「我々デイン帝国は、枦哲治とかいう一人の輩によって、ますます世界から見放されてしまった。あの中国進駐で我々は大恥をかいてしまった。だが、ご心配なく。我々には強い味方がいる。そう、ブラックアイヌ団だ。ブラックアイヌ団の司令長、ジェフ・アンダーソンはものすごい頭脳の持ち主で、とんでもない兵器を生み出す魔術師のような人である。彼によって今後我がデイン帝国軍の兵器は近代化されるであろう。」
「万歳!万歳!万歳!」
一方そのころ、日本では
カーン!
どうやら場所はとある野球場である。真北は休みを利用してプロ野球のオープン戦を観に来たのである。真北は昔から阪神タイガースのファンで、もちろんこの試合も阪神が出ている。
「いいぞ!今田!」
阪神の三塁手、今田誠が塁に出る。
そして続く六番打者の新外国人ジム・スペンサーが打席に上がる。
「あーあ、スペンサーかよ。多分ダメだね。あいつは全コース苦手だから。」
結果は三塁ゴロ、一塁残塁。阪神無得点。五回裏終了。
そしてグラウンド整備が行われ、試合が再開される。すると場内では
「タイガース、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、一柳に代わりまして、城」
阪神を支える先発投手、一柳剛が新人投手に交代される。
「来たな」
そう、真北は去年の夏からずっとこの投手に注目していた。その投手の名前は城雅則、去年彼は甲子園に出場し、貧弱な打撃陣のせいでチームは初戦で負けはしたものの大健闘した。どうやら一軍オープン戦初登板らしい。
「よし、見せてくれ」
真北はずっと城のほうに注目した。すると城は黙々と投球、相手打者をセカンドゴロに打ち取った。続く打者も凡打、そして迎えるは敵の四番打者。
「勝負所だな」
結果、見事三振。
「さすがだ」
城は結局3回を投げて被安打1という好成績を収め、マウンドを去った。試合は4−0で阪神が勝ち、真北は球場を後にした。
真北は自宅に帰ると、テレビではブラックアイヌ団がデインに逃れて手を組んだニュースが流れていた。
「嘘だろ、おい」
真北は目を疑った。アンダーソンがアイススクウェア当局に逮捕されることなくデインに逃れていたことなど思ってもいなかった。
「あかん、これはまずいぞ。世界はたちまち恐怖のどん底に陥るに違いない」
真北はひたすら不安に陥った。いつか世界中でデイン軍の軍靴の足音が鳴り響くかもしれないということを考えると、不安で仕方なかった。
翌日、真北はいつもの勤務を終えて帰宅すると、帰りの電車でたまたま相本と会った。
「どうしよう、デインが今にでも日本に攻めてきたら」と、相本が言えば
「いやぁ、わからん。でも心配はいらないさ、日本には天下無敵のアメリカ軍がついているさ」と、真北は言葉を返す。
「でも米軍では無理でしょ」
「わからん。ひょっとしたらデイン軍は米軍を超えてるかも知れない。まだ武器は旧ソ連のお古が多いとしても、あのブラックアイヌ団と手を結んだからには、装備ですら米軍を超えるかもしれん」
「はぁ・・・」
「ま、大丈夫さ、俺一人じゃ無理だけど、俺のような強い日本人があと1000人ぐらいいるだろう。自衛隊の特殊部隊が」
「でもデインには正規軍より戦闘力の高い『親衛隊』という組織がいるんでしょ」
親衛隊、それはデイン帝国軍とは別の組織である。国王が特に戦闘力が高いと認めた者だけが入隊できる精鋭の集いである。あの枦正一を暗殺した犯人も親衛隊員だと言われている。
「うーん・・・・」
「ねぇ、私じゃ無理かな」
「そんな無茶言うなよ、君みたいな可愛い女性を戦場に連れて行く馬鹿がおるか」
「でも、強くなりたいんだ」
「強くなるって・・・」
「だって惚れちゃった、バトロイでの島田さんのあのファイトに」
「ああ、ありがとう」
「私に・・・戦い方を教えてください、お願いします。」相本はそう言うと、頭を下げる。
「うーん・・・まあそこまで強くなりたいなら、仕方ない。」
「本当ですか」
「ただし、厳しいぞ、耳に逆らうことしか言わんかもな」
「ありがとうございます!」
一方、デイン帝国では
「アンダーソン司令長」
「どうされましたか、国王陛下」
どうやらアンダーソンとアシュナードが対談中の様子。
「さて、まずはどこを狙ってますかね」
「ああ、まずは韓国でしょう」
「いや、その前にガロインだと思いますぞ」
ガロインというのは、デインの隣国であるガロイン王国。アムール川より南に位置する。この国は14世紀頃にデインから独立し、以来ずっとデインと対立している。
アシュナードは言葉を続ける
「我がデイン帝国にとって650年にわたって憎き存在として有り続けるガロインを潰すべき。しかもガロインは近頃アメリカと手を結んでおるし」
「はは、それはよい、アメリカとは好敵手ですな」
「ええ、ならばまずは攻撃目標はガロインだな」
果たして、次のデインの餌食になる国は・・・
続く
最終更新:2008年12月24日 14:58