おいらの見る月夜 サム歓喜モード

「で、お前はこのアマゾンで肉まんを食べながら俺と子作りをしたいと」
「全然、そんなこといっとらんが」
 ようやく、女は意識を取り戻して落ち着いた。名前は朧月夜、どうやら宇宙を統べる太陽に住んでいた星を侵略されて逃げてきたという話らしい。
「信じられるか!」
「だから、いっとらんよ。主、どんな耳をしとるんじゃ」
「いや、そうじゃなくてな。どこだ、太陽が月を襲って逃げてきて、ここだと? いっとくが、ここは太陽の奴より危ない奴がごろごろしてるぜ。たとえば」
 おいらは立ち上がり、落ちていた木の枝を持つとそれをどこかに向かって思い切り投げた。
「ぐえ!」
「ビンゴ!」
 おいらは駆け足で自分が仕留めた獲物をとりに言った。
「誰だおめえ!」
 そこには自分が今まで見たこともない奇妙に燃えさかる人のようなものがいた。
「くそ、ここに月の姫がいると聞いてやってくりゃあ。専属のボディガードなんか付いてやがったか。しかも、土星人と手を組んでるなんて聞いてねえ。うっ」
 妙な事を口はしっていた男は霧になって消えていった。
「ど、どういうことだよ」
 おいらに遅れて、叫び声を聞きつけた朧月夜がやってくる。
「太陽の兵じゃ。追っ手が来とるとは知っていたが、こんなに早くくるとはの」
「どういうことだあ!」
「おちつくんじゃ」
 状況が把握できないおいらは叫んだ。妙な生き物を見たという興奮、そしてその命を奪った自分の非情さ。後悔と歓喜に同時に襲われ、おいらはどうすることもできずにいた。
「うおおおおおおお」
「おいらよ、大丈夫じゃ、落ち着くんじゃ」
 朧月夜の冷たい手がおいらを制するように、その太い腕に触れた。
「うお? うおうおうお」
「なんじゃ」
「うおおおおおおお!」
「落ち着くんじゃ!」
 今度は腕にしがみつくようにおいらを制する。
「うほ!」
「なんじゃ?」
「おらああああああああああああああ!」
 もはや、暴走と言えるその行為には理由があった。もっと、俺の肉体を触って欲しい。この綺麗な女性に肉体を触られたいという欲望により、おいらは計算と暴走を使い分けた。
「大丈夫じゃ、あの男は非情な男じゃった。主がいなかったら、我が殺されていたのじゃ。感謝する。だから、落ち着くのじゃ!」
 必死でおいらを宥めようとする朧月夜。全身でおいらの太すぎる腕にしがみつき、女性特有の柔らかさが腕に伝わってくる。
「うほおおおおおおおおおおおおおお!」
 すでに暴走の叫びは、欲望の叫びに変わっていた。
「ぬう!」
 朧月夜が突然、おいらの腕から離れた。おいらは、びくりとした。まさか、計算がばれたかと、解かれたのかと。
「主、殺しに目覚めたのではあるまいな。殺すことに快感を感じていたのか?」
「何?」
 そして、おいらは気が付いた。自分のサムが歓喜モードになっていたのを。
「うらららああああああああああああああああ!」
最終更新:2008年12月13日 21:41
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