Nobody's Home
彼は、さっきからあてもなくふらふらと歩いてどこまで来たのだろう。
ジョンは、小さなコーヒーショップを見つけた。
雨が降る中、傘もささずに家を飛び出し、気が付けば訳もわからず街中を彷徨っていたのだった。
ここ、どこだろう――。ジョンは思う。寒い。そうだ、あの店に入ろう。
頭が真っ白な状態のまま店に入れば中にいる客はずぶぬれの彼をじろじろと見る。
「ホットコーヒー」
マスターは、コーヒーを準備しながらジョンのほうをじろじろ見た。
そして、タオルを手渡した。
「あんた、ずぶ濡れだけどどうしたんだい?これでふきな」
「ありがとう」
ジョンは、マスターからタオルを受け取り髪を軽く拭いた。ちょっと、湿っている。
「マスター、ありがとう」
「はいよ、はいコーヒー。なぁ、無理とは云わないが、あんた、ずぶ濡れだったのはどうしてなんだ?」
「喧嘩して・・気が付いたら当てもなく街中をさまよってたらこの店を見つけて・・・・」
「そうか。まぁ、気をつけて帰れよ」
すると、ドアが開いて客が入ってきた。客は、ジョンのひとつ空いた隣の席に腰掛けた。
カウンターを挟んで、二人の距離はわずかだった。
男にしては、綺麗な顔だ。整っているとも云える。男は煙草を取り出すと、火を付けた。
横を向いた。目が合う。そしてまたそっぽ向いたが、男の大きな目がジョンを見つめる。
そして、そっと話しかけた。
「ねぇ、君も家出かい?」
「え・・?」
「僕はポール。君は?」
「俺はジョン。俺も、家出さ」
隣、いい?ポールが軽い笑顔でジョンに話しかけ、ジョンは返事代わりに軽く頷く。
二人は初対面だというのに、何か共通ものがあった。
「ジョン、って呼んでいいのかな?初対面なのに」
ポールがおかしそうにくすくす笑う。いい笑顔だ。そして、煙草を差し出した。
「俺も、家出っていったけど、叔母さんと喧嘩しちまって・・気づいたらあてもなくふらふら彷徨ってこの店見つけてなんとなく入ったのさ」
「僕も、似たようなものかな。僕はゲイだって、父さんにカミングアウトしたらお前なんて出て行けって云われてこのザマさ。
もう24なのに情けないよね」
「え・・?君、24だったのか?もっと年下かと思った・・」
ポールは思わずその驚きように笑う。よく、言われるよ、でもなんとも思ってないよ、と付け足した。
「コーヒー、飲むか?」
「コーヒーは、嫌いなんだ」
二人は会話をやめ、自分のほうに集中していたが、ぽつりと呟いた。
どちらが、云ったかはわからない。
「家、帰ろうか」
どちらが、云ったかはわからない。
冷めてぬるいコーヒーが、ジョンの喉を潤した。
完
最終更新:2009年09月15日 16:11