アットウィキロゴ

ここでキスして。


 熱いアスファルトの上を、ほとばしるような音がする。
観客達は熱狂する。皆、手に汗を握ってこの伝統的な歴史の長いF1グランプリのレースを見ている。
観客の熱狂する声に合わせてコース上のマシンは、ぶつかり合い、闘志を燃やすような音を立てて我先にと云うように走っている。
あと数周でレースが終わる。
今、フェラーリの二台がトップ争いをしている。F1は、チームメイトだからと云っても互いにライバル同士なのだ。
実力のない者は先に進めないし、逆にある者は栄冠を勝ち取る事が出来る。そんな世界だ。
二台のフェラーリは、トップ争いをしている。
二台は一度だけぶつかり合ったが、一台が抜き、トップを取った。
トップを取った一台のフェラーリに、栄冠のチェッカーフラッグが振られる。中に居るドライバーは客席に向かって手を振った。
観客もそれに反応するように歓声を上げて祝福した。
やがて中からドライバーが出てきた。ドライバーはマシンの上に立ち上がるとヘルメットを脱ぎ、勝利のポーズを持って優勝を表示する。
一部の席に座っていたティンエイジャーの女の子たちが熱いコールを送る。彼女らは、熱狂的なこの25歳の若きチャンピオン、ジョン・ウィンストン・レノン
のファンなのだ。
確かに、彼は腕前だけではなく、顔も良く、女性や子供によくもてるタイプである。だが、彼は一方で男性にももてた。

 また、彼はバイセクシャルでもあった。
そんな彼を、スターや有名人が座るVIP専用の席から見つめているのは黒い髪の、大きな目をしたジョンとそう変わりないような歳の青年だった。
だが、彼はどこか違った雰囲気で女性的という言葉がぴったりな青年だった。
彼は立ち上がり、観客と一緒に勝った者たちだけが味わえる、シャンパンシャワーを見る為に席を立ち移動した。
また彼は熱心なF1ファンなのか一位の表彰台の上に乗るジョンや、全体をカメラで撮っている。
「ポール!」
彼の後ろから、突然威勢のよい声がした。ジョージだ。
彼は学生時代からの唯一の友人で、幼い頃からカーレースが大好きで彼はメカニックの仕事に就いた。
彼の設計したエンジンは、従来の物よりも軽く、おまけに速いという事で彼の専属するフェラーリ以外のチームからも引っ張りだこで何度もヘッドハントが来た。
だがジョージは性格上、どの誘いも断り、何度もレーサーを助け優勝に導いた。
「レース、見てた?」
「うん、勿論」
「今日のレースはピットのモニタで見ててもすごかったよ、だってみんなクラッシュかリタイアしちゃうんだもん」
ジョージがちょっとおちゃめな笑みを向けつつはい、飲み物を彼に手渡す。
「今夜会えるんだよね?ジョンに」
「うん、今夜七時にホテルでだってさ」
ジョージはポールに、ジョンや他のレーサーが宿泊するホテルの名前と時間を書いたメモを渡す。
ありがと、ポールの笑顔が夏の青空に太陽のような笑みが浮かんだ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年06月16日 14:46