これまで、激闘が9回繰り返された、WBR
そこには多くのドラマがあり、多くの奇跡や、多くの悲劇、そして多くの名勝負が生まれた。
そしていよいよ大台の10回目の大会を迎えるのである。
鬼神軍本部、この日、第十回WBRの鬼神軍からの出場選手の発表が行われた。
「というわけで発表に関しては以上である。質問とかはないか」
と、鬼神監督が問いかけると、一人の記者が挙手をし、所属先と名前を述べたあと、次のように訊いた。
「今回、技量審査の結果、島田、中原両選手を起用するに至りましたが、監督としての期待の度合いはいかがなものでしょうか?」
「長年、鬼神軍を牽引してきた二人であり、活躍を大いに期待している」と、鬼神監督は平然と答えた。
次に、また別の記者が訊く。
「今回、監督としては2選手について、どのくらいの結果を求めているのでしょうか?」
「欲を言えば、優勝してほしいものであるし、鬼神軍の看板として、最低でも予選通過は果たして欲しい。」
「今大会の出場選手の顔ぶれについて一言お願いします」
「シェゾ、サタン、朧月夜、ヴィルエッジと第一回からすでに参加したお馴染みの選手もいるし、新規参入の作者及び選手も多数いらっしゃり、興味深いものである。一方で残念なのは、ひらお軍の活動休止と、魔理沙軍の4大会連続不参加であろう」
この後も、質疑応答が続いた。鬼神監督には、チームのことだけでなく、大会委員長としての質問も訊かれた。
震災の影響と、ひらお氏の引退もあり、出場者は前回を下回ると予想していた今大会だが、29選手と、過去最高の出場申請があった。
中でも魔王氏、再臨2氏、夢幻氏は初参戦である。
シェゾ、サタン、朧月夜、ヴィルエッジといった歴戦の戦士たちに、インゲンジン、エルオード、クロ・ニャー、ツタージャといった詳細がベールに包まれた選手もいる。
そこに分け入るように、鬼神軍は、5名の志願者を技量審査にかけ、島田真北と中原脩の2名を選出した。そう、あの「OM」コンビのアベック出場である。
真北は第一回大会、中原は第五回大会以来の出場となり、いずれも前回は大した結果ではなかった。
視点を鬼神軍本部に戻そう。ラウンジには真北、脩、海城、相本、そしてオスパーの5人がいた。
「いやぁ、ついにお二人がWBRに出られるんですね。」と、オスパー
「うん、ほんと久しぶりだ。」と、被災地で復旧活動に従事していた真北は、やや疲れている様子である。
「俺達は被災者のためにも悔いのないファイティングをせねばならない」と、脩。右手には、大会当日に付ける予定の「がんばろう日本」と書かれた腕章が置かれている。
「とりあえず、インゲンジンだけは倒してくれよな」と、アンチTK軍の筆頭である、海城は二人に問いかける。
「ああ、もちろんさ。あんなたまたま二桁勝利しただけで代表に選ばれた奴と一緒にするなってんだ」と、真北はインゲンジンに対しては余裕綽々である。
「うん、とりあえず、期待してるわよ」と、相本はにこやかに語りかけた。
すると、銅鑼衛門、御坂、平沢の1匹と2人がやってきた。銅鑼衛門と御坂は技量審査で敗れた3名のうちの2名である。
「あ、軍国狸」と、真北
「あーあー、悔しいよなー」と、銅鑼衛門
「ほんとそうね。島田先輩ならともかく・・・・なんでヤンデレ君より下なのよ。」と、御坂もやや不満げな表情。
「ヤンデレ君とは何だ!技量無しのくせに!」と、脩
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ」と、平沢は優しく問いかける。
「うん、御坂よ、お前も訓練すればいつか必ず大舞台へ行けるぞ」と、真北。
「ちぇっ・・・」と、御坂はそのままソファに座り込んだ。
彼女はとある学園都市で7人しかいないレベル5のうちの第3位という超能力者であり、鳴り物入りで鬼神軍に入ったものの、活躍できずにいた。
平沢も、桜が丘高校で音に聞こえたギタリストであり、その素質を買われて鬼神軍に入ったが、すでに2度の未勝利敗退を喫するなど、低迷している。
相次いで有名どころの版権女子を獲得した鬼神監督としても、この2人の不振は、頭の痛い問題である。
「そういや私以来、鬼神軍から女性選手はでてないよね」と、そのことをふと思った相本。
「だよな。最近強い女性選手ってうちにはいないから」と、銅鑼衛門。
「せいぜい結城ぐらいだろうな。」
御園生、漆戸が無期限活動休止となり、鬼神軍で残された女子の主力は、もはや結城のみとなった。
「かといって、また江藤を掘り起こすか?」と、真北は周囲に問いかける。
「それだけは勘弁してくれ」と、銅鑼衛門はきっぱり答える。
御坂も、江藤のように売り込み目的で出場させるという構想はあった。
「女性選手と聞くと、あのアキバ大好き某力士を思い出すね。」と、海城。
「でも見てる限り今回期待する女性選手ってのもいないし・・・」と、銅鑼衛門。
「もう、朧月夜さんの悲願達成に期待しましょうよ」と、オスパー。
その後も選手たちの雑談は続いたのであった。
それからして、いよいよWBRが開幕した。予選A組には鬼神軍の選手の名はない。選手たちは誰が予選を通るのか、などを予想していた。
またある日の鬼神軍本部ラウンジにて
「朧月夜が未だ無得点だと・・・」と、星川はスポーツ紙の記事に目を通している。
「サタン本気出したな。あとインゲンジンの2シーズン連続5連勝は八百長だろ」と、海城
「八百長は言い過ぎじゃないの?」と、相本
「え?インゲンジンっておかあさんといっしょとかに出てきそうなキャラじゃないのか?」と、星川
「それが違うのよ。イギリスじゃない方のBBCが放送しているらしいわ」と、相本
「ふーん、でもU局代表はSOS団だろ。」と、海城
「出来れば御坂になってほしいんだけどな・・・」と、星川
「いずれにせよインゲンジンがU局代表なんて論外な話だ」と、海城はその後もインゲンジンに対して厳しいコメントを投げかけた。
「そしてあとは・・・スジャータ」と、星川。あれ?
「ツタージャね」と、相本
「あ、間違えた。ツタージャか。ポケモンのようだけど」
「それと無動力」と、海城
「無動力じゃなくてムドよ」と、相本
ちなみに、無動力とは貨物列車などで牽引する機関車のすぐ後ろに牽引されている、動力が停止している状態の機関車のこともさし、ムドとも呼ばれている。
「あとエルオードって誰よ」と、相本は2人に訊く
「わからん」と、星川はバッサリ
「俺にも」と、海城も
「というかどことなくヘルオールを連想させるような」と、星川
ヘルオールとはかつてTK軍の前身にいた選手である。
「ま、とりあえず、予選通過はサタン、EX妖夢、ムド、朧月夜と予想しよう。」
一方そのころ、代表の2人は、ジムで特訓を行っていた。
彼らは、被災地救援帰りで肉体に不安を残しながらも、予選通過、そして優勝へ向けて真剣に取り組んだ。
予選A組終了を前に、帰宅の途につく中原に対して、インタビューが行われた。
「ズバリ目標は」と、記者は訊くと
「被災地、そして日本の皆様の期待を裏切らないファイティングをすることです」
「警戒する選手は?」
「強豪快傑まふっと軍のエコDIO、そして、未知な点の多いクロ・ニャーでしょう。」
「今回、モビラー軍が棄権しましたが、それについてどう思われますか?」
「それについてはお答えいたしかねます」
「Mr・H軍は貴方を当組で1位通過すると予想されていますが、それについてはどう思われますか?」
「あくまでそれは予想にすぎませんが、その予想に応える結果を出すことが私のすべきだとは思っております」
予選A組が終了した。サタン、EX妖夢、インゲンジン、ツタージャの4名が予選通過となった。
2シーズン終えて0点だった朧月夜は追い上げ虚しく、予選落ちとなってしまった。
中原は、スポーツ紙のサタンの写真を見て、闘志を燃やし、魔理野へと再び赴いていった。
最終更新:2011年06月04日 08:47