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the Songbird


Title:the Songbird
Pairing:John/Paul/George/Ringo
Rating:Fan-fiction
BGM:Songbird(Oasis)


『「Free as a bird」を、皆でレコーディングしている時、一羽の白い鳥が、スタジオに降り立ったんだ。僕はみんなに言ったよ。
「ホラ、ジョンがきたよ! あれはジョンだよ!!」てね』     Paul McCartney 

 1995年、ジョンレノン未亡人オノヨーコは、生前ジョンが録音していた未発表の曲のうちの数曲をポールに渡した。
「どのように使ってくれていい」との言葉を添えて。
 そして、二人は歴史的な和解を遂げた。
 そしてそれは、もう一つの歴史的な和解を生んだ。
 残されたビートルのほかの二人―リンゴスターと、なんとジョージハリスンが、ポールに渡された曲に手を加え、「新曲」と
して発表することになったのだ。
 このニュースは、世界中を……特にビートルズのファンを驚かせ、そして喜ばせた。
 長い間、不和を噂されていたジョージとポールが、やっと一緒の席に座るのだ。
 そして、それを促したのがジョン(の曲)だったということが、またその喜びを増加させた。
 世界が注目する中、レコーディングの場所はポールの農場にあるプライベートスタジオで行われることになった。昔の親友達が、やっと一緒にセッション
できる。それをきっと、誰よりも喜んでいたのはジョンだったに違いない。



 だから……
 ちょっとだけ、
 ちょっとだけ。な?

 そんな言葉が、雲の上のどこかから聞こえたような気がした―――。




「ジョージ、そこはもう少し早くしたほうがいいんじゃないのかな?」
 また始まったと、リンゴは苦笑した。変わらないなあと。
 また始まったと、ジョージは苦虫を噛んだ。相変わらずだなあ、と。
 噂の通りだなあとジェフリンが困りつつも、「伝説」の実証に興奮していた。
 ベースを抱えながらギターを吊り下げて、ポールが「ほら、もっとこう!」と「お手本」を、可愛い弟分に見せている。アレからもう何年も経っている
というのに、どうしてもポールにはジョージが、もうすでに大きな子供がいる、いっぱしの大人……とは思えなかった。噂も聞いてるし、その姿も時々に
見ているのに、久しぶりに直に会うと、昔と変わらないその華奢さと、人の話を聞いてるんだか聞いてないんだかよく分からん態度に、ついあれこれと
口を出してしまう。
『まったく……どこまで言ってもわかんないヤツだなあ!』
 と、ポールは半分眉を吊り上げて、しかしもう半分は嬉しさで顔を赤くしながらわくわくとジョージ相手にはっちゃいていた。
「あー、分かってるよ。ちょっと待って、今やってみてるから」
 そんなポールを煩そうに受け流しつつ、ジョージが自分の手元を見ながらチリリチリリとコードを爪弾いている。
 それはしかし、ポールのやる通りではなく、自分のアレンジを試しているのだった。
「ジョージ、そうじゃなくてさ! ホラちゃんと見てよ!」
「ウルサイなあ! 俺のアレンジを試してみて、よくなかったらそっちをやるか考えるよ!」
「確かめるんなら、ちゃんとこっちを見てからにしてよ! ホラこうやって」
「あー、もう! わかんなくなっちまったじゃないか!!」
 なぜかは知らねど、静かだった農場の一角が無駄に賑やかになっていた。どうしようかとおろおろしているジェフに、リンゴがのんびりと声をかける。
「大丈夫、いつものことだからさ。アレで楽しんでるんだよ、二人とも」
 特にポールがまあ、子供みたいになっちまって。とリンゴは嬉しそうに二人のやり取りを眺めている。お互い、相談できる相手はいてもケンカができる
相手はいない。どこかでこちらを「ビートルズだ」と思って、萎縮してしまうのが見えてしまうので、こちらも思い切り自分を出すことがなかなかできない
状況だ。ポールとジョージのやり取りを見て、やっぱり俺たちは、誰と一緒にプレイしようと、この古仲間と一緒の方が気楽に自分を出せるようだと
リンゴは微笑ましく思っていた。
 しかしその隣で、今ではジョージの盟友である敏腕プロデューサーが、天下のFab同士のケンカにハラハラしている。
 もしこれで、二人が決裂して「新曲」が発表できなくなったらどうしようと、サングラスの下でちょっとだけ顔色を変えていた。
 そんな「アフロパンダ」さん(爆)に、リンゴはお茶を入れてあげようかと席をたったその時
「リンゴ! そっちで見てないで、どっちがいいかちゃんと聞いてよ!!」
 いきなりのご指名がかかって、ドラマーは思わず首を引っ込めた。
「なんだよ、お前まだリンゴに甘えてるのか!? ガキじゃあるまいし!!」
「なんだと!? 子供扱いしてるのはどこのどいつだ!?」
「僕より2歳も下の癖に、大人みたいな口きいてら!!!!」
「9ヶ月だって何っ回も言ってるだろ、この健忘症!!!!」
 そしてまたぎゃあぎゃあと言い合いが始まった。
 レコーディングの様子をPVにするためにスタンバッている撮影班が、困り顔でリンゴを見ている。そりゃそうだろうなとリンゴは思った。スケジュール
だって、そんなに自由に取れていないのに、昔なじみのボードヴィルもどきを楽しんでいる暇はない。おい二人とも、とリンゴが雷を落とそうとした時
 小さな羽音が、リンゴに耳に入ってきた。


 振り返ると、まだ羽が若いハトが、窓辺にきょとんと降り立っていた。
 首をかしげて部屋を覗き込み、リンゴにつぶらな目を向ける。


「おや、鳥さんいらっしゃい」
 リンゴが思わず挨拶をした。なんというタイミング。彼は青い目をほころばせて、突然の訪問者に話しかける。
「せっかくきていただいたのに、あわただしくて失礼」
 クルル、と鳩の喉が鳴る。そして起用に細かく羽ばたき、リンゴの肩にちょこんと止まった。
「おやおや、お前さん人懐っこいね」とリンゴが目を丸くした。撮影班は、そんな嬉しいハプニングを撮っておこうと早速動き出す。コレが使えたら、
感動的なシーンになるに違いない。ジェフの顔にも笑顔が浮かび、部屋がいい雰囲気になった。
 と、おもいきや
「あーーーーーーーーーーっ!!!!」×2
 リンゴの背中を、ユニゾンが突き飛ばした。
 全員が「何だ!?」と振り返ると、いい歳ぶっこいて子供返りしていた二人が、同じ表情でリンゴを指差していた。
「な、なんだよ」
 リンゴが驚いて二人に尋ねる。
「せっかくリンゴに聞かせようと思ってアレンジ決めたのに、なに呑気に鳥と遊んでるんだよ!!」
「リンゴ、その鳥! その鳥はきっとジョンだね!?」
 同時の発言だが、誰がどっちを言ったのかは歴然だった。
 なんだって? とジョージすら隣の発言に目を向けた。
 大きな垂れ目をより見開いて、頬を今まで以上に上気させてポールはリンゴの肩にいる鳩を指差し続けている。口元には大きな笑み。目の端は……
かすかに光っている。
「ぽ、ポール?」
 思わずジョージが声をかける。しかし、ポールは感激でぷるぷる震えているようだった。
 そして、感激のまま、隣にいる弟分の肩を「ガッシ!」と抱き寄せた。
 その力の強さに思わずジョージが「ぐえっ!」と声を上げた。しかしポールはキニシナイww。ジョージを小脇に抱え目をうるうるさせながら、
じりっじりっとリンゴに近づいていく
「ちょ、ちょっと、ポール?」
 そんなポールの様子にリンゴはおろか撮影班もジェフも、たじたじと後じさる。
「お前……なにしようってんだよ?」
 リンゴの肩にいる鳩も、周りの人間とおなじ顔になっていた。不安げな鳴き声をリンゴの耳にささやきかける。リンゴがそれに頷きながら、
じりっじりっと後退していく。
「ポール、おい、ポール!!」
「動かないでリンゴ……、そのまま、そのまま」
「お前、まさかこの鳥を!」
「だって、ジョンだよ!? ジョンがきてくれたんだよ!?」
「だからってアンタ、まさかあの鳥、捕まえようってんじゃないだろうな!?」
 中腰のまま足を進めなければならないジョージが、そんなポールに呆れつつも図星を指した。
 ポールはきっっっぱりと言い切った。『それのどこが悪いんですかっ!?』
 ええええええええ!? と、聞いた人間全てが無言の悲鳴を上げた。
「やっとジョンが、やっと皆が揃ったんだよ!? 長かった…長かったよ。もうこれ以上バラバラでいるのなんか、僕はごめんだ!! こんな機会はめったに、
いいや、もう二度とないかもしれない!!」
 もうずっと待っていた。この時を待っていたんだ。だから、もうこれからはずっと僕の側にいてもらうんだ。いてもらうんだよ!!
 ポールが強い口調で言い切った。全員の息が、ハッと呑まれた。
 ポールは本気だった。ジョージとリンゴの視線が、一瞬ポールに集まった。
 その時
「どわっ!!」
 ジョージ共々、ポールがリンゴに飛びついた。
 周りにおいてあった椅子やガラクタが一斉に、三人+1羽の上に落ちてきた。
「あっ!!」
 撮影班の一人が声を上げた。鳥がつぶされると思ってあせったのだ。
 しかし、その瞬間鳩は、抜け目なくパッと飛び立つと、折り重なってもがいてるfab達の上をくるりと旋回して、ジョージと
ポールの背中に一回ずつ止まった。
 そして、その場にいる全員を茶化すように飛び回り、やがて窓の外へと出て行った。
「あ、しまったあ!!!!!」
 やっと起き上がったポールが、窓に駆け寄り身を乗り出した。
 白い鳩の姿は、雲にまぎれてもう見えなかった。

「ジョン、まってよジョン!!」

 なにも逃げることないだろ!!!! とポールが思わず悪態をついた。全員が、ハッと我に帰った。ポールの言葉と勢いで、彼らもあの鳥がジョンだと
思い込んでしまっていた。
 リンゴとジョージは顔を見合わせた。リンゴが「コラ」と目でジョージを叱る。バツが悪そうにジョージがリンゴに頷くと、ポールの隣に
そっと並び立つ。
 そして、その肩をわざと強く叩く。
「Free as a bird。だろ? ポール」
 一緒に窓から身を乗り出して、空を見上げながらジョージが言った。
「アレがジョンなら、やっぱり自由にさせてやろうぜ?」
 リンゴが、その後ろから明るく声をかける。
「大丈夫、またきっと来るよ」
 そして『今度は、こんな莫迦な様子を見せないようにしないとな』と続ける。
 ポールが気が抜けた顔つきで、ジョージを、そしてリンゴに視線を向けた。
 二人が、にっこり頷いた。
 その笑い、徐々に大きくなっていく。
「ポール、なンだおめえ、そのツラ!!」
「は、鳩が豆鉄砲食らっただか!?」
 思いっきりのリバプール訛りで、二人は腹を抱えて笑い出した。一瞬ポールはムッとしたが「うるせえこンの、バカタレが!!」 とやっぱり故郷の
訛りで答えた。三人の言葉は、三人以外には誰も聞き取れなかった。
 鳥にまで置いていかれたFab達は、腹を抱えてお互いの肩を叩いて笑った。

 その、楽しげな笑い声は、青い空に登っていく………。





 鳩が一羽、街の教会の屋根にたどり着いた。
 郊外にポールの農場がある街だった。
 田舎の、落ち着いて退屈な町並みの中で、そんなちっぽけな鳥の姿など、誰も気に留めない。
 鳩は羽を細かく使い、屋根の縁に下りようする。
 そして、その足が屋根に降りた時。


「ふえーーーー、びっくらした」
 白いシャツと、いい感じでくたびれたブルージーンズをはいた姿の男が教会の屋根の上で、その猫背を伸ばしながら、やれやれと腰に手をあてた。
 癖のある髪を顔の脇にたらし、とがった鼻には丸めがね。抜けるような白い頬を軽く上気させて、男は「よっこらしょっ」と訛りのある呟きを洩らし
ながら屋根に座り込んだ。


「まったく…ちょっとみないとすぐ喧嘩しやがって。今いくつだあいつら! 俺より年上になってるはずだろうにもう」
 恥ずかしいなあ! と胡坐をかきつつ、男はその不適な顔つきを手で覆った。大体リンゴがついてて、なんだあのザマ! 
 周りの人間ドン引きじゃねえか!


 その男には、もう時の流れは関係なかった。その相貌は何時までも精力的で、しかし大人の落ち着きを見せている。
 だが口を開けばなんの、結局今の三人と大差がないのが知れた。
「それにしても……あいつら、年取ったなあ。ジョージなんていいオッサンじゃん!」
 そこまで言って、彼は今見てきたレコーディングの様子に心を向けた。
 ジョージが、ポールと一緒にディスカッションをしてる。コードをあれやこれやと試しながら、単音の曲に厚みを加えていく。リンゴが二人の様子を
見ながらドラムを決める。ああ、リンゴのドラムだ。タメが聞いてて、煩くないのにくっきりとしてる。
 ジェフリンが、一所懸命音をつないでいく。撮影班の存在は、その昔自分達を取ったドキュメンタリー映画を思い起こさせる。
 あの時はもう最悪だったなあ。と彼はあの頃を思い出してうんざりとした。でも、今は違う。確かにポールとジョージは言い合っていたが、あの時に
あったような険悪さはどこにもなかった。それはリンゴの様子で分かる。

 まったく、意地っ張り共が。男が肘を立てて頬杖を付く。仲直りするまでどれだけかかってんだよ。
 そしてふと、琥珀色の目を空に向ける。『俺の曲が、あんな曲でも、少しは役に立ったかねえ』
 ポールの声が、それに答える。
『もうこれ以上バラバラでいるのなんか、僕はごめんだ!!』
 男の表情が、一瞬止まった。そして、遠い日々に思いを寄せると『そうだよな、うん」と、頷いた。
 そして、その薄い唇を照れくさそうにほころばせる。
「ありがとな、ヨーコ」
 そう一人言ちた時、彼の目に、古い相棒がこちらに気付いた時の姿が浮かんだ。
『アレはジョンだよ!』
 そう言った時の、その様子。
『ポール、あの鳥捕まえるのか!!!!』
 ポールに抱えられつつ、こっちを気遣うジョージのまなざし。
『いや、大丈夫だから』
 ポールの様子に不安になって、ついリンゴに話しかけた時、ただの鳴き声にしか聞こえなかっただろうその声にちゃんと頷いて答えてくれた彼の横顔。
 その全てが、男の心をくすぐった。

『ずっと側にいてもらうんだ! 僕の側にいてもらうんだ!!』
 歳を取った顔で切実に向かってくる相棒の姿が、一層胸を熱くする。

「………へへっww」
 両膝を立てて体育座りになった男は、膝の上に腕を組むと、嬉しそうな笑顔を乗せた。
 薄い顎を突き出して、男は街を、その外れにある農場を臨んだ。
 ぐるりと広がる風景の向こうから、懐かしい訛りと笑い声が聞こえた。
 それを聞いて、男はもう一度「へへへw」と笑った。しかし、見上げる空はすでに暮れかかっている。西に沈みかかった夕日は、青い空を赤く染めていく。

 と、教会の鐘が鳴った。
 まるで誰かに何かを知らせるように。

 へいへい分かりましたよ、と男は立ち上がると、もう一度、街の向こうに視線を向けた。
 そして、にこっと微笑むと、軽く猫背を空に伸ばす。



 一羽の小さな鳩が、赤く染まった雲に向かって、高く遠く飛び立っていった。








                         861Hedge-hog’s
                         「the Songbird」
                           *the end*

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最終更新:2009年12月12日 04:23