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フレンズ


「ビートルズで801 実質9スレ目」より


 ジョージはスタジオを飛び出していた。
 今まで何度飛び出したのだろうか。一瞬考えたが馬鹿馬鹿しくなって数えるのを止めた。
 今日もポールとギターの事で喧嘩になった。思い出しただけで腹が立ってくる。まだ認められていないのかという思いで悲しくもあるが。

 ジョンは間に入ってくれるのかと思ったら、2人の喧嘩を黙って見ているだけだった。
 リンゴは悲しそうな目でジョージを見ていた。

 もうビートルズを辞めようか。ふとそんな考えが頭をよぎる。これまでだって考えなかった訳じゃない。
 そこまで考えたところでスタジオの入り口まで来てしまった。このまま帰ろうと思った時、後ろから「ちょっと待って」
と声をかけられた。これがポールだったら思い切り文句を言って、、とあれこれ考えながら振り向くと
 そこにいたのはリンゴだった。
 ジョージは少し拍子抜けしながら「何?」とわざと冷たく言う。リンゴは「みんな待ってるから」と短く言うとその場から去ろうとした。それだけ?ジョージはさらに拍子抜けした。リンゴなら分かってくれると思ったのに。
「そんなの知らないよ」
 冷たく言い放ってジョージは外に出ようとした。
 その瞬間、ものすごい力で腕を掴まれた。びっくりしてリンゴを見ると、普段の温和な表情からは程遠い、真剣で少し悲しそうな顔がそこにはあった。
「痛いよ」
 とジョージが言うと、リンゴは慌ててジョージの腕を放して、もう一度「みんな待ってるから」とだけ言い残してスタジオに戻っていった。
 一瞬の出来事で少し放心状態になる。リンゴの真剣な顔を見たあとでこのまま帰ろうという気にはなれず、気持ちを落ち着かせようと煙草に火を点けた。

 吸い終わると、ふぅと一つ大きなため息とも煙ともつかぬものを吐き出して、ジョージはスタジオに戻った。恐る恐るスタジオを覗く。
 それに気づいたジョンが大げさに「ジョージが帰ってきた!」と叫び、リンゴはいつもの穏やかな表情でジョージを見ていた。ポールは気まずそうに「さっきは悪かった」とだけ言い「じゃあもう一度さっきの続きを始めようか」と少しぎこちなく言った。それを見たジョンがたまらず吹き出す。
 「何だよ!」とポールがジョンに怒鳴り、2人で喧嘩の真似事をしてふざけている。
 ポールはあれでも俺に気を使ってるんだな、と思うと思わず自分も笑い出しそうになった。ジョージはまずポールの元へ歩いて行き一言「ごめん」とだけ謝った。ポールはジョンとふざけるのを止め「俺も悪かった」と言い頭をかいた。ジョンは相変わらずいたずらっ子のような顔で「ジョージがスタジオ飛び出したのはこれで5回目!」と笑いながら言う。それがいかにもジョンらしくてジョージは思わず笑った。

 セッションが終わりそれぞれが後片付けを始めた頃、ジョージはリンゴの元へ行った。何を言おうか迷っているとそれに気づいたリンゴが「どうした?」と煙草をくわえたままジョージに声をかけた。
「せっかく追いかけてきてくれたのに冷たくしてごめん」
 とジョージは素直に言った。リンゴは「俺はスタジオを飛び出したどころか脱退したからね」とおどけてみせた。
 そうだった。ジョージは思い出していた。いつも温和でムードメーカーのリンゴが脱退すると聞いた時はショックだった。
 脱退するなんてよほど思い詰めての事だったに違いない。だが、自分の前ではそんな素振りも見せなかった。
 その場の感情だけで動いている自分がとても恥ずかしく思えた。
 リンゴは自分以外にこういう思いをさせたくない気持ちでいっぱいだったのだろう。一番辛い思いをしていたのは自分ではなくリンゴだったのだ。
「本当にごめん」
 申し訳ない気持ちとは裏腹に今はこう言うのが精一杯だった。
「気にするなよ」と笑いながらリンゴはジョージの肩をポンと優しく叩いた。
 みるみる気持ちが軽くなっていくのが分かった。

 またみんなとは喧嘩をするかもしれない。けれど目に見えない大きな絆のようなものに守られているような気がした。
 自分は一人じゃない。そう思えた。

 スタジオを出ると外はすっかり暗くなっていた。満月がジョージを優しく照らしていた。






                   終わり

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最終更新:2009年11月27日 00:06