよ」
少年は困り果てたようにしている。
「ああ、今すぐ救急車をよぶ」
近藤は持っていた携帯電話ですぐに救急番号をかけた。
「アンブレラゾンビラーメン屋の前だ! すぐにきてくれ!」
近藤はすばやく電話をすると、少年に大丈夫だと言った。
「うう、かゆい。ああ……苦しい……!!」
だが相変わらず、倒れている少年は苦しそうだ。
「ぎゃー!」
いきなりラーメン屋の中で叫び声がした。
「なんだ!?」
近藤は驚いてラーメン屋の方を見る。
「山田さん! 助けて下さい! 山田さん!」
ラーメン屋の中は見る事ができないが、何か異変が起こっている事は近藤にもわかった。
「ラーメン屋でいったい何が……」
「あ!」
近藤がラーメン屋の方に目を奪われていると、目の前の少年が声をあげた。
「けんちゃんやめて! やめてよ!」
近藤が少年の方へ目をやると、倒れている少年が看病をしていた友達の首に噛みついていた。
「ぎゃあー! 痛い痛い!」
「おい! 何してるんだ!」
近藤が止めようとした瞬間。少年の鮮血が近藤の顔にかかった。近藤は慌てて顔にかかった血を拭う。
「うわ! なんだ!?」
近藤が目をあけると、さっきまで倒れていた少年がその友達を喰らっていた。
「お……じさん……うぐごぐごご」
のどを裂かれた少年はもはや話す事はできなかった。
「やめろー!」
近藤が少年を殴り飛ばした。
すると噛みついていた少年はあっさりと地面に倒れ込んだ。
「もう、だめだ……助からない」
首の半分がなくなってしまった少年はヒューヒューと力のない息を繰り返していた。
「ぬぉああおああ」
奇妙な声に近藤は振り返る。
「こ、こいつは!」
近藤はこの少年を見て、研究所に腐った人間がいた事を思い出した。
「ゾンビだ! こいつはゾンビだ!」
ゾンビになった少年は近藤を無視すると、血で染まったかつての友達の顔にくいついた。
「う、うわー!」
近藤は目の前の戦慄から逃げ出した。
(ここは危険だ! この研究所からできるだけ遠くに!)
近藤は今感じた恐怖を忘れるように、走り続けた。
最終更新:2008年11月20日 09:04