Gift my heart to you!(or Happy birthday Paul! in 18th June,2009)
「誕生日、おめでとうポール!」
そう言ってきたのはジョージだった。
へ? と呼ばれた方は怪訝な顔で呼んだ方を見上げた。
ジョージの後ろには、何時ものメンバーがニコニコと笑っていた。
「アレ? そうだっけ?」
間抜けなことを言いながら、ポールは頬を掻いた。レコーディングに夢中で、そんなこともすっかり忘れていたようだった。
「お前らしいよなあ」
ジョンが呆れて、ポールに言った。まあまあ、とリンゴがなだめる。
「へえ、嬉しいな。どうもありがとう!」
ポールは心から、にっこり笑った。なんにせよ、お祝いを言われるのはいい気持ちだ。
「それでさ、プレゼントがあるんだよ」
みんながそれぞれに用意したんだ、とジョージが、まるで自分が発案したかのように胸を張った。でもその直後「言い出したのはリンゴだけど」と
オチをつけた。
「おめでとう、ポール」
ちょっと照れくさいな、とリンゴが小さな包みを渡す。
「ありがとう、開けていい?」
頬をちょっとだけ赤くして、ポールはリンゴを振り仰いだ。もちろん、とリンゴが頷く。
開けてみると、アレキサンドライトのカフスボタンが光っていた。
「パティとモーリンに、どんなものがいいか聞いてみたんだ。そしたら、6月の誕生石の一つがこれだっていうんだ。それに、ほら」
光りにかざしてごらん。リンゴの勧めでポールは、一つ摘んでみる。
すると、赤みを帯びていた石が、日の光を受けたとたん深い緑色になった。
「君の目みたいだろ?」
たしかにポールの目も、その時の光線で茶色に見えたり緑に見えたり、時には紫がかって見えたりした。
ポールは、何時もは寡黙なのに、ちゃんと自分達のことを見ているリンゴに頼もしさを感じた。
もちろん、そんな風に自分を見ていたのだと思うと、なんだか照れくさいけれど、嬉しい。
「凄いね…ありがとう、リンゴ」
子供のような顔で笑うポールに、リンゴは「どういたしまして」、とちょっとお兄さんぶった声で頷いた。
「おれから、ハイ!」
元気な声でジョージが差し出したのは
「ジョー…これ、なに?」
「ミニシタール!」
確かに手のひらよりちょっと大きいサイズのシタールが、ちょこんとポールの両手に乗せられた。もちろんケース付。
「わざわざインドで作ってもらったんだよ!」
音もなるから弾いてみなよと言われて、ポールは恐る恐る爪弾いてみた。
ところが、2~3回弾いただけで弦はプツプツと切れてしまった。
「あれ、なんだこれ!?」
ジョージがあんぐりと口を開けた。インド製だからなあ、とリンゴが呟くとジョンがゲラゲラ笑った。ジョージの顔が真っ赤になった。
「ごめん、ポール! おれ…」
「いいよ」
やはり目尻に涙が浮かぶほど笑ったポールは、後輩の青年に「ありがとう、暖炉の上に飾っとく」と肩を叩いた。
その後、顔を出したジョージマーティンやエプスタイン、ニールやマルなどから一杯のプレゼントをもらって、ポールは
抱えているのがやっとの状態になっていた。
「よかったな、ポール」
リンゴがにっこりと笑いかけた。
「…いや、いいのかな…」
めずらしく、ポールは本気で顔を赤くした。
ファンからの、海のような贈り物も嬉しいが、こんな風に身内からの贈り物は、また感激もひとしおだった。
「レストランも予約してるんだ」
ジョージが気を取り直して話す。
「おれ達とエピーなんだけど、いいかな?」
「もちろん!」
椅子から飛び上がらんばかりにポールが頷く。
「よかった。じゃ、オレ達先に行ってるから」
と、さっさとリンゴがジョージの肩を掴んだ。
「用意がどうなってるのか見てくるよ。時間は7時、場所は例のチャイニーズレストランだから」
え? え? といぶかしむジョージをスルーして
「荷物を置いてこいよ。…少しくらい遅れても、いいからな」
と手を振った。
「あ、ちょっとリンゴ!?」
ポールが席を立とうとした。するとバサバサと腕から荷物が散らばった。
「なにやってんだよ」
呆れた顔でジョンが言いながら、それらをさっさと拾い集める。
「ほれ、行こう」
ポールに荷物を押し付けながら、ジョンがあっさりと言いつけた。
あれえ、とポールは思った。ジョンはプレゼント、くれないのかな?
ま、それもジョンらしいけど。
そう思うポールだったけれど、やはりちょっとだけ寂しい気持ちがした。
しかし、ドアの一歩手前でジョンは立ち止まると
「あ、そうだ」
とポールを振り返り、懐を探ると
「ホレ」
と何かを差し出した。
ポールの手が、一杯のプレゼントをかきわけるようにしてそれを受け取る。
それは、カラフルな切手に飾られた、一枚のしおりだった。
真ん中に、地味だが紫色をした可愛い押し花が貼られている。
「シンが、庭で栽培してるハーブだよ」
確かに、柑橘系の爽やかな香りがする。
「肉に使うと、旨いんだってよ」
へえ、とポールが気抜けしたように答えた。
ジョンは、ちょっとイライラした顔つきになったが、ま、ええわと帽子を被りなおした。
そして、ぼそっと
「誕生日、おめでとさん」
と、呟いた。
そして、さっとドアから出て行った。
ポールは、ぽかんとドアを見ていたが、ジョンの今の声と、その照れた顔つきと、そして唯一の手作りの贈り物に、心が沸き立つような歓びに包まれた。
「ジョン!」
彼は、よたよたと駆け寄って、ジョンに追いついた。
「なんだ?」
ジョンがむっつりと振り返った。
ポールは一息吐き出すと、大きな目を嬉しさに輝かせてジョンに言った。
「これ、凄く嬉しいよ! 大事にするね!!!!」
その声が、あんまり大きかったから、ジョンは、面食らったように目を丸くした。
ポールの顔は、まるで初めて会った時のように輝いていた。
ジョンは、ちょっと黙り込んだが、「へへ」と鼻を掻きながらで笑った。
そして「安らかな眠りと、心の勇気を汝に授けん」と、囁いた。
え? とポールは聞き返した。
なんでもねえよ、とジョンが答えた。
二人は並んで歩き出した。
荷物半分持ってよ、とポールが言うと「あー、人の贈り物を持つ手助けくらい腹立たしいことねえよな」とジョンが答える。
「持ってよ」「いやだよ」、とじゃれあいながら、二人はスタジオを後にした。
外に出るドアを開けると、綺麗な夕日が二人を出迎えてくれていた。
PS.
その後ポールは、ジョンがくれた押し花が「タイム」というハーブであることと、それは6月18日の誕生花で、中世から悪夢除けや贈られた者に勇気をもたらすと信じられていると、ジェーンから教えられた。
彼はさっそく枕の下に、それを置くことにした。
そして今も、それはポールの安眠を守っている。
(…なんちゃって! Happy Birthday,Paulie!! Luv Ya 4-ever!!)
861Hedge-hog’s
「Gift my heart to you!!」
*the end*
最終更新:2009年06月19日 00:05