予選C組は「死の組」とも言われている。
前回覇者である岸辺露伴、「KOB」シェゾ・ウィグィィ、そしてヴィルエッジ、かつてWBRを沸かせた強豪が集っている。
その強豪の中に分け入る形となったのは、凡退王子こと島田真北である。真北は、第一回大会で推薦出場したが、出番は殆ど与えられなかった。しかし、今回は本腰を入れて臨むことになる。
第一回大会のころは、人気実力と五指に入るか入らないかと言われていた。しかし、その後は「凡退王子」のレッテルを貼られ、他選手との相次ぐトラブルによって人気も実力も失墜し、今や中堅の一角に過ぎない存在となっていた。
特に最近の彼にとって、バトロイについてはどうでもいい存在に見えた。WBRには長らく興味を示さず、今回も最初は出場する気にならずにいた。
しかし、東日本大震災とひらお軍の活動休止が、彼の出場を待望する声を大きくさせた。彼にとっても、今大会は祖国日本とバトロイ界を今一度元気づける機会だと認識した。真北は代表候補に名乗りを挙げ、技量審査を中原に次ぐ成績で通過し、9大会ぶりの出場を実現させたのである。
ファンの間でも、今大会での真北の復権が期待されていた。しかし、真北のその「復権」への航海は、早くも暗礁に乗り上げようとは。
C組最初のシーズンが終了した。出場者全体としては、またしても悪い出来となったこのシーズンでは、シェゾが24点で首位、岸辺がそれを2点差で追う形となった。そこから大きく差が開いて3位には、ヴィルエッジと吹雪の巫女が2連勝で掴んだだけの4点で、それ以下は無得点に終わった。
最初のシーズンを無得点で終えた真北は、早速メディアやファンの批判の対象とされた。
『凡退王子はやはり凡退王子か』
『2連勝すらできなかった真北』
『真北、早速の背信!』
各紙の厳しいコメントに対して、真北は何も言わなかった。
今大会では、また新たに過去最悪の記録が達成される可能性が浮上した。女性選手の決勝ラウンド進出がゼロになるかもしれないのである。もしそうなれば、WBR史上初の事態である。
A組では、女王・朧月夜が脱落し、ムドも振るわず、2位で終えたEX妖夢はまさかの棄権となった。B組ではティナが棄権し、ウィヤもあと一歩及ばず予選落ちとなった。そしてC組では不知火が早速無得点をマークし、吹雪の巫女も4点止まりと、予断は許さなれない状況にある。
残り2シーズン、真北は予選通過できるのか。
C組の2シーズン目が終了した。シェゾ、岸辺は今期も3部門でいずれも得点し、他者と大きく引き離し、1位争いはこの2名に絞られた。一方で不知火以外の各選手も得点し、予選通過争いもその4名で熾烈となっている。
しかし、島田真北は今回も7点止まりだった。相変わらず凡退が多く、デ杯でも出場外の選手に勝ち星を奪われ続けていた。
真北の不振に、ファンは呆れ始めた。ただでさえ、今大会は低い得点水準であるのにも関わらず、それでも予選落ちの危機に立たされている。
真北自身も覚悟を決めていた、今度ばかりはバトロイから身を引こうと。
尚、女性選手の決勝ラウンド進出がゼロになる可能性もあったが、B組1位のクロ・ニャーが女性であると判明したため、その可能性はなくなった。しかし、まだ過去最低記録更新の可能性は残っている。とはいえ、吹雪の巫女は現在3位で、その事態は回避されるだろう。
迎えたC組最終シーズン、真北はそこでも失態を犯した。
第10600回D-BR杯記念バトルで、真北はハッタリックを喫したのである。
しかも相手はまたも出場外の選手で、観客からは野次や罵声が飛んだ。
「何やってんだゴラァ!」
「弱者の中の弱者が!」
「こんな奴、予選で消え失せろ!」
「お前はとっとと引退しろーっ!!」
「貴様がシェゾや岸辺に及ぼうなんて無理無理!」
真北に対する失望や非難の声は日に日に高まっていく、これでも鬼神軍の看板なのだろうか。
続く第10606回でも、これまたジャミラスという出場外の選手の会心で一抜けを喫し、テリー・ボガードのV2を許した。この時点で、真北を5ポイント上回っているテリー・ボガードは、3連勝している。もしこのままランクインを維持すれば、16ポイントを獲得することになる。一方、デ杯で勝てない真北は4連勝8勝で同じく16ポイントの見込みで、真北より9ポイント高いヴィルエッジは、4連勝14勝と、22ポイントの見込みがある。よって、原状では真北の予選通過はありえない。連勝、勝利数とも伸びる余地はない。そのため、真北は是が非でもデ杯で勝たなければならないのである。
C組も残り150試合を切った。真北よ、今一度粉骨砕身努力せよ。
予選C組が終了した。1位で予選通過を果たしたのは、やはりシェゾ・ウィグィィだった。続いて岸辺露伴、それから大きく差が開いて、テリー・ボガードとヴィルエッジ、以上までが予選通過となった。島田真北は結局6位で予選を終えた。
メディア各社は一斉にシェゾ、岸辺を賞賛すると共に、真北の予選落ちを大々的に報じた。
『シェゾ、岸辺強し! 真北なんて目じゃないぞ!』(バトロイタイムズ)
『島田真北、失意の予選落ち!』(乱戦)
『島田真北を予選落ちにしたのは、運と2強と出場外選手だった』(バトルロイヤル週間ニュース)
また、スペインの某紙では、以下のように選手を比例する記事があった。
『シェゾをレアル・マドリード、岸辺露伴をFCバルセロナとしたら、真北は降格したデポルティーボだろう。真北の一昔前からの没落ぶりは、まさにデポルティーボ並であろう』(MANACA)
終了後、鬼神軍は記者会見を開いた。まず、鬼神監督は大会委員長として、C組の講評を述べた。
「C組は今大会で最もレベルの高い争いが見込まれた。その要因はやはりシェゾ、岸辺の存在であろう。しかし、終わってみれば彼ら2名が飛び抜けていただけだった。平均点、予選通過平均点、予選通過最低点、いずれも今大会では一番高いが、それでも予選通過最低点は40点に届かなかった。もし棄権した1名が予選を通過してもカットラインは39である。今後は基準点制度を設けることを検討すべきだろう。」
次に、中原について以下のように述べた。
「予選通過には相応しい得点であるが、それ以上のものではなかった。決勝では上半分に入るのが関の山であろう」
真北については
「もう彼には全盛期のような勢いはない。彼には監督として引退を勧告した。」
引退勧告、この言葉に周囲の記者たちは凍りついた。
真北は今、予選落ちのため、魔理野拘置所に拘留されている。
出所次第、引退会見が行われるであろう。
続く
最終更新:2011年06月13日 17:21