「ポーノレが女だったら…」スレより
912 :ホワイトアルバムさん:2009/02/26(木) 21:15:17 ID:???O
ジョン子「ポール、昨日どこ行ってたの」
ポール「ちょっと業界仲間のパーティーにね」
ジョン子「うそ。」
ポール「本当さ、なんだよジョン子、疑ってるの?こっち向いてよ」
ジョン子「やだ、キライ」
ポール「…も~ジョン子、すねちゃって可愛いなぁ」
ジョン子「ちょっと、どこ触ってんの」
ポール「好きだよ~ジョン子、大好き、愛してる。本当だよ?」
ジョン子「……ふん」
と言いながらポールに抱きつくツンデレジョン子
出ておいでよ、お嬢さん
「アイツ、なにやってんのよ!」
そういってジョン子は自分の枕を引っつかんでバンバンとベッドに叩きつけた。スプリングが悲鳴を上げながらゆらゆらと揺れて、腰掛けていたジョン子は自分が
ひっくり返りそうになるのを、わたわたと腕を回して支えなければならなかった。
「やだもう、かっこわるい」
結局ぽてんとベッドに寝転がるハメになり、誰も見てないというのにジョン子は気恥ずかしくなって、ベッドに顔を伏せてしまった。
階下からミミおばさんが「ジョミー、大丈夫?」と声をかけてきたが、「ほっといて!!」とヒステリー気味の声で怒鳴り返した。
「どうしたんだい、ジョミーは?」とスミスおじさんがミミに尋ねると、苦笑しながら「どうせポールのことでしょ? あのこ素直じゃ
ないから」と答えた。子供の頃から見てきたミミには、ジョン子のことは手に取るように分かっている。
「電話をあの子の部屋の前に、置いてあげていいかしら? も少しあとでもいいけど」
賢い妻の提案を、夫は二つ返事で頷いた。
「今日は別に予定はないっていってたよね? じゃ、なんで電話にも出ないし家にもいなんだろ…」
ベッドの上では今だにジョン子が、ぶつぶつと不満を吐き出していた。
不安なことなら、いっぱいある。最近、ポールと組んでいる自分達のバンドが少しずつだけど、地元のダンスクラブで認められるようになってきたのは嬉しいが、
そうなるとファンが増えていくのも当然な話で、バンドで一番人気のポールには特に女の子の取り巻きがぐんと増えた。もちろんバンドの紅一点(笑)のジョン子にも
男の子の取り巻きがいたけれど、やはり心配事はポールに集中してしまう。
ジョン子は疑心暗鬼にも駆られやすいが、素直になれないのが災いしてどうしても自分の不安をうまく伝えられない。そんなイライラで、恋人のポールについ冷たく
当たってしまう。それが益々ジョン子のジレンマを強めてしまい、つい…。
そんなことを繰り返してしまう彼女を、当のポールは困ったように笑いながら許しているのだった。
「…もう、嫌われちゃったかな?」
ひとしきり不満を吐き出した後は、ぐったりとした無力感がジョン子の気持ちを落ち込ませた。こんなことの繰り返しだわ、と彼女は自分の性格に、つくづく嫌気がさしていた。
でも、元はといえばポールが悪いのよ! とまた同じところを回り始めるジョン子である。
「だって…、元々、つきあってくれって言ってきたのはポールなんだし。まあ、そんな風にしむけたのは、あたしかもしれないけど、でも、でも、申し込んできたのは、
ポールなんだから!」
ジョン子はポールとの出会いを思い出した。近所の教会でのバザーの余興に、遊び半分でバンドをでっち上げて出演した時、たまたま通りかかったポールがバンドに興味を
もってくれたのが始まりだった。
「女の子でこんなにバディ・ホリーに詳しい子に、今まで会ったことなかったよ!」
バザーで売られていたレモネードを差し出してきたポールと、つい話し込んでしまった後、彼はジョン子にそう言ってにっこりと笑った。
2歳年下の彼の、無邪気な笑顔にジョン子の胸がキュンとなった瞬間だった。
「じゃ、じゃあさ、今度の金曜ウチでレコード聴かない? 今話したヤツとエバリーブラザーズの新しいのもあるけど」
「え、ホント? いいの!?」
真っ赤になっても強気な口調でのジョン子の提案に、ポールは身を乗り出して尋ね返した。 間近にせまった彼の顔と大きな瞳に、ますますジョン子の顔が赤くなる。
「ただし、ウチには口うるさいおばさんがいるの。だから…」
「わかった、おとなしくするよ。今度の金曜だね? 近くなったら連絡するから、よかったら電話番号教えてくれない?」
僕のもおしえるね、とポールは手早くメモを書き出して、ジョン子に渡した。『あれ、この子ぎっちょなんだ』とジョン子はその手を見つめていた。
そして、2人の付き合いが始まった。
あれから3年以上たった。もちろんキスもHもしてるし、喧嘩もした。端から見ればわがままなジョン子に振り回されてるようだが、実はポールがジョン子を支えているのだと、
お互いに分かっているようだった。
でも、それがなんだか、ジョン子には悔しい。
「ポールがいなくたって、あたしは大丈夫だもん!」
そう言って、何回サヨナラしたかしれない。でも結局ジョン子はポールの元に帰ってきたし、ポールがジョン子を振ったようになっても、しばらくたったらまたジョン子の前に
姿を現した。
つい3ヶ月前もそんなことになり、しばらくポールに会えなく日が続いたが、ある日ポールがすまなそうにうなだれてジョン子を尋ねてきた。ジョン子は嬉しくてたまらないのに、
つい「何しにきたの?」と突き放してしまった。そんな彼女に、ポールは言葉なく立ち尽くしていたが、やがてうなだれたまま「ごめんね、ジョン子…。僕やっぱり君が好き
みたいだ」と、やっと聞こえるような声で呟いた。
これでもう、ジョン子は陥落されてしまった。
「それなのにあたしをほっとくなんて、なんなの!」
またも枕をベッドに叩きつける。ベッドの隣に立てかけてあるリッケンバッカーが小さく揺れて、チリンと絃がなった。
「ポールなんて…ポールなんて、もう大っキライ!!!!!」
バカ!と口の中で吐き捨てると、またぞろ、さみしい気持ちが湧き上がってきた。夜が更けたのと、バツが悪いのとで、そーっと自室のドアを開けると、ジョン子は下に行って、
なにか食べようかと思った。
しかしドアの前に置いてある電話を見て、カッと顔が熱くなった。
『ミミったら、いらない気なんか回して!!』
ジョン子は乱暴に受話器を取ると、そのまま本体に叩きつけようとした。しかし、小心なところもあるのでそんなことも出来ず、振り上げた勢いの半分もなく、のろのろと
腕が下がった。しばらく手の中にある受話器を見つめていたジョン子だったが
「…下に置いてこよ」
と呟くと、電話を掴んでとぼとぼと廊下を歩き出した。そして、ミミたちの寝室のドアの前にくると
「…ごめんね、ミミ」
と囁いて、足音を立てないように階段を下りた。賢明なミミおばさんはジョン子の声の調子を聞いて、自分のベッドの中で苦笑まじりのため息を漏らした。
次の日、ジョン子はミミに何度も起こされたが、なかなかベッドから出ようとしなかった。
「ほら、今日はキャバーンの日でしょ? 遅刻したらまたウーラーさんに叱られるわよ!」
そう言ってミミは、ジョン子の毛布を剥ぎ取り、昔からの最終手段―ジョン子の体を思いっきりくすぐった。
「ひどいよ、ミミ!」
ベッドでひとしきり笑い転げるとジョン子はそんな憎まれ口を叩いた。しかしミミはすました顔で「落ち込んでるコには、これが一番なの」と、ジョン子の鼻をきゅっとつまむ。
そして顔を見合わせて二人は笑った。
とはいえ、やっぱり行きたくないナ…、とジョン子はミミが作ってくれたお弁当(J「…(ミミが)作っちゃったんなら、しょうがないわね?」) を持ってもたもたと家を
後にした。週に4日、キャバーンの受付やレコードの準備などの仕事に出ているジョン子だった。この日はアメリカからのポップスの新曲が入ってくるので、バンド関係者や
業界人、また音楽に詳しい者が多く訪れる。もちろん、ポールがやってくる可能性が高い。
…もっともポールは、ジョン子の出てくる日はとっくに把握しているので、音楽に関係なくやってくるのだけど。
午前中をそわそわと過ごし、せっかくのミミのお弁当の味も分からないまま午後を迎えたジョン子が、少し肩を落としてレコード倉庫の整理をしていた時
「ジョン子、いる?」
階段を下りてくる足音とともに、ポールがひょこっと開けっ放しのドアから顔を出した。
ジョン子はどきっとして飛び上がりそうになったが、かろうじてこらえて返事もしなかった。
「…あ、こんなところにいた」
倉庫の奥でレコードを抱えているジョン子を見つけて、ポールは嬉しそうににっこり笑った。ジョン子はこの笑顔に弱いのだが、ぷいっと棚をむいて乱暴にレコードを突っ込み
だした。
「今日は誰の新曲が入ってきたの?」
ポールはそんなジョン子に慣れていたので、かまわず話を続けた。
「…」
しかし、ジョン子は答えない。
「エルビスとか、入ってきた?」
「…」
「ねえ、ジョン子」
「うるさい!」
「!?」
ポールは、ジョン子の口調の強さに、一瞬目を丸くした。そんな彼の様子に、ジョン子はぎくっとしたが、なけなしの気力を振り絞って尋ねた。
「ポール…、昨日どこ行ってたの」
「ああ、ちょっと業界仲間のパーティーにね」
ポールはバンドを離れると、室内インテリアの駆け出し営業マンとして働いている。昨日は帰り際に上司から「営業パーティーに一緒にでろ」と言われてしまったのだった。
「ちょっと断りずらい人だったんだ」
昨日夜遅くなったから、今日は早上がりでいいって話になってね。だから仕事帰りにまっすぐここへきたんだよ。
「ビジネススーツのまんまだから、イカさないだろ?」
照れた顔でそう言うポールに『そんなことない!』といいたいが、いえないのがジョン子クオリティ(笑)。しかも疑心暗鬼の真っ最中なのだから、いやはや。
「…うそ」
「え?」
ポールが、きょとんとジョン子を見た。
「うそって? …ああ、パーティーが、ってこと?」
ジョン子は答えない。最後に残ったレコードをぎゅうっと棚に押し込むのが答えだった。
ポールは、相変わらずなジョン子を『かわいいなあ』と思った。
「本当さ、なんだよジョン子、疑ってるの? こっち向いてよ」
「やだ…、キライ」
ポールに背中を向けて、ジョン子は心にもない言葉をいってしまう。昨日の夜のさみしさを、ジョン子は思い出していた。泣き出しそうになって、つい下を向いてしまう。
ジョン子の肩が小さく震えているのを気付かないポールではなかった。寂しい気持ちを素直に表せないジョン子を後ろからそっと抱き寄せると、頬を寄せてからかうように囁いた。
「…も~ジョン子、すねちゃって可愛いなぁ」
そして、指先でその頬や耳、顎のラインをなぞっていく。
「ちょっと、どこ触ってんの」
そんなことを言っているくせに、鼓動が大きく早くなっていくのを、ポールは背中越しに感じて、嬉しくなってしまった。
「好きだよ~ジョン子、大好き、愛してる」
そしてジョン子の目を覗き込んで、笑いながらきっぱりと言った。
「本当だよ?」
ジョン子は「ふん」と顔を逸らしたが、ポールの腕におずおずと自分の腕を絡めた。
ポールは、そんなジョン子を深くしっかりと抱きしめた。
「ホントに…大好きだよ、ジョン子」
ジョン子は目に涙をためながら、唇を尖らせて「うん」と小さく頷いた。
レンガ作りの倉庫の冷たい空気が、そこだけほっこりと暖まっていた。
*the end*
最終更新:2010年05月09日 01:56