ひと悶着あったがようやく落ち着いた後、
おいらはアマゾン川の水を手で掬い、それを
朧月夜に差し出した。
「なんじゃ、これは」
「水だ。飲め」
手の中には得体の知れない微生物がうじゃうじゃと泳いでいる。
「いや、無理じゃ」
「そうか、水分をまめに取らないと病気になるぞ」
朧月夜が即座に断ると、おいらが変わりにゴクリとそれを飲んだ。これを飲んだほうが病気になりそうだが、口に出すのはやめておく。
「うま! おかわり!」
笑顔で、何かを求めているおいら。どうすればいいのか、朧月夜は戸惑う。
「おかわりい!」
どこまでも、うるさいおいらに朧月夜はとりあえずアマゾンの川に手をつけて水を掬い、それをおいらに差し出した。手の中ではなにやら少し大きい虫が泳いでいる。
「これでいいのか?」
「そうだ!」
満足そうにおいらは笑い、朧月夜の手をとってそれを口に含んだ。吐き出す様子もなくごっくんとおいらは飲み込んだ。
「うまいよ!」
「そ、そうか。それはよかった」
どう見ても、危ないと思うが、おいらには関係ないのかもしれない。暑いのに、冷や汗が浮かんだ。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
「なんだ!」
どこか、遠くのほうで声がしたと思ったら目の前にいたおいらがいなくなっていた。好奇心旺盛な男だ。何かあると、飛び出ずにはいられないらしい。
朧月夜もその後を追うと、
先住民の男が足を押さえて苦しんでいた。
「寄生虫にやられた! いててててて!」
足の指先で何かが蠢いている。
「なんだ、これは!」
「だから、寄生虫だ! ぐわ!」
男の指先から何か白いものが出ると、そこから液体が流れ出した。
「うわあああああああああああああ!」
絶叫はおいらの方だった。指先から液体が流れ落ちると、男はその白いものを指でひっぱり棒で括るとそれをまきはじめた。
「この寄生虫、痛いからやっかいだ。喉がかわいたからってアマゾン川の水を飲んだからいけなかった」
おいらの顔が真っ青になっていた。
「おかわりはどうじゃ?」
「い、いらね……」
最終更新:2008年12月14日 18:25