<黒焔の日記>
ここしばらく、なにも大きな事件も起こらず平和な日々を過ごしている。
時々射命丸が周りを飛んでいることと、帰る手だてがないことを除けば順風満帆な生活だといえる。
またあの日以来魔理沙もたまに来るようになっていろいろと幻想郷について詳しくなってきた。
あと俺が外に出かけて帰ってきたときに毎回何故か咲夜が吊し上げられているが一体なにをしたのだろうか?
<紅魔館>
黒焔はいつもの仕事(早朝1時のフランとの鬼ごっこ等)を終えて厨房でいくつかの材料を使い昼食をつくって食べていた。
「これは…美味い!」
などと自画自賛しながら常に着けている腕時計を見た。夕方には館の主、
レミリアが起き始めるころだがまだ夕方まで3時間以上あった。
フランドールとレミリアの生活は昼夜逆転している。やはり吸血鬼なのだろうか、日に余りあたりたくない素振りを時々見せていた。
「さて…仕事も終わったし、俺は早めに寝ますか」
いつのまにか朝~昼の仕事は黒焔、夕~夜の仕事は咲夜と時間帯で二人の仕事を分けていた。
余談だが黒焔は咲夜が寝ている所を一度もみたことがない、時を止めて寝ているらしい(by射命丸情報)
これから寝ようと自分の部屋に戻ろうとしたとき誰かが厨房に入ってきた。
咲夜か美鈴だろうと思っていた黒焔は予想外だった。
「…珍しいですねフランドール様がここにくるとは」
フランドールは寝巻きを着てめをこすっていた。
「ねむれないの…くろほむら、いっしょにねてくれない?」
レミリアと違い言動にはまだ幼さが残っている。黒焔が来るまで地下室に監禁状態だったので無理もない話だが。
「…咲夜さんとはいっしょに寝ないのですか?」
基本的に添い寝は咲夜がまかされていた。
「だってさくやねるまえにへんなおようふくきせるからいやだし、いつもあそんでくれるくろほむらがいい」
「(…吊し上げといい今の発言といい咲夜は俺が見てないときなにやっているんだ?)
分かりました一緒に寝ましょうか」
黒焔はフランドールといっしょに寝室に向かった。
<フランドールの寝室>
黒焔はフランドールの寝室(地下室ではない)に入った。
中は中央にクイーンサイズベッドが置いてあり、周りにはクローゼットひとつしかなかった。
「フランドール様、先にベッドにお入り下さい。
私は少し調べたい物があるので」
「うん、わかった」
黒焔はクローゼットの中身を検分した。
なかには替えの普段着以外に普通の生活にはまず使わないような服があった。
(…本当に何やってんだ?咲夜は?)
「くろほむら、まだー?」
フランドールが急かすようにいう。
「もう少しだけ待ってください。すぐ行きますから」
黒焔がフランドールが寝ているベッドにいきフランドールの隣に座る
「くろほむら、おやすみー」
「おやすみなさいフランドール様」
会話から五分後フランドールから寝息が聞こえた。熟睡しているようだ。
端からみれば自分の子供を寝かしている若い父親、兄ににも見えてくる。
「さて、寝静まったのでこちらも自分の部屋で寝るとしますか」
そう独り言をいいベッドから降りようとしたとき突然扉が開いた。
「お嬢様、今回はこのような服はどうで…」
そこには服(ゴスロリ、スク水ets)を持った咲夜だった。咲夜が白くなっていく。
「…なんで黒焔がそこにいるのよ」
服を後ろに隠した咲夜がいった。
「なんでといってもフランドール様がいっしょに寝てくれといったんだから俺はその指示に従っただけだが。後、その服隠してももう遅い」
咲夜が何やらぶつぶつ独り言を言い始めた。
(俺が居ないときは毎回こんなことをやっていたのか…)
後ろに寝静まったフランドール。前に独り言を言う咲夜。
黒焔は紅魔館内で一番の
カオス空間に突入したかと思った。
<人里>
ある日突然1日限りの休暇をレミリアからもらった。
「人間の里に降りてみてみたら?」
と咲夜(フランドールの時のアレはうやむやになった。というより咲夜が錯乱しかけて黒焔と戦闘になったので、あれ以来禁則事項になった)にいわれたので黒焔は一回人里に降りてみることにした。
「…結構賑やかだな」
人里には江戸時代のような長屋などが多く建っていた。現代建築の建て方をしている家は一つもない。
一番道幅が広い通りには野菜、肉、服の生地などスーパーに負けないぐらいの品揃えをした市場があった。
近くを歩いていたやつの大半が和服で黒焔が着ているような洋服は僅かしかいなかった。なので、黒焔は周りから様々な目で見られていた。
ふと裏通りを見てみると一人の少年が複数の男性に囲まれていた。姿的に男性の方は野盗だろうか。
「おい、少年。そこにある巻物。俺達に譲ってくれないか?」
一人の男が脅し口調で少年に話しかける
「…ダメです…これは慧音さんに…頼まれた大事な巻物なんです…」
「あぁ!?渡さんとどうなるかわかっているんだろうなぁ!」
今度は別な男が声を張り上げ少年を脅す。
「どこの世界でもカツアゲはあるのか…」
このままスルーしたら後味が悪い。黒焔はカツアゲの現場に向かった。
「…おい、たかが少年一人に声を荒げて叫んで物を脅し盗ろうとして恥ずかしいと思わないのか?」
黒焔が一人の男に肩に手をのせる。
「あぁ!?てめぇ、斬られてぇのか?」
男は振り向きながら黒焔に斬りかかる。
が、それより速く黒焔が正拳を男の顔面に放った。男が倒れた。
「野郎!」
今度は複数で黒焔に斬りかかってきたが黒焔が難なくかわす。
「おいおい、これなら俺の手刀のほうがよく切れるな」
「…舐めやがって!殺す!」
大降りで上段から降ってきた刀を黒焔は自分の手刀を刀の刃の部分にぶつける。
手は切れずに刀だけが折れる。
「…やっぱり俺の方がよく切れるな。って、あっけなく逃げていったか…」
男達は既にいなくなっていた。
黒焔はカツアゲされていた少年の方へむく。
「…あの…助けて下さって…ありがとうございます…」
少年が黒焔に礼をいいそのまま帰ろうとしたが黒焔が止めた。
「また襲ってくるかもしれないから俺が行き先まで守ってやるよ」
気弱(ように見える。格好的に。)な少年ではまた襲われかねないと思ったからである。
「…本当にすみません…あなたも…何か用事が有るかもしれないのに…」
風邪気味だろうか、こんこんと咳をしながら少年が黒焔にいう。
「いや、俺は単なる暇だからぶらついていただけだ。時間ならまだ余裕がある」
「…なら、寺子屋までお願いします」
少年が申し訳無さそうにいう。
「あぁ、まかせとけ…名前はなんていうんだ?」
「僕は上白沢優鵺(ゆうや)です…あなたの名前は?」
「黒焔だ。よろしくな優埜」
<寺子屋>
寺子屋といっても広い自宅の一室を改造して作った教室と優鵺はいう。
「只今…帰りました。慧音さん」
大きな門を叩き優鵺が大きな声を出すと門から一人の女性が立っていた。
服装は、人里の住民と比べると奇抜といえる。
「優鵺、お帰りなさい。
…そちらの方は?」
「こいつがカツアゲされていたからな、安全を考えてここまで護衛…というより一緒に寺子屋まできただけだ」
優鵺が言う前に黒焔がいった。
「そんなことがあったんですか…、優鵺を助けて下さってありがとうございます。私は上白沢慧音といいます。
あなたのことは文々。新聞で少しは知っています」
また美鈴とのアレを言われるかと思ったら、どうやら別の号に黒焔について色んなことがかかれていると黒焔は知った。
「さて、何かお礼をしたいので私の家に上がってくれませんか?」
黒焔は家に上がることにした。他にすることもないからだ。
慧音に案内された所は広い和室だった。
「お礼といっても茶菓子と緑茶しかありませんけどね。
まぁ私の話を聞きながらゆっくりしていって下さい」
寺子屋の先生である慧音は様々な歴史を知っていた。
慧音の話聞き終わった黒焔は気に入ったことをきいた。
「優鵺って…あなたの子供か弟なんですか?」
「いいえ、養子みたいなものです」
「養子…みたいなといいますと?」
慧音は若干暗い顔をした。
「彼の両親は妖怪に食べられてしまったのです。
…もともと寺子屋の生徒で明るい性格だったんですが目の前でそれを見ていたらしく、心を閉ざしてしまって…。
おまけに彼を引き取った人物が簡単に暴力をふるって半ば家出のようにここにきたんです」
「…すみません不用心に聞いてしまって」
「いいえ、いいんです…。
さて、そろそろ寺子屋の準備をしないといけませんね」
「すみませんが…俺も寺子屋の授業風景をみてもいいですか?
普段子供とか見ることがないので」
慧音は少し考える素振りをみせた。
「良いですよ。但し授業の手伝いを少ししてもらうことになりますが
あと、もう一人位手伝いに来ますがそれでもいいですか?」
黒焔はうなずいた。
<続く>
最終更新:2010年07月28日 06:46