「皆さん今日はこの二人と一緒に授業をしましょう」
慧音が言っていたもう一人の人物は白髪が混じった髪の白衣をきた初老の人物だった。格好的に町医者だろうか。
子供達の反応は様々で普通に喜んでいるものや誰?という感じで首を傾げているもの、中には「小難しい授業がつぶれたぜ!」と言ってるやつもいた。
「まず、この二人に質問をしてから授業をしましょう」
慧音がそういうとまだ幼い子供達は喜んだ。
「まず最初に質問したい人はいませんか?」
子供全員が一斉に手を上げた。慧音がその一人に指を指す。
「じゃあ、大西君」
丸坊主の活発そうな少年。
「二人はいつも何処にいるんですか?」
黒焔が先に答えた。
「紅魔館で色々な仕事をしている。」
そう言った瞬間、子供達が騒ぎ始めた。
「スゲー、紅魔館だってよ」
「かっこいいな~」
慧音に聞いた話だと人里以外は子供たちは名前しか知らなくて憧れを持っている子供が多いとか。
慧音が静かにするように子供達に頼んだ。今度は男性の番。
「何回か行ったことがいる人もいるかもしれないけど私はここで医者をやっている。」
見たままの職業かと黒焔は思った。
「次に質問したい人」
今度はおさげの少女。
「街の外はどんなの感じですか?」
男は外に出たことがないといった。
「まぁ…、なんか綺麗な景色が多いな。
」
「次の人」
三白眼で家事が得意そうな不良少年。
「新聞で二人とも幻想入りしたと知ったんですが…どういう感じだったんですか?」
黒焔は幻想入りしたときのありのままの話をした。(フランドールと鬼ごっこした話の時は何故か二人泣いた)
男は髪をかきながらいう。
「まぁ、その辺りは忘れてしまったな。なんせ30年ぐらい前に幻想入りしたからなぁ。
あ、ちなみに年齢は50歳だ」
これは子供も黒焔も驚いた。
この後いくつか質問の返答をして慧音が質問を締め切った。
「さて…、次は…」
慧音が授業内容を言う前に別なところで家事をしていた優鵺の叫び声が聞こえた。
黒焔がいち早く反応し真っ先に叫び声がした所に向かった。
(…さっきの野盗か?)
黒焔が優鵺がいたと思われた場所には一枚の小さな紙がおかれていた。
「餓鬼を連れ戻しに来た」
紙には同じ文章が一杯に書かれていた。
「…やはり、優鵺君を連れ戻しにきたのか…。」
黒焔に追いついた初老の男性がいう。後ろには慧音がいた。
「やはり…って、あんた優鵺となんか知り合いなのか?」
「あぁ、定期的に検診にいっているからな。
とりあえず今はそんなことは置いといて優鵺君を探しだす方がさきじゃないか?」
「あぁ、だが居場所が…」
「文章を見るに父親からだろう。
父親なら私が定期的に検診にいっているからな、何処に行くのかアテはある」
「そうか。ならその場所に連れていってくれないか?」
男は体力を使うのは苦手だがなとかいいなが首を縦にふる。
<道中>
流石に黒焔程じゃないが男はそれなりに速く走れた。本当に50歳だろうか。
黒焔が聞く。
「あー、あなたの名前は?」
「肥後吉明だ」
「吉明さん、優鵺の定期検診っていうのは?」
「単刀直入にいうと養父の暴力が原因の精神障害だ。
二度くらい小動物の身体をバラバラにしたと慧音から聞いたから精神安定剤飲ましてたまに身体等を調べている。
…自傷行為がないかをね」
「…養父の方は?」
「あれは単なる薬物依存だ。麻薬とかを栽培していた。
もっともここには麻薬を育てて捕まる法律はないがね」
「…で、優鵺がつれていかれたと思われる場所は?」
「養父が麻薬を育てているところさ。
この時間はたいていそこにいるからね」
肥後は黒焔を先導して走った。
<養父の離れ>
肥後が止まった所は小さい小屋のような家だった。
玄関の扉には鍵か掛かっていなかった。鍵をかけることを忘れたのだろうか。
玄関を目の前に優鵺が縛られて転がっていた。
顔面は殴られたのか赤く腫れている。
「優鵺大丈夫…なわけないか」
黒焔が笑いながらその場に崩れ落ちた。後頭部から血が出ている。
「…あ…が…」
なんとか声を出そうとするが景色がぼやけてそれどころではなかった。
ガキッ
更に一発。黒焔の記憶はそこで途切れた。
<寺子屋>
黒焔が再び目を覚ましたのはさっき慧音と話しをしていた和室だった。
起き上がろうとするが体のあちこちが痛い。
「目が覚めましたか」
慧音が上から黒焔を覗き込んでいた。
「…すみませんが、事の結末を教えてくれませんか?」
黒焔がきく
「まずあの養父はこの世にはいないわ」
「…自殺ですか」
「いいえ、他殺よ」
「じゃあ、肥後さんがやったんですか?」
「ちがうわ、彼もあなたと同じ様に倒れていたわ。もっともあなたより怪我はかるかったけどね」
慧音は肥後はいま自宅で療養しているといった。
「…ということは」
「優鵺君がやったというのが自然ね。
私が来た後、養父に小刀が刺さったまま息絶えて、しかも、優鵺君は行方不明になっている」
「そうですか…」
黒焔はがっかりしたような素振りを見せた。
<紅魔館>
その後黒焔は2~3日位たってから寺子屋を後にした。
帰って来たときは咲夜にかなり怒られたが文々。新聞であの事件を知っていたので比較的短くすんだ。
「しかし、いつも冷静な黒焔さんが初めてあったばかりの少年が行方不明になっただけであんなに落ち込むんですか?」
ある日、黒焔と雑談していた美鈴がきいてきた。
実際黒焔は雑務に影響が出るほどに落ち込んでいた。
「…昔俺もにたようなものだったからなぁ」
「えっ、黒焔さんも虐待を…」
黒焔は美鈴の口を閉じさせた。
「悪いが、それ以上あの時のことを話したくないんだ」
「…ごめんなさい」
「いいよ、俺も落ち込みすぎたからな。
そろそろ、仕事に影響がでないようにしないとな」
「出ないと咲夜さんがナイフを投げてきますからね」
「あぁ、あれはこわいよな…」
「ですよねー」
二人は声を出しながら笑いあった。
<???>
「さて、確か人里から何か情報を入手してこいといったが、人をさらえとは言ってなかったと思うんだが」
「いいじゃん、どうせこいつ人殺してんだからあそこにはいられねぇだろ」
「まぁ…大丈夫じゃないの?基本的にコレ使ってんだからまずばれないでしょ。
…どうやらあいつの尋問が終わったらしいし、結果きいてからその後を決めればいいんじゃないか」
(戸が開く音)
「…余り良い情報を持っていたとはいえないな。…だが」
「だが?」
「妖怪に対して強い恨みを持っていたようだ。
妖怪を倒したいかと聞いたら凄い勢いで首を降っていた」
「…何か使えるかもしれんお前の所で保護しとけ。
それなりに戦闘が出来るようにすれば完璧だがな」
「隊長、こんなやつパッとバラして証拠隠滅すればいいでしょ」
「…不用意な殺人は俺の主義に反する」
「優しすぎだね」
「うるさい。とりあえず暫く各自いつもどうりに任務を続けろ」
「…了解」
「了解ッス」
「了解」
<続く>
最終更新:2010年08月02日 20:37